• 株式会社セブン銀行
  • 執行役員 セブン・ラボリーダー
  • 山本 健一

ATMのその次へ!セブン銀行の、オープンイノベーションを活用した新規事業への挑戦

〜全国23,000台以上のATMや提携金融機関のリソースを活用し、スタートアップとの協業で新規事業を創出したセブン銀行の事例〜

コンビニエンスストアのセブン-イレブンを中心に、全国23,000台以上のATMを展開する、株式会社セブン銀行。

同社は、24時間365日稼働するATMネットワークをベースとし、「スマホATM」や「現金受取サービス」など、新しいサービスを開発し続けている。

そんなセブン銀行も、過去には社内に溢れるエネルギーから生まれるアイデアを事業化する仕組みが整っておらず、新規事業の開発には課題を持っていたという。

そこで同社は、2016年2月より、Creww社が運営する、大企業とスタートアップのオープンイノベーションプログラムである「crewwコラボ」を導入。

▼セブン銀行の「crewwコラボ2016」

2016年のコラボでは2社との協業が生まれ、そのひとつである「リアルタイム振込機能」は、1年半の事業化プロセスを経て、今秋に正式リリースを迎える。

今回は、crewwコラボを推進するセブン・ラボリーダーの山本さんと、リアルタイム振込機能の事業担当者である長沢さんに、crewwコラボ導入の背景から事業化に至るプロセスまでを、詳しくお伺いした。

新規事業への挑戦。多様なメンバーが集結し、セブン・ラボを結成

山本 私は中途でセブン-イレブン・ジャパンに入社し、以来ほぼ広報を担当していました。2005年にセブン銀行へ出向となり、こちらでも広報に従事したのち、数年前から事業企画の業務に携わっています。

現在は、新規事業創出をミッションとする「セブン・ラボ」という部署で、リーダーを務めています。

長沢 私はもともと信託銀行の出身で、そこで10年ほど働いた後にセブン銀行に入社しました。当初は事務企画を担当し、その後、商品サービスの開発・企画の業務に携わってきました。

セブン・ラボには、2016年4月の立ち上げと同時に参画しました。現在はドレミング社と協業した「リアルタイム振込機能」の事業化を中心に、様々な新規事業に挑戦しています。

▼左:長沢さん、右:山本さん

山本 セブン・ラボは、スタートアップと大企業のオープンイノベーションである「crewwコラボ」に取り組んだタイミングで新設された部署です。

メンバーは、創業当初からATMを進化させ続けてきた者や、経産省のイノベーター育成プログラムでシリコンバレーに行った経験のある者など、中年男性5名です。

多様なバックグラウンドを持った人材が集まっており、自分たちで「おやじダイバーシティ」と呼んでいます(笑)。

そうした中で我々は、crewwコラボから生まれた新規事業の推進を中心に、新規事業創出の「機会」を社内に幅広く作り出す役割を期待されています。

アイデアはあれど、社内コンテストからの事業化は「ゼロ」止まり

山本 セブン銀行は、セブン-イレブンのATM事業から始まった会社で、今年で設立17年目になります。

ATMの設置台数は、2017年9月時点で全国23,000台を突破し、業績も伸びています。しかし、それだけでは会社として次の成長が展望できない、という危機感がありました。

そこで4年前、トップより「次の新しい事業やサービスを生んでいこうよ」という声が全社的にかかるようになり、その一環として、新規アイデアを募る「社内コンテスト」もスタートしました。

このコンテストは、共通の課題意識やアイデアを持つ社員が、全社横断的にチームを組んで、各々の事業アイデアを経営陣の前でプレゼンするものです。

チームでの活動期間が約2ヶ月あるのですが、そこでテーマに関する勉強やディスカッションをして、新規事業のアイデアを練っていきます。

相当な労力がかかるにも関わらず、嬉しいことに延べ約150名もの社員が参加して、通算で50くらいのアイデアが出てきました。

このコンテストの一番の成果は、社内の「雰囲気作り」ですね。他部署の人々との交流を通じて、「この部署にこんな面白い人いたの」とか、「こんなアイデアを持っている人がうちの会社にいるんだ」といったように、とても盛り上がりましたね。

