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- 林 雅也
スニダンのプロダクト品質とDXを向上させた「秘密部隊」とは【SELECK miniLIVEレポート】
「SELECK miniLIVE」は、注目企業からゲストスピーカーをお招きし、X(旧Twitter)スペース上で30分間の音声配信を行う連載企画です。
2024年5月15日に開催した本回のゲストスピーカーは、株式会社SODAの執行役員 CTOを務める林 雅也さん。
同社が展開するCtoCフリマアプリ「SNKRDUNK(スニーカーダンク、通称スニダン)」は、スニーカーから始まり、トレーディングカードやアパレルにも取扱いを拡大しながら、現在は毎月600万人以上が利用するサービスへと成長を遂げました。
▼SNKRDUNK(スニーカーダンク、通称スニダン)
今回は、その成長を支える「秘密部隊」である「QAエンジニア」について、そのユニークな配置の仕方や、社内へのポジティブな影響についてお話を伺っています。(聞き手:株式会社ゆめみ / Webメディア「SELECK」プロデューサー 工藤 元気)
本記事は、2024年5月15日に開催したSELECK miniLIVEの生配信を書き起こしした上で、読みやすさ・わかりやすさを優先し編集したものです。当日の音声アーカイブはこちらからお聞きいただけます。
クロスボーダーなCtoC取引を実現するスニーカーダンク
工藤 皆さんこんにちは。本日は、「SNKRDUNK」を運営するSODA社のCTOである林さんにお越しいただいています。
林さん、スニダン、CMなどでご存知の方も増えてきていると思いますが、まずはサービスの概要や特徴を教えてください。
林 こんにちは、本日はよろしくお願いします。
スニダンは、スニーカーやトレカなど、特定カテゴリの商品に特化したCtoCのフリマサービスです。
ユーザー目線では日本向けと海外向けで二つのアプリに分かれているのですが、サービス内容やスキームは一緒です。例えば、日本のユーザーが出品したスニーカーを、海外ユーザーが購入することもできます。
▼株式会社SODA 執行役員 CTO 林 雅也さん
工藤 コマースを通じてグローバルに取引できるような、クロスボーダーなアプリケーションになっていると。
林 はい、そうです。ただ、まだまだ道半ばといいますか。グローバル展開をより強めていくことが、今後はさらに重要になってくる事業フェーズです。
工藤 スニダンといえば、やはり「スニーカー」のイメージがありますが、最近はゲームやトレーディングカードも出品されているので、特に海外の方は欲しいものがたくさんあるんじゃないかな、と思いました。
林 そうですね!特にトレーディングカードは、主力カテゴリーになってきています。
スニダンのもう一つの大きな特徴としては、取引が成立した後、商品を出品者さんから購入者さんに直接送るのではなく、スニダンベースという倉庫に送っていただいていることです。偽物の流通が多い商品カテゴリーを扱っているので、そちらで真贋鑑定を行っています。
工藤 なるほど、すごいですね。「人の目」を入れることで、サービスの品質を上げているんですね。
「秘密部隊」である「QAエンジニア」を全開発チームに配置
工藤 今「品質」という言葉を僕から出したのですが、今回のテーマはまさにスニダンのアプリケーションとしての品質管理、という文脈になります。
事前に、スニダンの開発チームの中には「QAエンジニア」を意図的にしっかりと配置していると伺っておりましたので、本日はその役割や、配置したことで起こった変化を深堀りしていきます。
林 まずは簡単に全体像をお話しすると、スニダンの開発組織には合計五つの開発チームがあります。いわゆるストリームアラインドチーム(※)的な形で、プロダクトの機能開発を一通り行うチームが五つある形です。
※ビジネスにおける一つの「価値」の流れに対して、出発点から到達点までのすべてに対してオーナーシップを持って働くチームのこと
基本的には、それぞれのチームにモバイルやバックエンドなど色々な技術領域のエンジニアが所属しているのですが、それに加えてQAエンジニアも一人ずつ所属して動いています。
▼開発チームの組織図(同社提供)
工藤 チームの中で、デイリーのMTGにもソフトウェアエンジニアと一緒に入ってコミュニケーションしていくような形ですか?
林 そうです。具体的な業務プロセスの進め方としては、同じスクラムチームの中にソフトウェアエンジニアとQAエンジニアが所属していて、デイリースクラムやレトロスペクティブを一緒に行っているイメージです。
工藤 なるほど。ちなみにQAエンジニアの役割も各社で異なるのかなと思いますが、SODAさんの場合はどのような役割を担っていますか?
林 それぞれのチームで要件定義から設計、開発、テスト、リリースと一通りの開発フェーズを閉じて進める体制なので、それぞれのフェーズにQAエンジニアの役割があります。
例えば要件定義のタイミングでは、まずはその機能の背景にある施策と仕様の理解を深めていきます。加えてその際には、それより広く「スニダンというプロダクト全体」や「既存の機能」の理解をより深めることも実はかなり重要です。
新しい機能だけを見た時に問題がなくても、既存機能と一緒に見ると違和感があったり、矛盾が発生していたりといったことはよくあります。プロダクト全体を理解することが適切なテストケース設計に繋がりますし、ユーザーにとって価値のある機能を作ることに繋がると考えています。
その上で+αとして、「エッジケースの考慮が漏れている」といった、QA目線だと発見しやすい「仕様バグ」のようなものを見つけられるといいですね。
工藤 つまり、単にテストを実施してレポーティングするのではなく、QAならではの目線でより良い品質を出すための業務をされているイメージでしょうか。
林 そうですね!もちろんテストケースの検討や、テスト計画の作成と実施も担ってもらいますが、QAエンジニアがいない時代からも、もちろんチームとしてテストは実施していたので…。
おっしゃる通り、そこがコアバリューかなと思います。
プロダクト品質のみならず、チームのマインドにも変化が
工藤 ちょうど今、「QAエンジニアがいなかった時代」のお話がありましたが、当時のプロダクト品質への課題感や、QAエンジニアを配置した意思決定の背景をお聞きできますか?
