- 株式会社grasys
- CEO
- 長谷川 祐介
Googleの技術が光る!クラウドサーバーの選択肢に Google Cloud Platform を
今回のソリューション:【Google Cloud Platform】
2015年現在、サーバーを構築する際のクラウドサービスの選択肢として真っ先に挙がるのはAmazon Web Service(以下、AWS)だろう。その領域に一石を投じるのが、2013年にGoogleが公開した Google Cloud Platform だ。
公開当時は一部のアーリーアダプタにしか馴染みが無いものだったが、現在では数々のサービスが展開され、プロダクションの環境にも活用できるサービスとなった。
その Google Cloud Platform を活用し、システム全体のインフラ設計から構築、運用までを全て請け負うMSP(マネージドサービスプロバイダ)事業を展開するのが株式会社grasysだ。
Googleから「起業最短での Google Cloud Platform パートナー」として認定される同社でCEOを務める長谷川 祐介さんに、 Google Cloud Platform についてお話を伺った。
インフラに関わり15年。顧客のインフラ構築の全てを請け負う
私はここ15年ほど、インフラ一筋で仕事をしています。昔はWeb制作会社でデザインからコーディング、サーバ構築、顧客折衝まで幅広く仕事をしていましたが、20代中盤にインフラ専門になることを決めました。
当時から持っていた夢が「色々な企業のシステムを経験し、30代でインフラを全部1人で見ることが出来るようになる」というものだったので、大企業を転々とした後に株式会社gloops(旧:株式会社GMS)という会社に1人目のインフラエンジニアとして入社しました。
入社当時、gloopsではシステムのダウンが頻発している状況にあり、単独でアーキテクチャを見直し再構築することで安定稼働させるところまで持っていくことができました。
その後は開発部の部長なども務めたのですが、私は根っからのエンジニアでどうしても手を動かしたくなるんですよね。なので結局エンジニアに戻してもらったりして(笑)。gloopsで4年ほど勤めた後に、grasysを立ち上げました。
弊社はMSPの事業を展開しており、お客様のシステム要件を聞いてインフラの設計から構築、運用まで、インフラに関することは全て行っています。
お客様にはプロダクト開発に専念していただける形で、バックエンドはすべて弊社で管理しています。
Google Cloud Platform のために会社を立ち上げ!?
弊社がお客様のインフラを構築するときは、クラウドサービスを活用しています。AWSやMicrosoft Azureを使うこともありますが、最も活用しているのは Google Cloud Platform です。
というのもgrasysは Google Cloud Platform を使うために立ち上げた会社なんですよ(笑)。
リリースされたばかりの頃にGoogleの方とお会いする機会がありまして、話を聞いて実際に触ってみるとこれが面白くて!このサービスに賭けてみようと思い、起業しました。
ビジネス的に考えても、既にプレイヤーも多くカルチャーが出来上がっているAWSだとどうしても後追いになってしまいます。一方、 Google Cloud Platform はまだ新しいサービスのためプレイヤーの数も限られており、前線に立ってビジネスを展開出来ます。
ユーザーとしての観点からも、去年はまだアーリーアダプタが食いつくような真新しいもの、という感覚が強かったのですが、今ではマジョリティの人たちがカジュアルに活用できるレベルまで改善されていると感じています。
Googleの技術が全て詰まったクラウドサービス
Google Cloud Platform を気に入っている理由は様々なのですが、大きなポイントはやはりインスタンスの起動が速いことです。1つ20秒程度で起動が完了します。Googleが持っている、高度な仮想化技術を活用してその速さを実現しているようです。
その仮想化技術が活用されているのは起動速度だけに留まりません。例えばCPUの型番がいつの間にか変わっていたりするんです、インスタンスを停止した履歴もないのに(笑)。 Google Cloud Platform は技術的に他と比較した時に2〜3年先をいっている、と言われることもあります。
ネットワーク技術も非常に高度で、3箇所あるリージョンを跨いだローカルエリア接続ができます。あくまでも「パフォーマンスの観点を無視する」という仮定の下で言えば、データベースを1つのリージョンに置き、各リージョンにアプリケーションサーバーを置くという構成も実現できます。
AWSだとリージョンを跨ぐときには一度グローバルに出る必要があるので、この違いは大きいですね。
Google Cloud Platform の数あるサービスの中でも、特にGoogle BigQueryが素晴らしい!あれはログ界の革命です(笑)。これまでは、そもそもサーバーのログをどこに置くのが一番いいのかという問題がありました。
選択肢として一番に挙がるのはAmazon S3です。置き場所としては良いのですがログを見るためにはダウンロードする必要があります。また、容量やコストを考えると全てのログは保存できないので、どれを保存するか選択する必要もありました。
けれどもはや、こういった課題はfluentdで全てのログをBigQueryに転送するだけで、一挙に解決します。BigQueryにデータを入れておくだけならコストは非常に安いですし、ログを保存するかしないかではなく、全て保存すれば良いという思考に変化しました。
あとはQueryを投げるだけなので、ログの管理が非常に簡単になります。
クラウドサービスの乗り換えは「実は簡単」
Google Cloud Platform は非常に良いサービスだと思うのですが、ネックになるのは技術者が少ないことでしょうか。エンジニア個人として使う分には問題ないのですが、会社全体で使うときにはエンジニア全体をAWSからコンバートするというのは難しいという感覚があるかもしれません。
ただ、本当はそれほど難しい問題ではないんですよ。皆が先に出てきたAWSに慣れているというだけです。
実現できることは大きく変わらないので、例えばWeb Frameworkの違いだとか、Apacheとnginxのconfigの書き方の差だとか、そういったものと同程度の差でしかないと思います。Frameworkを切り替えるよりはずっと簡単なはずです。
AWSから乗り換えると考えた場合、気をつけた方がいいのはElastiCacheやRDSに当たるものが無いことです。
redis・memcacheのマネジメントサービスは Google Cloud Platform に今はありませんので、こちらについては弊社が構築したものをご提供しています。
また、RDSに当たる部分のCloudSQLは、いまいち速度が出ないので弊社ではフルマネージドで構築したものをご提供しています。RDSとほぼ同程度の要求に応えられ、パフォーマンスも出すことが可能です。
S3についてはGoogle Cloud Storageがありますのでまったく心配する必要がありません。むしろオブジェクトストレージとしてならHTTPのEdge Cacheが付いていて、SSL対応でCORSにも対応していて非常に使い勝手が良いです。
プログラマーこそ、インフラ領域で活躍できる世界がある
弊社では、インフラの構築のためのツールを大量に作っていて、ほとんどの作業が半自動化されています。
fluentdやredis、mysqlといったソフトウェアの設定が自動化されていて、「このコマンドを叩けば設定ファイルが自動生成される」という形で一覧化しています。その中でsurfやconsulといったOSSも活用しています。
私は、インフラエンジニアもプログラムは絶対に書けるべきだと思っているんですよ。ミドルウェアを自分でコンパイルする場合は、C言語の知識が必要になります。そういったものを理解していないと問題が起こった時に対応もできませんし、インフラ構築を自動化するためのコードも書くためにも言語の知識は必要です。
その点を考えると、インフラ未経験のプログラマーの人でも、今後インフラの世界で活躍できるフィールドは多くあると思います。
プログラマー出身ならシステム全体の流れも見えていますし、インフラのコードは30行くらいの短いものも多いので、プログラマーもどんどんインフラ領域にチャレンジしていってほしいと思いますね。