• 株式会社リブ・コンサルティング
  • 常務取締役
  • 権田 和士

「自信のなさ」が、組織に負のスパイラルを生む。離職率28%から実行した大改革の全貌

〜「会社の悪口に共感する人が増えると、組織は崩壊する」たった2年で、離職率が5%→28%に悪化したリブ・コンサルティングが、「100人の壁」を乗り越えた大改革の軌跡〜

企業の成長に伴い、組織は階層化する。それに伴って生じる歪みを乗り越えるには、どうすればよいのだろうか。

2012年に創業し、中堅・中小・ベンチャー企業向けの総合コンサルティングを行う、株式会社リブ・コンサルティング。

同社では、いわゆる「100人の壁」を迎える頃から徐々に離職者が増え、元々は業界水準よりも低かった離職率が、一時28%まで上昇していたという。そこで組織を立て直すため、2017年より組織改革に着手した。

まず最初に、案件づくりや事業づくりよりも「組織づくり」の優先度を高くするという会社の方針を明示。その上で、採用、育成、評価、社内活性化という4つの軸で施策を実行した。

一連の取り組みによって、自分たちがこの会社を創っているのだという「オーナーシップ」が社内に芽生え、組織崩壊の危機を脱することができたそうだ。

同社で人事と新規事業の担当役員を務める権田 和士さんは、「振り返ってみると、組織の負のスパイラルの源泉は、自分たちに対する『自信のなさ』だった」と語る。

今回は権田さんに、組織に綻びが生じた背景から組織改革の全貌について、詳しくお伺いした。

たった2年で離職率が5%→28%に。組織の立て直しが必要だった

私は2014年に、創業3年目のリブ・コンサルティング(以下、リブ)に執行役員としてジョインしました。その後、主要部門の担当役員を歴任し、3年前から人事と新規事業の管掌役員を務めています。

私が入社した当時、組織は社員80名までに拡大していましたが、離職率はたった5%ほど。業界の平均値と比べると、かなり低い水準でした。

しかし、社員数が100人に迫ってきた頃から、徐々に辞めていく人が増えてきたんです。最初のうちは「これも新陳代謝かな」と、あえて「100人の壁」を意識しないようにしていましたが、確実にその壁にぶつかっていました。

辞める理由としても、「ベンチャーだと思って入社したのに、大企業みたいだった」というような声が出てきて。個人的には離職そのものよりも、大企業病みたいな指摘が気になっていましたね。

当時は、代表の関が事業と組織のトップを兼任していたのですが、100人の規模になってくると、どうしても1人で両方を機能させることが難しくなってきます。

そこで外部から人事責任者のポジションで採用をしたのですが、入社半年くらいで退職してしまって…その頃には、離職率が28%まで上がっていて、さすがに新陳代謝と割り切れない状況でした。

改めて振り返ってみると、当時の組織は「負のスパイラル」に陥っていたんですよね。そしてその源泉は、根本的には自分たちに対する自信のなさだったと思います。どこかで自信を持ちきれないまま、コンフォートゾーンに甘んじている状態だったと思うんです。

「自分たちはこんなもんだよね」とか「大した存在になれないよね」といった意識が、いわゆる「100人の壁」を生み出していたと思うし、離職の原因にもなっていた気がして。それに対して、最初は向き合えなかったんだと思います。

その後、2017年から私が人事の担当役員に就任し、組織改革に着手しました。

結果的に、新卒採用や人財育成に携わる人が増え、自分たちがこの会社を創っているんだという意識から「オーナーシップ」が生まれた。そして、未来志向でどんどん高いチャレンジに挑戦するようになっていった。これが、一番の良い変化だったと思っています。

事業上の「限界」が見えることで、組織にも「負の連鎖」が生じる

「100人の壁」にぶつかっていた当時でも、事業においてはかなり利益を出していました。創業当初から、住宅業界と自動車業界に対するコンサルティングを強みとしてきたのですが、その事業モデルが組織モデルともマッチしていたんです。

ですが、住宅、自動車に次ぐ「第3の柱」を作るため、新規事業をいくつか立ち上げた時に、ことごとくうまくいかなくて(笑)。

1本、2本、3本目の挑戦もうまくいかないとなって、今までの勝ちパターンの延長線上では、事業上の限界が見えてきているのではないか、という空気感がありましたね。

すると今度は、組織の限界も感じるようになってきて。現場では、採用も育成も手を尽くして頑張っている。けれど、どこか小さくまとまっているような、そんな気がしていました。

