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「話して終わり」の情報共有を脱却!課題解決のスピードを上げる、Qiita:Teamの使い方
〜サイバーエージェントのゲーム・エンタメ事業を行う子会社が所属する「SGE」。「Qiita:Team」の導入で組織横断的な情報共有を実現し、エンジニアの課題解決を促進した事例とは〜
2014年10月、ゲーム・エンターテイメント事業に携わる、12のサイバーエージェント子会社がひとつのグループとなり発足した「SGE(Smartphone Games & Entertainment)」。
発足以来、同グループでは各社にたまっているノウハウの共有やスキルアップを行うために、エンジニアの取り組みとして事例共有会や社内ハッカソンなどを実施してきた。
しかし、そうした「オフラインの場」だけで得られる情報に、限界を感じていたという。
そこで、より簡単でリアルタイムな情報共有を促進すべく、2017年4月より情報共有ツール「Qiita:Team」の利用を開始。
▼同社の「Qiita:Team」上の人気の記事の一例
2017年10月からは所属子会社全12社で導入し、主にエンジニアの素早い課題解決を実現している。
今回は、Qiita:Team導入を主導した株式会社サイバーエージェントの飯田 卓也さんと杉谷 透さんに、SGEにおけるエンジニアの情報共有についてのお話を伺った。
12のCA子会社で「SGE」を結成。横軸のオフライン施策を実行
飯田 SGE(Smartphone Games & Entertainment)は、サイバーエージェントのゲーム・エンターテイメント事業に携わる子会社が所属する組織で、2014年10月に立ち上がりました。
「競争と協調」をテーマに、子会社間の人材交流やノウハウ共有を目的とした、様々な施策を実施しています。
私は、2013年に新卒で入社し、SGEの一社である子会社のグレンジで、エンジニアマネージャーを務めています。
杉谷 私は2014年に新卒入社し、同グループ子会社のグリフォンで、エンジニアリーダーをしています。
現在、SGEには、300名ほどのエンジニアが所属しています。子会社ごとに、女性向けやアクション系、戦国系といった独自の強みを活かしたゲームを制作しています。
各社ゲームの特性も異なり、技術も12社ごとに選定しているので、それぞれに様々な技術ノウハウや、失敗事例がたまっていました。ただ、SGEが発足する以前は、うまくそれを共有することができていなかったんです。
そこでその課題を解決するべく、SGEでは、子会社間での人材やノウハウの共有に取り組んでいます。
例えば半期に一度、SGEの全エンジニアが集まる、「エンジニアナイト」という事例共有会を実施しています。ここでは、各社からひとりずつ登壇し、半期の活動内容や成果を発表します。
また、年に一度、担当役員の日高の名前に由来した「ヒダッカソン」を開催しています。これは、お題に沿った開発に1日かけて取り組み、サーバー部門とネイティブ部門のナンバーワンエンジニアを決めるという競技プログラミングイベントです。
こうしたイベントの後には懇親会があり、そこで他子会社のエンジニアとも情報交換をすることができます。
オフラインの交流だけでは、得られる情報が限定されてしまう
飯田 ただ、こうした懇親会だけですと、得られる情報がどうしても限定的になってしまいます。
オフラインの共有会の場合、どうしてもその時点で一番ホットな「点」の情報が発表されるので、取り組みの文脈や細かいノウハウがごっそり抜けている状態でした。
杉谷 また、そういった場で出会ったエンジニアに直接話を聞きにいっても、「その場で話して終わり」になってしまうということもありました。
当時はドキュメント管理ツールも各社バラバラだったので、事業部全体で、情報を共有する場所がなかったんです。
飯田 そうした状況の中、私の会社でも、プロセスも含めて情報をためておきたいという課題があって。どのツールであれば課題を解決できそうか、色々と検討していました。
当初、既に利用されていた「Redmine」なども候補に上がったのですが、基本的にプロジェクト管理用なので、きちんと整形しないと投稿しづらいといったハードルがありました。
その点、「Qiita:Team」であれば、メモ帳ライクに使えるので書きやすく、気軽に投稿しやすい点がいいなと思い、2017年の4月に、まずはグレンジでQiita:Teamを導入してみることにしました。
少人数でトライアル。運用定着の鍵は、投稿の敷居を下げること
飯田 最初は、Qiita:Teamの機能や運用面を検証するため、グレンジのエンジニア7名でトライアルを行いました。
実際に使ってみると、コードやゲームのレビューなど、簡単なメモを気軽にどんどん投稿できるので、「書きやすい」と実感しましたね。
▼実際の投稿の一例
そして導入後1ヶ月で、投稿数が100件になって。7名でこれほどの件数があれば、全体に広げても大丈夫だろうと思い、翌月からグレンジ全社に導入しました。
