• 株式会社ISAO
  • 代表取締役
  • 中村 圭志 

評価者を「自分で」選ぶ。通年リアルタイムで昇降級する「権威を作らない」等級制度

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〜全員の等級はフルオープン!社員1人ひとりが自分のキャリアに責任を持つ、ISAOの等級・評価制度の全貌〜

階層ナシ・管理職ゼロの「バリフラット」モデルを導入し、独自の組織運営をしている株式会社ISAO。

※ISAOの組織変革の軌跡については、こちらの記事をご覧ください。

同社は、2011年4月に、12のグレードから成る「等級制度」を導入。そして、より個人の成長を促すものとして制度をブラッシュアップするため、2016年12月に「5つの構成要素」を定義した。

具体的には、市場価値に相応する「コア」をベースに、「基本動作」「全社運営」「MV(ミッション・バリュー)貢献」「Business Advanced」「TOEIC」の5つの項目で加減点することによって、最終的な等級を決定している。

等級は給与と完全に連動し、年中どのタイミングでも、必要に応じて見直しが可能。さらに、昇降級などのすべての情報は、社内SNSの「Goalous」上でオープンにしているという。

そして、その制度を支えているのが、自分で指名した人々による「360度評価」と、個人の成長を支援する「コーチ制度」であるそうだ。

「権威を作らない」組織を目指しているISAOの等級・評価制度の全貌を、同社の代表取締役である中村 圭志さんと、人事プロジェクトでリーダーを務める小柴 貴生さんにお伺いした。

成長を促す「フィードバック」の手段として、等級制度を刷新

中村 ISAOは、階層ナシ・管理職ゼロの「バリフラット」な組織を運営しています。

いわゆる「部署」は存在しておらず、全てが「プロジェクト」の形で、同列に並んでいます。

▼同社の、「バリフラット」な組織形態の図

各プロジェクトには、マネージャーではなく信任で決まったリーダーが存在し、その人がすべての責任を負っています。

小柴 私は2014年に入社し、1年半ほど前から「採用」のプロジェクトをメインに、人事の業務全般に携わっています。

中村 ISAOでは、2011年の4月より等級制度を導入しました。現在は、11のグレードに分かれており、全社員の等級はすべて社内SNSの「Goalous」上でオープンになっています。

ですが、数年前までは等級も何も全くない状態で、本人のパフォーマンスと給与が見合っていないケースも多かったんですね。

そこで、評価や報酬をイチから見直すべく、当時の部長たちと3日間にわたる議論を重ね、社員1人ひとりを「12の等級(※)」に当てはめていきました。

※当初は12段階でスタートしたが、2018年4月に、下から2つのグレードをなくし、上に1つ追加する形で、11段階に変更

その制度を運用していく中で、「等級が同じであっても、人によって強みや弱みは違う。それをどうフィードバックすべきだろう」ということが課題になってきまして。

▼左:中村さん、右:小柴さん

というのも、当時は「5等級は、現場の小規模チームのリーダーとして活躍できる」といった、全職種に共通する基準しか設定されていなかったんです。

そのため、評価の際に説明もしづらく、「どこを伸ばしていくべきか」「どこを改善すべきか」について、もっと明確に伝える必要があると感じていました。

そこで2016年の12月に、等級の基礎点となる「コア」に加えて、等級を決定づける「5つの要素」を定義し、等級制度を見直しました。

市場価値に相応する「コア」と、5つの要素から等級が決まる

小柴 現在の等級制度は、市場価値に相応する「コア」をベースとし、「基本動作」「Business Advanced」「全社運営」「MV(ミッション・バリュー)貢献」「TOEIC」という5つの要素から構成されています。

▼等級を構成する「コア」と「5つの要素」

以前は、等級の内訳を明らかにしていませんでしたが、その人が「成長に向かうためのフィードバック」をより明確に伝えるために、構成要素を分けました。

等級自体は「コア」を基礎点としています。ただし、他の5つの要素において特筆すべきことがある場合には、その基礎点から各項目を加減点し、最終的な等級が決定します。

例えば、コアが「5」で、基本動作が「-1」の場合、その人の最終的な等級は「4」となります。

▼実際の、等級の算出例(1〜5以降は、V0〜V5となる)

