• 株式会社ISAO
  • 代表取締役
  • 中村 圭志 

社員99%が諦めた会社の復活劇!役職ナシ・給与も公開する「バリフラット」な組織作り

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〜赤字続き、社員の99%が諦めモード。「給与の適正化」「管理職0、階層0の組織モデル」「独自の目標管理」などの組織改革で、成長を遂げたISAOの軌跡とは〜

1999年、家庭用ゲーム機のインターネットサービスプロバイダとして設立された、株式会社ISAO。

設立以来、赤字続きであった同社は、2010年に豊田通商により完全子会社化。代表取締役の中村 圭志さんは、当時の状態を「99%の社員が、会社の未来を諦めかけていた」と振り返る。

そこで2011年に、再生の核となる「ミッション・ビジョン・スピリッツ」を策定。そして、「給与の適正化」「役職と階層の撤廃」「独自の目標管理手法の導入」といった組織改革を実行してきた。

社員1人ひとりとじっくり向き合い、徐々に文化を浸透させていくことで、現在では黒字に転換し、新規サービスを生み出す組織に変貌を遂げたという。

今回は中村さんに、その組織改革の軌跡について、詳しくお伺いした。

赤字続き・諦めモードの空気を変えるため、「MVS」を策定

僕は2010年にISAOの代表に就任したのですが、元々在籍していた総合商社がISAOを買収したタイミングで、「そこの代表をやらないか?」と本部の上司に言われたことがきっかけでした。

ISAOは、1999年にCSKとセガの子会社として設立され、家庭用ゲーム機のインターネットサービスプロバイダ事業を行っていました。

ですが、そのメイン事業が早期に撤退してしまい、僕が来た頃にはもう何年も赤字続きで…。

「一生懸命やっても報われない」という空気感が漂っていて、社員のモチベーションは低いし、そもそも会社がどこに向かっているのかわからない、といった状態でした。

そこで、まずは社員1人ひとりと面談をしました。ですが、150人のうち、99%の人は諦めているような感じでしたね。

ですがその中にも、1人だけ非常にポジティブな人間がいまして。「ISAOはやれる、俺はISAOが大好きだ」って言うんですよ。IT業界の未来は明るいし、自分たちは良い種も持っていると。

そこで、会社を立て直していくための「芯」を、この若者を中心に作りたいと考え、まずはミッション・ビジョン・スピリッツ(以下、MVS)を作ることにしました。

僕自身はオブザーバー役に留まり、この若者に仲間集めも任せ、プロジェクトチームを発足させました。

そして、事業や環境分析、自分たちがやっていきたいことなどを、そのチーム主導で約4ヶ月にわたって議論していき、2011年の12月に「MVS」が決定しました。

▼同社のミッション・ビジョン・スピリッツ(MVS)

僕は代表として、「このMVSを最も信じ、最も実現しようとする1人になる」という決意を持ち、社員と共にこの実現に向けて活動しています。

改革は情報の可視化から。時間をかけて、人事情報もオープンに

組織改革の第一歩として、まずは「情報のオープン化」を進めていきました。

当時は、あらゆる情報がクローズドな状態にありました。例えば事業に関する数値も、自分から探しに行かないと見えない場所にあり、みんな面倒だから見ていなかったんですね。

そこで、その情報を社内SNSを使って発信するようにして、誰もが情報を得やすい状態に変えました。

また、文字情報では限界があるので、オフラインでの情報共有も始めました。

具体的には、毎週金曜の夕方に時間をつくり、その週にあった出来事を共有して、気になることがあれば何でも聞いてもらっていましたね。

このように、自ら情報をオープンにしていくことで、徐々に組織にもその文化が浸透していきました。

一方で、「等級」や「給与」といった人事情報のオープン化は、かなりハードルがありましたね。

と言うのも、社員の給与が入社時の契約に引きずられてしまい、実際のパフォーマンスと報酬がマッチしていない人が多かったんです。

これをそのままオープンにすると、現場が混乱することは目に見えていました。そのため、MVSをベースに12段階の「等級」を作り、現給与を考慮しないまっさらな状態で、全員をそれに当てはめていったんです。

当時の部長たちと3〜4日ほど缶詰になり、社員1人ひとりについて議論した結果、現給与との差が年間で数百万円になってしまう人も出てきてしまって。

さすがに一気に変更することはできないので、2年間の猶予期間を設け、調整給を入れながら、給与が下がってしまう人とも納得いくまで対話を重ねました。

そして、2014年にようやく給与の適正化が完了し、人事情報も含めたフルオープン化が実現しました。

階層・役職を撤廃。チーム力を∞にする、バリフラットな組織運営

その頃、とある部長が海外に半年駐在することになり、彼が不在の間、若手社員を代理の部長にしたことがありました。

そしたら、問題なく部長を務めてくれたので、海外から帰ってきた元の部長の戻る場所がなくなってしまったんです。

その時に、ポジションを作るために部を新設しようか、という話も出たのですが、「そういう本質から外れたことをISAOはやるのか」という反対の声が管理職から上がってきまして…。

これをきっかけとして関係者で話し合った結果、であれば階層と管理職を廃止すればいいのではないかと。

そして、2015年10月に、組織階層と管理職を撤廃した、「バリ(=超)フラット」という名の新しい組織形態に移行しました。

▼「バリフラット」の組織形態の図(同社サイトより引用)

バリフラットでは、従来の組織のような「部署」が存在しません。その代わりに、経営、人事、広報からゲームサポートなどの各事業まで、全てが「プロジェクト」の形で、同列に並んでいます。

現在、全社で60〜70ほどのプロジェクトが存在し、各人は複数のプロジェクトに参加することが可能です。プロジェクト毎に信任で決まったリーダーが存在し、その人が全ての責任を負っています。

