• 株式会社PR Table
  • 取締役
  • 菅原 弘暁

企業は「モテる努力」をせよ!「好き・嫌い」を判断軸に、採用ミスマッチを減らす方法

〜「八方美人」の採用はしない。お互いが「好き・嫌い」を判断軸として、自社にマッチした人材を採用し、組織のエンゲージメントを高めた手法〜

自社にマッチングした人材の採用は、多くの企業が抱えている課題だ。

企業のストーリーを発信するプラットフォーム「PR Table」などのサービスを手掛ける、株式会社PR Table。昨年11月に「PR 3.0 Conference」というPRに特化した大規模なビジネスカンファレンスを開催し、その注目を高めている。

同社では、少人数の採用を進めてきた一方で、2016年頃より採用のミスマッチが相次ぐという課題を抱えていたという。

そこで、自社に合うかどうかを選考で正しく見極めるため、選考プロセスの体制を変更。候補者を「良い・悪い」で判断するのではなく、「好き・嫌い」で判断できるように軸を言語化した。

そして、社内に対しても「会社の性格」を正しく伝えることで、組織と社員のミスマッチを減らしていったという。

また、採用の専任を置かず、全社で採用を行うという思想に基づき、採用管理ツールの「HERP(ハープ)」を2018年9月に導入。

HERP上のすべてのコミュニケーションを全社員に公開したことで、副次的な効果として、エンゲージメントスコアが3ヶ月で約20%もアップしたそうだ。

今回は、同社の取締役で採用を主導している菅原 弘暁さんに、採用における思想から採用課題の解決プロセスまで、余すところなくお伺いした。

「採用人数」や「採用単価」は、指標であってゴールではない

僕は、代表の大堀兄弟とは学生時代からの知り合いで、2014年の12月にPR Tableを共同出資で設立しました。

以前はPR会社に4年ほど勤め、大企業を中心としたクライアントを担当していました。そこで仕事をするうちに、より当事者としてPRの仕事をしてみたいと思うようになったんですね。

そして、代表からPR Tableという会社を作る話を聞いて面白そうだなと思い、2015年の9月に正式に参画しました。

3人で創業した後は、しばらく人を採用せず、受託でコンテンツの制作代行を請け負っていました。もともと、会社を大きくしたいという考えは持っていませんでした。

ですが、このまま受託を続けていてもPR会社の頃と大差がないと思い、自社のプロダクトをスケールさせていこうと決心したんです。

そこで資金調達を見越して、営業やマーケターなどのポジションの採用を始め、2016年の秋に約3,000万円を調達しました。その後も急拡大はせずに、マイペースに人を増やしてきました。

というのも、少ない人数で目標数値を達成できるに越したことはないとは思っていて。なので、採用のゴールを「採用人数」や「採用単価」といったKPIの達成に置くのは違うと思っています。

もちろん、PDCAを回すためには指標はあった方が良いです。弊社でも、平均の採用単価などをモニタリングして、施策の効果についての議論は数値をベースに行っています。

ですが、あくまで会社のゴールは「事業を成長させること」であって、採用はその手段のひとつじゃないですか。つまり、指標であってゴールではない、という認識が重要だと考えています。

ミスマッチが相次ぎ…「リトマス試験紙」で選考プロセスを見直す

毎年、少しずつ人数を増やしてきましたが、2016年頃から採用のミスマッチが続いてしまって…。入社後に思うような活躍をすることができないまま、結局1〜2年ほどで退職することになったメンバーが数名いました。

そのマッチングの問題が表面化するきっかけは、だいたい「僕」だったんですよ。僕自身は他の社員と同じように接していても、なぜか怖いと思われたりして、代表のふたりからは「リトマス試験紙」と呼ばれていました(笑)。

これがなぜ起こるかを考えたときに、代表との1次面接で、会社の印象が誤って伝わっていることが原因になっているのではないかと。

というのも、当時のPR Tableは「企業に埋もれたストーリーを通じて、PRを支援するサービス」と訴求していたので、「温かくて優しい会社」という印象をもった方が多く選考にいらっしゃったんですね。

そこで「何か違うな」と思っても、代表ふたりはわざわざ否定しないタイプで。その上、2次・3次面接で別の社員が「厳しい面もありますよ」という話をしても、どうしても最初の印象に引きずったまま自分を納得させてしまう方もいて、入社後のギャップを生んでいました。

そうしたミスマッチが相次ぎ、代表ふたりから「特別なことをしなくていいから、とにかく最初に出てくれ」という依頼を受けまして(笑)。そこで2018年の9月から、1次面接を僕が担当する選考プロセスに変えました。

最初は、とにかくスカウトを数多く打って1次面接の数を増やし、検証を重ねましたね。それこそ最初の3ヶ月は、1日5件ほど面接する日もありました。

それによって、この人は会社に合うなとか、この人は合わないな、といった傾向が徐々に掴めてきました。

自社の性格を正しく伝え、候補者を「好き・嫌い」で判断する

採用面接って、お互いがマッチするかどうかを見極める場なので、「うちの会社に合わない=優秀ではない」ということでは、全くないんですよね。

そこで弊社では、「良い・悪い」ではなく「好き・嫌い」で採用の判断を行っています。

僕が面接を担当するようになってから、この「好き・嫌い」を徐々に言語化していったんですね。そして候補者の方に対して、PR Tableという人格を正しく伝えるように意識しました。

