- King Japan株式会社
- Marketing Director, East Asia
- 金澤 唯
アプリ集客のヒントは「管理ツール」にあり。PVと流入経路を可視化するASO施策とは
〜マーケターは「どのチャネルに注力すれば、最もインパクトのある成果を出せるか?」を考えるべき。アプリ管理ツールを活用して、ASOを成功させた事例をご紹介〜
アプリのリリース申請時などに使用される、「App Store Connect」と「Google Play Console」。
一般的には「管理ツール」のイメージが強い両者を活用して、アプリストアへの訪問者数と流入経路を把握できることをご存知だろうか?
運営サービス全体で月間2.85億人のアクティブユーザー数を誇る、世界最大級のゲーム会社King。
その日本法人であるKing Japan株式会社では、パズルゲーム「キャンディークラッシュソーダ」のASO施策(※)を両ツールを活用して実施。
※アプリストア内での検索順位を上げる施策、およびアプリ詳細ページでのインストール率を高める施策のこと
表示順位だけではなく、より詳細なデータを踏まえたASOを行った結果、ストアPVとCVRを改善させることに成功したという。
今回は同社マーケティングディレクターの金澤 唯さんに、一連の施策内容と、そこから得た学びについてお話を伺った。
アプリのリリース申請ツールは、ASOにも活用できる
弊社はKingの日本法人として2014年に設立され、現在は数名の社員で15のタイトルを運営しています。
私は日本を中心としたアジア地域のマーケティング責任者として、ブランド認知とユーザー獲得をミッションに、設立当初から様々な施策を進めてきました。
特に、費用対効果が高いと言われるデジタル広告については、チャネルやクリエイティブのテストを繰り返して、できることはほぼ全てやってきましたね。
その一方で、オーガニック流入を増やす「ASO」には、あまり手をつけられていなかったんです。
そこで今年の2月から、パズルゲーム「キャンディークラッシュソーダ」のASO施策に取り組み始めました。
この施策を進める中で非常に役立ったのが、App Store ConnectとGoogle Play Consoleです。
これらのツールは、あくまでアプリリリースの申請時に使うイメージがあると思います。
ただ実は、ASOを進める上で、重要な手がかりを得られるツールなんです。
ASOの結果は、表示順位でなく「PV」と「CVR」で評価すべき
まずこれらのツールを使うと、ストアページのPVをチェックすることができるんですね。
ASOの成果はストア内での「表示順位」で見ることが多いと思いますが、実際の「PV数」を見て、より正確に変化を追っていきました。
▼PVの推移を確認できる(画像はApp Store Connectの管理画面)
またPVがわかると、インストールのCVRも計算できるので、その数値も見ながらストアの最適化を進めることが可能になります。
例えば、表示順位を決めるひとつの要因となるバナーについては、「文言」「背景」「ロゴ」などに要素を分解して、A/Bテストを進めていきました。
具体的には、ゲームの盤面とキャラを全面に出す画像で背景を変えてみたり、文言を「30億DL突破」と「簡単爽快」で出し分けてみたりしました。
その結果、ゲームの盤面を背景に、タイトルロゴと「30億DL突破」という実績値を掲載したバナーのパフォーマンスが最も良かったですね。
▼(左)最も数値が良かったバナー(中)キャラがメインのバナー(右)「簡単爽快」を訴求したバナー
キャンディークラッシュソーダの特性である「シンプルなパズルゲーム」や「多くのプレーヤーがいる」という実績を端的に伝えた方が、ユーザーに興味をもってもらいやすかったのだと思います。
流入経路を可視化して、チャネルの有効性を判断する
正直に言うと、最初はASOの効果に半信半疑で「とりあえずやってみるか」という感じだったんです。
というのも、それまではデジタル広告からいかに効率的にストアへ集客するか? が重要だと考えていたんですね。
ただ、どのチャネルから流入したとしても、ユーザーは最終的には必ずストアを訪問します。
なので、デジタル広告の数値を10%改善するより、ストアのCVRを10%改善した方が、より成果へのインパクトが大きいですよね。
また、App Store ConnectとGoogle Play Consoleでは、ストアページのPVを流入経路ごとに把握することができます。
▼流入経路ごとのPVを確認できる(画像はApp Store Connectの管理画面)
弊社ですと、ストアの「おすすめ」「キーワード検索」から入ってくるオーガニック流入、デジタル広告からのペイド流入、自社の他アプリからの流入、の主に3つの経路があります。
その中で、デジタル広告については、どのメディアに掲載された広告からユーザーが来ているのか開示されていないこともあります。
一方で、App Store ConnectとGoogle Play Consoleからは「どのメディアから何人来ている」というレベルで全て可視化できるため、改善の打ち手を考えるのにとても有益だと思います。
また、オーガニックの流入経路を見ると、ストア内でのキーワード検索によるインストールボリュームが、実はそこまで大きくないこともわかりました。
当初はASOを進める中で、キーワードのチューニングにもかなり注力していたんですね。
ですが、流入の割合を確認することで、バナーやスクリーンショットなど、他の要素の改善に注力した方が良いという判断ができるようになりました。
ツールの進化へのキャッチアップ力も、マーケターの必要スキル
マーケターは「どのチャネルに注力すれば、成果に対して最もインパクトを出せるか?」を徹底的に考えるべきだと思います。
弊社の場合、デジタル広告と同じくらいASOのもつ影響は大きかったですし、ASOの中でもキーワードよりバナーを改善した方が、成果に直結するということがわかりました。
このように、目標に対して有効なチャネルを見極めるためにも、まずは全体像を可視化することが大切だと思いますね。
今後は継続率や課金率など、インストール後の数値も含めて、より細かい分析をしていきたいと考えています。
App Store ConnectとGoogle Play Consoleには、まだこれらを可視化する機能はありませんが、アップデートの度に見れる数字がどんどん変わっていく可能性があります。
なので、そこをキャッチアップしていくことも、マーケターにとって必要なスキルのひとつになっていくのではないかなと思っています。
今後、弊社はゲームのジャンルを広げていく予定です。事業拡大を成功させるためにも、全体像を可視化した上で、インパクトのあるチャネルに注力したマーケティングを進めていきたいですね。(了)