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  • 田所 雅之

シリコンバレーでの起業失敗から生まれた!スタートアップの成功を導くサイエンスとは

〜スタートアップに、成功の方程式はあるのだろうか。「スタートアップサイエンス」著者の田所 雅之さんが語る、自らの原体験と、日本のスタートアップが犯しがちな間違いとは〜

2016年9月に初版が公開された、「スタートアップサイエンス」。同コンテンツでは、スタートアップにおけるアイデアの着想からスケールまでが、詳細に体系化され、説明されている。

そしてその1,750ページにおよぶ最新版は、2017年6月2日の公開後、わずか1週間で7,500のSNSシェアを獲得。閲覧数も、17万ページビューを突破した。

その著者である田所 雅之さんは、日本とシリコンバレーでの起業実績を持ち、現在はFenox Venture Capitalのベンチャーパートナーとして、国内外のスタートアップへの投資や、戦略アドバイザリーなどを手がけている。

田所さんは「まだまだスタートアップを『ファッション』のように捉えていて、表面的な理解しかしておらず、結果的に失敗してしまう人が多い」と語る。

今回はそんな田所さんに、ご自身の原体験から、スタートアップサイエンスを作るまで、さらに日本のスタートアップが道を誤ってしまいがちなケースについて、詳しくお話を伺った。

▼「スタートアップサイエンス 2017年度版 拡大版」より抜粋

「スタートアップサイエンス」の原体験は、自らの失敗にあった

スタートアップサイエンスは、「5年前の自分に向けて」作っています。5年前の自分がこれを読んでいたら、成功しているかはわかりませんが、少なくともあんな風に失敗することはなかったと思うんです

僕は最初、日本でコンサルティングファームに就職して、その後国内で2社起業した後、3社目はシリコンバレーで会社の立ち上げに挑戦しました。この3社目のときに、大失敗をしていて。

当時はそもそも、わからないことだらけだったんですよね。Webで調べれば色々な情報は出てきますが、どれがガイドラインになるかもわからず、暗中模索していました。そんな中でも、銀行口座からは毎月毎月キャッシュが減っていくと(笑)。

最終的にその会社は1年半で畳んだのですが、こんなつらい経験を皆さんがする必要はないと思って。僕の経験を伝えることが使命だと考えて、スタートアップサイエンスを作っています。

実は、スタートアップ「サイエンス」という言い方をしていますが、スタートアップって「アートとサイエンス」だと思ってるんですよ。

と言うのも、例えばどんな課題を発見するのか、どんな人を採用するのか、といったことは、サイエンスでは方程式を作れない部分なんですね。でもその一方で、「失敗しないモデル」は、サイエンスで定義できると考えています。

「失敗しない」ということは、すごく大事です。なぜならスタートアップは、時間との戦いだからです。

限られた時間の中で、大きな失敗をせずに、色々と実験をしていくことになるので。その中で、やるべき事と言うよりは、「やるべきではないこと」がたくさんあります。それを、スタートアップサイエンスにまとめているという形ですね。

なぜか「誰も使わないようなサービス」が出来上がってしまった

最初に日本で立ち上げた2社は、スタートアップと言うよりは、既にビジネスモデルが確立されてるもので、ユーザーニーズも明確でした。あくまで既存のビジネスと同じ延長線上に、革新さを求めたと言う感じです。

ただ僕自身、スタートアップであったり、シリコンバレーに対する憧れの気持ちもあって。当時、フェイスブックなどが上場しつつあって、すごいなと。そこで2011年に渡米し、3社目で初めて、ゼロから作っていくようなビジネスを立ち上げました。

3社目の会社で作っていたのは、簡単に言うと、共同購買をする人が集まれば集まるほど、商品の購入単価が下がるようなプラットフォームです。

サービス開発は、僕ともう1人のパートナーで、ブレストする感じで進めていました。ただ、そこでそもそも間違いだったのは、2人ともビジネスサイド出身でエンジニアじゃなかったんですよ

代わりに、外部のCTOのような人を雇っていたのですが、うまくいかなくて。要は外部の人間なので、ビジネスに対してオーナーシップがないんです。彼にしてみたら、やった仕事の分だけの報酬がほしい、というだけなんですよね

また、僕たち自身も、そもそものビジョンやメッセージがありませんでした。そんな状態なので、結局途中から、その外部CTOが作りたいものを作るような形にブレてきてしまって。それこそ顧客の課題なんて、何も考えられていませんでした。

最終的にできたものは、誰も使わないようなサービスで、自分でもびっくりして(笑)。いま言うのも恥ずかしいのですが、「みんなで価格を決めよう」みたいな、よくわからないサービスができちゃったんですよ。

いつのまにか、「資金調達のためのサービス改善」に陥っていた

当時を振り返ると、やはり一番ダメだったのは「顧客の課題ドリブン」で考えず、「ソリューションドリブン」で考えていたことです。自分たちの作りたいものが、まず先行してしまったんです。

スタートアップサイエンスの冒頭にも書いているのですが、やはりいかにして顧客の課題を発見するか、そしてをそれをどう検証するか、という「カスタマープロブレムフィット」こそが、最も重要です。

▼「スタートアップサイエンス 2017年度版 拡大版」より抜粋


まず向き合うべき一番大切な問いは、「自分たちが取り組もうとしている課題が、本当に存在してるのか」ということなんですね

僕は当時、それが全くできていませんでした。それどころか、資金調達をすごくがんばっていたので、投資家の「こうしたらいいんじゃないの」という声で、サービスを少しずつ変えてしまっていたんです

途中からはもう、資金が尽きるのもわかっていたので、投資家からお金を集めることがサービス改善の目的になっていて。顧客の意見をベースにしてピボットする、ということができていませんでした。