例えば、僕自身は「経営」のプロジェクトリーダーであり、「人事採用」のメンバーのひとりでもあります。

また、各プロジェクトへのリソース配分は、個人が全体のバランスを見ながら調整しています。

自分の工数を100%と考えた時に、人手が足りていないAのプロジェクトには70%、開発が落ち着いてきたBのプロジェクトには30%といった形で、配分します。

工数や経費の管理は、社内のシステム上で全て可視化しています。誰が何に対し、どれだけの時間やお金を使っているかが見えるため、ルールで縛らなくても、自然と全体最適化されていきますね。

▼実際の工数管理のシステム画面

コーチ制度を導入。評価・等級は360度フィードバックで決まる

また、バリフラットな組織では、「上司」が存在しません。そうすると、「個人の成長をどのように担保するか」という部分が問題になってきます。

そこで、個人の目標達成を支援するための、「コーチ制度」を導入しました。

当初は、会社の方からコーチを任命していましたが、「自身のキャリアを一緒に考えてくれる人は、自分で選ぶべき」という考えから、今では各人が自分のコーチを決めるやり方にしています。

自分のキャリアに合わせて、コーチの変更は好きなタイミングで自由に行えます。唯一のルールは、変更があった場合には人事にそれを伝えるということだけです。

コーチに任命された人は、業務へのアドバイスに加えて、キャリア相談に乗ったり、その人の「評価の取り纏め」も行います。

弊社では、360度フィードバックを査定評価に採用しています。この評価者は、会社が決めるのではなく、各自が「自分を評価するべき相手」を5〜6人ほど洗い出し、コーチのそれと合わせて自ら選出するんです。

そして、評価者となった人は、12の等級を指標にして、実際のパフォーマンスが「その等級より上か下か」について、具体的な根拠を添えてフィードバックを行います。

例えば、とある人事担当者への評価では、「ファシリテーターとしての『プレゼン力』はまだ足りていないが、当初より主体的に物事を進めることができるようになった」というフィードバックをもとに、上位階級を提示されます。

この評価の基準は、基本的なビジネススキルに加え、MVSのスピリッツに則った行動をしているか、といった観点も含まれます。

また、等級と給与は完全に紐付いており、同じ等級であれば賞与の差もありません。

すべてのフィードバックをコーチが取り纏め、全体感を見た上で昇降級が決まります。通年、各自のタイミングで実施されますが、半期に一度は必ず評価の機会を設けて、定期的に行うようにしています。

目標管理は「GKA」で。フォトアクションで、進捗を可視化する

目標管理は、「GKA(Goals, Key Results, Actions)」というモデルを使っています。これは、OKR(Objectives and Key Results)をベースに、自社で独自に考案したものです。

OKRとの違いは、大きく2つあります。ひとつは、会社・部署・個人の各OKRが、階層化していないということです。

OKRでは、会社のOKRという上位目標から、部署、そして個人へと紐付いた形で各OKRを定めます。

▼一般的なOKRの形(図は編集部にて作成)

一方でGKAでは、上位概念にビジョンを置き、より自由に個人がそれぞれの役割に応じたG(Goal)とKR(Key Results)を立てます。

▼GKAの形(図は編集部にて作成)

そして、もうひとつの特徴は、「A(Actions)」をとても重視するという点です。僕は、OKRでもMBOであっても、目標に対する進捗を日々追っていかなければ、形骸化していくと思っていて。

そのため、「達成するために今日はどんなことをしたのか」というアクションの部分を、GKAではとても大事にしています。

僕の場合ですと、「ISAOの哲学を世界に広める」というGに対して、「50チームにISAOの哲学を紹介する」「5本の記事を執筆する」という2つのKRを設定しています。

例えば、前者のKRに対して、「経営者交流会でISAOの組織文化を話す」という行動をすると、KRに紐付く形で1アクションとしてカウントされます。

この進捗を可視化するため、全てのアクションは写真と共に、自社開発の社内SNSツール「Goalous(ゴーラス)」に投稿されます。

エンジニアであれば画面のスクリーンショットでもいいですし、とにかくKRに紐づく行動は何でもフォトアクションにして投稿するんです。

▼取材当日のフォトアクションを投稿した、Goalous上のタイムライン

KRの進捗って、1つひとつは地味なものが多かったりするじゃないですか。なので、Goalousに投稿して、コメントやいいね!などで他の人からリアクションを貰えることが、よりゴールの達成を後押しすると考えています。

世界の仕事を楽しくする、ビジョナリーカンパニーに向けて

弊社では、2015年に「世界のシゴトを楽しくする」という中長期ビジョンを策定しました。

僕たちは、会社の文化や制度を変え、自らのパフォーマンスを高める働き方をすることで、ビジョンに近づいていく手応えを感じています。そのため、今度はそれを世の中に広めていきたいと考えています。

ISAOも、数年前までは完全にトラディショナルな企業で、ほとんどの人間が会社の未来に希望を持てず、やる気も底をついた状態でした。

しかしそこから、会社のカルチャーを変えるためには、特別な方法も近道もありませんでした。

オセロを例にすれば、真っ黒な盤面を、まずはひとり「白」に変える。偶然を装って帰りのエレベーターで会ったふりをするとか、もうあらゆる手段を使って1対1で話す機会を作るんです。

そうして、ひとりずつ地道に「白」の数を増やしていきます。そうして、ポツポツ「白」の数が増えていくと、ある日化学反応が起きて、一気に黒から白へと変わっていくんですよ。

ですので、どんな企業でも、組織を変えることはできると信じています。その後押しをするビジョナリーカンパニーとして、これからも色々なことにチャレンジしていきたいですね。(了)

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