中村 ここで、最も重要なのは「結論となる等級」に違和感がないことです。

コアについては、「社内人材との比較」と「外部から採用すると仮定した場合の条件」の掛け合わせから、総合的に判断しています。

というのも、「市場価値」と一口に言っても、外資系企業に転職して給料が倍増するケースもあれば、本人の実力はあっても、転職先の給与基準が低くて年収が下がるケースもあります。

ですから、純粋に市場でのオファー額が本当にその人の価値を表しているかと言うと、そうとは限らないと思うんです。そのため、社内的な人材価値も、コアの判断材料の一部として考慮する形にしています。

その他の構成要素は、必ず「整数」でプラスマイナスをつけるようにしています。

実質的には、-0.3や+0.6などの整数でないケースもあり得るのですが、そこは割り切って整数でつけています。

そして、この構成要素による加減点は、等級に影響を与えるだけの目的ではなく、「成長を促すための説明材料」だと考えていて。

例えば、基本動作で「-1」がついていれば、「自分で定めた納期を守れないことが多く、また遅れる場合に、必要なコミュニケーションを周囲と取れていない」といった説明とともに、改善すべき点を明確にしてフィードバックするようにしています。

昇降級は「リアルタイム」で!なかには「飛び級」する社員も

小柴 また、11段階の等級は、給与と完全に紐付いています。半期ごとの賞与も、月給をベースに算出されるので、同じ等級であれば理論上の年収は同じです。

半年に1度、全社員を対象として必ず振り返りの機会を設けており、そこで等級を上げ下げする推薦も受け付けています。

また、これに限らず、通年どのタイミングでも、必要に応じて昇級を申し出ることが可能です。

具体的には、被評価者の「コーチ」がその人に対する360度フィードバックを取り纏め、総合的にみて上位等級に相応する場合には、人事プロジェクトにその人の昇級を推薦します。

そして、人事とコーチなどの関係者が集まって承認しても良いかどうかを話し合い、そこを通過すると、翌月の給与分から、新しい等級が反映される仕組みです。

中村 実際に、毎月2〜3人ほどは等級が変動していますね。「どの人が、何等級から何等級に変更になったのか」については、毎月の初めにGoalous上で公表しているため、全員に見えるようになっています。

また、年間の昇級数の上限も設けていないので、なかには1年で3等級上がった人もいます。

これは、給与の変動幅から考えるとかなり大きいのですが、能力の変化に応じてリアルタイムに評価できる仕組みが大切だと考えていて。

そのため、人によっては「3→5」と「飛び級」する人もいますし、そういった変化はすべてオープンにされているので、社員のモチベーションにも繋がっています。

「能力」は等級、「成果」はアワード。評価を2軸に分ける

小柴 評価については、「能力」と「成果」を切り離して考えています。

というのも、以前は能力と成果を分けずに評価する形だったのですが、それだと半期の評価では「A+」が連続しているのに、等級が一向に上がらないのはおかしい、という不満をもつ人が出てきてしまって…。

当時はレーティングが賞与に連動していたので、人事やコーチとしては、「短期的な成果にはA+で報いたい。しかし、等級を上げるためには、能力をもう少し伸ばす必要がある」といった判断がありました。

ですが、そこの伝わり方が上手くいっていなかったんです。

そこで、等級では「能力」のみを評価し、一方の「成果」については、半期ごとにアワードで評価する形に変えました。

このアワードでは、各プロジェクトのリーダーやコーチが、ISAOスピリッツを体現するような「Lean & Challenge」な取り組みで成果をあげた人を推薦します。

その中から、MVP・Gold・Silver・Bronzeの各賞に値する成果をあげた人すべてを、アワードに選出しています。

そして受賞者には、賞ごとに設定している「給与の◯ヶ月分」というインセンティブが、通常のボーナスとは別で付与されます。

中村 また、賞与については、半期ごとのレーティング評価から、等級に紐づく形に変えました。

というのも、当時は「目標に対する達成度」で評価していたので、人によっては目標設定が甘くなってしまい、あまり意味がなかったんですね。

そこで、「目標は高く設定し、それに向かってストレッチして頑張る。それが『能力』となって成長が認められた時に、等級の方でリアルタイムに評価する」という考え方で、今の制度を運用しています。

