- 株式会社フーディソン
- アライアンス推進事業部 統括
- 坂本 健
魚屋の店頭にロボット!?IT技術で変わる、小売マーケティングの未来図とは
今回のソリューション:【Pepper/ペッパー】
〜リアル店舗の集客施策にPepperを使った事例〜
株式会社フーディソンは、「築地市場を持ち歩く」がコンセプトの「魚ポチ(ウオポチ)」という、スマートフォン・PCから魚を注文できるサービスを展開する企業だ。2013年4月の創立以来、成長を続けており、既に1,700件の登録飲食店から日々注文を受け続けている。更に、スマートフォンアプリというデジタル領域だけではなく、リアル店舗である「sakana bacca(サカナバッカ)」という魚屋も始めた。
同社でその店舗マーケティングを手がけることになったのは、坂本 健さん。集客施策の1つとして大胆にも感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」を起用した。なぜ魚屋のマーケティングにPepperを使うことにしたのか、話を聞いた。
アプリと小売り事業、双方のマーケティングを手がける
2007年に大学院を卒業し、株式会社ディー・エヌ・エーに入社しました。まだモバゲータウンの会員数が200万人くらいのタイミングで、ユーザーの集客やプラットフォームを盛り上げるコンテンツを企画していました。ディー・エヌ・エーを辞めて、会社を立ち上げた後、代表の山本と出会い、フーディソンに参画することにしました。
弊社のビジネスは、「築地で仕入れた魚を飲食店に卸す」という卸売り事業と「sakana bacca(サカナ バッカ)」という魚屋を運営する小売り事業があります。卸売り事業の特徴は、魚という生鮮食品をスマートフォンから発注できる点で、ほとんどの発注が「魚ポチ(ウオポチ)」というスマートフォンアプリ経由になっています。
自分が担当しているのは、卸売り事業、小売り事業双方のマーケティング部分です。卸売りは、魚ポチを使ってくれる飲食店の開拓から育成までを数値から分析し施策を実行しています。
小売りに関しては、魚屋の仕組み作りからインストアマーケティングまでを担当しています。具体的には店舗のコンセプト、ネーミング、ターゲット、等々を頭と足を使って決めています。
例えば、店舗コンセプトを作る時は、実際の魚屋を見に行くのはもちろん、ターゲットの30代女性に愛されているL’OCCITANEやDEAN & DELUCAの実店舗を見に行き、イメージを膨らませていきました。小売り店舗を作るのは未経験でしたが、少しずつ手探りでマーケティングの手法を作っています。
小売りマーケティングにロボット・Pepperを使おう!
2015年2月、sakana bakkaの2店舗がオープンするにあたり、集客とリピーター獲得を目的としたマーケティングを考える機会がありました。ターゲットは感度が高い30代女性、小さい子どもがいる家庭であったため、先進的で子どもにもリーチできるマーケティング施策が必要でした。
その時頭に浮かんだのが感情認識パーソナルロボットPepperでした。Pepperの話題性と愛嬌のある人型ロボットの提案営業は、集客とリピート両軸に効果があるのではと思いました。
ちょうど友人が日本でも数少ないPepperのデベロッパーをやっていたこともあり、マーケティング施策への活用を本格的に検討し始めました。
アプリの実装も簡単。2日で3つのアプリができた
Pepperは、実装したアプリに基づいていろんなアクションをします。アプリを実装する上で最初にすべきことは、イベントの中でお客様に伝えたいことを洗い出してストーリーボードに落とすことです。
sakana baccaのコンセプトは「産地のおいしいを楽しく伝える」ことなので、具体的にどのようなことを伝えればコンセプトが実現できるかをブレーンストーミングしていきました。結果、3つのストーリーボードができアプリになりました。
まず1つ目は、魚の名前を当てるアプリです。Pepperに映し出される魚を見て名前を当ててもらいます。2つ目は、魚の目利き講座アプリです。映し出される魚を見せどっちが新鮮かといったような目利きをしてもらいます。間違えたら「お店のプロに聞きましょう!」といった誘導をして、お客様と店員のコミュニケーションも活性化するような仕組みも入れました。3つ目は、Pepperと記念撮影ができるアプリです。
お店の客層とPepperの想定効果からターゲットを子どもや若い奥さんに置き、とにかく魚に触れる楽しさを伝えようと思いました。これらの3パターンのストーリーボードをデベロッパーに伝えると、アプリの実装はなんと2日で完了しました。
イベントは2日間あったのですが、1日目はアプリを実装したエンジニアが現地に来られなくなってしまうというトラブルがあり、自分がPepperの操作をしました。結果、アプリをうまく実装できず、お客様が話しかけてきたことに対して、都度アナログで対応をする形になってしまいました。
2日目は、エンジニアに来てもらい、朝の短い時間で新規のアプリも作ってもらいました。Pepperに魚屋のような威勢の良い性格を持たせてオススメの魚を提案するというアプリで、お客様にも好評でした。
将来はPepperの顔認識を使い、お客様に提案営業をしたい
単純に楽しさを伝えるだけではなく、将来的にはお客さんを分析し最適な接客をするスタッフとして活用していきたいと考えています。sakana baccaが目指す魚屋は、昔ながらの魚屋さんです。魚屋のおじさんが常連のお客様に「今日はキンメダイがいいよ!」とか「新鮮なタイの見分け方は、身の張りで分かるよ。」といった提案営業をしていきたいです。
ただ、これを工夫なしで行うとマンパワーが必要で、全てのお客様にできるかといったら難しいです。Pepperには、画像認識機能があり、1回見た人の顔を記憶できるので、提案に必要なデータが蓄積されれば、マンパワーをかけずにお客様に提案営業をして、有益な情報を提供できると思っています。ロボットがお客様に応じてカスタマイズした魚提案ができるようになったらすごいですよね。
実店舗は現在3店舗ですが、今期で20店舗まで増やす予定です。今後もPepperを活用して新しい小売マーケティングのカタチを作っていきたいと思います!