- 株式会社ジークレスト
- 新規開発事業部 エンジニアリーダー
- 木原 康剛
「神降臨タイム」は1人作業に集中!技術者の生産性を最大化する、社内制度の作り方
〜エンジニア、デザイナーの業務効率を上げるには? 「現場発信」で次々に新しい施策を実行する、ジークレストの取り組みを紹介〜
生産性の向上、業務効率化、といったことが叫ばれるようになって久しく、多くの企業で具体的な取り組みが実行に移されている。
そんな中、女性向けのスマートフォンゲームを展開する株式会社ジークレストでは、エンジニア・デザイナーといった技術者の生産性を高めるために、現場発信で様々な取り組みを行っている。
例えばデザイナーは、Adobe Experience Design(Adobe XD)の導入と、「デザインプロセスを可視化する」チャットルームの運用によって、ムダなミーティングを削減。
また、「神降臨タイム」という個人の集中タイムによって、技術者が「ノッてる」時間に邪魔をされない仕組みを設けたのだという。
今回は同社の新規開発事業部にてリードUIデザイナーを務める佐藤 和貴さんと、同じく新規開発事業部のエンジニアリーダーの木原 康剛さんに、技術者の生産性を高める取り組みについて、詳しくお話を伺った。
クリエイター、エンジニアの現場から「生産性向上」を発信
佐藤 僕は現在、新規開発事業部でリードUIデザイナーとして、ゲームのUI、UXの設計を行っています。
また平行して、クリエイティブ組織を会社全体から見る「クリエイティブボード」の一員も務めています。こちらでは、クリエイターのより良い体制や環境づくりに関わっています。
弊社の場合、クリエイターと言っても多様なメンバーが含まれていて。デザイナー、イラストレーター、アニメーター、シナリオライター等、合わせて80名ほどが在籍しています。
木原 僕は2017年に、中途入社のエンジニアとして新規開発事業部に入りました。現在はエンジニアリーダーとして、自分で実装もしつつ、設計や実装方針の策定、マネジメントにも関わっています。
▼【左】木原さん 【右】佐藤さん
エンジニアの人数は今30名ほどなのですが、クリエイティブボードと同じような全社的な横断組織を作っていこうとしている段階です。
佐藤 クリエイターやエンジニアの生産性向上に関しては、様々な取り組みを行っています。その中で弊社の特徴としては、「現場から提案して進めていく」流れが強いことです。
木原 「これやりましょう」と社長に提案して、「いいね、じゃやろうか」という感じで始まったりと、新しいことを始める時の、意思決定が非常に早いですね。
Adobe XDの導入で、UI設計業務の生産性が「2倍以上」に
佐藤 新しいツールを導入するとしても、現場での判断が強いですね。例えば昨年から使い始めて、生産性向上に大きな役割を果たしているのが、Adobe XD(以下、XD)です。
元々、個人的に使用していたのですが、プロジェクトの中で導入をしたほうがいいと提案し、今ではデザイナー以外だけでなくプランナーも使用しています。
XDは、Webサイトやモバイルアプリ、プロトタイプのUI/UX設計等に使用されているデザインツールなのですが、とにかく「メンバーとのデザインの共有」に長けているんです。
以前は、UIをチームで確認する際には、Photshopで作成した各画面のサンプルを印刷して、机の上に並べてディレクターやリーダーと話をしていました。
ですがXDを導入したことで、できたものをURLひとつで共有できるようになりました。
▼「Adobe XD」(サンプル画像)
各自がスマホ上で画面を簡単に確認でき、触って確かめられるので、会議中に意見をもらってその場でどんどん直していく、といったこともやっています。
これだけでも、作業にかかっていた時間が半分以下になりました。
また、他のUIデザインツールと比較してXDが特に良いなと思うのは、アップデートが早いことです。
最近の神アップデートで言うと、他ソフトとの連携がどんどん強化されていて、特に同じAdobe製品であるIllustratorやPhotoshopとの連携は、非常にスムーズになりました。
例えばPhotoshopで作ったデータをXDに持ってきて、XD上で更新すると、Photoshop側にある元データも更新されるんですよ。
ライブラリ的に素材を管理することができるので、常に最新のデータを扱うことができます。
今まではPhotoshopやIllustrator等で画像を制作して書き出して、他のツールに入れ込んでいたのですが、今は編集すれば他のツールにも自動的に反映がされます。
また、自分だけではなくチームメンバーにも自動で反映がされているので、共有の手間が省けています。社内でも徐々に、XDにシフトしていく人が増えていますね。
木原 XDは、エンジニアもかなり見ますね。「このボタンを押したらここに飛ぶ」というような遷移が聞かなくてもわかるので、実装する側としても非常に助かります。
ムダな「共有ミーティング」を無くすためのチャット運用
佐藤 また、ツールだけではなく、日頃からデザイナーの仕事の過程をすべてチャットツール上で公開する取り組みを、2018年2月頃から始めました。
