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社外の専門家も評価に参加!エンジニアを育てる、VOYAGE「技術力評価会」の裏側

〜評価する人・される人、双方の本音を公開!90分間のディスカッションを通じて評価を行う、VOYAGE GROUPの「技術力評価会」とは〜

以前にもご紹介した、株式会社VOYAGE GROUPのエンジニア評価制度「技術力評価会」。

※技術力評価会については、こちらの記事をご覧ください。

「被評価者」は半年に一度、自分の半年間の仕事の中から、ひとつのネタを選んで発表を行う。それに対して2人の評価者が質問をし、ディスカッションを通じて評価を行うという取り組みだ。

スタートから7年ほどが経った技術力評価会だが、毎回、全体にオープンな振り返りを行うことで、制度のブラッシュアップを続けている

最近では、社外の専門家を「3人目の評価者」として招へいし、社内にはない新しい視点を入れるという試みを行ったそうだ

今回は、本制度の構築の中心となった同社CTOの小賀 昌法さんと、「評価者」の代表として大谷 和紀さん、「被評価者」の代表として前原 武さんに、技術力評価会について、リアルな声をお伺いした。

毎回、全体で振り返りを行いながら、評価制度をより良くしていく

小賀 技術力評価会は半期ごとの開催ですが、毎回全体で「振り返り」を行っています。


私が100人くらい入れる大会議室を予約して、「ひとこと言いたいやつは来い」という感じで(笑)。毎回、30〜40人くらいは集まりますね。

そして5、6人のチームに分かれてKPT的に振り返ってもらって、最後にそのポイントを共有してもらいます。

KPTの内容はGoogleドキュメントで全体共有しているので、参加できなかったエンジニアもそこに書き込んだり、内容を確認することができます。

こういった評価制度に関しては、きちんと自分の言葉を伝える機会があるということが大事だと思っていて

それがあることで全体の納得度も高まりますし、自分も制度に参画しているんだ、という意識を持てると考えています

振り返りの中で出てきた課題点は、次のタイミングからそのいくつかを取り上げて新しい施策を試したり、細かくPDCAを回しています。

例えば以前には、同じ評価者に2回連続で評価されることが良いのか、という議論がありましたね。そこでその次の評価会では、原則、連続で担当するのは禁止するという形で運営を行ったりしました。

「社外評価者」を導入し、エンジニアに更なる成長機会を提供

小賀 このように、振り返りを通じて制度を改善してきたのですが、ここ1年で一番大きい変化は「社外評価者」を取り入れたことです。

技術力評価会では、基本的に1人の被評価者に対して、2人の評価者がいます。ここに「3人目」として、社外から専門性を持った方を招へいして評価をしていただく、ということをやってみたんです。

と言うのも、専門性が高かったり、新しい技術領域ですと、どうしても社内のエンジニアの人数が少ないんですね。

私たちはWebサービスの企業なので、いわゆるWebのサーバーサイドエンジニアが一番ボリュームがあり、インフラエンジニアもそれなりにいます。ですが、データ解析や、iOSやAndroidのネイティブをやっている人間となると、母数が少ないんです。


技術力評価会の良さのひとつは、違うチームの人と相互に評価し合うことで、新しい目線や気付きが得られるということです

しかし同じ技術領域に関わる人が少ないと、毎回同じ組み合わせになってしまって。新しい視点を入れる機会が少ないのが課題だな、と感じていました

そこで今回は、まず社内で母数の少ない専門的な領域に関して、4名の評価者の方を社外からお呼びしました。非常に、優秀な方々に来ていただくことができまして。

【今回参画された、評価者の皆さま】

  • 株式会社NextInt 代表 中山 ところてんさん Twitter GitHub Medium
  • 株式会社デプロイゲート CEO 藤崎 友樹さん Twitter
  • 株式会社ブレインパッド ソフトウェア開発本部 基盤開発部部長(評価当時の肩書)下田 倫大さん Twitter
  • iOSフリーランスエンジニア、Wantedly技術顧問 杉上 洋平さん Twitter GitHub

社内のメンバーからすると、最初は少し抵抗感もあったんですよ。

社内でやっていれば、ある程度の事業的な背景や状況なども、みんなに共有された状態じゃないですか。そうではない方々に評価されるのはどうなんだろう、という部分があって。

ですが実際にやってみると、全然そんなことは問題にならなくて。逆にみんな、すごく良かったし勉強になったと。

他社の事例を教えていただいたり、経営的なインパクトという視点からの意見をいただけたり。コード自体に、「こうやるといいよ」とプルリクを送ってくださった方もいました。

結果的に、社内にない視点をいただいたことで、自分の成長につながったという声がとても多かったです

やはり社内での経験というのは非常に限られているので、このような形で外部の方の知見を吸収できるチャンスがあったのは良かったな、と思います。これを通じてメンバーが成長してくれれば、会社にとってもすごく価値がありますよね

