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「エンジニアがいなくなった」組織の再出発!海外人材の採用で、組織に起きた変化とは

今回のソリューション:【Justa/ジャスタ】

〜エンジニアが「ゼロ」になってしまった組織が、海外人材も交えて多国籍開発チームを構築!離職率を「ゼロ」にすることができた事例〜

組織づくりは、時に急激な変化に対応することが必要とされる。特にスタートアップの場合、その変化が突然訪れることも稀ではない。

2009年創業のIT系スタートアップ企業、株式会社ギブリー。プログラミングをオンラインで学べるサービス「CODEPREP(コードプレップ)」やハッカソンイベントを運営するなど、エンジニアを支援するサービスをいくつか手がけてきた同社。

しかし実は、社内のエンジニアが全員辞めてしまい、「ゼロ」になってしまった時期があったのだという。

エンジニア支援の会社なのに、自社にエンジニアがいない」という状況を打開したのは、同社の採用、組織づくりのあり方であった。同社で取締役COO兼CHOを務める新田 章太さんに、詳しいお話を伺った。

新卒インターンから、新規事業を立ち上げ

大学3年生のころ、2011年の冬に弊社でインターンを始めたのが入社のきっかけです。最初は役員の山川のカバン持ちのようなことをしていましたが、4年生になったときに、自分で理系大学生向けのキャリア支援事業を社内で立ち上げました。そのときに事実上、入社も決まった形ですね。

その事業を起こそうと思ったきっかけは、就活中に様々な企業と面接をする中で、技術の有用性や可能性に気づかされたことです。

実は私は学生時代にエンジニアリングを学んでいたのですが、授業をあまり好きになれず…。熱心に勉強していなかったので、全然スキルはなかったんです。そもそも何でその技術を学ぶのかも、学生時代はよく分からなかった部分があって。

でも実際に企業と面接すると、授業でやったプログラム経験に食いつかれるんですよ。「何を作っていたんですか?」と話を掘り下げられたりして。

実際に仕事に役立つから面接で聞いているわけですが、一方で学生からしてみると、「授業で習ったことが仕事で活きる」「その技術がどれだけ重要か」ということを、知る機会が少ないと思うんです。

そのときに「もっと自分も早く気付いて、技術を磨いておけばよかったな…」と感じた原体験から、理系大学生に技術の重要性に気がつくきっかけを与え、エンジニアとしてのキャリアを考えてもらうという、キャリア支援事業を立ちあげました。

「エンジニア」の母数そのものを増やす!支援事業を幅広く展開

ただ、その事業を展開していく中でわかったのが、そもそも「エンジニア」になれる技術を持つ母数が少ないということです。

そこで、母数そのものを増やすために、プログラミングをオンラインでイチから学べる「CODEPREP」というサービスを作りました。こちらは今では、3万人ほどのユーザーさんに使っていただいています。

さらに、学生たちに技術の重要性に気づいてもらうため、2011年からはハッカソンイベントを大学と連携して開催しています。

2015年の10月には、企業がエンジニアに実務スキルを問うことで、エンジニアとの最適なマッチングを実現するオンラインスキルチェックツール「codecheck(コードチェック)」もリリースしました。

しかしそんな中で、「エンジニア全員が退職」

このように、エンジニアを支援するサービスを展開してきた弊社ですが、実は過去に社内組織に大きな問題を抱えていた時期がありました。

社内に、エンジニアが1人もいなかった時期があったんです。「人の会社のエンジニアは支援するけれど、自社内にはエンジニアがひとりもいない」という状態だったことがあって。

私が入社した2011年当時は、社内に数十名のエンジニアがいたんです。ソーシャルゲームが流行っていたので、弊社でもガラケー向けのゲーム事業を提供していたんですね。ただネイティブシフトが起こってきたこともあって、2012年ごろに事業撤退が決まったんです。

それを機にCTOも含めて、どんどんエンジニアの人が辞めていってしまって。気が付いたときにはエンジニア環境がないのに、エンジニア支援をしているという、いびつな状態になっていたんです(苦笑)。

ちょっとこの問題に本気で向き合わないといけないな、と社員一同で考え始めたのが、2013年のことになります。

2014年4月に私自身が役員になったタイミングから、具体的に組織改革を図りました。まず、弊社自体がエンジニアにとって理想の組織であること、エンジニアが活躍するチームとして自分たちがお手本になることを目指しました。

自分たちがただの仲介支援でいるのではなくて、きちんとロールモデルになる必要を感じたんです。

それを実現して初めて、企業様の成長や、エンジニアの雇用の支援ができますし、エンジニア教育系のコンテンツも自分たちで作ることができる。そのために、色々なことにチャレンジしましたね。

