• 株式会社セールスフォース・ドットコム
  • カスタマーサクセス本部 サクセスマネジメント部 部長
  • 北川 博一

独自の指標によって「顧客の状態」を数値化。Salesforce流のカスタマーサクセスとは

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〜活用状況を徹底的にデータ化! Webセミナーやコミュニティ運営により、「顧客自身での自己解決」「1対Nの支援」を実現するノウハウを紹介〜

全世界で15万社以上が導入し、世界で最も多くの企業が活用しているCRM(顧客管理)プラットフォーム「Salesforce(セールスフォース)」。

同サービスの拡大の裏側には、「カスタマーサクセス」と呼ばれる、顧客へのツール定着・活用をサポートするチームの存在がある。

株式会社セールスフォース・ドットコムにおいて約9年間、カスタマーサクセスを担う北川 博一さん。

北川さんは、営業の役割が「売上を作る」ことだとすると、カスタマーサクセスの役割は「顧客の業績向上を実現すること」だと語る。そして、その結果として、サービスの利用が継続され「売上を守る」ことに繋がるのだ。

そのため、同社では顧客の活用状況を独自の指標を用いてモニタリング。何かしらの課題を感じている顧客に、最適なタイミングでサポートを提供する仕組みを整えている。

また、コミュニティやWebセミナー、自習室の運営などを通して、「顧客自身での自己解決」「1対Nの支援」を実現し、多くの顧客を支援する体制を構築しているという。

今回は北川さんに、同社のカスタマーサクセスの全貌を詳しくお伺いした。

活用スコアと営業へのヒアリングで、顧客の状態をモニタリング

弊社では、営業が顧客獲得によって「売上を作る」役割を担っているのに対し、カスタマーサクセスは「お客様の業績向上を実現する」役割を担っています。

その前提は、サービスの利用を継続していただくということです。それが結果として、「売上を守る」ことに繋がります。

そのため、KPIとしては「契約更新率」をおいており、契約更新の3〜6ヶ月前には、活用スコア(※詳細は後述)を確認すると共に、営業へのヒアリングを行います。

そして、お客様がうまく活用できていないと判断すれば、カスタマーサクセスのメンバーが支援に入ります。

よく、「活用スコアがあるのなら、わざわざ営業に確認しなくても良いのでは?」という質問を受けます。しかし、必ずしも活用スコアが高いお客様が満足しているとは限りません。

「業務としては必要だから使っているけれど、使いづらいから契約更新のタイミングで別の製品に切り替えよう…」と思われている場合もあります。

反対に、活用スコアは低いけれど、社内に定着させるノウハウがないだけで、使う意欲は強く持たれているお客様も多くいらっしゃいます。

ですので、活用スコアのチェックだけでなく、お客様と対面している営業への状況確認は欠かすことができません。

活用スコアの上昇率・施策への反応率・満足度もKPIに設定

「契約更新率」の他には「平均活用スコアの上昇率」「顧客反応率」「顧客満足度」をKPIとして設定しています。

「平均活用スコアの上昇率」は、日本国内におけるお客様の平均活用スコアが、期初時点からどれほど上昇したかを測るものです。

また、「顧客反応率」は、我々が実施している施策へのお客様の参加状況をモニタリングするものです。

具体的には、弊社から送付したメール内リンクのクリック、コミュニティでの質問投稿、イベント参加といったアクションを、毎月、全体の何割のお客様が実行したかを測っています。

そして、「顧客満足度」は「知り合いにSalesforceを推薦したいと思うか」というアンケートをとるNPS(Net Promoter Score)によって計測しています。