こうなってくると、さすがにもうダメだなって。薄々わかってはいましたね。

最終的には、共同創業者が行方不明になりまして。毎月サーバーや、弁護士の請求書が全部僕のところに届くようになって、もうアホらしくなってきて。それでもう辞めよう、会社を畳もう、と決めました。

そして日本に戻ってきて、半年後くらいから、スタートアップサイエンスを書き始めました。

正直、つらい経験をたくさんしたので、そんなにすぐには振り返れなかったですね。でも失恋と同じで(笑)、時間が経ったら心の傷も癒えてきて、色々と思い返すことができるようになりました。

創業者が、いかに課題と「主観的に」向き合えるかも重要

このように、顧客の課題にフォーカスする「カスタマープロブレムフィット」は非常に大切です。ただもうひとつ、そこと同じくらい重要なのが、「ファウンダーイシューフィット」です。

ファウンダー(創業者)とイシュー(解決したい課題)がフィットしてるかどうか、ということですね。

▼「スタートアップサイエンス 2017年度版 拡大版」より抜粋


と言うのは、僕もそうだったのですが、基本的にスタートアップってつらいんですよね。資金調達も、ピボットするのも、本当につらい。ですので、やめたくなることも多いのですが、課題が自分事化していたら、基本的にやめないんですよ、人間って

僕も、スタートアップサイエンスは自分自身のために書いている部分が大きいので、1,750ページも書けるんだと思います。正直、これ書くのすごく大変なので(笑)。

ファウンダーイシューフィットにおいては、必ずしも創業者が「自分自身の」課題と向き合っている必要はありません。と言うよりは、どれだけ主観的な経験をした上で、ユーザーの目線に立てるか、ということだと思っています。

よく事例として挙げるのは、Airbnbですね。彼らは、最初、サービスを特定のイベントだけで実験的にスタートしているんです。

例えば2008年、当時のアメリカの大統領選挙で、コロラド州のデンバーでバラク・オバマが選挙演説をすると。でもど田舎なので、ホテルが少ないんです。

彼らはそこに注目して、試算したところ、ベッドの数が5,000足りなくなるとわかったので、実証実験をすべくコロラドに行ったんです。

そこで実際に「コロラドの空港に着いてホテルがない」という状態を自分たちで経験した上で、仮説検証を行っているので、カスタマーストーリーが主観的に描けるんですよね。その段階を経た上で、ニューヨークのような都会へと進出していったんです。

PMFは「到達すればわかる」スタートアップのよくある間違いとは

他にも、僕自身が日本のスタートアップにアドバイスをさせていただく中でよく感じるのが、マーケティングが時期尚早だということです。

プロダクトマーケットフィット」に到達する前に、いきなり大規模な資金調達をしたり、パートナーシップを組んでしまうケースですね。

▼「スタートアップサイエンス 2017年度版 拡大版」より抜粋

はっきり言って、プロダクトマーケットフィットしていないサービスに対してマーケティング費用を使っても、ジリジリ損が増えていくだけです。

よく言われているのが、プロダクトマーケットフィットしたら「明らか」だということです。その状態に到達すれば、自然にわかるんですよ

実は僕も、スタートアップサイエンス自身のプロダクトマーケットフィットをまさに体験していると思っていて。自分が全く動かなくても、こうしてインタビューの依頼をもらったり、向こうから問い合せが来るんです。

別に自分から売り込まなくても、勝手に価値を感じてくれて、勝手に広がるみたいな。これがまさにプロダクトマーケットフィットの状態かな、と思っていて。このフェーズまで到達できれば、これをマネタイズしようとしても、もう色々な方法があるんですよね。

企業で言うと、例えば新しいサービスに対しての問い合せに対応し切れていないような状態が、それに当たると思っています。

あとで取り返しがつかないのは、創業者選びと資本政策

また、少しテクニカルな話になりますが、一番「もったいないな」と感じるのは、創業者選びと資本政策です。この2点だけは、あとで取り返しがつかないんですよ、本当に

実際、年間150くらいのスタートアップを見ますが、その中の2割ほどは、創業時のオーナーシップで間違ってしまって、残念な形になっていると思います。

株って、義務ではなく権利であって、持ち物なんです。銀行のお金と一緒で、所有者はどう扱ってもいい。ですので例えば、創業メンバー同士がケンカして、誰かが持ち株を組織犯罪を行うような団体に渡してしまったら、その瞬間に、もう資金調達ができなくなってしまいます。

共同創業って本当に、結婚と同じようなものなので。それくらい、大事なことなんです。

仮に素晴らしい商品を作ってプロダクトマーケットフィットしても、そのような資本構成のスタートアップには誰も出資しないので、確実に死んでしまうんですね。エグジットなんて、絶対できない。

ですので、そのオーナーシップの取り扱い方は、本当に間違えてはならないことだと思います。ただ、30分も本を読めば誰でもわかりますので、しっかりと知識を持っておくことが大事ですね。

「ファッション」としてのスタートアップは失敗する!

僕も実際そうだったのですが、スタートアップの人たちっていうのは、スタートアップをやるためにスタートアップをやっているんですよね。とりあえず起業したい、みたいな。

ファッション的な感じで、「ピボットする」と言ってみたり。猫も杓子もピボット、じゃないですけど、やっぱり表面的な理解しかない人がまだまだ多いのかな、と思います。残念ながら。

でもそれですと、僕のように失敗してしまうと思うんです。失敗するのは、やはり経験がないからなので、できるだけ自分自身の経験を、多くの人に体系化して伝えていきたいですね。

2017年4月には株式会社ユニコーンファームを登記し、これからは日本発のユニコーン企業を増やすために、活動の幅を広げていこうとしているところです。引き続き、より多くのスタートアップが成功できるように、後押しをしていきたいと思います。(了)

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