• 株式会社POL
  • 代表取締役CEO
  • 加茂 倫明

組織の全員を「船長室」に入れる経営を。急成長ベンチャーPOLの「PX」戦略

〜「勝てる組織」の要件とは? 入社前から退職後までの体験の質を高め、全員が経営目線をもつ組織をつくる、POLの「People eXperience」戦略〜

昨今、「PX(People eXperience)」や「EX(Employee eXperience)」などの略称で呼ばれる「従業員体験」が注目を高めている。

2016年9月に創業し、理系学生のダイレクトリクルーティングサービス「LabBase(ラボベース)」などを運営する株式会社POL。今年9月にはシリーズAラウンドで10億円の資金を調達し、ますます勢いに乗るスタートアップだ。

その成長の裏側には、創業当初から注力してきた組織づくりがある。同社では、ビジョンの達成や事業成長のために必要な「組織の要件」を明確にした上で、入社前〜退職後までの「PX」を設計。

「Employee Success」のための施策として、称賛と反省の場を分けた会議設計を行い、またバリューを体験から理解するワークショップなどを実施。全員が経営目線をもつ、強い組織を作り上げている。

今回は、同社代表を務める加茂 倫明さんと、PXを担当する山岸 慎治さんに、創業期から現在に至るまでの組織づくりの取り組みについて、詳しくお伺いした。

スタートアップこそ、創業期から「組織づくり」に注力すべき

加茂 僕は大学2年の時、2016年9月にPOLを創業しました。もともと、高校生の時に祖父を亡くしたことがきっかけで、起業したいと思い始めたんです。

当時、「ああ、人って死ぬんやな」という当たり前のことを自覚して、そうであれば「自分が生きた意義をなにかしら残したい」と思うようになって。その頃から、起業を考え始めました。

大学に入ってから共同創業者の吉田と出会い、「心から解決したいと思える課題じゃないと長続きしない」という話を聞いて、自分が解決すべき課題ってなにかな…と周囲を見回してみたんですね。

すると、大学院に進んだ理系の先輩が就活に困っているという状況があって。その課題を解決したいと強く思い、理系学生のスカウトサービス「LabBase」の事業を立ち上げました。

最初は事業のことしか頭になかったのですが、吉田から「加茂くんが今、経営者として成長するための一番のハードルは、同じくらい覚悟を決めた仲間がいないことだと思う」と言われて、それがすごく心に響いたんです。

吉田は、複数の企業で組織まわりの顧問をしていた経験から、「事業づくりと組織づくりは両輪で、そのどちらが欠けてもいずれ前に進めなくなる」ということを知っていました。

一方で、僕も数十年、数百年続くような会社を本気で作りたいと考えていて。それを実現するには、時代の変化にあわせて強い事業を生み続けられるような、強い組織を作るしかないんですよね。

スタートアップって、プロダクトやビジネスモデルの検証などで手一杯になりがちじゃないですか。もちろん、そこはめちゃくちゃ大事なのですが、同様に組織づくりもはじめが肝心だと思っています。なぜなら、組織のDNAの7〜8割は、創業初期に決まると僕は思うんです。

そうした考えから、創業した直後から組織づくりに注力してきました。

全員を「船長室」に入れて、経営視点をもった人材を育てる

加茂 初期の頃は、まず「自分と同じ目線で会社のことを考えてくれる仲間」を増やすことを意識しました。そこで実際に行ったのが「全員を船長室に入れる」ということです。

組織を一隻の船にたとえると、船長室で舵取りをしているのは通常、代表や取締役などの経営層だと思います。そしてメンバー1人ひとりが役割を持ち、自らのミッションに従って船を動かしている。

この体制は効率的である一方で、全員がそれぞれの役割を全うしていても、全体を俯瞰して見られるのは船長だけになってしまいます。

すると、どうしても部分最適が起こりやすいんですね。スタートアップのような人数の少ない会社でこれが起きてしまうと、誤った判断をしやすくなります。

そこで僕は、組織の船長室にあたる「戦略会議」の場に、学生インターンも含めた全メンバーが参加するというルールにしました。具体的には、工数の95%は自身の役割を全うするけれど、残り5%は全社戦略を考える時間に使うようなイメージです。

