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さくらのクラウドで「尖ったインフラ環境」を構築。カスタマイズに強い、その実力とは

今回のソリューション:【さくらのクラウド】

〜「素直な仮想サーバー」として使える国内サービス「さくらのクラウド」で、柔軟で尖ったインフラを構築した事例〜

AWSやGoogle Cloud Platformといったクラウドサーバーは、今やサービス開発には欠かせないものになっている。

DSPシステム「Sphere」を、数百台ものサーバーで構築しているマーベリック株式会社。リリース当初からハウジング100%の環境でインフラを構築してきた同社だが、新規サービス「Sphere Paper」「Sphere Infeed」では、クラウドサーバーを活用している。

そこで選択したのは、さくらインターネット株式会社が提供する「さくらのクラウド」だ。

さくらのクラウドには、海外発のクラウドサーバーにはない「ハウジングとのシームレスな接続」というメリットに加えて、仮想サーバーが「素直」でカスタマイズしやすいという面白さがあるという。

「インフラを尖った方向でカスタマイズしたい人にオススメ」と語る、同社マネージャーの松木 秀憲さんと、インフラの構築を担当した清見 拓さんに、詳しいお話を伺った。

大規模DSPシステムのインフラを支える2人

松木 私は20代でIT業界に入り、当初は製造業や金融系のシステム開発・運用を担当していました。そうしましたら2005年に、W-ZERO3という国産スマートフォンが発売されたんですね。周りからは「それ買って何するんだ?」と言われましたが、私は「これはきた!」と感動したんです。

そこでスマートフォンに大きな可能性を感じたことから、スマートフォンゲームの業界に入り、スマートフォン向けフレームワークの開発やインフラの構築、ビッグデータ解析の仕事をしていました。

マーベリックには、創業から間もない時期に入社しました。入社日の前日に、社長の美留町から「ちょっとさ、今から来てくれない?」という電話があって(笑)。

入社前から、初めて見るシステムのデバッグをしていましたね。入社後の1、2年はガッツリ運用もしていましたが、今ではほとんどお任せして、教育やマネジメントを担当しています。

清見 私は、マーベリックに新卒で入社しました。「社長の美留町のネトゲ仲間」という縁で、お誘いいただきまして(笑)。学生の頃から主にインフラ・ネットワーク周りを学んでいたので、入社後も物理サーバーからクラウドまで、インフラ全般を担当しています。

新規サービスでは「敢えて」柔軟性のあるクラウドを活用

松木 弊社のインフラは、最初はすべてハウジングの物理サーバーを使っていました。

DSPというシステムは、100ms以内に入札のレスポンスを返さなければ、入札資格が無くなってしまいます。そのレイテンシの要件に加えて、当時の会社のフェーズや長期的なコストも考えたうえで、物理サーバーをハウジングで使うことが決定されました。

清見 私は物理サーバーを触ったことは無かったので、半分ポテンシャル採用のような形で入社しました。ロードバランサとは何なのかというところから教えてもらいながら、サーバーの構築から運用、監視といったところまでを担当するようになりました。

松木 そうしてDSPのシステムは、100%ハウジングで構築してきたのですが、2年ほど前に紙媒体向けの広告出稿システム「Sphere Paper」という新規サービスを立ち上げることになりまして。そちらは、クラウドサービスの「さくらのクラウド」で構築しました。

▼さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」

DSPほどレイテンシの要件も厳しくない上、他社とのアライアンス調整の関係上、柔軟性を持たせたかったんですね。そのため、ハウジングのように、見積もりを立ててドンとスタートする形ではなく、柔軟にスケールできるクラウドを使うことにしました。

インフラ経験者には嬉しい「素直な仮想サーバー」

松木 さくらのクラウドって、AWSのようなサービスと違って、すごく素直な仮想サーバーなんですよね。「これくらいの土台を用意しますので、あとは上の部分は自由自在にカスタマイズしてください」という印象を受けるようなサービスです。

一般的なクラウドサービスは、WebサーバーやリレーショナルDBのようなものが用意されていて、そのレールに乗って進んでいるうちは幸せに使えるじゃないですか。ただ、外れると辛くなることも多いですよね。

