• クラウドキャスト株式会社
  • 代表取締役
  • 星川 高志

Ruby on Railsの生みの親が開発 プロジェクト管理ツール「Basecamp」の活用術

【今回のソリューション:Basecamp/ベースキャンプ】

〜プロジェクトに関する情報を一元管理できる、Ruby on Railsの開発元が作ったプロダクト「Basecamp」の使い方〜

世の中には多くのプロジェクト管理、情報共有、コミュニケーションに使えるツールが溢れている。その中で、個々のプロダクトの根底にある思想を知ることは、ある意味ツール選定の理由になり得る。

今回紹介するプロジェクト管理ツール「Basecamp(ベースキャンプ)」も、Ruby on Railsの生みの親であるBasecamp社が自社における働き方を楽にするために開発した、という背景を持っている。

そのBasecampを2009年の創業時から活用しているのが、クラウド経費精算サービス「Staple(ステイプル)」などを提供するクラウドキャスト株式会社だ。

同社代表で、マイクロソフト等で十数年以上にわたるエンジニア経験を持つ星川 高志さんは、Basecampを「何にでも使えるツール」と評し、社外メンバーも含めたプロジェクト管理に役立てているという。星川さんに、Basecampの使い方や良さをお伺いした。

▼「何にでも使える」自由度が売りのプロジェクト管理ツール「Basecamp」とは…

目次

  • マイクロソフトで経験を積み、クラウド経費精算システムを開発
  • Ruby on Railsの生みの親が開発した「Basecamp」を導入
  • Basecampの背景にある、オープンソースの思想とリモートワーク
  • ToDo管理からコミュニケーションまで、「何にでも使える」
  • Slack、Basecamp、GoogleDocsの活用でEメールがほぼゼロに
  • 使い方に応用が利くので、どんな企業にもオススメ!

マイクロソフトで経験を積み、クラウド経費精算システムを開発

新卒でDECという会社にエンジニアとして入り、その後Windows95が発売されたあたりに、マイクロソフトに転職しました。マイクロソフトでは技術者として、12年ほど製品のサポートや開発に関わっていました。

その時に青山学院大学のビジネススクールに通い始め、個人でアプリを開発して販売することも始めました。そして2011年の1月頃にその個人事業を法人化し、クラウドキャストを創業しました。

弊社が提供しているのは、クラウドを用いた経費精算システムです。日本人は、海外と比較した時にファイナンスリテラシーが低いと感じていたので、アプリを通してそこに貢献できればと思ったことがきっかけです。

2011年の12月に「弥生会計」というソフトウェアを提供する弥生株式会社が開催するスマートフォンアプリコンテストでグランプリを受賞し、業務を拡大して今に至ります。

現在、日本にいる社員は僕を含めて7人です。弊社の特徴として、プロジェクトメンバーの海外比率が高い点があります。アジアやロシアのメンバーにリモートで、開発に参加してもらっているんです。

コアな機能は日本でつくり、必要な時に海外からエンジニアを入れて開発スピードを上げ、またメンテナンスの時期に入ると人数を減らす、というハイブリッドな組織を作っています。

Ruby on Railsの生みの親が開発した「Basecamp」を導入

まだ個人で仕事をしていた2009年ごろに、プロジェクト管理ツール兼コミュニケーションツールとして「Basecamp」を導入しました。

まだ、Slackのようなチャットツールが世の中になかった時代ですね。Basecampでは、ToDoを管理したり、チームでメッセージボード、マイルストーン、Whiteboard(Wiki)などを共有することができます。

▼チームでタスクを管理できる「Basecamp」

導入の理由は大きく分けて2点で、まず1点目が実用上の理由です。当時はまだ自分1人でしたが、開発を自分でマネージメントする際のToDo管理やスケジュール管理、情報の蓄積や、外部エンジニアとの情報共有にも使えると思いました。

2点目が、Basecampというプロダクトから「学びを得たい」と思ったんです。Basecampを提供しているのは、Ruby on Railsの開発元でもある企業なんですね。まさにRuby on Railsを使ったプロダクトの例として、Basecampをリリースしたんです。