一方で、運営側の工夫が足りなかったこともあり、社内コンテストから実際に事業化できたものは殆どありませんでした。

「社員の沸々としたエネルギー」をどうすれば具体的な事業創出に繋げられるのか、ここが会社の大きな課題でした。

オープンイノベーションを目的に、「crewwコラボ」を開催

山本 そうした状況の中、「スタートアップと新規事業を一緒に考え、創ってみたらどうか」という話が社内で挙がり、2016年2月に「crewwコラボ」を開催することにしました。

crewwコラボは、スタートアップと大企業のオープンイノベーションを目的としたイベントです。

私たちの場合は、「国内2万台超のATMと様々な金融機関とのネットワーク」などの当社が保有するリソースを提示し、それを活用した協業アイデアを募集しました。

すると、40を超える企業が応募してくださり、たくさんのアイデアが集まりました。中には、我々の常識を覆すようなアイデアも数多くありましたね。

選考ではまず40社を10社ほどに絞ったあと、約2ヶ月かけて各社とのディスカッションを重ね、提案内容を一緒になってブラッシュアップしていきました。

2016年4月、最終選考として6社が経営陣へのプレゼンテーションを行い、結果的に2社のアイデアが選定されました。そのひとつが、ドレミング社の「給与前払いサービス」になります。

自社だけではなかなか事業化できない、新しいアイデアの実現へ

長沢 給与前払いサービスは、契約法人の従業員が給与日などを待たずに、ドレミング社のシステムを通じて、即座の給与振り込みをセブン銀行に申請できるサービスです。

支払いは、セブン銀行のリアルタイム振込機能で即座に実行されるため、従業員は働いた分の給与をその日のうちに受け取ったり、立替経費を即日精算することが可能になります。

実はもともと、crewwコラボをする以前から、給与前払いのサービス自体は検討していました。

働き方が多様化する現代において、「従業員が必要なタイミングで、自分が働いた分の給与を受け取れる」というのが本来あるべき姿なのではないか、という課題感がずっとありまして。

グループ会社のセブン-イレブンやイトーヨーカドーなどでは、パートやアルバイトの方が多く働いているので、そうしたニーズは一定数あるだろうと感じていました。

ただ、実際に自分たちですべてをやりきるモデルでサービスをイメージすると、「収益性や市場性」といった、事業上の懸念点を解消することができずにいました。

このもやもやした思いを抱いていたところに、ちょうどドレミングさんから「給与前払いサービス」の協業案をいただいて。「ぜひ、やってみよう!」となりましたね。

銀行本来の領域に集中し、使命感とスピード感をもって事業化

長沢 もともと、我々の中でも「ここの領域をやりたいよね」という思いはずっとあったのですが、どうしても「自前主義」でやろうとしがちだったんです。

今回、そこをドレミングさんとの協業により銀行本来の領域に集中できたことで、スピード感をもって開発することができました。

就業管理や給与計算システムは専門のスタートアップにお任せして、我々は振込の仕組みを整えていく。この役割分担が、非常に大事だったなと思います。

山本 加えて、crewwコラボという形を取ることにより、「使命感」が自然と醸成されましたね。

熱意やノウハウのあるスタートアップに対して、「こちらもコミットして約束を果たさないといけない」という思いが、事業化の推進を後押ししました。

今であれば、色々な経験を積んでノウハウも出来てきたので、個別にスタートアップを見つけてきて協業することも可能かもしれません。

しかし、当時全く知見のない中で、crewwコラボというプラットフォームの上で、フォローをいただきながら進めることができたのは、我々にとって大きなメリットがありましたね。

1つひとつの積み重ねで、多くのイノベーションを生んでいきたい

長沢 セブン銀行の事業は、ATMから始まっています。そのため、個人のお客様に直接フロントに立ってサービスを提供してきたところに、当社のDNAがあると思っています。

今回のリアルタイム振込機能においても、最終的には個人のお客様にご利用いただくサービスですが、我々からすると「BtoBtoBtoC」くらいの距離があるんですよね。

個人的な思いとしては、今後より個人のお客様に近いサービス開発などに挑戦してみたいと思っています。

山本 新規事業を作ることだけがイノベーションではない。これはトップがよく言っていることです。当社では「今まで1ヶ月かかっていた仕事を3週間でやる」「今まで10人でやっていたことを8人で出来るようにする」といったことも、イノベーションであると定義されています。

全社的にこのような意識を高めている中で、社内外問わず、「取り組みを形にして外に発信する」ということは、非常に重要だと思っています。

例えばリアルタイム振込機能も、給与の文脈で発信したものに対し、「実はこれ経費精算に使えるよね」とか、「ポイント交換でも使えるね」といった反応や気づきを得られたりして。

取り組みを「見える化」することで、そこから何かにつながってサービスがスケールしたり、何かしらヒントを得て他のサービスが生まれたりするように、全部つながってくると感じています。

これからも、1つひとつの小さな挑戦・成果の積み重ねで、もっと多くのイノベーションを生んでいきたいですね。(了)

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