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  • 溝口 敦

【前編】たくさんの人に「本」との出会いを 電子図書館というテクノロジーが創り出す世界

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今回のソリューション:【OverDrive/オーバードライブ】

2014年5月、電子書籍取次事業を展開する株式会社メディアドゥ(以下メディアドゥ)は、電子図書館プラットフォームの世界最大手であるOverDrive, Inc.(以下OverDrive)との戦略的業務提携を発表した。

そして現在、国内では初となる「電子図書館システム」が慶應義塾大学メディアセンターにて実証実験中だ。

電子図書館とは、IT技術の発展によって生まれた新しい形の図書館だ。従来のサービスのように本を借りるリアルな「場所」があるのではなく、データベースにアクセス可能なWebサイト上で、電子書籍をレンタルすることができる。

ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人へ届ける」という事業理念の下、メディアドゥが電子図書館という方法を選択した理由とは? 同社取締役の溝口 敦さんへのインタビュー前編では、メディアドゥとOverDriveの出会いから、事業提携に至る過程をお伺いした。

※メディアドゥが電子図書館によって実現したい未来をお伺いした後編はこちらです。

NTTドコモの音楽配信部隊に新卒で配属 

もともと僕は理系で、大学院まで行っているんですね。宇宙が好きで、JAXAの前身の宇宙科学研究所に所属して研究をしていたんです。

でも音楽も好きだったので、就職活動でレコード会社ばかり受けていたら、周囲に「もうちょっと技術っぽいことをした方が良いのでは」と言われまして(笑)。その時たまたま日経を開いたら、NTTドコモが音楽配信事業をスタートする、と書いてあったんです。

「これだ!」と思って大学に相談したところ、原宿で会社説明会があるそうだから参加したらどうか、と言われました。

当日、履歴書を持って行ったら、説明会だけではなくて筆記試験もあったんです。しかも非常に難しいSPIと英語の試験で、落ちたと思いましたね。でも就職課を通じて通過の連絡をもらって、最終的に2000年に新卒で入社しました。

その年の数百名の新卒のうち2人だけが音楽配信事業に配属されたんですが、幸運にもそのうちの1人になることができました。

こんな風に僕は基本的にずっと「やりたいこと」ができている部分があります。今でもそれは変わっていないですね。でも年をとったからなのか、最近は文化や未来のことも考えるようになりました。日本の良さを世界に伝えたい、と思うようになりましたね。

音楽配信事業で世界進出!「着うた」の仕掛け人に

当時NTTドコモは、世界初となるモバイルでの音楽配信サービスの立ち上げを狙っていました。

結果的に世界初は逃してしまったんですが。2002、3年の頃にFOMAでiモードを本気でやっていく時には、iモードベースの「着うた」の立ち上げを行い、プラットフォーム作りとサービス設計、コンテンツの獲得を担当していました。今でもiモードの誕生日の2月22日には、立ち上げメンバーで飲んでいますよ。

着うた、着うたフルと携わってきて、タワーレコードとの資本提携やNapstarのモバイル上での展開も行ってきました。

その後、映像配信にも携わりましたが、2008年にNTTドコモを退職するまで、ずっとモバイル上でどんなコンテンツをどういう風に流すかっていうことに従事してきたんですよね。

コンテンツ配信のノウハウを活かすためメディアドゥへ

NTTドコモで約8年間働いて、だんだん経営やマネジメントの部分を経験したくなってきたんです。そこで転職活動を始めて、周囲の人にも相談するようになりました。

当時は外資系の企業が日本でちょうど、コンテンツビジネスを立ち上げようとしていた時期でもあり、国内外問わず様々な会社さんとお話をさせて頂きましたね。

でも、そこで一度立ち返って。大きな企業で働くならドコモがいいよね、と。最終的に2008年7月にメディアドゥに入社したんですが、ちょうど電子書籍の事業を立ち上げて、売っていくぞ、というタイミングでした。

当時まだまだ小さな組織だったメディアドゥで、自分の持っていたコンテンツ配信のノウハウを活かせるのではないか、と考えたんです。

代表の藤田の想いに共感できる部分がたくさんありましたし、「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人へ届ける」という事業理念もとても気に入っていました。

電子書籍というものだけに強いこだわりがあったわけではなくて、この会社に新しい可能性を持ってくる、もしくは作ろうという意気込みでした。今でもその気持ちは変わりません。