これによって「うちの部署も厳しいけど、今はこっちに人を張った方がいいな」といった全体最適の視点だったり、当事者意識が芽生えたりして、メンバーが経営目線を持つようになりましたね。

そして、創業から1年半が経った頃には、組織の行動指針となる9つのバリューを定めました。ただ、経営者である以前に「働く」という経験すら浅かった中で、どういう組織であるべきかを考えても正直わからなくて。

なので実を言うと、最初のバリューに関しては、こういう組織であればPOLは勝っていけそうか、という「ヨミ」だったんです(笑)。その解像度が上がってきたら、作り直そうと思っていました。

実際に、9つのバリューの本質を捉えて抽象化させたり、思考のアップデートを反映させたりしながらブラッシュアップして、1年後に3つのバリューを再定義しました。

▼同社の掲げるバリュー


僕は、バリューって正しいことを多く並べるよりも、バシーンと強く浸透することの方が大事なんじゃないかなと思うんです。なので、再定義した際には、より浸透する言葉で、かつ数を絞ることを意識しましたね。

勝つために必要な「組織の要件」を明確にし、施策に落とし込む

加茂 弊社では、人事の仕事を入社から退職までの「PX(People Experience)」と捉えています。そのPXを考える上で重要なのは、ミッション・ビジョンの達成や事業成長を目的として考えるということです。

僕らの場合、「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する」というビジョンを達成するためには、複数の事業を立ち上げる必要があるんですね。すると必然的に、フェーズの割にプロダクトが多くなりますし、その事業責任者になれる人材が必要です。

また、学生と接することが多いので、ポテンシャル人材を採用しやすい環境にある。それを踏まえると、キーとなる組織の能力は、経営者としてのマインドだったり、ハイポテンシャル人材に対する圧倒的な採用力や育成力になってきます。

そのような形で、ミッションや事業特性から「組織の要件」を明確にして、PX戦略に落とし込んでいきました。

▼組織の要件とPX戦略を整理した表


山岸 私は、2019年2月にPOLに入社しました。労務や評価制度づくりなどを経て、同年の7月からはPXを含めた人事全般を担当しています。

PXの戦略は、ミッション・ビジョンへの共感、成長意欲、組織愛を3本柱としています。

具体的な施策については、入社前から退職後までの一連のタッチポイントにおける体験を整理した上で、優先順位の高い施策から実行しています。

▼タッチポイントごとに施策を整理

たとえば、Entryにあたる採用では面接官トレーニングを行ったり候補者を社内イベントに招待したりしますし、今後、Graduationsにあたる退職では、卒業生を「POLマフィア」と呼んでミートアップを開催したいと思っています。

全員で成果を称える「BUMP!」振り返りは「場をわけて」行う

山岸 一連のPXにおいて、社員の体験を高めるのがEmployee Successです。その中でも、核となる施策が、毎週金曜に開催している「BUMP FRIDAY」という全社会議ですね。

BUMP FRIDAYでは、その週の成果を部署ごとに発表しています。責任者だけでなく色々なメンバーで発表担当を回しているので、場もマンネリ化しないですし、メンバーが全社視点をもつ機会にもなっています。

加茂 僕は、称賛文化を大事にしたいなと思っていて。人は誰しも、褒められると「また次、がんばろう」というモチベーションが湧いたりするじゃないですか。

なので、BUMP FRIDAYは業務報告ではなく、称賛の場として設計しています。各チームの発表に対して、必ず「BUMP(バンプ)!」という言葉で讃えるんです。

▼実際のBUMP FRIDAYの様子

山岸 今では、日々のSlackでのやり取りでも「受注しました!」「BUMP!」みたいな感じで使われていて、称賛文化が浸透していると思います。

また、社外の方も毎回お呼びしているのですが、来てくださった方々が弊社のファンになったり、選考につながったりする効果も副次的にありますね。

加茂 一方で、称賛だけでは組織は成長しないので、反省や議論の場は、きちんと別で設けています。僕は「場を分ける」ということが、結構大事かなと思っていて。

BUMP FRIDAYでは思いきり称賛して、チームのムードを上げることに集中する。一方で、週明けに行うチェックインでは反省をして、事業のディスカッションであれば事業部の会議で行います。

