- スマートニュース株式会社
- Manager of Corporate Engineering
- 須藤 吉公
スマートニュースのエンジニア組織の「今」。VPoE、Corporate Engineering新設の背景
〜更なる拡大に向け、組織を改革中!敢えてエンジニア組織の中にCorporate Engineering Teamを置き、VP of Engineeringを新設した理由とは?〜
2017年10月に、世界2,500万ダウンロードを突破したニュースアプリ「SmartNews」。
同アプリを展開するスマートニュース株式会社では、今後の更なる成長を見据え、現在およそ40名からなるエンジニア組織を進化させ続けている。
具体的には、2017年10月1日より、エンジニア組織のマネジメント責任者として、VP of Engineering(以下、VPoE)を新設。エンジニアマネージャーの育成などを強化することで、組織拡大への地盤固めを行っている。
また同タイミングにて、エンジニア組織内にCorporate Engineering Teamを設置。
日本企業として初めてビデオ会議システム「Google Meet Hardware Kit」を導入するなど、社内の課題をエンジニアリング的アプローチによって解決することを目指している。
今回は同社でVPoEを務める瀬良 和弘さんと、Corporate Engineering Teamのマネージャーを務める須藤 吉公さんに、SmartNewsを支えるエンジニア組織の変化について、詳しくお話を伺った。
2017年10月、VPoEとCorporate Engineeringを新設
瀬良 私は2016年の3月に入社してから、スマートニュースでエンジニアとして仕事をしてきました。ただこの1年は、実業務はかなりマネジメントに寄っていて。
会社としてもその部分にもっと力を入れようということで、2017年10月にVP of Engineering(以下、VPoE)を拝命し、エンジニアリングチームのマネジメントをしています。
※「VPoE」についての解説記事は、こちらをご覧ください。
須藤 私は2017年の10月に入社し、同じタイミングで発足したCorporate Engineeringチームのマネージャーになりました。
もともとは15年ほど、エンジニアとして、サーバー周りやインフラ、SREなどに携わってきました。すると少なからず、いわゆる「情シス」との接点も多かったんです。
そこで前職ではコーポレート部門の責任者も務め、組織や社内の仕組みづくりに関わっていました。
瀬良 弊社のエンジニアリングチームは現在、40名ほどの組織です。
サービス側は、サーバーサイド、プロダクトサイド、広告、そしてiOS・Androidアプリの開発のチームが連携しながら、SmartNewsというひとつのサービスを作っています。
それに加えて、SREという共通インフラの改善をミッションとするチーム、そして、Corporate Engineeringのチームがあります。
Corporate Engineeringは、SmartNewsのサービス開発をしているわけではありません。ですが、アプローチとしてはエンジニアリングの手法を使っていくということで、エンジニア組織の中に置く形になっています。
なぜスマートニュースに「VPoE」が必要だったのか?
瀬良 まずVPoEについてですが、私の役割は、基本的に一般的なVPoEとほぼ一緒です。エンジニアの組織づくりと採用、育成、そしてチーム全体のプロダクトのデリバリーに責任を負っています。
エンジニアチームと言っても、20名くらいまではマネジメントの必要性は高くないと思うんですよね。ただ、3桁を超えてくると、全てをCTOが見ることも不可能になりますし、誰が何をやっているのかをしっかり把握する人が必要になります。
そこで弊社としては、今後の拡大に向けた土台を作り、チーム力を強化する必要があると考えてきました。
スマートニュースの場合、サービスがひとつなので、「エンジニアリングとしてこうすべきである」ということは、わりと合意に達しやすい部分はあります。
ただ、例えばビジネス的に「こういうことをやりたい」ということと、エンジニアリング的な実現可能性の擦り合わせとなってくると、エンジニア全員が得意なわけではありません。
ですので、チームとしてはエンジニアリングをしっかりやりつつ、他部署とのコミュニケーションでこぼれてしまう部分をつなぐ役割の人は、やはり必要だなと考えていました。
また、ワンサービスであるがゆえに、同時に走っているいくつもの企画を擦り合わせて、タイミングを調整する難しさもあったりします。
こうしたサービス開発に関わる諸々をしっかり管理して、スピード感を高めていくことも、VPoEのミッションのひとつですね。
長期目線で取り組む、エンジニアリングマネージャーの育成
瀬良 また現在、エンジニアリングマネージャーの育成にも力を入れています。
ビジネス職、例えばセールスであれば、すごいセールスマンが突然チームに入ってマネージャーになっても、違和感はないですよね。
でもエンジニアの場合は、チームプレーの中で「この人はリーダーだよね」という信頼感が醸成されて、リーダーになっていくことが多いです。つまり長期戦になるので、今後を見据えて、今からその育成には力を入れています。
そのため弊社の場合、全てのエンジニアを「スペシャリストなのか、マネージャータイプなのか」を判断し、マネージャタイプの場合は、評価の際にその期待を伝えるようにしています。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、やはりこういったコミュニケーションは大事ですね。改めて適性を伝えられることで、日々の行動が変わり、半年後に形が見えてきたりするんです。
弊社はCEO含めてエンジニアリングのバックグラウンドがあるので、現状、この適性の判断は妥当にできているかなと思っています。
ただ、今後より組織を拡大するにあたり、キャリア形成についての判断も、持続可能となるように仕組み化していく必要があります。
組織の考え方に関しても、日本固有の前提を置かないように取り組んでいきたいですね。
