- 株式会社いつも.
- 執行役員 人事総務部管掌
- 義家 聖太郎
業務委託の「プロ人材」がボトルネックを解消!現場で価値を発揮する、専門家の登用法
〜マーケティング、採用、広報etc…. 「現場で手を動かしてくれるプロフェッショナル」の登用により、事業と組織成長を加速させた事例〜
フリーランスや複業の広まりなど、働き方が多様化する中、専門知識を活かして現場で価値を発揮する業務委託のメンバー、いわゆる「プロ人材」を登用する企業が増加している。
ECマーケティング支援を展開する株式会社いつも.では、急速な事業の拡大に伴い、「新しいサービスのアイデアはあるのに、実現する人がいない」といった課題に直面。
そこで2018年より、それまでは技術職のみだった業務委託メンバーの採用領域を拡大。マーケティングや広報、採用など様々な領域で、プロ人材を登用してきたという。
結果的に、それまで自分たちだけでは「やりたくてもなかなか着手できなかった」自社ブランディングや、専門的な知識を必要とするプロジェクト推進が可能に。事業成長に大きく貢献するとともに、刺激を受けた社員のプロ意識が向上する、といった効果もあったそうだ。
今回は同社の執行役員で、人事総務を管轄する義家 聖太郎さんに、具体的なプロ人材の活用事例、また採用のコツや受け入れ側がとるべきスタンスについて詳しくお話を伺った。
「ECのすべて」を展開する組織の「プロ人材」登用
いつも.は、ECに関するすべてのソリューションを扱っている会社です。事業戦略を立てるところから、Webデザイン、集客と企画、商品登録やカスタマーサービスといった実務まわりまで、すべて展開しています。
お客様に関しても、業種・業態、企業規模で見たときに「満遍なくいらっしゃる」ことが特徴です。地方で10人以下で長く続けていらっしゃるお店さんから、グローバル企業までですね。EC事業を始めたときから、月商数億に至るところまでずっとパートナーでいられる、ということが弊社の特徴だと思います。
そんな多様なお客様をサポートするために、現在はバックオフィスを含めるとおよそ16のチームが動いています。従業員数は200人ほどなので、チームの数が多いですよね。
さらに、2017年からはいわゆる「プロ人材」として、様々な専門領域の方に業務委託としてご参画いただいています。最初はエンジニアやデザイナーといった技術職がメインでしたが、2018年の末くらいから、マーケティングや広報、採用など、職種が拡大していき、現在に至ります。
私は2013年に入社しましたが、当時はまだ17名の組織だったんですよ。最初は営業として入りましたが、組織を拡大していく上で採用がボトルネックになっていて。だったら、前職で採用の経験があった僕が人事課を作るか、みたいな感じでスタートしました。
現在は、おもに採用、企画周りの責任者をしています。プロ人材の登用に関しては、初期は人事側が主導で行っていましたが、いまはもう私の手は離れて、現場が動いているケースが多くなりましたね。
専門性の高い領域をプロに任せ、事業スピードを加速させたい
プロ人材を登用するようになった一番の理由は、自社の顧客数や認知度が上がり、事業のスピードを加速する必要があったことです。
我々がいるEC業界は、どんどん新しいテクノロジーが出てきたり、楽天やAmazonといったプラットフォーム側が突然ルールを変えたり、とにかく変化が早いんです。また市場の成長スピードも早く、会社がそれに追いつくためには、全体のスピード感を上げていくことが重要になります。
そうした背景の中で、数年前から「新しいサービスのアイデアはあるのに、それを実現する人がいない」といった問題が起こり始めていました。会社の思いとスピードに組織をどう合わせていくのか、ということが課題だったんです。
また世の中的にも、デジタルの世界が細分化されていく中で、1つひとつの領域における専門性が非常に高くなっていますよね。例えば「SNS広告」とひと言で言っても、様々なプラットフォームがある。それを社員だけで全部追いかけていけるか、というと、やはりそんなことはなくて。
我々は、EC全体のブランディング、販売に関してのプロフェッショナルではあるものの、例えばSNS・動画のようなその「手段」に関してはそうではない。
であれば、自分たちはクライアントを成長させることに特化し、細分化されたより専門性の高い領域はプロに任せることで、チームとしてのパフォーマンスをより高められるのではないか、と考えるようになりました。
加えて、時代的にもどんどん働き方が多様化してきて、その流れとしても良いのではないかなと。このような背景から、色々な領域で、専門知識のある方を登用していくようになったんです。
広報から大規模プロジェクトまで、様々な領域でプロ人材が活躍
実際に、いまご活躍いただいている方のひとりは、採用ブランディングを担当していただいています。
採用ブランディングって、皆さん「やりたいけどなかなか着手できない」領域ですよね。しかもやるとなると、現場のエースクラスのような優秀な人材を登用したい、けれどやはり事業で稼ぐほうが大切なのでなかなか実現しない…ということも多いと思います。
弊社でも同様で、であれば、プロ人材の方に中に入っていただいて進めよう、ということになりました。大きな戦略自体はこちらで考えて、ガイドラインを作り、施策の実行部分を切り出して業務委託として請け負っていただいています。
具体的には、内向き・外向きの採用広報の活動を両方担っていただいています。コーポレートサイトのディレクションや、採用ブログの運用、そのために必要な社員へのインタビューなどですね。
▼同社の人事ブログ 「イツモア itsumo more」
一番良かったのは、「第三者視点」で見ていただけることです。やはり中にいると、自分たちが外からどう見られているのか、自分たちの良いところは何なのか、ってわからないんですよね。そこをアドバイスいただけることが非常に良くて。
実際、入っていただき、コーポレートサイト等を改修していただいてから、サイトの流入も増えています。先日、弊社の副代表の書籍にかなり強い反響があったのですが、そうしたときの「受け皿」を会社側で用意しておけたのも良かったですね。
他にも、大手消費財ブランドさんの案件で、10名ほどのチームで動いているものがあるのですが、こちらにはデザイナー、SNSのプランナー、そしてメディア構築のディレクターがプロ人材として入っています。
この案件は、商材が美容系なんですね。ディレクターの方は美容専門のディレクションができる方なので、我々も本当に安心してお任せできています。
法律のことだったら弁護士さん、じゃないですけど、美容のことだったらこの人、という感じで、専門の方の知見を借りられるということはとても大切で。
上記のような採用、実際のプロジェクトの他にも、業務効率化を専門とされる方にご参画いただき、業務の工数が半分以下になるなど、様々な領域で成果が上がっています。
プロ人材を登用するか、社員を採用するか…どうやって決める?