弊社は最初からレールを外れているので(笑)。システムのカスタマイズが激しく、カーネルからビルドしますし、ミドルウェアもソースからビルドして使うことも珍しくありません。

さくらのクラウドであれば、ISOイメージをアップロードしてそこからブートして、ということが普通にできるので、インフラや物理サーバーを知っている人には、むしろある意味使いやすいですね。

清見 個人的にとても便利だと思うのは、簡単にロードバランサをいじれる事ですね。物理サーバーで使うロードバランサは、どのコマンドを打つのかということから調べて操作していたので。物理しか知らない私としては、これは便利だなと思いました。良い時代になりましたね(笑)。

「さくらのクラウド」はハウジングとの接続もシームレス

松木 そもそもDSPシステムの方でも、弊社はさくらインターネットさんのデータセンターを使用しています。そうした背景から、さくらのクラウドであればハイブリッド接続が可能、ということは大きなメリットでしたね。

ハウジングとクラウドのローカルセグメントを接続できるサービスが提供されているので、シームレスに使いやすくなっているんです。その2点間の通信であれば、トラフィックによる課金も発生しません。

クラウドサービスと、ハウジングサービスが同一事業者で提供されているためですね。もちろん、クラウドとハウジングのサーバー間でのレイテンシも小さくなります。

清見 現在ではその紙媒体向けの広告システムだけでなく、会社の認証用のLDAPや、Redmine、zabbixサーバー、コーポレートサイトといったものも、さくらのクラウド上に構築しています。

また、つい先日リリースした、女性系メディアを中心に形成された、インフィード広告配信システム「Sphere Infeed」も、さくらのクラウドで構築しています。

こちらのサービスの構築は、主に私が担当しました。ゼロから作るのは初でしたが、やはりトラフィックが読めない状態でも台数を自由に増減でき、少ない台数で試せるというのは便利だと思いましたね。

Sphere Infeedは、いまのところアプリサーバー16台、MariaDBが4台、WebView/WebAPIが各2台、バッチ2台という構成で動いています。

技術以外のコスト面にも、国内サービスだからこそのメリットが

松木 技術面以外で言うと、月額払いで、かつ日本円での請求書払いができるのは良いですね。また、弊社の使い方では通信料金が定額になるというのも嬉しいです。仮想サーバーや仮想アプライアンスの台数とスペック、帯域の太さでほぼ金額が決まるので、最終的な金額の見積もりがしやすいんです。

ここは、実は会社にとっては大きなポイントです。

特に、私たちのビジネスはBtoBなので、予算をある程度かっちりと決めておく必要があります。例えばゲームですと、突然イベントが当たってしまってコストがハネる、ということもありますが、私たちのビジネスは少し異なります。

安定してお客さまにサービスを提供し続け、かつ売上予算を立てる上でも、原価がどれくらいなのかを、高い精度で見積もりたいんです。その点、さくらのクラウドの料金システムは非常にありがたかったです。

また、最終的なコストも、他のクラウドサーバーと比較して半額くらいになることもあり、単純に安いというメリットもありました。

「尖ったインフラ」を構築したい人におすすめ

松木 標準のサポートが充実しているのも良いですね。もちろん日本語でやりとりできますし、コントロールパネルで簡単にスクリーンショットを撮って、そのままフィードバックできる機能があるので、困ったことはすぐに質問できます。

▼管理コンソールのスクリーンショットを撮ってお問い合わせが可能

DockerやAWSのAMIのように、プラットフォームに乗っかってアプリの部分に注力するか、弊社のようにインフラから手を入れたいのかで、クラウドサーバーは使い分けると良いと思います。

さくらのクラウドは素直なサーバーで、およそ仮想サーバーとして考えられる全てのことが制約無くできるので、インフラを尖った方向でカスタマイズしたい人にオススメですね。

清見 ハウジングで数百台という規模のサーバーを触るというのも魅力ですが、さくらのクラウドもどんどん進化しているので、期待しています。

今後は、公開されているAPIも活用していきたいですね。Ansibleとからめてサーバーを構築したり、APIからロードバランサを切り替えたり、自動化に取り組んでいきたいと思います。(了)

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