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全員の目標をオープン化!AbemaTVの、エンジニアのコミットを最大化する組織づくり

〜全員の目標をオープンにすると何が変わるのか? AbemaTVの、OKRを用いた「エンジニアのパフォーマンスを最大化する」組織づくりとは〜

無料で楽しめるインターネットテレビ局として、2016年4月に開局した「AbemaTV」。

記憶に新しい「72時間ホンネテレビ」のようなオリジナルの生放送コンテンツなどを提供し、そのダウンロード数は、2017年11月時点で2,300万を突破。順調に成長を続けている。

そんな同サービスを支えるのが、エンジニア、デザイナー、Webディレクターといったメンバーで構成される、株式会社AbemaTVの開発局だ。

開発本部長を務める長瀬 慶重さんは、AbemaTVの開発局を「サイバーエージェントグループの中でもロールモデルになるような開発組織にしていきたい」と語る。

その実現のため、開発局では目標管理の手法として「OKR(Objectives and Key Results)」を導入。

メンバーの個人目標と事業目標の結びつきを強め、かつ目標をすべてオープンにすることで、1人ひとりのモチベーションを引き上げることに成功している

今回は長瀬さんに、AbemaTVの開発局におけるマネジメントについて、詳しいお話を伺った。

エンジニアがより一層、サービスにコミットできる組織を作りたい

僕は2005年8月にサイバーエージェントに入社しました。当時はまだグループ全体にエンジニアが数十名しかいなかったため、技術職の採用や組織づくりを担っていました。

その後「アメブロ」や「アメーバピグ」、ソーシャルゲームといった事業サイドに移ったのですが、AbemaTVを開局するにあたり、また開発組織に専念することになったんです。

AbemaTVは、社内の様々なプロジェクトに協力してもらったことで、非常に優秀なエンジニアを集めることができましたし、社外からも多くの優秀なメンバーが参画してくれています。

そのため個人的には、AbemaTVの開発局を、サイバーエージェントグループの中でもロールモデルになるような、グローバルでも通用するようなチームにしていきたいと思っています。

そして、海外カンファレンスや世界的に有名なテックカンパニーの見学に参加したメンバーに聞いても、優秀なエンジニアほど、自分が担当する事業やサービスにしっかりコミットしているんですよね

ですのでAbemaTVの開発組織においては、各メンバーのパフォーマンスを最大化することにプライオリティを置いて、組織を作っていきたいという思いがあったんです。

そのための手法として、目標管理の方法を刷新し、今年の4月から「OKR(Objectives and Key Results)」を導入しました。

※「OKRって何?」という方は、こちらの解説記事をご覧ください。

事業目標と個人目標をリンクさせるため、「OKR」を導入

OKR導入前は、すでに決まっている事業目標を各チームリーダーにまず伝えて、彼らがメンバーと個人目標を設定し、半期ごとに評価をしていました。

事業目標はサービスごとに異なりますが、例えば、売上やアクティブユーザー数といったいわゆるKPIです。

以前のフローですと、個人目標が各チームリーダーの力量に依ってしまう部分がありました。また、事業目標とリンクしない個人目標が設定されることもあり、そうすると、メンバーのパフォーマンスを最大限引き出すことが難しかったんです。

ですがOKRを使うと、開発局としての事業目標と個人目標をしっかりとリンクさせることができます

▼一般的な、OKR設定のイメージ図(同社が運用しているものではありません)

具体的な運用としては、四半期ごとにOKRを立てています。例えばこのクオーターでは、開発局として5つの「O」を設定しています。

負荷対策や週あたりのアクティブユーザー数、長期目線での技術的改修などです。

そしてそれぞれのOにKRを紐付けていくのですが、その際には各領域の技術幹部と綿密な擦り合わせを行っています。

サーバーサイド、Android、iOS、デザイナーといった職種ごとに、代表者が1人ずつ集まってとことん話し合うという形です。

個人的には、OKRというフレームを使って目標についてしっかり議論することだけでも、僕らの目標設定のプロセスが劇的に変わり、大きな意義があったと感じています

そしてKRは、最終的にメンバー1人ひとりにまで落として割り振っています。そうすることで、各メンバーが事業目標に紐付いた目標をしっかり追いかけられるようになるんですね。

目標を「オープン化」すること自体が、目標設定を劇的に変える

個人目標のレビューは、チームリーダー全員で行っています。50人、60人の目標をずっとモニターで見ながら、数時間かけてやっていますね。

すると「この人だったらもっと高い目標に向き合えるでしょ、なんでこんな目標立てさせているの」と、リーダー同士でやりあったりしていて。そういった議論が起きていること自体、非常に好ましい状態だと思います

実際に決定した目標については、個人目標も含めてクラウド人事管理ツールの「HRBrain」を使い、フルオープンにしています。これはすごく、革新的だなと思っていて。

以前は「誰が何にコミットしているのか」ということは、いわゆる「上の人」だけがわかっていた状態で、ある意味ブラックボックスだったわけです

ですが今は、縦も横も斜め上のメンバーにもすべてが見えている状態なので、「目標設定に記載したことに最大限コミットする」という意識が、自然発生的に高まっているんですよね

さらに、周囲の目標を見ることで、みんなの目標設定の能力自体が上がってくる、いう気付きもありました。

例えば、とある新卒1年目の目標設定が良いと言われていたら、同期はそれを見て自分のものをブラッシュアップするようになるわけです。

さらに、年次が上の先輩の目標設定も見られるので、「いずれは自分もこういう目線で、こういう風にやらなきゃいけないんだ」というレベルが自然にわかるようになるんです。

優秀な技術者ほど、難易度が高い課題に「燃える」

今回、このように目標設定の手法を一新したのは、技術者にモチベーション高く事業にコミットしてもらうためにはどうしたら良いのかということを考えた結果です。

その中で最近強く思っているのは、優秀な技術者ほど、難易度が高い「解決されるべき」課題を渡されると燃えるということです。

例えば最近、データ通信量を半分にする「節約モード」の機能をリリースしました。この時も「通信料を半分にしなければいけない」という課題があると、技術者はああでもない、こうでもないと解決策を検討し、奮闘してくれます。

それがユーザーメリットになるし、サービスの成長にも繋がっていきます。

そういった、難易度が高くてもやりがいを感じられるミッションを作り続けていくことが、みんなのモチベーションを保つためには大事だと思うんです

少なくとも今のAbemaTVにおいては、技術で解決しなければならない課題がいくつもあるので、それをしっかりとみんなに提示していくことが大切です。そのために、OKRをひとつの手段として使っているという形ですね。

また、「経営陣のやりたいことを実現する」ことだけが重要なわけではありません。

常に先を見据えながら、「こういう技術的な投資をしたらこういうことができる」という経営的な選択肢を用意する、ということも重要だと思っています。

例えば、AbemaTVではテレビデバイスだけでなく、先月「Amazon Alexa」にも対応しました。このような新デバイスへの対応は、技術者がいち早くキャッチアップし、開発に取り組んだ成果です。

こうした技術的投資は、事業成長の柱となるものだと考えていますので、我々が常に先を見据えた上で中長期的に腰を据えて取り組んでいかなければなりません。

目標設定に関しては未だ試行錯誤している部分もありますが、今はある程度みんなが満足している状態を作れたかなと思っています。

開局時には20名だった開発局も、採用を強化したことで、60名弱にまで拡大しました。OKRの運用に関してはまだまだ学習途上なので、これからさらに進化させていきたいですね。(了)

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