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エンジニア組織を成功に導く「VP of Engineering」とは? CTOとの違いも徹底解説!

「VP of Engineering」という役職を知っていますか?
海外、特に欧米のエンジニア組織では以前から欠かせない存在とされていますが、日本での認知度はまだまだ低いかと思います。
今年の1月には、Uberが元GoogleのエンジニアをVP of Engineeringとして採用したことが、トップニュースになりました。
また国内でも、4月に株式会社メルカリが、CTOとVP of Engineeringの2頭体制への移行を発表しています。
テクノロジー系のトップVCのひとつであるUnion Square VenturesのFred Wilson氏は、その存在意義について、2011年にこう語っています。
When a company has a strong CTO and a strong VP Engineering that trust, respect, and like each other, you have a winning formula.
(翻訳)企業が強いCTOと強いVP of Engineeringを有し、その2人がお互いに好感を持ち、信頼、尊敬し合っている時、その企業は勝利の方程式を手に入れている。
これから日本でも、どんどん増えてきそうなポジションのひとつかと思います(長くて呼びづらいけど)。
今回はそんなVP of Engineeringについて、その役割や、CTOとの違い、そして国内における事例、イベントなどを紹介したいと思います。
VP of Engineeringとは? CTOとの役割の違いを理解しよう
そもそも「VP」は、「Vice President」の略です。日本語では「副社長」と訳されることが多いのですが、多くの海外企業での実態は異なります。
実際に私自身もアメリカ企業に勤務していた経験がありますが、VPは、日本で言うところの「部長」のような役職です。
つまりVP of Engineeringとは、実質、エンジニア組織のトップとして、マネジメントを担う存在です。
VP of Engineeringの役割は、CTOと比較して説明されることが多いです。実際、多くの日本企業では、その役割をCTOが代わりに担っているケースが見受けられます。
前述のFred Wilson氏はは、こう語っています。
The CTO makes sure the technical approach is correct and the VP Engineering makes sure the team is correct. They are yin and yang.
(翻訳)CTOは、技術的に正しいアプローチを追求し、VP of Engineeringはチームを正しい状態に導く。両者は「陰と陽」的な存在だ。
では両者の違いを、具体的に見ていきましょう。
【CTO】
- 社内(組織)の中で、最も技術に強い存在
- 技術課題に取り組む
- アーキテクトであり、考察者であり、実験者であり、試験者
- 技術戦略・技術方針を描くことに特化している
- 多くの場合、創業期より技術面でその企業を支え、CEOやCOOのように経営に参画している
【VP of Engineering】
- エンジニア組織を成功に導く、チームビルダー的な存在
- 組織課題に取り組む
- 高いコミュニケーション能力、課題解決能力が求められる
- 採用、育成、マネジメント、プロダクトリリースなど、その業務は多岐に渡る
- 他部署(マーケティング等)のリーダーと連携しながら、上級職メンバーとして職務を行なう
簡単にまとめると、このような違いがあります(企業によって、その立ち位置は微妙に異なりますが)。
なぜ「VP of Engineering」が必要なのか?
組織が立ち上げフェーズで規模もまだ小さい場合は、CTOがVP of Engineeringの役割を兼務するケースも少なくありません。
では、なぜCTOに加えて、VP of Engineeringという存在が必要になってくるのでしょうか?