特に、自社内で若い人材を集めて、一緒にハッカソンを始めたことが大きかったです。日本人だけではなく、海外の人たちにも来てもらって、アプリを開発して製品化にトライするといった取り組みが転機となりました。

最初は「たまたま」始まった、海外人材の採用

そのように、地道に色々な試みを続けているうちに、ハッカソン絡みのご縁からカナダ人のUI/UXデザイナーが入社してくれたんです。狙って始めたと言うよりは、たまたま海外の人が入社してくれた、というのが、弊社の外国人採用のスタートでしたね(笑)。

ただ、GitHubに新しい情報を公開したり、codecheckに「この問題解いてみない?」というチャレンジ問題を出してみると、海外の人材の反応の方が圧倒的に早いんですよね。新しいものに興味関心があって、積極的に取りにくるのは、海外の方が多いです。

なので、気づいたら多国籍な開発チームができていた、というのがありますね。現在では15名程度の社員と、数名のインターン生が集まっていて、約半数が海外出身のメンバーとなっています。

▼チャレンジ問題を公開 海外人材の反応が圧倒的に早い

これを転機に、少しずつ社内の状況が変わってきました。その後も継続的に海外のエンジニアを募集して採用しているのですが、そのために使っている採用媒体は、「Justa(ジャスタ)」と「Wantedly」です。

Justaは、日本のスタートアップに特化した外国人向けの求人サイトです。これら2つの媒体で採用候補者の母集団を作り、codecheckを使って実際にコードを書いてもらって、弊社とマッチするかどうかを判断しています。

きっかけは、社員の1人がJustaで働く方と知り合ったことでした。最初は特にオプション機能も使わず、とりあえず求人を掲載してみたのですが、予想以上に反響があって。

海外メンバーと話していると、当時からグローバル展開を見据えて、社員がみんな英語を話そうとしていたのが良かったのかな、という意見をもらいます。

これまで、Justaを経由して社員3名、Wantedlyを経由して社員1名、インターン1名が入社しています。また、カナダのウォータールー大学とのつながりによりインターンシッププログラムを共同運営し、定期的に生徒をインターン生として受け入れています。このような他のチャネルから、3名が社員として入社しています。

海外からのエンジニアも沢山 多国籍な人材が共存できる理由とは

今のところ、日本人社員も外国人社員も、エンジニアの離職率はかなり低くなっています。自分自身はがっつり技術者をやっているわけではないのですが、1人ひとりが働きやすい環境を作るように心がけています。

個人的には、働きやすい環境を作る上で、ツールや制度の導入はあまり重要ではないと思っています。エンジニアに限らず一番大事なのは、「その人たちが正しいと思っている価値観をいかに受け入れられるか」、そして「それを会社の力に変えられるか」だと私は思っています。

「エンジニアの方が活躍するには、技術をこうすればいいよね」とか「AWSを使えばいいよね」とか、そういうことではないと思うんです。

僕たちの会社がなぜ海外人材に受け入れてもらえるのか不思議に思うこともあるんですけど、みんな「自分たちの文化を受け入れてくれるから」って言ってくれるんですよ。

日本はもちろん、アメリカから、インド、ベトナム、アルバニア、フィリピン、中国…様々な国籍の人たちが、弊社では働いています。何故その人たちが、同じ会社の中にいられるかと言うと、「いろいろな人の意見を尊重して、それを会社の価値に変えたい」と思っているからではないかと思います。

様々な宗教などのバックグラウンドがある中で、お互いにそれを理解することが僕は一番大切なことじゃないかと気づかされました。それは開発者っていう切り口もそうだし、国籍っていう切り口もそうだし、職種だっていろいろありますけど、重要なのはそういうことだと思います。

日本は、そういった姿勢は薄いって言われますよね。固まった価値観だとか、日本だからとか、うちはこういうやり方だからとか…。結構そういうところに縛られている会社って多くて、エンジニアの方や、海外の方がそれで悩んでいる人も多いと聞きます。

今後、よりいっそう海外人材を採用していくのであれば、「ベトナム人は安くて働いてくれますよ」という考えではなく、もっと1人ひとりを尊重して、一緒に働いていける環境をつくることに真摯に取り組んでいかないといけないと思います。

おそらく開発だけじゃなく、世界の市場がシームレスになっていく中で、そこをうまく会社を通じて表現していければいいなと思っています。そして、自社でうまくいった取り組みをノウハウとして公開していくことで、他社の方にも何か気づきを与えていけたらいいなと思っています。(了)

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