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【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説

MCPとは?_SELECK

2025年中にAIエージェントが企業の労働力として加わり、生産性を大きく変革する」OpenAIのサム・アルトマンCEOがこう予言する中、その実現を支える重要な技術基盤である「Model Context Protocol(MCP)」が注目を集めています。

MCPとは、AIと外部ツールをつなぐための共通ルールのような存在です。従来のAIツールでは、AIと各システムの連携が大きな課題でしたが、MCPの登場によってこれが劇的に解決されました。

MCPが導入されたAIは、異なるシステム間で「共通の言語」を使ってデータを交換し、スムーズにタスクをこなせるようになります。

2024年11月にAnthropic社によって最初のMCPが発表されてからおよそ半年間で、すでに数千ものMCPサーバーが登場。OpenAI、Microsoft、Googleが相次いで採用を表明し、「AIアプリケーション開発の新標準」「AI実用化のための最後のピース」として確立されつつあります。

本記事では、MCPの基本概念から活用事例、導入時の注意点、さらには今後の展望に至るまで、初心者でも理解しやすく解説します。

<目次>

  • 「MCP」とは何か? 開発の理由から注目の背景まで
  • 「MCP」の中身は? ホスト・クライアント・サーバーの仕組みを解説
  • 主要なAI開発企業が続々と採用。「MCP」の急速な広がり
  • 私たちが「MCP」を活用するメリット・課題と注意点とは
  • 「MCP」導入で何が変わる? 実際の採用事例に見る導入効果
  • おわりに

「MCP」とは何か? 開発の理由から注目の背景まで

MCP(Model Context Protocol)は、米AI開発大手のAnthropicが2024年11月に発表したオープンプロトコルで、AIアプリケーションと外部のツールやサービスを簡単に接続するための技術です。

MCPを導入することで、AIと他のシステムとの接続が統一された方法になり、複雑な連携の手間が大幅に削減されます。

MCPを一言で表現するなら、「AIアプリケーション用の翻訳機」です。例えば、国際会議で様々な言語を話す人々が、同時通訳を通じてスムーズに会話できるように、MCPはAIと様々なサービスが「共通の言葉」で会話できるようにします。

【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説ここ数年で、ChatGPTやClaudeなどの生成AIツールは私たちの生活やビジネスに急速に浸透してきました。しかし、どんなに優秀なAIでも、最新の情報や特定のシステムにアクセスできなければ、その能力は限定的なものになってしまいます。

例えば、ChatGPTに「来週の会議の予定を教えて」と聞いても、AIモデルの学習データに含まれる情報だけでは正確に答えられません。最新のスケジュール情報を得るには、カレンダーアプリ等と連携する必要があります。

これまでは、こうした外部システムとの連携が大きな課題であり、開発者は連携したいシステムごとに独自の方法で接続を実装する必要がありました。

MCPはこれらの課題を解決するために生み出された技術規格です。AIと外部システムの「提供方法」と「呼び出し方」が共通化され、エコシステムを形成しやすくなったのです。

「MCP」の中身は? ホスト・クライアント・サーバーの仕組みを解説

MCPは「ホスト・クライアント・サーバー」という3層のアーキテクチャに分かれた構造により、標準化された手法で外部サービスと接続できます。具体的には以下の役割分担によって、MCPの仕組みが成り立っています。

  • MCPホスト:生成AIが搭載されているアプリケーション。AIチャットやコーディング支援ツール、カスタムAIエージェントなどがこれに当たる。
  • MCPクライアント:ホスト内で、特定のMCPサーバーと接続を管理する通信担当。複数のクライアントが異なるサーバーと同時に通信することも可能。
  • MCPサーバー:外部サービスの窓口として、AIがアクセスする機能を提供。例えば、ファイル操作やデータベース検索、外部APIとの連携などが含まれる。

Claudeなどの生成AI(MCPホスト)が「Google Driveからこの資料を探して」などと自然言語で命令すると、その命令はMCPクライアント経由でMCPサーバーに伝わり、MCPサーバーが実際の操作(API呼び出しや検索)を代行します。