- CTOが日々の業務に忙殺されると、プロダクトの成長に必要不可欠な技術構想を描くことが遅れる
- エンジニアの数が増えるに従って、開発を行いながらマネジメントをすることが難しくなる
- 採用を強化するフェーズとなると、面談などに時間を割く必要が出てくる
- エンジニアを理解できる、マネジメントの存在が必要になる
実は国内企業でも、VP of Engineeringという役職を名乗ってはいないものの、同様の役割を担うメンバーを選任することは珍しくありません。
その名称は、開発本部長、エンジニア採用責任者、開発人事部長、といったものです。
例えば株式会社クラウドワークスでは、事業の拡大に伴い、開発部門のゼネラルマネジャーであった安西 剛さんを中心に、エンジニアの「チーム化」を実行。
開発チームを組織化し、コミュニケーション・マネジメントの課題解決を行いました。
チームがある程度の規模になると、横のつながりをどう作っていくか、コミュニケーションを設計してあげる必要があるんです。
そこで思い切って、ひとつだったチームを5人1組ほどの小さなチームに分割しました。
また株式会社Speeeでは、エンジニアマネジメント責任者 兼 エンジニア採用責任者である是澤 太志さんが、エンジニアカルチャーの醸成の旗振り役を行っています。
「エンジニアっぽく勝手にやっちゃおう」というカルチャーを根付かせていくことで、自走できるエンジニアを育て、マネジメントの役割を「最低限のフォロー」にとどめています。
自由に行動してほしい理由は、IT業界をずっと見てきた中で、自走している人・自分から情報発信をしている人がやっぱり成長していると感じているからです。
オープンな場所でアウトプットをし、フィードバックをもらうことで課題に気付いて成長する。これが基本であり大原則だと思っています。
freee株式会社では、開発人事部長の加来 純一さんが、採用とエンジニアの働きやすい環境づくりにコミットする役割を担われています。
人によって「特定の技術を磨きたい」「マネジメント経験を積みたい」(一部略)というように志向性が異なるので、それぞれに合った仕事を渡していくことが大事です。
そして、このようなキャリアビジョンを会社として把握するためにも、エンジニアの場合は、2週間に1度の頻度で、マネージャーとの1on1を実施しています。
こうして見てみると、様々な企業で、既にVP of Engineering的な活動がなされていることがわかりますね。
VP of Engineeringという概念は、国内でも確実に広まっている
また最近では、VP of Engineeringをテーマとしたエンジニアミートアップなども開催されています。
先日、2017年11月28日には、株式会社サイバーエージェントにて、「VP of Engineering meetup by CA」が開催され、私も参加してきました。
こちらのイベントは、VP of Engineeringをエンジニア組織のマネジメントと位置付け、サイバーエージェントグループ各社の取り組みを紹介したものです。
▼実際のイベントの様子
ざっと100名ほどが参加していましたが、冒頭の挙手制のアンケートによると、参加者の方の属性は
- 実際にVP of Engineeringを自身が務めている人:3名ほど
- 自分ではないが、社内にその役割が公式に設けられている人:1名
- CTO、もしくはマネージャークラス:15名以上
※目視での確認なので、正確ではない可能性があります。
といった内訳でした。個人的には、想像以上にVP of Engineeringというワード・存在が認知されているという印象です。
こちらのイベントで紹介されたのは、下記のような取り組みでした。
①エンジニアのパフォーマンスを最大化させる、組織活性化の施策
組織名:株式会社サイバーエージェント アドテクスタジオ
登壇者:業務推進室 伊藤 淳貴さん
登壇資料はこちら
エンジニアが大切にしている「価値観」を、Moving Motivatorという手法で分析し、施策に落とし込んだ事例が紹介されました。
②エンジニア横軸組織の変遷
組織名:株式会社サイバーエージェント SGE
登壇者:CTO 白井 英さん
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ゲーム事業を手がける子会社12社で結成された「SGE」。その横軸の組織である「エンジニアボード」がどのように変化し、機能していったのかが紹介されました。
③エンジニアを採用する技術
組織名:株式会社サイバーエージェント メディア統括本部
登壇者:エンジニアリングマネージャー 藤原 聖さん
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格言として「先ず隗より始めよ(※)」という故事を引用し、優秀なエンジニアを採用するためには、まず身近な社内のエンジニアを満足させよ、という内容でした。
※先ず隗より始めよ(まずかいよりはじめよ):「大きなことを始める時は、まずは身近なことから始めるべき」という意味合いを持つ故事。
④横断組織の失敗から学ぶこと
組織名:株式会社CyberZ
登壇者:F.O.X サービスマネージャー 門田 矩明さん
登壇資料はこちら
全社横断で技術戦略室を立ち上げたところ、わずか3ヶ月ほどで解散となってしまった原因を分析され、横軸の組織を運営する上でのノウハウを紹介されていました。
VP of Engineeringの大切な役割は、チームを成功に導くこと
このように、VP of Engineeringは、エンジニア組織を成功に導くための、様々なことにコミットする存在です。
そのために重要な要素のひとつは、目標を達成し続けることです。実際にVP of Engineeringの責任領域のひとつには、プロダクトリリースが含まれています。
SELECKでは、この「目標を達成し続けるチーム」を作るには、「振り返りを通した、改善の習慣化」が重要であることを、過去500社の取材を通して発見しました。
そこで「振り返りからの改善」をbotがサポートする「Wistant(ウィスタント)」というツールを開発しました。
「目標達成するチーム」を作りたいとお考えの経営者・マネージャーの方は、ぜひ、チェックしてみてください。