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「データの何でも屋」にならない。組織を強くする、データアナリストチームの作り方

〜データアナリストのスキルを定義し、評価制度を刷新。データと専門領域の掛け合わせで、組織全体のデータリテラシーを高める、BIチームの作り方とは〜

データの活用から組織を強くする「データアナリスト」の重要性が高まってきている。

恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」を運営する株式会社エウレカでは、2015年にデータを専門とするBI(Business Intelligence)チームを立ち上げた。

現在6人のデータアナリストから成る同チームは、全社のあらゆるデータに関する依頼に対応する一方で、ただの「データの何でも屋」にならないことに気をつけているそうだ。

例えば、依頼フォームをテンプレート化して依頼自体の質を上げたり、窓口を統一して会社の戦略に応じた優先順位付けをしたり、といった取り組みを行っている。

また、データを起点として組織を強くするためには、「データ x 〇〇」の掛け合わせとなる専門領域を増やしていくことが大切だという。

そこで、データアナリストを育成するため、スキルの定義や評価項目の見直しを実施。「情報感度・バランス感覚・結果主義」という3つのソフトスキルを循環させることで、BIチームメンバーのスキルを高めている。

今回は、同社のBIチーム責任者である鉄本 環さんに、BIチームの立ち上げから、スキルの定義や評価項目の見直しといったチームの作り方を中心に、お話を伺った。

恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs」を支えるBIチームの存在

私は2011年に、未経験のエンジニアとしてインターンを始めました。そのまま2013年に新卒として入社し、受託開発を経験した後、恋愛・婚活マッチングサービスの「Pairs」に携わっています。

当時はサーバーサイドエンジニアだったのですが、社員も少なかったので、施策のテストからレポーティング、売上予測の作成など、ビジネス周りのことも幅広く経験しました。

そんな中、2015年にPairsのデータベースを総入替することになったんですね。そしてそれまでの経験から、私が中心となって設計からデータ移行までを担当することになりました。

また同じ頃に、M&Aによって外資企業のグループ傘下になったことがきっかけで、親会社の会計基準やレポーティングの形式に数字を揃える必要が出てきまして。

そうした流れからデータの専任が組織に必要となり、私がその役割を担うようになりました。

最初のチームは、SQL未経験のインターン生とマーケティングを担当していた社員との3名体制で、データの整備とレポートシステムの構築といった業務から始めました。

というのも、経営側からすると、マーケティング周りの投資に対するリターンを可視化したいというニーズがあったんですね。

そこで実績を積むことでデータアナリストの重要性が社内に認知されるようになり、責任範囲が広がると同時にメンバーも増員していきました。

現在は6名の体制で、マーケティングだけでなく全社のあらゆるデータを扱うBIチームとして、組織横断の形で会社全体を支えています。

▼同社の組織図

「データの何でも屋」にならないため、依頼フォームと窓口を統一

BIチームの仕事は、データを「集める」「加工する」「活用する」の3つのフェーズがあります。

各フェーズで担当を置いていますが、最終的なデータ活用を見据えた準備を行っていくため、BIチーム全体として一気通貫での責務を担っています。

また業務内容は、会社の戦略に紐付いたプロジェクトと、その他データに関するあらゆる依頼の2パターンがあります。

プロジェクト以外には大小様々なものがあるのですが、ここで気をつけているのは、依頼自体の質を上げ、優先順位をつけて対応するということです。

というのも、中には「データを見てみたい」だけで、意思決定につながらない依頼もあったりして。

それを鵜呑みにしていると、データアナリストはデータやレポートを出してくれる、ただの「何でも屋さん」みたいになってしまうんですよね。一方の依頼者も、ただ時間を消費してしまうじゃないですか。

それを回避するために、依頼用のテンプレートを作ることで、依頼者が「データを見て、何をしたいんだっけ?」と考えられるようにしています。

▼実際の、BIチームのサービスデスク画面(左)と依頼用テンプレート(右)

また、依頼の窓口を統一することで、全社的にどのようなニーズがあるかを把握でき、優先的に取り組むべき課題も判断しやすくなります。

優先順位を決める際の基準は、「組織やサービスにどのくらいのインパクトがあるか」という視点です。

かと言って、全ての依頼を売上換算して絶対評価で判断することはできないので、窓口を統一して横並びで見ることで、相対的な判断が容易になります。

またそもそも、全社におけるBIチームの役割のひとつに「会社の戦略上のハードルとなり得るものを取り除いていく」ということがあります。

例えば「ある新機能を追加したい」となった時に、その効果測定が今のデータ基盤ではできないような場合には、一時対応としてBIチームがデータ分析を担います。その上で、将来的にはBIチームに依存せず、分析を自己完結できる基盤を構築していきます。

この視点はBIチームだけではわからないので、最初から依頼部署を巻き込み、「何でやるのか?」「これを実現すると何が嬉しいのか?」の共通理解を作っていくようにしていますね。

データアナリストの評価とは? スキルを定義し、評価項目を刷新

こうして、データの需要が会社全体へと拡大していく一方で、チームメンバーの評価が徐々に難しくなってきて…。

最初の頃はエンジニアと同じ評価項目でメンバーを評価していたのですが、それだと現実と合わない部分があったんです。

メンバーが何を目指せばいいのか、何のスキルを伸ばせばいいのかがわからなくなってしまったため、まずはスキルの定義から始めました。

ハードスキルは、データサイエンティスト協会が定義している「ビジネス・データサイエンス・エンジニアリング」という3つのサークルを参考に、弊社用にアレンジして作成しました。