おそらく「リブ1.0」としては、もはや完成形に近い状態だったんですよ。けれども「リブ2.0」に向かっていくためには、新しい仕組みの元でエネルギーを注ぐ必要がありました。

こうして、事業と組織が相互に「負の連鎖」フェーズに進んでいたのですが、それを断ち切るためには、事業上の新たな勝ちパターンを作っていかねばならない。その至上命題に、新規事業の担当役員として取り組むことになりました。

結果的には、この新規事業と人事の担当役員を兼任したことが、組織改革の推進には良かったですね。

というのも、新たな事業を創るために、組織の次のモデルを示しながら、採用、育成、評価、活性化の仕組みをすべて抜本的に変えていくことができた。これはタイミングとして良かったと思っています。

会社の方針として「組織づくり」を最上位に掲げ、新卒採用を強化

まず、会社の方針として「案件づくり・事業づくり・組織づくり」における優先順位を変えました。

それまではマネタイズの観点から、「案件→事業→組織」の順に優先度を置いていましたが、これを「組織→事業→案件」という順に逆転したんです。

その上で、最初に取り組んだのは新卒採用でした。そこにリソースを割く上では、やはり社内のエース人材に関わってほしい。ですがそうした人材は、コンサルティングでも成果を出して粗利を稼げるので、現場でジレンマが生じてしまいます。

そこでまずは、会社として人づくり、組織づくりにコミットすることを全社に示しました。

それまでも新卒採用は行っていましたが、あるべき姿に向けて新卒採用にアクセルを踏むという意思決定を行い、毎年5名だった採用目標を15名に引き上げました。

外部のコンサルティング会社も入れて採用活動を回し始め、徐々に社内のメンバーを巻き込んでいき、最終的には30〜40人が採用に関わる体制を作りました。

弊社の新卒採用は、入社3~4年目の若手社員が中心となる「リクルーター」が鍵を握ります。学生さんと会ってから内定までの期間ずっと伴走をして、入社が決まるとお互いに涙するくらいの関係性になっていて。内定承諾率は、90%を超えています。

最初はやはり「稼ぐ仕事をしたい」というメンバーもいましたが、この2、3年継続してきた中で、今ではリクルーターを務めることが若手社員にとっての憧れにもなっていますね。

結果、この3年間の採用プロジェクトを通じて、22卒採用では10,000人のエントリーが予想されており、倍率が500倍を超えるくらいの狭き門となっています。

トレーナーを育成し、週1の1on1でトレーニーの内省を支援する

次に、人財育成の仕組みを整えていきました。以前から育成には取り組んできたのですが、2017年頃から「トレーナー・トレーニー制度」を設けることにしました。

この制度は、11段階のグレードのうちグレード4になるまでは、トレーナーが付いて一人前のコンサルタントに育てるという仕組みです。

トレーナーになるには、社内資格を取得する必要がありますが、大体入社3~4年目の社員が担っています。週1の頻度でトレーニーとの1on1を行い、内省のサポートを行います。

元々これに近い「ブラザー制度」というものがありましたが、形骸化してしまったんです。というのも、メンバーが必要とするサポートの種類として「業務支援」「精神支援」「内省支援」の3つがありますが、以前はほぼ「業務支援」が中心でした。

ですが本来は、プロフェッショナルなコンサルタントとして、自己内省のスパイラルを回すことが育成において重要です。そこで今は、トレーナーの役割を「内省をサポートすること」として明確に定義しています。

現在は全社で30人ほどトレーナーがいるのですが、そのトレーナー自身を育成する取り組みも行っています。30人を4グループに分けて、月1回、トレーナーセッションと呼ばれる会を開催しています。

こうしたトレーナー同士のコミュニティを形成したことが、育成面では大きかったと思いますね。

「役割給」を設けることで、組織づくりや事業づくりに関わる人を増やす

さらに、大きく変えたのが評価制度です。それまでは「業績給」の思想がかなり強く、既存の事業で案件を作っていくことが、一番評価される仕組みになっていました。

この制度においては、元々の稼げる部門で粗利を稼いだ方が評価されるので、新しい挑戦をすることが億劫になってしまいます。それを変えるために、職能に近い評価モデルへと制度を移行しました。

もちろん業績に対するパフォーマンスも大事ですが、職能の思想を取り入れることで「粗利を稼ぎづらい新規事業部門の人も、グレードの固定給があるから挑戦しやすい」といった評価の仕組みを作りました。

具体的には、11段階のコンサルタントグレードを設けています。25項目のスキルと11項目のマインド、30項目の基本動作に対してそれぞれ評点をつけてウェイトを掛け合わせた上で、合算された点数がグレードに紐づく形です。

