- グリー株式会社
- インフラストラクチャ本部 情報システム部 シニアマネージャー
- 岡田 寛史
ファイル共有のコスト削減と業務効率化を同時に推進するクラウドストレージ「Box」
今回のソリューション:【Box/ボックス】
〜高いセキュリティの担保と業務効率化を実現するクラウドストレージ「Box」の使い方〜
グローバルなモバイルゲーム会社であるグリー株式会社では、企業規模の拡大に伴って社内ITに関わる様々な改革を行ってきた。以前の「個人ベースで最も便利なサービスを使っていた」時代から「エンタープライズ企業として、全社で安定稼働するITシステムを構築する」というフェーズへの移行を担ったのは、現在の同社・開発統括本部 インフラストラクチャ本部の情報システム部だ。
そしてその改革のひとつにあるのが、クラウドストレージの導入プロジェクトだ。より高いユーザーへの利便性を実現するために導入したのは、クラウドストレージサービスの「Box(ボックス)」。Boxは企業の情報管理に求められる高いセキュリティのハードルをクリアした上で、業務の効率化をも実現する幅広い機能も兼ね備えているのだという。今回は情報システム部・部長の村上 智さんと、同シニアマネージャーの岡田 寛史さんにBoxの導入と使い方のお話を伺った。
社内ファイルサーバーの容量が枯渇!クラウド化へと踏み切る
岡田 弊社ではここ2年くらいかけて、社内IT関連の様々な改革を進め、セキュリティ強化やITコスト削減に取り組んできました。お陰様でだいぶ筋肉質な体制ができてきたところなので、昨年くらいから効率性・生産性の改善を意識したITプロジェクトに取り組んでいます。
まずプライオリティが高かったのが社内のデータ共有方法の見直しでした。元々オンプレミスのファイルサーバーを使っていたんですが、ゲーム事業におけるネイティブアプリへのシフト、コンテンツのリッチ化などを背景に、扱うデータ量が増加し、ファイルサーバーの容量枯渇問題が起こっていたんですね。
また、弊社は社内PCがWindowsとMacの異機種混在、かつスマホBYOD(Bring Your Own Device:個人保有のデバイスを職場に持ち込み、業務に利用すること)環境なので、様々なデバイスを使うユーザーにとってストレスのないインターフェースを実現する必要性も高く、更に外部パートナーの方とのシームレスでセキュアなデータのやり取りを行いたいというニーズが根強くありました。
そこでどのようにデータ共有の仕組みを変えるかといった時に、クラウドストレージを選択することで運用コストの削減と社員にとっての利便性向上を同時に実現できそうだと考え始めました。社内リソース的にもITインフラ的にもいかに投資対効果の高い選択肢にすべきかを考えた時に、色々なクラウドサービスを検討していく中でこのプロダクトなら充分イケる、と感じてBoxの導入に踏み切りました。
「エンタープライズ向け」に開発されているのがBoxの強み
村上 初めてBoxに話を聞いたのは2014年の3月頃で、1年以上前のことになります。サーバーの容量枯渇への対策は急務だったので、他社プロダクトと平行してクラウドソリューションについての情報収集を進めていきました。最終的に2014年の秋にBoxの導入を決め、社内のパイロット展開を経て2015年3月に国内のグループ企業を含む従業員約 1,400 名に正式リリースを行いました。
クラウドストレージはコンシューマー向けには広く浸透しており、プライベートで日常的に利用しているユーザーも多いサービスです。それをエンタープライズITとして利用していくためには、その利便性とシンプルな使い勝手を維持しつつ、セキュリティ面もしっかり担保していくことが重要と考えていました。コンシューマー市場で優れたプロダクトはいくつかありますが、企業のIT部門という視点で見た時に、管理面・セキュリティ面で「他社製品より一歩も二歩も進んでいる」 と感じさせてくれたのがBoxでした。
Boxの場合、最初からエンタープライズをターゲットにプロダクト開発されているので、セキュリティ面では非常に大きな信頼感がありました。具体的には権限管理やログ管理の仕組みがしっかり整っており、 あらゆる履歴が残ります。またAPI連携等で、 コラボレーションプラットフォームとしての方針を打ち出している点にも将来性を感じていました。
実益の高い機能で業務の効率化を実現!自社用にカスタマイズも
岡田 Boxはストレージ以外の機能面も充実していて、導入によってこれまでのオンプレミスのファイルサーバーでは対応できなかった様々な課題を一気に解決できました。例えば100以上の拡張子に対応したファイルプレビューが可能で、オフィス系ファイルは当然ながら、ムービーファイルなどもブラウザからプレビューで確認できるので、業務をスムーズに進めることができます。またBox Syncという機能によってローカルファイルをクラウド上のファイルと同期できるのも利便性が高いです。
▼ローカルとクラウドを同期できる「Box Sync」
また、個人的にも非常に良いなと感じているのは検索機能です。フォルダ名やファイル名だけでなく文中テキストサーチまでも可能です。以前のファイルサーバーでは効率的なファイルサーチができないのが一つの悩みのタネでしたが、Box導入によってその課題も解決されたんです。
▼様々なタイプのファイルでフルテキストサーチが可能
APIも充実しているので、標準機能で足りない部分やシステム連携が必要な部分は独自ツールを開発して使っています。例えば外部ファイル共有を事前登録された相手のみに制限するオーディット機能や、アクセス権限を定期的に棚卸しするためのACL一括管理機能などを実装しています。つまり、Boxは入り口としてはクラウドストレージツールなんですが、豊富な標準機能やAPIを使って社内の様々な業務の効率化が可能な、ワークスタイル変革ツールということです。 そういった考え方をメッセージとして打ち出している点にも共感できました。
ユーザーが安心して使うことができる、容量無制限のストレージ
村上 導入による何よりも大きいメリットは、容量無制限のオブジェクトストレージを手に入れたも同然だということです。そしてユーザー視点でいうと、シンプルな操作性とユーザービリティがあるので、細かい権限管理などもすぐに理解した上で安心して使うことができることです。Boxひとつで社内・社外含めてデータ共有にストレスがなくなったことで、Shadow IT(企業側が導入したITシステムとは別のサービスを従業員が業務に利用すること)を選択する必要もなくなりました。
これまでのファイルサーバーであれば自分たちで行っていたログの管理などもすべて、Boxがセキュリティまで考えた上で実装してくれています。バージョン管理も100世代前まで戻ることもできますし、本当に利便性が担保されていますね。そういった機能があることで、我々のスタート地点を引き上げてくれていると感じています。データ管理・共有のためのトータルの工数が下がるので、結果として社員が他の業務に時間を使えるようになります。その積み上げが全社的な効率化に繋がりますし、新しい技術を生み出すことにも繋がるのではないか、と思います。
今後の更なるサービス強化にも期待
岡田 標準機能には概ね満足しているものの、まだ幾つか強化していただきたい部分もあります。例えばデータ移行機能や大容量データのパフォーマンス改善、API拡張、Linux版Box Syncの提供などです。
特にデータの大容量化は今後も進むと思うので、そういった大容量データの移行ツールやパフォーマンス高速化の部分には大きく期待したいところです。また、コラボレーションプラットフォームとしてのワークフロー機能の強化やサードパーティー製ツールとの連携強化などにも期待しています。