全社に導入してからは、運営側としてQiita:Teamを盛り上げるために、地道に毎日投稿するようにしていました。
やっぱり何事も、初めが肝心なので、ネタが切れないように土日に一気に書いて、それを平日に1日1個ずつ投稿していったりしていましたね(笑)。
また、敢えて5行ほどのメモを投稿することで、「こんな簡単なものでも投稿していいんだ」と思ってもらえるように意識していました。
▼敢えて「メモ」的な短い文章も投稿
こうやって自分で毎日投稿しつつ、「発信自体が会社への貢献になる」というメッセージをみんなに伝え続けた結果、投稿する人が徐々に増えてきました。
「いいね」やコメントが付くとみんな嬉しいので、投稿のモチベーションにも繋がっているようです。
事業部全体への導入!ルールは最低限に、情報共有を促進
杉谷 エンジニア共有会の時に、グレンジでの成功例を飯田さんから聞いて、これはSGE全体でもやった方がいいんじゃないかと思いました。
そこでまずは、組織ではなく職種横断という形で、クライアントサイドの一部のエンジニアで導入してみることにしました。
全体で30〜40人ほどだったのですが、意外にみんな投稿してくれて。1ヶ月後にアンケートを取ったら、満足度の高い人が多かったんです。
例えばアンケート回答者全員が、1日に1回以上Qiita:Teamを見ていましたし、Qiita:Teamのおかげでインプット・アウトプットの機会が増えたという人が80%以上でした。
これであれば、事業部全体に導入してもみんな活用してくれそうだと思い、2017年10月から、SGEの全12社にQiita:Teamを導入しました。
飯田 現在は、エンジニア全体の情報共有ツールとしてQiita:Teamを活用しています。2017年4月のトライアル導入から同年12月までの投稿数は、累計で700記事を超えています。
運用ルールは、最低限しか定めていません。最低限の「禁止ルール」だけ決めていて、あとは誰が発信したものかわかるように、名前と所属は必ず入れましょう、といったルールくらいです。
と言うのも、やはり気軽にどんどん投稿してもらいたいという思いがあるので、なるべくルールを少なくして、自由に使ってねというスタンスで運営しています。
投稿内容としては、業務中の気付きや、日報、手順書といった日々のメモから、業務に直接関係のない個人研究や全体発表用にまとめた資料まで、本当に様々です。
また、ある特定のテーマで共有する際には、それ専用のプライペートグループを作成して、閲覧権限を関係者だけに設定した上で公開しています。
グループ用の投稿にはタイトルにプレフィックスを付けたり、タグ付けを推奨することで、後から検索しやすいように工夫もしていますね。
リアルタイムの情報共有により、疑問や課題の解決が容易になった
杉谷 今では実際に開発で行き詰まった時にも、まずはQiita:Team上に何か情報がないか検索するようになりました。
例えば、リアルタイム通信を実装する時に「Photon」というネットワークエンジンを使うのですが、開発で「詰まる」ポイントはけっこう皆同じだったりします。
以前は、ノウハウが共有されていなかったので、詰まる度にPhoton側に質問をしていたんです。ですが先日、開発に詰まった際にQiita:Teamを検索したところ、過去の質問と回答をまとめたメモが残されていたので、それを見て解決することができました。
それ以外にも、「ライブラリリスト」という、各子会社がどのツールを使っているかをまとめたドキュメントもあります。
これを見ることで、「このライブラリのことはこの子会社に聞いてみよう」というように、目の前の問題を素早く解決することができるようになりました。
飯田 また発信する側としては、リアルタイムで全社に向けてドヤれることが良かったりします(笑)。以前はそういった機会は、半期に一度の共有会しかなかったので。
例えば、この間「iPhone X」が登場した時に、特殊なUIだったので各社どういうふうに対応しているんだろうと思い、Qiita:Teamを見てみたんです。
すると早速、「所属子会社の1社ではこういう風に対応しました」という記事が出ていて。以前と比べ、各子会社のノウハウ共有がリアルタイムに行われていることを感じました。
「情報共有の文化」をさらに盛り上げていきたい
杉谷 現在、アカウント数では約250人いますが、そのうち投稿者は2〜3割程度です。投稿数は順調に増えているものの、まだ「見る専門」の人が多いですね。
そこで、その人達にもQiita:Teamに投稿してもらうために、運営側で人気記事やリアクションの多い記事をランキング形式でまとめ、隔週でトピックスメールとして配信しています。
出来るだけ多くの人に興味を持ってもらえるように、毎回トピックスメールも工夫をしていますね。
▼実際に配信しているメールマガジンの一例
飯田 また、SGEには子会社の枠を超えて、プログラミング言語やツールなど関心のあるテーマで集まる「コミュニティー」があります。
今後は、その各コミュニティーでもQiita:Teamをアクティブにしていって、組織全体の資産共有をさらに盛り上げていきたいです。(了)