例えば「採用ブランディングやりたいよね」となったときに、内部登用するか、中途で採用するか、プロ人材か、といった選択肢がありますよね。そこで判断基準になるのは、スピードと専門知識かなと思っていて。
何かをやりたいと思ったときに、社内でそれができる人材がスピーディに動ければ、兼務でも良いですよね。ただ、それが叶わないのであれば採用するか、プロ人材か、ということになる。
そこで次に考えるのが、採用したあとに、すぐその方の能力を発揮できる仕事なのか、それとも、うちの文化をある程度は汲み取ったあとでないと難しいのか、ということです。
依頼したい業務が高い専門知識を求められるもので、かつ、しっかりと切り出して依頼できるものであれば、プロ人材の方が良い。逆にこれから一緒に文化を作っていきたい、将来はマネジメントを期待したい、というポジションであれば、社員を採用したほうがいいかなと。
前提として、やはり社員には入社した先のキャリアまで考えて入ってほしいと思っているんですね。逆にいうと、なにかプロジェクトに入って持っている知見を使い切ったあと、どう社内で活躍していくか、ということです。
弊社はプロジェクトもクライアントも様々なので、幅広い領域に興味がないと、社員として長く活躍してもらうことは難しいです。さらにEC業界の場合、経験者がまだまだ少なく、未経験者の採用も多いので、ある程度は「育てる」フェーズが長くなります。
上記のような背景を踏まえて、毎回、最適な人材のアサインを決めています。プロ人材の方のニーズは、最近では現場から上がってくることが多いですね。その後、要件を固めたら、プロ人材マッチングサービスの「CARRY ME」や複業プラットフォームの「コデアル」、その他の業務委託を紹介いただけるサービスを通じて、人材を見つけています。
プロ人材が活躍するためのコツは、採用と現場の受け入れにあり
これまで何十人も来ていただいた中で、長くお付き合いさせていただいている方の特徴を現場に聞いてみたんですよね。するとほぼ一様に、「一定間隔でご自身から『ちゃんと価値を発揮できていますか』と聞いてくださる」ということが挙がっていて。ここはやはりプロだなあと。
プロ人材の方にお願いする一番のメリットは、第三者視点で、かつ一緒に手を動かして価値を発揮いただけることだと思っていて。これは、外部のコンサルや顧問のような方では実現できない部分です。
また、現場で意図的にやっていることとして、なるべくプロ人材の方同士の連携を作っています。そのプロ同士の会話を現場が聞くことで、モチベーションやプロ意識がかなり上がるんですよ。
そして、プロ人材の方がしっかり活躍できるようにするためには、カルチャーや仕事のスタイルがフィットするかの見極めと、現場での受け入れが大切だと思います。
まず採用する際には、なるべく普段から採用をしている人事も入るようにして、カルチャーフィットの部分を見極める。またその際に、プロ人材の方の仕事のスタイルが、自社と合っているのかどうかを確認することがすごく大事ですね。
例えば「仕事のスピードが早い」と言っても、「1日」を早いと思う人もいれば、「1時間」を早いと思う人もいる。仕事の仕方って、それぞれの企業文化があって、それはもう良い・悪いの世界じゃないと思っていますので。お互いにそのフィットを確認するための、トライアル期間を設けるなどすると良いですね。
また、受け入れる担当者側が、プロジェクトや会社について、背景をきちんとオリエンテーションすることはすごく大切です。
例えばデザインだけを依頼するとしても、それにあたっての背景や思いを汲んでいただけるだけで全然違うと思うんですよ。「この素材とテキストでデザインお願いします」でもできてしまいますが、そうではなくて、最初、1時間でも時間を作って、プロジェクトの成り立ちやメンバーについてしっかり話しておく。そうすると全然アウトプットも違うんですよね。
「プロ人材になる前の人」が活躍できる場を作っていきたい
我々もたくさんのプロ人材の方にお願いしてきましたが、正直、短期間で終わってしまう場合もあります。そこはもう、自社と長く付き合ってくれるプロ人材の方を見つけるまで、トライアンドエラーをするしかないかなと思っていて。
もし1人目が難しくても、プロ人材に依頼すること自体がダメなのではなく、たまたまその人と合わなかっただけ。プロ人材自体を否定しないことが大事です。
今回の新型コロナウイルスの件もあって、雇用形態も含めて働き方自体がさらに変化していますよね。もともと弊社では多用なワークスタイルがありましたが、よりそれを推し進めていくことが大事だと思っていて。
特にプロ人材の方で言うと、「すぐにプロ人材としては活躍はできないけれど、いずれは挑戦したい」と思っている方って大勢いると思うんですよ。その方たちに活躍していただけるようなフィールドを用意したくて。
これが実現でれば、我々が得るものも多いですし、その方たちもより次のキャリアが築きやすいのではないかなと。今後は弊社で、そういった「プロ人材になる前の方」が活躍できる場を作れたら面白いですね。(了)