USEN、レコチョク、NTTドコモ…スケールのためにパートナーを

入社後は「自分ができることってなんだろう」「今ここにないものを持ってこないといけない」ということを考え続けてきました。

電子書籍に関して言えば、藤田が0から1を「やるぞ」と作ったわけなんですね。その1を1.5にするのでは意味がなくて、1を10や100にする、スケールの部分を僕がやっていこうと考えました

では、今この会社にはいないクライアントを見つけてくるよ、ということでUSEN、レコチョク、ドコモ…当時のメディアドゥからすると非常に大きな企業と繋いで、これまでやってきました。

その当時はまだガラケーの時代で、電子書籍をどうパートナーと繋ぎ合わせてスケールさせるか、という考え方をしていました。

スマホの時代に切り替わって、スマホ上で電子書籍をどうやって読むのか、技術的な部分から取り組んでいきました。それまでコマをひとつずつ画面で送っていたものが、単行本のようにページ単位で読めるようになったので、それを更に見やすく改良していきました。

LINEマンガの話が始まったのは、2年半ほど前です。弊社がコンテンツと配信システムの提供をしています。

最近は海外へ向けても日本のコンテンツを輸出することを考えていて、LINEマンガを世界で展開していくための「LBD(LINE Book Distribution)」を4社の合弁会社として立ち上げました。サンフランシスコのサブスクリプション・サービス「Scribd(スクリブド)」と事業提携もしています。

現在はおかげさまで弊社の社員数も100名を超えて、電子書籍ビジネスの中である程度の立ち位置を築けたのかな、と思います。

電子図書館の世界最大手・OverDriveとの出会い

電子図書館というサービスと、OverDriveという企業を知ったのは同じタイミングです。

3年位前に知人から「電子図書館というものをやっている、アメリカのOverDriveという会社に興味ある?」という話があって、結果的に代表と一緒にアメリカのオハイオ州クリーブランドまで会いに行ったんです。先方のCEOに直接会って、OverDriveがどんな会社なのか話を聞きました。

その話の中で、お互いに組織として共通点がとても多いことがわかったんです。一番大きかったのはシステムの部分で、電子書籍のデータがあるセンターサーバーを中心に、図書館という衛星を作っていくと。

メディアドゥは図書館ではありませんでしたが、理屈は一緒で、ほとんど同じようなことをしているね、という話になって。

そしてOverDriveは当時創業30年弱で、メディアドゥは20年弱で、オーナーが良い意味で家族的に経営している、というところもCEO同士でシンパシーが合って。

これも縁だし、雰囲気も良いし、一緒にできることがないか探っていこう、という話になりました。それから2年間、ずっと考えてきたんです。

「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人に届ける」

OverDriveとの提携の話の前提で、弊社が電子書籍という世界で何を考えているかというと、「ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人に届ける」、ここに集約されているんです。

これをどうやって実現するかが、電子図書館に限らず、僕たちの発想のすべてです。

これまでに、国内の電子書籍事業に関してはある程度、作り上げてきた自負もあります。現在できていないのは、紙の本の領域で言うと「売る」ところではなくて「レンタル」の部分です。このエリアをどうやってカバーするのかという課題があったんです。

作品を誰かに届けるという意味であれば、乱暴に言うと売っても貸しても良いわけです。それで「なるほど電子図書館!」ということで、日本でも展開できたらいいなと。それに日本のコンテンツを世界にも輸出していきたいと。

そしてOverDriveも日本に進出して、日本のコンテンツを売りたいというタイミングがきたので、去年の5月から事業提携することになったんですね。

メディアドゥとOverDrive、2社の提携で描く未来

OverDriveが預かる海外の数十万タイトルを国内で配信すること、そしてメディアドゥが預かる出版社のコンテンツをOverDrive経由で海外に配信する取り組みを行っていこうとしています。

OverDriveはアメリカにおいて、10年以上に渡って電子図書館を運営してきたノウハウを持っています。例えばニューヨーク市図書館の50の分館のうち、OverDriveが提供している電子図書館が貸し出し部数だとトップだと言われています。

電子図書館って、基本的には紙の本の図書館と仕組みは同じです。図書館なので、誰かが借りている時はその電子書籍は借りることができない。そういう仕組みを、「時代に逆行している」と感じる人もいますが、メディアドゥが考えていることはそういうことではないんです。

「デジタル vs 紙の本」の議論もずっとありますが、そういうことではなく、単純に「本」をもっとたくさん読んでもらうためにデジタルの技術・流通を活用することができるのでは、と考えています。

※メディアドゥが電子図書館によって実現したい未来をお伺いした後編はこちらです。

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