そこでポジティブな回答をする人が、ネガティブな回答をする人に比べてどれだけ多いかを測っています。

※【ご参考】NPSについてはコチラの記事をご覧ください。

「NPSとは」基礎から応用まで。現場での実例集【5選】・計測用ツールを徹底解説

これらの数値はダッシュボードで管理されており、常にチェックしながらPDCAを回しています。

▼各種KPIがダッシュボードで管理されている

顧客の規模と専門性で、3チームに分かれて支援体制を構築

カスタマーサクセスを支える体制は、顧客規模と専門性から、3つのチームに分かれて構成されています。

▼カスタマーサクセスを支えるチーム体制

大手企業を対象とした「エンタープライズサクセス部」は、企業グループごとに個別の担当者をアサインし、訪問を中心とした支援を行います。

また、中小企業を対象とした「サクセスマネジメント部」は、解約リスクや営業からの依頼に応じて、随時担当をアサインする形でお客様を支援しています。

具体的には、電話やメールといった遠隔支援と訪問、活用促進イベントへの誘導を行っています。

さらに「スペシャリストチーム」は、顧客規模に関わらずソリューション軸でお客様を支援するチームです。

お客様がよく直面する課題に対して、高い専門性を持って、あらかじめパッケージ化された解決策をスピーディーに提供しています。

ワークショップで目的や体制の設定、運用イメージの構築を支援

運用の定着によく失敗するのは、「現場がメリットを感じておらず使ってくれない」「現状のエクセルを移行したが、うまく分析ができない」「導入を完了させた後の推進者がいない」というケースです。

そのため、導入時には「目的の明確化」「アウトプット(分析画面)を考えた画面設計」「運用推進体制の構築」がポイントとなります。

これをセミナーや訪問(※)を通じてご説明し、その場で体制や目的、KPIなどを設定します。

※一定金額以上の契約顧客が対象

また、定着に不安のあるお客様へは「Salesforceの活用が、業務目標の達成につながる」というイメージを持っていただくために、有償でスペシャリストチームがワークショップを実施しています。

具体的には、今年度の業務目標から、それを達成するための3ヶ月程度の中期的な取り組みを考えていただきます。

そして、さらにそれを日々の業務内容に落とし込み、それぞれに対してKPIを設定します。

▼実際のワークショップの様子

その中で、「今、エクセルで管理されているこの情報は、スマホで外出先から入力できるようになります。また、集計や通知も自動で行われるので、メリットがありますよね!?」という風に説明をしていきます。

そうすると、何のために使うのか? 具体的に自分の仕事がどのように楽になるのか? が明確となり、その後の定着が一気に進みます。

独自の指標によって、サービスの活用状況をスコアリング

最近の分析結果から、運用を開始した後、できるだけ早いタイミングで支援を行うほど、よりお客様にSalesforceをご活用いただけることがわかってきました。

そのため、契約開始から90日後の活用スコアを確認し、スコアが低いお客様にはこちらから状況を確認するようにしています。

この活用スコアは、「購入したライセンスの有効化率」「ユーザーのログイン率」「データ変更の頻度」など、お客様の利用状況を約40の視点と重要度で計算し、0〜4の範囲でスコアリングしています。

▼あらゆる指標から活用状況をスコアリング

弊社の基準として、活用スコア「1.5」を活用できている・できていないの境目と考えています。

そのため、契約開始後90日の時点で1.5を超えていないお客様を抽出し、必要であれば支援をしています。

また、それ以降のタイミングでも、大きく活用スコアが下がったお客様がいれば、同様に状況確認から支援の流れを取っています。

例えば、「使い方がよくわからない」「設定でつまずいている」という機能的な課題がある場合は、Web上の資料をご案内したり、Web会議でサポートします。

また、「現場が使いづらいと言っている」「部門長が代わって、エクセルでデータを集め始めた」という場合は、営業と協力しながら訪問して支援を行います。

「顧客自身での自己解決」「1対Nの支援」を実現する仕組み作り

ただ、お客様の数と我々のチーム人数のバランスを考えると、全てのお客様にこのような個別支援は実施できません。

そのため、「よくある共通の課題であれば、資料を活用して解決できないか」「訪問ではなく、電話やWeb上で解決できないか」といったことを常に考えています。

具体的には、新規の契約者向けにWebセミナーを実施しています。地域や人数に制限なくご参加いただけますし、録画をしておけば参加できなかったお客様にもご都合のいい時に観ていただくことができます。

▼顧客のフェーズに合わせてコンテンツを提供

初めて利用される方向けには、「まずは何より!シリーズ」にて基本的な顧客管理や社内稟議アプリの作り方などをご紹介します。そうすることで、クイックにSalesforceのメリットを感じていただけるようにしています。

また、利用開始から半年が過ぎたお客様向けに「もっと使おうSalesforce」というウェブセミナーをご案内しています。

こちらでは、自動でデータを更新できる機能や、スマートフォン向けアプリの設定方法など、より便利に使える方法をご紹介しています。

また、Webセミナーに未参加で、サポートへの問い合わせもないお客様へは「Salesforceの導入はうまくいっていますか」というメールを自動で送信しています。

▼アクションのない顧客向けには、状況確認のメールが送信される

このメール上には、「完了(運用開始済み)」「順調(導入作業中)」「問題あり(相談したいです)」のボタンがあります。そして、「問題あり」をクリックされたお客様には、電話での相談をご案内しています。