私は当時トラディショナルなソフトウェアの作り手だったマイクロソフトにいたのですが、Basecampが働く舞台は、ある意味反対のオープンソースの世界。

同じ場所で働かなくても素晴らしいプロダクトが作れる、というリモートワーク的な働き方も推し進めていて、オープンソースのフィロソフィーをうまく、商業化のやり方に持ってきたのが彼らだと思っています。

そんな彼らの思想や働き方に自分もすごく興味がありました。Basecampを使って毎日仕事をすることで、きっと何か学べると考えていたんです。

Basecampの背景にある、オープンソースの思想とリモートワーク

Basecamp社の思想のベースにあるのは「プロダクトを公開してみんなで良くする」というオープンソース的な考え方で、働き方は基本的にリモートワークスタイルです。

そして、そんな彼らの業務を円滑にするツールがBasecampになります。離れているメンバー同士が、お互いに何をしているのかを可視化するという遠隔でのコミュニケーションが基準になっています。

MS Projectやエクセルを使ったプロジェクト管理では、いわゆるガントチャートを使うことも多いと思います。けれどそういった概念は、彼らの働き方には全くないんです。なぜならば、同じ場所にいなくても、リアルタイムにコミュニケーションができて、お互いのしていることが共有されるようになっているからです。

このような考え方って、Slackと同じ開発思想なんですよね。10年前にすでに同じ思想を持って、プロダクトを作りこんでいたのが彼らです。その意味ではかなりオリジンというか、最初にリモート開発のスタイルを作ってきたのが彼らだと思うんですよ。

自分たちがしたい働き方を実現するために自分たちでツールを作って、それは他の会社にも通用する。それはまったくオープンソース的な考え方で、売上のために作ったわけではないんですよね。

ToDo管理からコミュニケーションまで、「何にでも使える」

Basecampの特徴のひとつに、「何にでも使える」ということがあると思います。To Do管理、備忘録、社内へのアナウンス、Wikiの保存、カレンダー管理、外部の人とのコミュニケーションなど多様な用途に使えて、どんなフェーズでもしっかり役に立ちます。

▼外部のメンバーとカレンダーを共有することも可能

自分が創業当時のプロダクト開発の過程で採用していたBasecampの使い方は、まずプロダクトのVer1.0のリリースまではタスクをBasecampに入力し、スケジュール管理ツールとして使う。

そこからVer1.0がリリースされて、お客様からのフィードバックをもらいはじめると、それらの情報をまとめてBasecampにアップして保存しておく。そして、その次に外部のエンジニアにBasecampで情報共有をし、タスクをアサインすることでプロジェクト管理をしていく、という感じで使っていました。

エンジニアだけではなく営業やマーケティングメンバーもタスクが入力できますし、その履歴も簡単に確認できるようになっています。誰でも使いこなせるようにできているので、ユーザビリティは高いなと感じていますね。さらに、全文検索に対応していて、検索性に優れていることも使いやすさを後押ししています。

Slack、Basecamp、GoogleDocsの活用でEメールがほぼゼロに

今では、プロジェクト管理には主にSlack、Basecamp、GoogleDocsの3つのツールを使い分けています。SlackはちょっとしたEメール1行分くらいの内容をポストして、「その瞬間をリアルタイムで楽しむ」ために使っています。情報を貯める場所ではなく、流す場所というイメージですね。

Basecampはプロジェクトマネジメントや、タスクのアサイン、スケジューリングに使っています。こちらに情報を溜めていく感じですね。さらにそれをドキュメント化するときには、GoogleDocsを使っています。この3つを適材適所でうまく利用した結果、社内メンバー同士でのEメールのやりとりはほとんどなくなっています。

使い方に応用が利くので、どんな企業にもオススメ!

Basecampはスモールビジネス系の層にはファンが昔からいて、今でもどんどんユーザーが増えている、息の長いサービスです。今は1チームあたり月に2,000円しか払っていないので、サイズ感からすると非常に安いと思います。

多機能というわけではないのですが、何にでも応用が利きます。会社の成長に応じて使い方を変えればいいと思っていて、開発が多い時期には開発ツールとして、営業を増やすフェーズになれば営業管理ツールとして、どちらもない状況ではプロジェクト管理ツールとして活用できます。

そういった柔軟さが、Basecampの特徴なんでしょうね。今後もBasecampを活用して、最適な働き方を追求していきたいと思っています。(了)

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