▼ソフトスキル(左)とハードスキル(右)

基本的にこの3要素はすべて必須スキルなのですが、弊社では特にビジネスの比重を強めにしています。

というのも、BIチームは会社の戦略の推進に対するハードルを取り除く役割を担うので、例えば「経営の意思決定に必要なデータを判断できる」といったビジネススキルをより重めに定義しています。

一方で、メンバー全員が同じである必要はないと考えていて。データサイエンスやエンジニアリングなどに強いメンバーはそれぞれの強みを生かしつつ、チーム全体としてビジネス寄りのバランスを保つような形にしています。

また、この専門的なハードスキルとは別に、ソフトスキルも定義しました。それは「情報感度」「バランス感覚」「結果主義」の3つです。

データアナリストとして「正しい価値」を生むためには、ただデータを扱えるだけではなく、どのようなマインドで行動するかが重要だと思っていて。

そのうち、情報感度の定義には、ふたつの側面があります。ひとつは、組織の中でデータの需要がないかと鼻を利かせ、何にデータを活用できるかを掴むこと。もうひとつは、どうやってデータを活用するかを判断できる手法の知見があることです。

これらを持ち合わせることで、課題の本質はどこで、どう解決するかの勘所が掴めるようになります。

さらに定量データだけで判断してしまうと、正しい価値を見誤ることがあります。

一定の値を超えたからOKにするのではなく、「プロダクトとしてどうあるべきか」という観点も加え、定量と定性のバランスをみて判断することが大切です。

これらを踏まえて、しっかり結果を出すことで、次の新しい情報が入ってきやすくなるんですね。そのため、結果主義であり続けることが3つのスキル循環を生み、より価値の高いデータアナリストを育てられると考えています。

チーム力を高めるため、目的別のコミュニケーションの場を設計

また、評価制度をつくるだけでなく、どうやって評価するかも大切です。そこで制度を形骸化させないために、可能な限りアクションベースの事実を集めるようにしています。

特にデータアナリストはそれぞれが違うプロジェクトを担うことが多いので、工夫しないとアクションが見えづらいんです。そこで、目的別に3つのコミュニケーションの場を設けています。

ひとつは、昼会です。毎日1時間を確保していて、前半では各自の進捗報告や、新しい依頼の共有と振り分け、アウトプットのレビューなどを行っています。

後半は自由時間にしていて、前半に決まったことですぐできるものはその場で終わらせたり、困っていることやチーム全般で気になっていることを相談して、リアルタイムで解決できるようにしています。

さらに、最近面白かった話なども持ち寄ったりして、昼会はわりとフランクに楽しく話せる場にしているのですが、それとは別に、チームの振り返りを隔週で行っています。

ここでは、チームがミッションをきちんと体現して理想の姿に近づけているのか、ボトルネックはないかを確認します。プロジェクトの進捗、依頼の傾向や対応状況を見た上でKPTを実施し、チームとしての改善アクションを決めています。

また一方で、個人的な相談ごとについては、隔週・1時間ずつメンバー全員と1on1を実施しているので、そこでキャッチアップするようにしていますね。

BIチームの業務特性上、基本的には個人で自由に動ける体制にしつつも、こうした目的や温度感の違うコミュニケーションの場を持つことで、よりチーム力が高まっていると感じています。

「データ x 〇〇」を増やして、組織全体のリテラシーを高めたい

今後、組織をより強くしていくために、データアナリスト1人ひとりがデータの活用を起点として、新しい価値を作っていけるようにしたいと思っていて。

というのも、昔はただ「こういうデータがほしい」というニーズにどう対処していくかだったのに対し、今では「このデータになった原因や予測分析をしてほしい」といったような、一歩踏み込んだ高度なニーズに応えられるようになってきたんですよね。

それを引き続き実現するためには、「データ x 〇〇」のような形で、マーケティングやファイナンスなど、何かしらの専門分野をデータに掛け合わせることが大切だと考えています。

これを進める上では、2段階のフェーズがあります。例えばファイナンスチームでは、まず初めに売上予測の作成に必要なシステムを導入したり、データ抽出を自動化することで、担当者の手を空けるんですね。

すると本質的な仕事について考えられるようになるので、そこからさらにデータアナリストが入って、売上予測のモデルを強化するんです。

このように、専門知識とデータの知識を掛け合わせることで、ただ作業の効率化をするだけでなく、新しい価値を創造できるメンバーを増やしたいと思っています。

そこで、一定以上のスキルを培ったメンバーに対しては、1人ひとりの経験や適性を見ながら、専門案件をアサインするようにしています。

また最近では、BIチーム外のメンバーにもデータの使い方を教えることも増えていますね。

そもそも、会社のニーズに合わせて、データに掛け合わせる専門領域の知見を持った人をBIチームに入れたり、そこでデータのスキルを身につけてもらったらまた事業部に戻る、といったように、BIチームは固定メンバーじゃなくていいと思うんです。

「データ x 〇〇」の掛け合わせる場所をどんどん増やしていくことで、組織全体のデータリテラシーを上げていきたいと思います。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

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