- GMOペパボ株式会社
- minne事業部 マーケティングチーム
- 池田 あずさ
その広告は本当に「最適」か? AIによる分析で、CV数を4倍にしたminneの広告配信術
〜ユーザー数が1年で約180万人増!AIによる広告ターゲット最適化やFacebookダイナミック広告など、「工数を抑えて成果を上げる」広告運用ノウハウ〜
手作り作品の販売・購入が楽しめる国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」。
同サービスはユーザー数、流通額、作品数ともに右肩上がりだ。特にユーザー数に関しては、ここ1年で新規ユーザー約180万人を獲得したという。
▼作品数は500万点、アプリダウンロード数は700万件を突破(2017年3月23日時点)
minneのマーケティングチームでは、ここ1年、新規ユーザーの獲得に注力してきたそうだ。例えば、これまで「力技」で行っていた広告運用に、AIを活用した「Cross Xプログラマティックプラットフォーム」による予測分析や、Facebookの「ダイナミック広告」といったテクノロジーを導入したという。
その結果、アプリインストール広告のコンバージョン数は4倍に。また、広告の運用工数の削減にも成功した。
今回は同チームの池田 あずささんと平木 誠さんに、その取り組み概要から今後の展望まで、詳しくお話を伺った。
CPIを抑えた広告運用で、工数に見合うリーチ数が担保できなかった
池田 私は、minne事業部マーケティングチームのリーダーをしています。アプリダウンロード数の拡大を最大の目的として、各種プロモーションや媒体社、代理店との窓口を担当しております。
平木 私も同じくマーケティングチームのひとりとして、アプリのダウンロード数を増やすための施策や、販促系のキャンペーンなどに携わっています。
▼左:平木さん、右:池田さん
池田 「minne」は2012年にスタートした、国内最大のハンドメイドマーケットです。マーケティングチームでは、ここ1年、特に新規ユーザーの獲得に注力してきました。
「ハンドメイド」というと、やはり女性のイメージが強く、現状は女性のユーザーが多いですね。ですがこれからは、性別や年齢を問わず使っていただけるサービスにしていきたいと考えています。
▼ハンドメイドマーケット「minne」のトップページ
そのため、今までハンドメイドに関心がなかった層にも、Webでのリーチを試みていました。
しかし最初は、CPIを抑えた広告運用を進めていった結果、リーチ対象が狭まってしまい、運用工数に見合うターゲットボリュームが担保できなくなったんです。
広告配信にAIを活用!運用工数は減り、コンバージョン数は4倍に
池田 そこで、広告の配信をより最適化するために、Appier社が提供する、AIを活用した「CrossX プログラマティックプラットフォーム」を導入し、その機能のひとつである「CrossX アプリインストール」を活用しました。
「CrossX アプリインストール」を使うと、アプリやWebサイトを通じて入手したユーザーデータを活用して、「minne」に合致しそうなターゲットをAIが自動で見つけ、最適な場所に広告を配信してくれます。
以前は、何十媒体も同時に配信し、どこに、どのように配信するかということを人力で調整していたんです。
しかし、CrossX アプリインストールでは、最初にデータを送り、CPIやインストール後のROASなどの指標さえ決めてしまえば、ターゲットをセグメントする必要もなく、AIが自動で効率的な広告配信を行ってくれるんです。
使用するバナーのクリエイティブに関しては、過去にアドネットワークで配信し、反応が高かったものを定期的に入れ替えています。
この方法で配信したことで、コンバージョン数は約4倍に、ROAS(※)も1.5倍に向上しました。
※Return On Advertising Spend:投資した広告費に対する、獲得できた売上の割合。
「ダイナミック広告」で、ユーザー属性に合わせた広告を自動配信
池田 しかし、「CrossX アプリインストール」は、幅広いユーザーへのリーチが期待できる一方で、ターゲットの細かいデモグラフィック(属性)や、興味カテゴリがわかりにくい部分があります。
そこで、昨年から今年にかけて、クリエイティブを動的に出すことができるFacebookの「ダイナミック広告」で、よりターゲットに適したクリエイティブを表示させ、アプリインストールの促進をしています。
平木 このような広告では、その都度クリエイティブを作る必要がないんです。あらかじめフィードを作成しておけば、その中から成果につながりやすい画像を、自動で表示してくれます。
「minne」の場合は、フィードの素材として、ハンドメイド作品の写真を使っています。
例えば、ママ層に対しては「ベビー・キッズ」の作品画像、男性には「革製品」の作品画像が表示されるなど、表示されるクリエイティブが自動で最適化されていきます。
こちらの運用を開始したことで、手動でクリエイティブを作っていた時に比べ、CPIは3分の2、コンバージョン数も3〜4倍になりました。また、バナークリエイティブの良し悪しに影響を受けず、安定した運用ができるようになりましたね。
媒体によっては実際に広告に使った画像ごとの成果も、データとして見ることができます。ですので、「男性向けでも、こういう画像の方が反応があるんだね」といったPDCAを早く回して、ノウハウを貯めていけるようになりました。
池田 「これならいける!」と思って私たちが方針を決めたバナーより、ダイナミック広告を通じて配信された、私たちの想定とは違ったクリエイティブの方が、成果が上がったりするんです。
今までの経験の中で蓄積されてきた「こういうユーザーにはこれが一番刺さる」という固定概念はある程度取り払って、あとはテクノロジーに任せるという気持ちで進めるのも大切だと思います。
人ができること、テクノロジーができること。それぞれを理解する
平木 私たちが「ユーザーに刺さる良いもの」を考えることも、もちろん大切です。ですがこのような経験を通じて、テクノロジーを活用できる部分においては、それに「乗る」ことも必要なのだと感じました。
ポイントは、AIのようなテクノロジーとバランスよく付き合っていくことだと思っています。もちろんAIにすべてを任せられるわけではないので、人ができるところ・AIができるところをまず理解することが大切です。
人ができることとしても、例えば、私たちが持つファーストパーティーデータ(※)を元に媒体社の担当の方と直接相談することで、より効果的な広告を打とうとしています。
※広告主が、消費者との関係を通じて集めた、購入履歴や行動記録などの情報のこと。
これまで媒体社の方とは、ほぼ代理店経由でしかやり取りがありませんでした。そのため、「◯◯という媒体は男性がターゲットなので、男性向けの広告を出す」という出し分けしかできていなかったんです。
ですが今は直接やり取りすることで、より媒体への理解も深まり、ファーストパーティーデータを活用したチャレンジや事例作りができないかなど、ご相談しやすくなりました。
楽天やAmazonで「欲しいもの」を探すように、「minne」に来て欲しい
池田 現在は、次のステップとして、事業部を越えたデータ活用も進めています。
弊社では、イラストや画像を元に、Tシャツやスマホケースなどのオリジナルグッズを作成・販売できる「SUZURI」というサービスも運営しています。
このサービスをより成長させていくために、「minne」での購入履歴のあるユーザーのデータを加工して、広告出稿時に利用しています。
まだ配信を始めたばかりですが、購入履歴と最終アクセスからの期間をかけ合わせて、広告を配信するユーザーを絞り込むなど、試行錯誤しているところです。
また、今後はマスプロモーションにも注力していきたいと思っています。インストールしてもらうだけでなく、ハンドメイドのある生活を想像し、共感してもらうには、やはりバナーや画像の情報だけだと足りないと思っていて。
また、顔が見えない取り引きでもあるので、信頼感がある人が作っているというイメージをしっかりと広めていきたいですね。
最終的には、何かを探している時に、楽天やAmazonで探すように、minneで探すという世界観を作っていきたいと思います。(了)
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