もともと、職種間の情報共有をもっと効率良く、生々しくできるんじゃないか、という課題感があったんです。
そこで、チャットツールの特定のルーム上で、デザインの過程をプランナーやエンジニア等、デザイナー以外でも誰でも見られるようにしたんです。
デザイナーがリアルタイムに「今こういうのを作っています」「こういうことを考えてます」といった独り言をつぶやいたり、作成途中のデータを流したりしています。
▼実際のデザイン共有チャンネルの様子
以前は、制作したデザインを、1時間使ってミーティングで口頭共有していました。
しかもその時に「ちょっと違うね、やり直そう」となったら、「来週また1時間ミーティング取ります」という感じだったんです。
でも、実際のデザイン過程を見ていれば、常に情報共有がされているので、違うと思ったらリアルタイムに意見を伝えることができます。
デザイナーがつくったデザインに対して、「早速実装してみた!」、とエンジニアがアップロードするという良い連鎖も生まれています。
実際、このチャットルームが立ち上がったことで、共有のためのミーティングはすべて無くなりましたし、手戻りも防ぐことができるようになりました。
「神降臨中!」のぼり旗で、集中タイムの業務の中断を防ぐ
木原 このようなチャット活用を始めたのとほぼ同じくらいの時期に、新しく運用を始めた社内制度があります。単に僕が「こういう制度がほしいな」と思って提案したのですが、「神降臨タイム」というものです。
神降臨タイムは、自分のデスクに「のぼり」を立てることで、「この1時間は集中したいので、あまり話しかけないでください」ということを周りに伝えることができる仕組みです。
▼神、降臨中!!
普段はのぼりはしまっておいて、「あ、神来た!」となった時に、立てるんです。
背景としては、エンジニアリーダーになって、人に話しかけられることが増えたんですね。ただ自分のプログラミング業務もあるので、「今はノッてるからあと30分待ってくれ」といったタイミングがあるんですよ。
それこそスポーツ選手で言う「ゾーン」みたいな感じで、神が降臨したかのように集中できる時があって。そうした時に他の事に意識が削がれるのを、少しでも防止できたらいいなと。
そもそも人って、普通の状態から集中に入って「最強!」(笑)みたいな感じになるまでに、時間がかかりますよね。例えば試験勉強なんかも、始めてからノッてくるまでが大変じゃないですか。
一説には、最も集中できる状態に到達するまでに15分が必要と言われていたりもするので、だからこそ、その時間は逃すべきではないなと。
導入当初はエンジニアだけの制度でしたが、今は他の職種の方からも欲しいという声をいただいて、クリエイターのメンバーにも拡大しました。
佐藤 実際に僕も夜2時間悩んでいたことが、朝の5分で解決する、みたいな時があるので。
そうした、「より集中ができて生産性が上がっている」瞬間を最大化していければ、もっと効率的な働き方ができるんじゃないかと思っています。
特にリーダーは沢山の人とコミュニケーションを取るので、自分の作業時間が少なくなりがちです。そういった人こそ、神降臨タイムをうまく活用して欲しいと思っています。
生産性を高めるためには、チームビルディングも重要
佐藤 また、生産性ということで言うと、互いに相談しやすく、かつ技術的なことを追求し合えるようにチームワークを高めることも重要だと思っています。
例えばクリエイター間では、「GUA」という取り組みを行っています。これは「グラフィック・UI・アニメーション」の略なのですが、希望者が一緒にランチをしながら、社員のLTを聞くという取り組みです。
最近は、アートディレクターから「魅力的なキャラクターをつくるために気をつけていること」、UIデザイナーから「運用の業務効率化のコツ」といった発表がありました。
デザイナー、シナリオライター、イラストレーターなど様々な職種が参加していて、自分と異なる職種のLTも積極的に聞いています。
同じ社内にいても他の職種だと具体的にどういう仕事をしているのかわからない、ということもあるので、職種間の理解にも繋がっています。今は月1回実施していて、毎回50名ほどが参加していますね。
木原 エンジニアも、「エンジニアTT(Team Team)」という、全エンジニアを飲み会のような形で集めて、LTをするイベントを実施しました。
ここは必ずしも技術の話だけではなくて、テーマは自由なんです。このあいだは「お城」についてLTした人がいて、全国おススメ城ランキングを発表したりしていました(笑)。
他にもエンジニアの自己紹介ブックを作っていて、互いの価値観や、好きなものがわかるようにしています。これがあると、会話のきっかけになり、話しやすさがぐんとアップします。
▼エンジニアメンバー全員が載っている「自己紹介ブック」
弊社はこうした取り組みに対しては、必ず社員アンケートをとっています。満足度や要望を吸い上げるものなのですが、エンジニアTTの満足度は100%でした。
今後も現場の声を吸い上げながら、みんなでより良い制度づくり、組織づくりができたら良いなと考えています。(了)