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日本企業がマーケティングで「失敗」する理由は?世界19,000社以上が導入・HubSpotのマーケ戦略

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〜世界のマーケターを支援するHubSpot。同社のマーケティング戦略について、ペルソナ作成から動画活用まで大公開〜

世界95ヶ国、19,000を超える会社が導入する「HubSpot(ハブスポット)」。同サービスは、新規顧客を効率的に獲得するためのインバウンドマーケティング、およびセールスプラットフォームだ。

サービスの提供者であるHubSpot, Inc.は、2016年9月8日に、正式な日本法人の立ち上げに踏み切った。

同社初の日本人社員であり、シニアマーケティングマネージャーを務める戸栗 頌平(とぐり しょうへい)さんは、「日本では特に、BtoB企業の多くが、見込み客獲得から購買までの『流れ』を作りきれていない」と語る。

今回は戸栗さんに、実際にHubSpotがどのようにマーケティング活動を行っているのか、ペルソナの作り方から動画の活用まで、詳しくお話を伺った。

ついに日本上陸。「HubSpot」に初の日本人としてジョイン

私は昨年、日本では第一号の社員としてHubSpot Japan 株式会社に入社しました。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

もともとベンチャー企業でインバウンドセールスやマーケターをしていたときに、英語で情報を調べていると「HubSpot(ハブスポット)」のサイトに当たることがよくあったんです。当時は、「面白いマーケティングを行っている会社だな」と思っていましたね。

いまは日本法人の立ち上げということで、13人ほどの日本人が在籍しています。まずは日本にいるすべてのお客様に対して、日本人のスタッフが日本語ですべてのサポートを行っていくことが目標です。

組織の形としては、本国の体制を踏襲しています。一番前にマーケターがいて、その後ろに営業担当、サービスの導入をお手伝いするスペシャリスト、そして最後が、お問い合わせなどに対応するサポートです。

私のポジションはシニアマーケティングマネージャーになりますが、日本のマーケティング活動を、すべてひとりで担当している形になります。

日本企業の多くが見逃しがちな、マーケティングのポイントとは

HubSpotで行っているマーケティングの流れは、「コンタクト数」をどんどん増やして充実させていくことからはじまります

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

そして、必要があれば、マーケティング・オートメーションを使ってそのコンタクトをナーチャリング(育成)していきます

マーケティング・オートメーションの解説記事はこちら

最後に、そうして獲得した、HubSpotに興味を示してくださっている「見込み客」を営業担当にパスして、彼らがクロージングしていきます。

マーケターが最初に着手するのは、いわゆるリードフロー、見込み客の流れを作る、というところです。

見込み客の集団は「ファネル(じょうご)」にたとえられることが多いですが、そのトップファネル、ミドルファネル、ボトムファネルを全部埋めていきます。

ファネル

多くの日本企業を見ていて感じるのは、このファネルの形が出来上がっていない、ということです。ボトムやミドルの部分に力が偏っていて、一番の潜在見込み客層が滞留するトップファネルが欠けているケースがほとんどです

なぜトップファネルの拡大が重要かというと、特にBtoBの場合、何もしないでいると「そもそも見つけてもらえない」ということが起こるからです。継続的に新規の顧客を創造し、獲得していくためには、ファネルの一番上を広げていく活動が不可欠になります。

手法より重要なのは、ペルソナとカスタマージャーニーの見極め

トップファネルを拡大する手法は様々です。基本的にはソーシャルメディアとビジネスブログ、そしてBtoCであれば、広告を出稿するケースもありますね。

しかし、その手法を選ぶ前にまずするべきなのは、ペルソナやカスタマージャーニーをしっかり戦略として作ることです。業界業種によってペルソナの趣向も異なるため、例えばブログが効かないケースもありえます。

アメリカですと、航空機のエンジンのような巨大な機械を作っているGE(ゼネラル・エレクトリック)は、ソーシャルメディアを上手く使っています。自社商品のインパクトのある写真をアップして、認知を拡大する手法を取っていますね。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

このように、ターゲット像であるペルソナが何に興味を持ち、どのような方法で情報を摂取するのか、ということを見極めることが重要です。それを元にペルソナとカスタマージャーニーを設定して、「このタイミングでは、こういうコンテンツに興味を持つだろう」という仮説を立てていきます。

予算より大切なこと。ペルソナ作成でよくある「勘違い」とは

ペルソナを設定する上でよくある勘違いが、「セグメント情報」だけでペルソナを作ってしまうことです。

例えば性別や年齢、住んでいる場所、役職、どのタイミングでニーズがどれくらいあるか、予算がどのくらいあるか、といった情報ですね。

これだけでは、実はペルソナ情報とは言えません。なぜならば、そこには心理的な要素が含まれていないからです。

なぜこの製品を導入したいのか、何を解決したいのか。ターゲットは予算があるから調べるわけではなくて、そもそもその「なぜ」があるから情報を調べます。その心理的な根拠を、必ず押さえることがポイントのひとつになります。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

また、ペルソナを細かく設定しすぎると、「果たしてその人は本当にマーケットにいるのか?」と不安になったりしますよね。ただ実は、ターゲットはそのペルソナに「どんぴしゃ」の人ではなくてもいいんですよ。

以前に、とある大手自動車メーカーが、ある高級車のペルソナを公開したことがありました。年収2,000万以上で、外資系に勤めていて…という。一般的に考えれば、そんな人は少ないと思うじゃないですか。