「情シス」のイメージを変える、Corporate Engineering
須藤 次に、VPoEと同じタイミングで新設されたCorporate Engineeringですが、スローガンとしては「会社をhackする」ということを掲げています。
例えばSmartNewsであれば、アプリのダウンロード数やユーザーが増えたら、負荷対策が必要になります。
会社も同じで、社員が増えることで社内インフラ等に課題が出てくるので、エンジニアリングで解決していこうということです。
Corporate Engineeringと言うと少しマイナーに聞こえるかもしれませんが、世界的にはメジャーな職種なんですよ。ただ日本ですと、いわゆる「情シス」となってしまって、あまり良いイメージがないかもしれません。
情シスは、会社のITシステムやセキュリティの根幹に対してコミットしているので、誤解を恐れずに言えば「守り」の仕事が多いのかなと思っています。
やりたいことに対して「セキュリティー的にちょっと難しいですね」と言う人、みたいなイメージかなと。
もちろん会社の情報資産を正しく管理し、守るということは疎かにできません。しかし、それらをもっとエンジニアリング的手法を使って「攻めの方針」に変えていきたいと、前職のときからずっと思っていました。
私としては、Corporate Engineeringをエンジニアリングチームの中に置くことの意義は、大きくふたつだと考えています。
まずエンジニアって、やっぱりエンジニアでありたいんですよ。「君、コーポレートエンジニアリングで、コーポレートの組織の中だからね」って言われたら嫌じゃないですか。僕自身もそうですし。
次に、「情シスはシステムを導入する部署の人」という認識を変えていきたいからです。
代理店からシステムを導入した結果、それがとても使いにくかった。ということは少なからずあると思います。
それを「代理店が入れたから仕方ない」と終わるのではなく、たとえば使いにくい部分を自前でプログラム書いたり、カスタマイズしたりしていきたいんですよね。
エンジニアリングチームの中にいれば、まわりのエンジニアの意見も取り入れやすいですし、もちろんエンジニアのひとりとしてそういったことにコミットすることが求められるようになります。
「エンジニアなんだから、原因を追及して、解決するまでやろうよ」という姿勢で仕事に臨めると思うんですね。
最先端のビデオ会議システムの導入をはじめ、様々な改革を実施
須藤 チームは、現在3名で構成されています。これまでの4ヶ月弱でも既に色々なことに取り組みましたが、直近でやったのは、「Google Meet Hardware Kit」の導入です。
これはGoogleが提供するビデオ会議システムなのですが、Chromeboxとタブレット、カメラとマイクがオールインワンのセットになっています。2017年10月にワールドローンチされ、日本では11月下旬に発売されたものを、日本企業としては初めて導入しました。
弊社の場合、ニューヨークとサンフランシスコにオフィスがあって、一緒に開発をしているので、リモート会議も多いんです。その際、「声が聞こえにくい」といった問題が以前からあったんですよね。
ですが、これまではその部分を専門で見る人がいなかったので、課題感だけがあってフラストレーションが溜まっていました。それで色々な機材をテストして、最適だと考えたGoogle Meetを導入しました。
▼日本企業として初めて導入した、「Google Meet Hardware Kit」
これは、まず性能が良くて。マイクの集音能力が高く、音もクリアで、カメラも4Kなんですよ。
また、タブレットからボタンを押すだけで、すぐに会議に参加できます。社内の評判もとても良くて、「本当にその場にいるくらいの感覚」なんて言われていますね。
また、受付に新しく入れた来客用のシステムも評判がいいです。日本とグローバル含め、6社を比較検討して、最終的に「ACALL(アコール)」というシステムを導入しました。
▼来客用の受付システム「ACALL」
これは、アプリケーションの出来がすごくいいんですよ。柔軟性も高いので、弊社ではSlackと連携させて、来客の方が各担当者を直接呼び出せるように設定しています。
導入以前は、コーポレートの人が受付電話をずっと取っていて。そうしますと仕事がぶつ切りにされるので、非効率的だったんです。
他にも採用チームのための採用管理システムを導入したり、セールスの顧客管理システムの整備をしたり、色々な部署と仕事をしていますね。
エンジニアの課題解決能力を活かし、社内の仕組みをより良くする
須藤 エンジニアは、「困ったこと」をプログラミングで解決するじゃないですか。そのときの思考としては、まず、その問題の原因を見つけるんですよね。そして、それに対しての解決策をプログラムしていく。
つまりエンジニアって、「問題の原因を探す」という行為がとても得意な人種だと思うんです。なので、会社の課題に対しても、答えを見つけるのが早いのかなと。
また、この仕事の一番の魅力は「お客さんが社内にいる」ということだと思っています。
よくBtoBのサービスの場合、エンジニアはお客さんの顔が見えづらくてモチベーションが湧かない、なんて言いますよね。その点コーポレートエンジニアリングは、相手が社内の人なので、フィードバックがとてもわかりやすいです。
「ありがとう」って直接言われるとやりがいを感じますし、本当に楽しいですよ。
さらに言うと、将来起業を考えている方にもオススメなんです。
僕は今、入社して4ヶ月弱なのですが、経営陣をはじめ、コーポレート、人事、セールス、エンジニア…色々な人と仕事して、色々な人の悩みを聞いていて。
すると、「ベンチャーってこういう感じででき上がるんだ」というのが何となくわかってくるんですね。
今、本当にやりたいことがたくさんあって、人が圧倒的に足りていないという状況です。ご興味のある方はぜひ、ご応募いただければと思います(笑)。
瀬良 SmartNewsのサービスを作るのもすごく大事なのですが、こちらの仕事は希少価値も高いですし、すごくチャンスだと思いますね。
今後も、より強いエンジニア組織を作るべく、がんばっていきたいと思います。(了)