また、日々の振り返りは「Go forward」と「Look back」という仕組みで担保していますね。

「Look back」はいわゆる日報なのですが、Slackに専用チャンネルを作って、業務の振り返りや感じていることなどについて全員が投稿します。一方の「Go forward」は毎朝その日の業務予定を報告するものです。

この2つが対になることで、フィードバックの文化も根づいてきたと思います。

バリューを「体験」から浸透させる、独自のワークショップを導入

山岸 さらに、最近注力しているのが、バリューの浸透を目的とした施策です。

というのも、昨年のバリュー刷新の際にシンプルな文言に変更したことで、人によって様々な解釈が生まれてしまって…。また、普段から触れる機会がないと、どうしても形骸化してしまうと思ったんですね。

そこで現在、月1回、2時間ほどかけて、全メンバーを対象とした「バリューワークショップ」を実施しています。毎回、事前ヒアリングを通じてバリューに関する全社の課題を洗い出した上で、テーマとなるバリューを決めています。


この設計で特に重視しているのは、バリューを言葉ではなく「体験」として理解できるようにすることです。というのも、バリューの重要性を言葉で伝えても、理解には限界があると思っていて。

そこで導入したのが、ワークショップの事前課題です。たとえば「BHAG Driven= 達成困難な大胆な目標を打ち立て、高みを目指してやり抜こう」というバリューをお題にした回では、各メンバーに高い目標を立てもらい、当日までに達成してくるという事前課題を出しました。

この課題に取り組むことで、「大胆な目標」の水準に個人差があることに気付けますし、実際に達成できたかどうかが明らかな状態でワークが始まるので、達成できていない場合には「なぜやり抜けなかったのか」を深掘りしてバリューに向き合うこともできます。

また、ワークショップの後半ではバリューを体現している社外のゲストをお呼びして、他者の経験を通じて学びを得てもらう機会もつくっていますね。

先のフェーズにいる企業から未来の課題を予見し、対処していく

山岸 PXは重要な取り組みである一方、重たい業務でもあります(笑)。現在は僕ひとりでPXを見ているので、POLの組織づくりに賛同してくださる人がいれば、ぜひ一緒に取り組みたいですね。

加茂 組織って、経営者の鏡のようなものだなとも思っていて。僕は結構楽しいものや盛り上がるものが好きで、お調子者みたいなところがあるので(笑)、BUMP FRIDAYも全体でワッと盛り上がるような雰囲気になるのかなと思います。

逆に、経営者のタイプに合わないことをやろうと思うと、ちぐはぐになってしまうと思うんですよね。なので、自分に合う組織の形を模索するのがいいのかなと思っています。

創業から3年で、社員50人ほどの規模になってきた中で、組織の変化も感じていて。今後どのような問題が起きるかはわからないので、僕らの1、2フェーズ先にいる企業の経営者や人事の方に話を伺ったりしていますね。

その中で、次にくるのはマネジメントの問題かなと思っています。

現在は、8〜10人ほどいるマネージャー全員が、船長室の一員として経営目線をもっているので、その下にいるメンバーも全社目線を持って自発的に動けています。ですが、この階層がひとつ増えるだけで、マネジメントの難易度が跳ね上がると思うんですよね。

なので、全社的にいかに経営者意識を高めていくか、そしてマネジメント能力をいかにあげていくかを考えて、これからも挑戦を続けていきたいですね。(了)

SELECKからの特典

SELECKでは、これまで600社を超える先端企業の「ベストプラクティス」を取り上げてきました。

そこで得た知見を集め、今回、1on1の実践に役立つ情報をまとめた「1on1パーフェクトガイドブック」を作成しました。

実際の1on1ですぐに使える「74の質問集」も付録にありますので、ぜひダウンロードして活用してみてください。

「1on1パーフェクトガイドブック」の資料ダウンロードはこちら

メールマガジンのご案内

SELECKでは、新着インタビュー記事を中心に、最新のコンテンツをメールマガジンでお届けしております。

今後、メールマガジン購読者向けの限定コンテンツなども配信させていただく予定ですので、ぜひご登録いただき、お楽しみください。