でも実際、そのペルソナ像に「憧れる」人もいるんですね。ペルソナの周辺にいる、まさにその人たちが、トップファネルのすぐ上にいる層になります

そのようなターゲットに、いまいちリーチしきれていない日本企業は多いですね。なんとなく「これが必要」ということを潜在的に意識している人、そういった人たちに届くための施策が、特にBtoB企業の場合、抜けてしまっているんです

HubSpot社のペルソナ像は、それぞれ違う悩みを持つ3人

HubSpotの場合には、大きなペルソナは3人います。マーケティングのマリーコーポレートのキャシーそしてオーナー(経営者)のオリーです。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

例えばマーケティングマリーは、SMB(中小企業)でひとりでマーケティングを担当しています。悩みは、ひとりなのでとにかく仕事の量が多いことです。そして、色々なツールを使っていて、あっちこっちでログインとログアウトを繰り返して、非常に困っています。仕事の効率を上げたがっているんですね。

一方でコーポレートキャシーはちょっと違っていて、わりと大きめの企業で部下を持っています。そして、部下にマーケティングをどうトレーニングしていいのかよくわからない、という悩みを持っています。

オーナーオリーの悩みは、経営者としてのものになりますね。そうすると、この3人に出すべきコンテンツは全く変わってきます

また悩みだけではなく、そのペルソナがいまファネルのどこにいるのか、ということも重要です。

例えばまだHubSpotを「認知していない」段階のマーケティングマリーであれば、「煩雑な仕事を効率的に早く終わらせよう!」というような、効率的に働こうという動画を作って、ソーシャルメディアで流します。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

表を作るようなイメージで、それぞれのペルソナの段階に応じたコンテンツを考えていきます。ここがなければ、それこそ流行りに載せられて「とりあえずこのマーケティング手法をやっていきましょう」ということになってしまいます。

マーケ手法のひとつとして今後活用が進む、「動画」の世界

どの手法を使ってどこに何を流すべきかということは、ペルソナや業界、地域によりけりです。ただその中でも「動画」は、近年、活用が大きく広がっている分野ですね。

単純に言うと、動画が持つ情報量は、静止画とは桁違いです。その差は数百倍、数千倍ともいわれています。また世界的なトレンドとして、2019年には世界中のインターネット・トラフィックの80%が動画になってくるということもいわれています。

そんな中HubSpotでは、マーケティングの部門の中にビデオチームがあります。弊社では、ブログ、ホームページ、eBookなど、様々なチャネルに流す動画をほぼ内製しています。

動画は、トップファネルの拡大にも有効な手法です。弊社で出している動画の中で最も再生回数が多いものは、おそらく「HubSpotとは?」という動画ですし、それからブランドイメージに沿った「おもしろい動画」もやはり人気がでます

▼「HubSpotとは?」

HubSpotの動画 Youtubeリンク

例えば、ブログを「非購読する」のページに、実は動画が入っているんですよ。「私たちから連絡を受けるメールを、本当に非購読するのですか?」といった内容です(笑)。

▼「非購読する」のページにある動画

HubSpotの動画 Youtubeリンク

あくまでも「マーケティング目的で」動画を活用することが必要

ただし、マーケターたちが気をつけなければいけないのは、あくまでも「マーケティング目的で」動画を活用することです。極端なことを言えば、「お昼にこれを食べました」という動画ではもちろんダメですし、しっかり効果測定することも大切です。

弊社では、その効果測定に「Wistia(ウィスティア)」を使っています。Wistiaを使うと、どんな人がどこまでこの動画を見ているのか、といった分析が簡単にできます。とある動画の中で、どこで人が離脱しているか、どこが繰り返し視聴されているか、という分析もできるので、コンテンツの最適化に役立ちますね

また、HubSpotとWistiaを連携させると、コンタクトリストにいる人がどの動画をどこまで見たか、繰り返して見たか、といった情報をデータに反映させることができます

わかりやすい例を言うと、弊社の社員インタビューの動画をひたすら見ている人ですと、採用に興味がある可能性が高いですよね。それでは、お客様にはならないね、といった判断ができるようになります。

このように、どんな媒体や手法を使おうとも、施策に対してきちんと検証を行うことがマーケティングの本質です数値データだけではなく、セールスにフィードバックをももらいながら、ペルソナやカスタマージャーニーをどんどん修正していきます。「ぐるぐる回す」ことが大切です。

日本にも、最先端のセールス・マーケティング手法を広げる

テクノロジーの発達で、消費者が情報を探す方法もどんどん変化しています。すると、マーケターも変わらなければいけないし、セールスも変わらないといけない。わかりやすく言うと、もうテレアポをしまくったり、飛び込み営業をするような時代ではなくなってきています。

ただ個人的には、日本企業はマーケティングに苦戦しているところも多いと思っています。まだまだ、引き合い営業でしかお客様を持って来られなかったり、飛び込みをやっているところも多いですね。

HubSpot Japan 株式会社の戸栗 頌平さん

そうした企業が海外の企業に負けてシュリンク(縮小)してしまうと、日本の国力そのものもシュリンクしていくだけですよね。そういったことにならないように、最先端のセールス・マーケティング手法をちゃんと広めていく。啓蒙活動ではないですが、そういったことに、弊社としても今後取り組んでいきたいと思っています。(了)

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