【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説実際の通信の流れは以下のステップで行われます。

  1. 初期化:クライアントがサーバーに接続し、接続確認メッセージを送信
  2. 機能の照会:サーバーが対応するプロトコルバージョンと機能情報を返信
  3. 機能の確認:クライアントがサーバーの機能(リソース、ツール、プロンプト)を問い合わせ
  4. 機能の提供:サーバーが利用可能な機能のリストを返信
  5. リクエスト送信:クライアントが特定の機能を利用するためのリクエストを送信
  6. 結果の返信:サーバーがリクエストを処理し、結果を返信

【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説

主要なAI開発企業が続々と採用。「MCP」の急速な広がり

2024年11月のAnthropic社による発表後、MCPの普及は急速に進み、世界的なAI大手企業が相次いで採用を表明しています。ここでは、その一部をご紹介します。

OpenAI:Agents SDK・Responses APIで正式採用

OpenAIは2025年3月、OpenAI CEOのサム・アルトマンがMCP採用を発表しました。それに伴い、同社のAIエージェントSDKでMCPは即座に利用可能となり、5月にはResponses APIでもMCPサポートを正式リリースしました。

このように、AI最大手のOpenAI社がライバルであるAnthropic社提唱のMCP標準を採用したことは、AI業界全体における標準化の加速にもつながる重要な動きといえます。

この統合により、開発者はツールごとの個別対応から解放され、エージェント開発の工数を大幅に削減できます。さらに、統一構文による多様なツールの活用が可能となることで、AIエージェントの表現力や対応力が大きく向上することも期待されます。

Microsoft:WindowsがMCPをサポート

Microsoftは日本時間5月20日未明に開幕したイベント「Microsoft Build 2025」で、MCPをWindowsがネイティブにサポートすると発表しました。具体的には、

  • Windows11にMCPが組み込まれ、AIがファイル・アプリ・WSL等と直接連携できる基盤が整う
  • 導入は開発者向けプレビューから段階的に実施され、安全性を重視しながら進む
  • 将来的には、MCP対応アプリとAIエージェントの双方向連携が一般化する可能性が高い

といった内容がアナウンスされています。これによりAIアプリケーションやエージェントがWindowsやWindowsアプリケーションとMCPを通じて連携できるようになることが期待されます。

Google:Gemini・DeepMindでサポート表明

2025年4月、Google DeepMind CEOのデミス・ハサビス氏がX(旧Twitter)でGeminiモデルとSDKでのMCP対応を表明しました。「MCPは急速にAIエージェント時代のオープン標準になりつつある」とコメントしています。

続いて5月には、Gemini APIおよびSDKはMCPに対応し、開発者がMCPサーバーやオープンソースツールを簡単に利用可能に。I/O 2025の開発者向けキーノートでも、Gemini SDKがMCP定義をサポートすると改めて発表されました

AWS:AWS LabsによるMCPサーバー群の提供

Amazon Web ServicesもAWS Labsを通じて2025年5月よりMCP対応を一気に推進し、LambdaやDynamoDBなど多数のAWSサービス向けMCPサーバーを公開しました。

結果として、複雑な事前設定なしにAIエージェントがAWSの各種サービス(コスト分析、データベース、機械学習など)とリアルタイムで連携できるようになりました。

このように、業界最大手企業の参入により、MCPは事実上の業界標準として確立されつつあります

「MCP」を活用するメリット・課題と注意点とは

MCP活用のメリット

MCPによって標準化された開発が可能になることで、開発者は以下のようなメリットを得られます。

1. 開発効率の向上

MCPを使用することで、ツールごとの個別開発が不要になります。開発者は統一されたプロトコルを利用してサービス間の接続を行うため、開発時間が大幅に短縮されます。

2. エコシステムの拡大

開発者はMCPを活用して、既存のアプリケーションと新しいツールを簡単に組み合わせて利用できるため、技術的な障壁が低くなります。MCP対応ツールは複数のアプリケーションで共通利用できるため、エコシステム全体が拡大します。

3. セキュリティとプライバシーの強化

MCPでは、AIがツールを使用する前にユーザーの承認が必要となる仕組みが採用されており、データプライバシーも守られます。ユーザーの許可なしにデータが送信されることはなく、全ての操作は事前に確認できます。

【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説

MCP活用の課題と注意点

利用者と開発者、双方にメリットをもたらすMCPですが、一方で課題や注意点もあります。

1. セキュリティリスク

MCPを導入すると、外部ツールとの連携が進む一方で、プロンプトインジェクション攻撃やツール権限の組み合わせリスクが増えます。これにより、不正アクセスやデータ漏洩のリスクが高まる可能性があります。対策としては、各ツールのアクセス権限を最小化し、プロンプトのバリデーションを行うことが重要です。