※編集部注:ここから先は、実際の「評価者」「被評価者」の方に、技術力評価会についてのお話を伺います。

評価者の視点:悪いところより良いところを見つける、真剣勝負

大谷 私はエンジニアの「芸歴」でいうと、13年目くらいです。6年半ほど前にVOYAGE GROUPに入り、今は子会社のZucksで、取締役CTOを務めています。

VOYAGE GROUPに入社したのは、技術力評価会の制度を作ってちょうど1年ほどたった時でした。入社後初めての評価会では評価されるだけだったのですが、2回目のタイミングからは、評価者も務めるようになりました。


僕たちエンジニアって、日常的にコードレビューをしているじゃないですか。なので技術力評価会も、その延長線上みたいな感じで捉えていますね。

ただ、通常のコードレビューのように、結果をすぐに出さなければいけないというものでもないですし、評価ってしんどい仕事です。なのでコツを掴むまでは、資料を事前に読み込んだり、事業的な文脈もしっかり確認していました。

ただ今は、どちらかと言うと「いきなり」評価会の場に出ていますね。その場で色々な質問をして、いかにわかりやすく説明してくれるか、という部分を、個人的には見ていたりします。

評価者もそれぞれなので、色々なスタイルがあります。私はあんまり、準備はしない方です(笑)。

ひとつ思うのは、ダメな点を見つけて評価を下げるのってすごく簡単なんですよ。例えばセキュリティ的に不具合がある、だから評価を下げます、と言うのはすごく簡単なんです

自分も、過去にダメなところに注目してしまって良い評価を出さなかった、という経験もあるのですが、それは反省していますね。直せば良いような部分は、個人的には全然大丈夫だと思っていて。

逆に、評価を上げる良いポイントをきちんと探せるのが、良い評価者のような気がします

やっぱり、良い評価をしたいですし、しかも自信を持ってしたいんです。それができなければ評価者の負けだと思っているので、意識していることのひとつですね

技術力評価会は、被評価者にとっては「こんなことやったぜ」ってドヤれる場所でもあるので、実は評価者も評価されているんですよ。

被評価者のいいところを見つけられるのか、みたいな感じもあって、本当に毎回が真剣勝負です。

被評価者の視点:客観的な指摘によって、新しい気付きを得られる

前原 僕は今年が社会人2年目で、学生インターンを経て新卒としてVOYAGE GROUPに入社しました。最近ではデータエンジニアのような形で、データ基盤の構築などを行っています。

初めて技術力評価会に出た時の思い出は…本当に苦い思い出しかないです(笑)。


そもそも仕組み自体もよくわかっていなかったので、準備の段階から「プレゼンして、それで本当に技術力を評価できるのか」みたいに思っていたんですよ。

でも、実際やってみたら自分が思っていたようなものとは全然違って。その時に言われたのが、「なぜこれをやるんだ」「どうやってお金を生み出すんだ」ということだったのですが、当時の自分はそういう考えがとても弱かったんです。

上司に「これをやるといいんじゃないか」という感じでふんわり振られたものに対して、「確かに良さそうですね」みたいにそのままふんわり仕事を進めてしまっていたみたいな感じで…。そもそもなぜやるのか、というところを、全然深く考えられていませんでした。

それを指摘していただいたいたことで、苦い思い出にはなりましたが(笑)、とても良かったと思います。実際に、仕事のやり方も変わりましたね。


まず普段から、「なぜこの作業をやるのか」ということを考えるようになりましたまた、「この事業をより良くしていこう、課題を深掘っていこう」という視点が働くようになったんですよ

なので、ビジネスサイドとのコミュニケーションもすごく増えましたね。雑談や飲みに行くことも増えて、仕事を進めるのも円滑になりました。こんな風に変われた背景として、技術力評価会は大きかったです。

先日、初めて評価者の立場も務めたのですが、その時の被評価者が、僕の一番最初の評価者だったんです。本当にもう、えげつないなって思いましたね(笑)。

今後は「評価者」にも、成果を発表する場を設けていきたい

小賀 2人の話を聞いていて改めて思ったのは、「評価すること」ってやっぱり一緒の空間にいることでしか学べないなと。

もともと評価者のレベルを上げていけるような工夫はしてきていて。例えば、他の人の技術力評価会を、参加者の同意のもとで見学できるようにしているんです。

やっぱり、その空間の中で学んでいくというのが一番良いと思いますね。なのでこれからも、その部分には時間を投資していくことになると思います。

他にも今後チャレンジしたいのは、評価を「する側」に立つことが多いグレードの高いメンバーが、成果を発表する場をもっと設けるということです。

以前から少しずつやってみているのですが、どうしても「発表するだけの場」になりがちなんですよね。

本来の評価会の良さというのは、評価者が根掘り葉掘り質問ができて、議論ができるということなんです。でも、10対1だとやっぱり議論にはなりませんし、3人くらいまでかなと考えると、なかなかそういった機会を設けるのも難しいですよね。

ですが、そういった場を今度作っていけるように、スタイルを含めて考えていきたいと思っています。(了)

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