林 めちゃくちゃ大きな課題感があったわけではありませんが、プロダクトの規模が大きくなって機能が増えていくなかで、じわじわと複雑性が上がってきていて。やはり確認しきれない部分が出てきたり、QAプロセスを進めるのが大変だという感覚が生まれてきていました。
そもそも、スニダンはエンジニアと比べるとプロダクトマネージャーがすごく少ない組織で。それゆえに、プロダクトマネージャーのようにプロダクトに詳しくて、QA周りを深く考えられるような人を増やしていくのは良いんじゃないか? という考えがありました。
工藤 実際にQAエンジニアを各チームに配置したことで、既存の開発メンバーが受けた恩恵や変化はありましたか?
林 要件定義の段階で先にバグを見つけられるようになったり、そもそも不具合を事前に潰せるようになったりと、明らかに変化はありましたね。
工藤 チームの中でテストに対する意識や品質への概念理解が上がってきた、ということもあったりするんですかね。
林 それはあると思います。というのも、QAエンジニアがいなかった頃から、QAtoAQ(※)のような形で、アジャイルクオリティの考え方にシフトしていきましょうと話をすることも多かったんですね。
※伝統的な品質保証(Quality Assurance )からアジャイル品質(Agile Quality)へと変わっていこうとする考え方
そういったことにも詳しいQAエンジニアが増えると、こうした考えの普及もしやすくなってきて。品質に対する意識も、もちろん高まってきていると感じています。
工藤 経営目線では、QAエンジニアの配置によって生まれた価値はどんなものがあるでしょうか。
林 経営的な目線で見ても、プロダクトの品質向上に貢献するQAエンジニアの活動はめちゃくちゃ良いものだなと思っています。
加えて、中長期的な目線で考えると、過去に発生した不具合を可視化して分析し、今後の予防につなげていく、といった活動が少しずつ動き始めているタイミングで。他のバックエンドのエンジニアや、Flutterエンジニアを巻き込んで進めてくれているので、今後かなり期待したいです。
過去の不具合を一通り見て分析する、といった取り組みはこれまであまりなかったので、ソフトウェアエンジニアから見ても面白いものなんじゃないかな、と思います。
工藤 他にも、SODAさん独自といいますか、他社とはここが違う、といったポイントはありますか?
林 いわゆる「シフトレフト(Shift-left)QA(※)」は常に意識していきたいと思っていて。
※QAの役割を開発プロセス上の「左」、つまり「より初期の段階」に移動する考え方
工藤 テストを、要件定義や設計といった「前工程」で潰していくと。
林 はい。リリース直前にテストするだけではなくて、開発プロセスの「左側」にシフトしてQAの考え方を適用するイメージで動きたいなと。同じような考え方で取り組まれている会社さんもいますが、まだまだ一般的ではないので、強みになるのではないかなと思っています。
次なる挑戦に向けて、自由度の高い組織だからこその課題も?
工藤 こうした取り組みが結果的に、開発者体験の向上に寄与している部分もありそうです。
林 そうですね。そもそも「開発者体験が良い」というのは、「開発者体験がどうしたら良くなるかを自分たちで考えて良くしていく動きができること」「そこに大きな強い承認プロセスがいらないこと」だと思っています。その考えのもと、各チームでふりかえってそれぞれ改善をしています。
工藤 非常に自由度が高い組織で、エンジニアには魅力的なんじゃないかな、と感じました。
林 裏を返すと、その自由度が高すぎるがゆえの難易度のようなものも最近は出てきていますが…(笑)。
工藤 さらけ出していただきありがとうございます(笑)。まさに次の成長のための課題といいますか、チャレンジングな壁が見え始めてきているんですね。
積極的に採用活動もされているとお伺いしていますが、開発体制のなかで特に求めているポジションはありますか?
林 プロダクトの特性上、プロダクトマネージャーやデザイナーとエンジニアの連携がとても重要なので、その連携をしっかり強く行いながら、プロダクトの成長に向けてエンジニアリングをしていけるような人を増やしていきたいです。そういう環境に興味がある人は、ぜひお話を聞きに来てほしいです。
具体的には、今日お話したQAエンジニアはもちろん、Flutterエンジニアや、Goに興味があるバックエンドエンジニアも積極的に募集しています。
工藤 今まさに急成長中ということで、成長環境に身を置いて一緒に開発を楽しめる方を募集されているんですね。
林 もう成長に対してバタバタし続けているという感じで(笑)。中長期的には、もうちょっとうまくやっていきたいですね。
工藤 個人的にも応援したい気持ちになりました。
本日は、SODA社のCTO林さんに、同社のQAエンジニアチームについてお話を伺いました。林さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!
林 こちらこそ、ありがとうございました。(了)