2. 認証・アクセス管理

MCPは標準化されていない認証方法を採用している場合が多いため、異なるサーバー間で認証の不一致が生じやすいです。これによりセキュリティリスクが増加します。統一された認証基準を設け、シングルサインオン(SSO)を導入することが効果的です。

3. エコシステムの拡大

急速にMCPサーバーが増える中で、サーバーの品質や信頼性にばらつきがあります。これが原因で、連携できないツールやデータ不整合が発生する可能性があります。対策としては、公式サーバーを優先的に選び、定期的なアップデートとサポートを確認することが必要です。

4. 運用コスト

MCPを利用することで、データ転送や通信コストが増加する可能性があります。特に大量のデータを扱う場合、コストとパフォーマンスのバランスに注意が必要です。必要最小限のデータ転送を心掛け、通信頻度の調整を行うことでコストを抑えることができます。

「MCP」導入で何が変わる? 実際の採用事例に見る導入効果

こうして利用が広がるMCPを、私たちは実際にどのように活用できるのでしょうか。MCPの先進的な活用事例をご紹介します。

MCPの搭載によって、AIによるタスクの実行までを可能にした「Glean」

Glean」は、Google出身のエンジニアたちが立ち上げたスタートアップで、企業向けの社内検索/ナレッジ発見ツールを提供しています。

Google Workspace、Slack、Notion、GitHub、Salesforceといった社内SaaSを横断して検索できることが特徴で、いわば「社内版のGoogle検索」を提供していました。

そんなGleanにMCPが導入されたことで、「情報を探す」だけでなく「タスクの実行」までが可能になったといいます。具体的には、

  • チケット作成:Glean内のAIに「この内容でJiraにチケット作って」と頼むと完了
  • データ取得:「このお客様の最新ステータスは?」→CRMと連携して即表示ファイル共有
  • 情報共有:Gleanで探した文書をそのままAI経由でSlackに投稿

といったことが可能になりました。つまり、社内のツール操作がGleanだけで完結するようになったといいます。

MCP搭載のAIアシスタントを社内の40%超が利用する、米フィンテック企業

Block, Inc. は、旧名「Square」として知られるアメリカのフィンテック企業で、モバイル決済端末やPOSレジ、Cash Appなどを提供しています。現在は決済に加え、暗号資産・音楽・開発者支援など複数の事業を展開しています。

そんなBlock社は、AnthropicのClaudeをベースにした社内AIアシスタント「Goose」を構築。社内の40%以上(約4,000人)がGooseを利用しており、MCPサーバー経由でデータベース・コード・社内情報にアクセスしています。

【AIの新標準】Model Context Protocol(MCP)とは? 基本的な仕組みや活用メリットを徹底解説MCPの導入により、AIが複数の社内ツールやAPIに安全・統一的にアクセスできるようになり、全社的な生産性の向上に貢献しているといいます。

Cursor × MCP × Cloudflare の連携で、開発フローが一気通貫に

Cursorは、AIを搭載した次世代のコードエディタ(VSCodeライクなUI)で、開発者が自然言語で「コード作成・修正・実行」まで行えるAI開発環境です。このCursorは、MCPを活用して「AIに開発作業を実行させる」世界を実現しています。

具体的には、MCPと、MCPサーバーのインフラ基盤であるCloudflareの組み合わせを導入したことで、開発フローの「実行・検証・連携」を一気通貫で、高速・安全にこなせるようになりました。

「コードを書く」だけでなく、「テスト・確認・改善・実行」までもAIに自然言語で任せられる時代に突入しているということです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。MCPによってAIの可能性が大きく広がります。これまでのAIが「答える」だけの存在だったのに対し、MCPの登場で「実行する」AIへと進化すると言うことができるかもしれません。

今後、MCPに対応したAIツールとサービスがさらに増え、AIと人間の協働がより密接になっていくことが予想されます。AI活用に取り組むにあたって、MCPの理解のために今回の記事が参考になりましたら幸いです。(了)

文:加藤 智朗
編集:舟迫 鈴(SELECK編集部)

 

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