コーチは「育成責任」を負わない。自身のキャリアは、自ら築く

中村 評価はコーチが主体となって実施されますが、一般的なマネージャーと違うのは、「評価に関して絶対的な権限がない」ということと、そのメンバーの「育成責任を負っていない」ということです。

まず、評価者については、本人とコーチが話し合いの上、「自分を評価すべき人」を2〜7人ほど自ら指名します。

そして、すべての評価者から受け取る360度フィードバックをコーチが取り纏めて、昇降級に関する評価を人事プロジェクトに推薦しています。ですので、コーチが絶対的な権限を持つような仕組みではないんです。

また、よくある組織ですと「上司が部下の面倒をみて、育成する責任がある」といった考え方がありますが、ISAOでは「メンバー1人ひとりが、自身のキャリアを自ら築き、目標に向かって歩んでいく責務がある」といった考え方をしています。

あくまで本人が、自発的にキャリアを築くためのコーチ制度なので、各自にはむしろ「コーチを上手く利用してほしい」と考えていて。

そこで、コーチの選定自体も、会社が推薦する40人ほどの「コーチ候補」の中から、本人が自分で指名できる形にしています。

小柴 そこに会社は一切干渉していないので、各メンバーが自らのキャリアを考えて、「自分のコーチ」を選んでいますね。

例えば、自分の仕事は専門性が高いから、近くで働いている人にアドバイスが欲しいという人もいますし、あえて違う気付きを得るために、少し離れた人を選ぶような人もいます。

一方で、新卒社員については、コーチだけでは支援が不十分なので、プライベートも含めて何でも相談することのできる「ブラザー制度」を設けています。

このように、評価者を「自分で選択する」ことによって、評価に対する「納得感」が生まれますし、フィードバックも素直に聞くことができるので、個人の成長が促進されると考えています。

半期に1度、「本人も参加できる」評価会を実施

中村 一方で、評価に対する「公平な目線」も取り入れるため、半期に1度の振り返りではオープンな「評価会」を実施しています。

これは、全社の中心的な役割を担い、かつ部署や年齢がバラけるように選出された7〜8名の「オブザーバー」役の人たちに対して、各コーチがメンバーの評価を説明する場です。

ここでは、社員1人ひとりの評価を丸2日掛かりで行うのですが、特徴的なのが、希望があれば「本人も参加できる」ということです。

この仕組みによって、「俺はお前のこと評価しているんだけど、部長がこう言ってるからさ」といった「伝言ゲーム」のようなことはなくなります。

できる限り「生」のフィードバックを全員が得られて、本人も自分の意見を表明できるような場づくりを、意識的に設計しているんです。

また、基本的にはコーチが取り纏めた評価がそのまま採用されるのですが、コーチによる「甘い」「辛い」がある場合には、オブザーバーからの指摘が入るようになっています。

例えば、360度評価で他の人が厳しいことを言っているのに、コーチからの評価が甘かったりすると、なぜその評価なのか? という説明を十分にしてもらい、必要があれば是正するようにしています。

実際には、この半期ごとの評価会は、コーチへのフィードバックという側面も強いんですね。

コーチに対しては、外部研修も取り入れてコーチングのスキルなどを支援していますが、やはり実践の場が重要になってくるので、この評価会を通じてコーチ側の育成もできればと思っています。

「権威を作らない」ことが重要。ISAOの描く究極の組織とは

中村 ISAOでは「バリフラット」という言葉を使っているのですが、要は「権威を作らない」ということを非常に大事にしています。

そのために、評価者もコーチだけでなく360度で総合的な判断をしていますし、誰かひとりの声が強くならないような仕組み作りをしています。それは、経営的にリーダーである僕であっても同じことです。

また、権威を作らないために重要なのが、情報をオープンにすることだと考えていて。

評価者を自ら選んだり、クローズドではなくできるだけオープンな場で議論をしていくことで、権威ではなく「価値観」で統治されるような組織を目指したいと考えています。

小柴 その理想に向けて、よりチーム力をあげていくために、仕組みとなる部分を色々試しながら構築していきたいと思っています。

そして、究極的には、私のような「人事担当者」がいなくても、1人ひとりが同じような意識を持って、誰もがその役割を果たせるような組織を作っていきたいですね。(了)

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