このように、お客様のセミナー参加状況ごとに自動でメールを送り分け、なるべく多くのお客様に適切な支援をできるようカスタマージャーニーを組んでいます。

ユーザー同士での課題解決を実現するユーザーコミュニティ

さらに、有償サポートの契約社向けには、定期的に弊社の会議室を「自習室」として開放しています。時間内であれば好きな時に来て作業をしていただき、質問があれば、その場で解消していただくことが可能です。

参加者からは「自社内だと他の仕事に忙殺されて時間が確保できないので、集中できて良い」といった声をいただいています。こちらとしても、訪問なしに一度に複数のお客様の対応ができるというメリットがあります。

また、我々のカスタマーサクセスを語る上で重要なのが、ユーザーコミュニティの存在です。

お客様の質問に対して、以前は弊社のカスタマーサクセスが回答していたのですが、今では弊社のパートナー様や、他のお客様にご回答いただけるようになっています。

▼「疑問を解決したい」ユーザーと、「回答して貢献したい」ユーザーが繋がるコミュニティ

社員のみによる情報発信ですと、どうしても担当者の裁量や業務量によって、コミュニティの活性化状況にばらつきが出てしまいます。

一方で、お客様やパートナー様の中には、積極的に情報発信をしたいという「熱狂的なファン」が多くいらっしゃいます。

そのため、「疑問を解決したい」というお客様と、「回答して貢献したい」という方々をうまく繋ぐ仕組みを、このコミュニティを通して作りたいと思いました。

また、積極的にコミュニティに参加くださった方々をメディアで紹介したり、イベントで表彰することで、更にそれを見た方々にも「自分も質問に回答して貢献したい」と思っていただけるような流れを作っています。

このように、私たち自身が「訪問する」「質問に回答する」といったことをせずとも、お客様の課題が解決される環境を作ることが、少人数で多くのお客様を支援するためのポイントだと考えています。

顧客の自走を実現すべく、「自転車の補助輪」として支援する

様々な形でお客様を支援する中で、「どうすれば我々の支援なしでお客様が主体的に活用のサイクルを回せるようになるか」ということを常に考えています。

そのためには、お客様のフェーズに合わせて、支援内容を変えることが大切です。

例えば、「社長が分析画面を作ってくれといってるので、支援して欲しい」という相談が来たとします。

お客様が、まだSalesforceをうまく活用いただけておらず、 懐疑的な場合は、訪問して機能や他社事例を紹介します。

そして、ツールを理解してもらった上で、サンプルとなる分析画面を一緒に作り上げます。

そうすることで、「Salesforceは、案外シンプルな構成だな」とか「ちゃんとサポートしてくれる体制があるんだ」という風に価値を認識してもらいます。

また、既に価値を認識しているお客様に対しては、分析画面を作成するための資料やトレーニングの情報をお送りして、まずはお客様に手を動かして頂きます。

そして、どうしても引っかかるところを電話やWeb会議で支援して、機能的なスキルを上げていきます。

さらに、ある程度スキルのあるお客様へは、より高度な他社事例を紹介し、高いレベルでの実装を支援します。そして、ユーザーグループやイベントで事例としてお話しいただけないかご相談します。

このように、私たちがやるべき事は、お客様が目指す状態をSalesforceでどのように支援できるかを考え、それをどうやってお客様主体で実現するかを考えることです。

ですので、ロジカルシンキング、ファシリテーション、コーチングといったスキルが非常に重要です。

お客様と向かう先を握りあい、 モチベーションを高め、行き詰まった時は適切なサポートをする。そして、自転車の補助輪のように、次第に私たちがいなくてもお客様自身で自走できるように導く。

そんな存在としてお客様を支援し、Salesforceを使って業績を向上させる企業を1社でも多く増やしていきたいと思います。(了)

※【ご参考】カスタマーサクセスについてはコチラの記事でもご紹介しています。是非、ご覧ください。

カスタマーサクセスは「攻め」ではなく「伴走」。顧客を成功へ導く最短ステップとは

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