▼同社の性格や考え方を「好き・嫌い」で表現

この「好き・嫌い」を明確にすると、選考のスクリーニングにもなります。例えば、これを伝えたときに「自分にはちょっと合わないな」と感じる人は目線が下がって表情が変わったりするので、そうした相手の変化を見るようにしていますね。

また、企業ロゴなどのデザインも、PR Tableの人格を正しく伝えるために刷新しました。

一方で、採用の場面だけでなく、社内に対しても自社の性格を伝えることに取り組んできました。

その会社に所属するかどうかって、付き合う人を選ぶときと同じだと思うんです。もし性格が合わないのであれば、他の場所に行った方が本人が活躍できる可能性が高いと思っていて。

なので、社内では「PR Tableくん」がどういう性格で、その性格は今後変化していく、ということをメンバーに伝えています。というのも企業も人間と同じように、根本的な価値観などは不変でも、成長の過程で性格が変わっていくのは当然だと思っています。

そこで、2018年の前半にかけてPR Tableくんの「好き・嫌い」の基準をクリアにし、組織改革を行いました。それまでのピラミッド型の組織からフラットな組織へと変えるプロセスのひとつとして、代表がメンバー1人ひとりと対話を重ねていったんです。

この時期は、会社の雰囲気はかなり悪かったですね。結果的に、2018年の秋頃に一定数の人が会社を去っていくことになったのですが、それを乗り越えたことで組織が大きく変わっていきました。

採用担当「専任」は要らない。全社採用のため「HERP」を導入

そして、2018年の11月末にPRに特化した大規模なビジネスカンファレンスを開催することになり、会社の知名度が上がることを見据えて、採用体制を強化し始めました。

具体的には、1次面接の前に実施していた会社説明のための個別面談を、僕以外のメンバーでも対応できるようにしたり、現場メンバーに採用の実務を兼任してもらう形にしました。

そこで導入したのが、採用管理ツールの「HERP(ハープ)」です。HERPは、求人媒体との自動連携により、採用の工数を削減することのできるツールです。

HERPはまだ提供を開始したばかりのサービスなのですが、「全社員が採用担当」という思想が他ツールにはない魅力だと感じ、2018年の9月に導入を決めました。

弊社では「全社員が関係構築を行うPRパーソン」だと捉えているので、採用担当の「専任」を置いていません。今後もしばらくは必要ないと考えています。

ですが、採用の未経験のメンバーに対して、業務をイチから教えるのってなかなか大変じゃないですか。例えば、候補者ごとの選考プロセスの管理や、エージェントとのやり取りなど、採用の実務は多岐にわたります。

それを、HERPという「型」の中で作業したことで、採用の実務に関する「思想のインストール」をスムーズに行うことができたんです。ツール導入後の半年で、5名から内定承諾をもらうことができました。

採用プロセスを全社員に公開し、組織のエンゲージメントが向上

また、HERP上のすべてのコミュニケーションは、全社員にオープンにされています。

例えば、面接のフィードバックや選考のプロセスなど、オファー時の給与を除くすべての情報が開示されています。

▼HERP上のタイムライン画面

そして、情報が更新されると関係者へのメンション付きでSlackに通知されるので、見逃すことなく社内のやり取りも円滑に行えていますね。

▼HERPと連携したSlackのチャンネル

また、実務がスムーズになるだけでなく、候補者に対するフィードバックの内容から「会社がどのように考えているか」が社員に伝わるという副次的な効果があって。

何をもって「好き・嫌い」と判断しているのかが、具体例があって伝わりやすいんです。

▼候補者へのフィードバックの一例

すべての内容が可視化されたことで、採用にきちんと取り組んでいるんだなということも、全メンバーに伝わりやすくなったと思います。

その結果、副次的ではあるのですが、組織サーベイのエンゲージメントスコアの数値が、HERP導入後の約3ヶ月で、約20%上がりました。

もちろん複数の要因があるとは思いますが、「Slack上で採用のやり取りが見えるので、会社が何を考えているのかをリアルタイムで把握できるようになった」と社員からも言われましたね。

最大のリファレンスは、社員が自社の性格を「好き」と思うか

僕は、PR Tableの性格を「好き」だと社員が思っている状態が、最大のリファレンスだと思っていて。いわば、社員がメディアみたいな役割を果たしているんですよね。

なので、社員には「こいつの言っていることに嘘はないな」と思われるように情報を開示することが大切だと考えています。そして社員のエンゲージメントが高まれば、個人でブログを書いたり、Instagramのストーリーに会社の様子を載せたりして、自発的に発信するようになるんです。

また、スタートアップは特に「モテる努力」をする必要があると思っています。

そのためのポイントは2つあって、ひとつは「キラキラする」ということ。人と同じで第一印象ってやはり重要なので、会社の企業理念やプロダクトなど、それ以外にも表に出るものすべて、外見の魅力はとても大切です。

そして惹きつけた人々にモテるためには、内面はそれ以上に重要です。そこで大事なのは「ステークホルダーに対して説明責任を果たす」ことだと考えています。

スタートアップって、要は顧客、投資家、社員などすべてのステークホルダーを、いわば会社やそれを生んだ創業者のエゴに巻き込んでいるわけです。

なので、会社が何を目指していて、どういう風に育っていくのか、きちんと伝える必要があると。その境界線を、できる限り社内外でなくすということが大事だと考えています。

僕らが社会に提供しているサービスもその思想で作っているので、より会社としてのPR Tableという「人格」が社内外に伝わるように、今後も取り組んでいきたいと思います。(了)

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