加えて、以前はコンサルタントの上位の役割がマネージャーだったのですが、そこまでステップアップするための階段として「役割給」を設けました。

▼同社の評価制度(11のコンサルタントグレードと役割報酬)

これは内定者として知人を紹介するプロモーターから、新卒採用のリクルーター、育成を担うトレーナー、新規事業に貢献するビジネスデベロッパーといった「役割」に報酬を与える制度です。これによって、若手のうちから組織づくりや事業づくりに貢献する人たちを増やしていきました。

また新制度の運用にあたっては、1年間の移行期間を設けました。最初の半年は評価をせず試験運用の形にして、残りの半年は旧制度と新制度の両方で評価し、給与が高い方を採用する、という形で運用していました。

この期間中は、とにかくもう何度も何度も、制度内容の説明を繰り返し伝えていましたね。というのも、評価にまつわる不満の多くは、評価制度そのものではなく、評価制度の理解不足が原因なんですよ。

なので毎月の全社会議で新制度の説明を小出しにしたり、各チームや部門単位での質疑応答コーナーを設けたりして、理解の促進にはかなり時間を割きましたね。

そして実際の評価では、マネージャー以上で集まって全社員分の評価案を出し合い、「なぜこの人はこの評価なのか」を議論する評価調整会議を、四半期に一度、朝から晩まで1日かけて行っていました。

今現在は、だいぶ評価者の目線が揃ってきているので、評価サイクルを四半期から半期に変更して、評価者の負担を減らせるように運用を工夫しています。

エンゲージメント向上のため、経営と現場の期待ギャップを埋める

また、2017年に導入したモチベーションクラウドで、組織のエンゲージメントスコアを定点観測しながら、組織活性化のための施策を愚直に行ってきました。

私は、組織のエンゲージメントを高めるために、社員の満足度を追求しても仕方がないと思っていて。大切なことは、満足度の向上ではなく、経営が組織に求めている期待値と、社員が組織に抱いている期待値のギャップを埋めることだと考えています。

そのギャップの埋め方は、社員の期待を満たしていくというのも重要ですが、それ以上に経営が思う組織のありたい姿に社員の期待を合わせていく。それによってエンゲージメントを高めているのが、弊社の特徴です。

実際の施策は、数えきれないほどあります(笑)。アワードや合宿など、全社横断の取り組みもありますが、基本的には各チームが自分たちのチームや事業のスコアを見ながら取り組んでいますね。

例えば、「今必要なのは『変化し続ける意識』だから、この1ヶ月間はリモート環境下でのTipsを集めよう」といったチームもあれば、「『成功・失敗事例の共有』が低いから月1でナレッジ共有会をしよう」といったチームもあります。

私は、社内活性化の主体は、チームや個人であるべきだと考えています。ただ個別の動きだけで組織の一貫性がなくなるといけないので、経営からもフィロソフィーにつながるような施策を実行することで、全体のバランスを取るようにしています。

ミッションの実現に向けて、組織の内側から正のスパイラルを回す

私は、会社の愚痴や批判をする人がいた時に、それがカッコいい部類に入るのか、カッコ悪い部類に入るのかが、結構大事かなと思っていて。批判自体が悪いわけではありませんが、批判で完結することがカッコいい部類に入ってしまうことは良くない。

会社のことを批判しているだけの野党に対して、共感する人が増えていくと、組織って崩壊するんですよ。

正直、弊社も以前は崩壊しかけていたんじゃないかと思うんですね。今でも、もしかしたら会社の愚痴を言う人がいるかもしれませんが、それは自己批判をしているのと同じ感覚になっているはずです。そう思えるかどうかが、オーナーシップの一番大切な部分だと思っています。

結果的に負のスパイラルは止まり、諸々の批判は改善提案へのドライブに変わっていきました。善のスパイラルへと逆回転を始めたことで、今では、OpenWorkの総合ランキングにおいて、全15万社ある中で継続的にトップ10に入っています。

我々は「100年後の世界を良くする会社を増やす」を経営理念に掲げていますが、それに対する組織の理想に近づけているかというと、まだ折り返し地点かなと思っていて。

本当にクライアントを「100年後の世界を良くする会社」にするという意識もそうですし、世界を変えていくような会社の支援で成果を出しているか、そして自分たちが「100年後の世界を良くする会社」だと胸を張って言えるのか。これがひと続きになっているかと言われると、まだまだ道半ばですね。

ただ、ようやく内側は整ってきているので、これからどんどん外側にも広げていくことで、善のスパイラルをどんどん大きく回していこうと思います。(了)

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