- 株式会社ドリコム
- プロダクト本部 サービス推進部
- 中村 竜太郎
データ分析担当は企画段階からコミットせよ!ドリコムのデータ分析チームの在り方
〜ドリコムのデータ分析チームが、受け身の体制から事業へコミットするチームへ変貌を遂げる!分析チームを変えた、その取り組みを紹介〜
企業でのデータ活用が一般化するにつれ、データ分析チームを社内に設置する企業も増えている。
そのデータ分析チームが、最大の成果を出すために取り組むべきことは何だろうか。
ソーシャルゲームを始めとした、様々な事業を展開する株式会社ドリコムは、2015年に「データ分析チーム」の名称を「データコンサルティンググループ」に変更した。その裏には、データ分析担当は企画段階からコミットするべきという考えがあった。
ディレクターやプランナーからの依頼で動くことも多く、受け身になりがちなデータ分析担当。その環境を変えるための取り組みについて、データコンサルティンググループを統括する中村 竜太郎さんに詳しく伺った。
事業にコミットするデータコンサルティンググループ
ドリコムには、2012年の4月に入社しました。前職では営業と連携して売上の分析をしていたのですが、分析の専門部署というわけではなかったので、もう少しデータ分析に踏み込んでみようと、扱うデータ量が多いゲーム業界に入りました。
入社当時のドリコムのデータ分析チームは、ひとつのタイトルに担当者がつき、ディレクターやプランナーの依頼を受け、分析結果を返すような働き方をしていました。
ですが、データ分析がより事業にコミットしていくことを考えたときに、チームとしての働き方を変え、業務スコープをもっと広げるべきだと思ったんです。
そこで2015年の初め頃にチーム名を「データ分析チーム」から「データコンサルティンググループ」に変え、体制の見直しを図りました。
ディレクターやプランナーの依頼を受けて動く受け身のチームを、上流である企画の段階から入る体制に変えていったんです。
「これが課題だ」から始まる企画は危険?
当時の課題のひとつは、分析担当のスキルのばらつきでした。
スキルのある人なら、データ分析の上段にある課題設定も、しっかりと考えられます。しかしスキルが弱い人は、とりあえず目に入ったものを課題と捉えて、依頼された分析を単に実行するので、なかなか結果が出ないということがありました。
例えば、「課題」という言葉の使い方です。本来、あるべき姿と現状のギャップが「問題」であり、そのギャップを埋めて現状をあるべき姿にするために、なすべきことが「課題」です。
つまり「課題」とは、「あるべき姿」と「現状」が定義されない限り正しく設定できません。こういった言葉1つひとつもしっかり定義していかないと、目につくことだけに取り組み、その結果アクションの優先順位を間違え、大きな機会損失となってしまいます。
このようなスキルのひらきを埋めるため、ロジカルシンキングや課題設定、問題解決といったワークショップを開催し、認識を統一させていきました。
「企画時設定シート」で企画の背景を明確に!
企画の精度を統一するために、「企画時設定シート」というものを活用し、必須項目を洗い出してKPI(目標値)を決めていきます。
▼企画時設定シート
プランナーとデータ分析担当の間に溝があると、「初心者の離脱が多いので、この企画をしました。効果検証をお願いします」というようなコミュニケーションになってしまいます。
その依頼方法では、企画を実施するに至ったそもそもの課題がわかりません。それを明確にするために、プランナーと分析担当が協働して、企画の実施前に「企画時設定シート」を記入しているんです。
シートの項目の中でも特に、「企画の導入背景」や「メインターゲット」の項目は、頭の中で整理できていないことが多いですね。
例えば、「DAU(※1)が落ちているから、この企画を実施する」という計画を立てたとします。でも、全員に刺さるような企画って無いじゃないですか。全年齢対象の雑誌が売れないのと同じで、企画も必ずメインターゲットを決めないといけません。
※1. Daily Active Users:1日にサービスを利用したユーザー数のこと。
ゲームの企画というのは、実施したら必ず数字は動きます。数字が80変化したとしても、そもそも100を目指した施策だったのか、50を目指していたのかによって、評価は変わってきます。
全体に効果があるにしても、その中でも特にどのような人をターゲットにしていて、そのボリュームはどれくらいなのか。それを明確にしないと、施策が期待通りの成果を出したのか判断できなくなるんです。
また、数字はスポットで見てしまうと、視野が狭くなってしまいます。「このイベントの参加率を上げたい」というゴールも、全体のユーザー行動の一部でしかないということを意識して数字を見ることが重要です。
なので、まずは想定するユーザーシナリオを可視化して、それぞれのポイントでどの数字を見るのかを、遷移図を書いて確認しています。
▼想定するユーザーシナリオ
実績しか可視化されないKPIシステムは不要?
データコンサルティングチームの活動に合わせて、社内のKPI管理システムも刷新しました。
以前のKPIシステムは「今日は売上が何百万でした」というような、事実ベースの数値しか可視化していませんでした。
ですが「前日と比べて高かった・低かった」という話には、あまり意味はありません。それよりも、計画に対してどうだったのかを重視すべきです。
そのため、KPIシステム上にも計画を入力できるように改良しました。目標に対してどれだけのビハインドがあって、見込みがどう間違っていたのかが可視化されると、次のアクションが早くなります。
実際、KPIシステムに計画を入力できるようにしてから、会議の質も向上しました。
まず、ディレクターが売上見込みを作った上で、それをデータ分析の担当者とすり合わせるミーティングが設定されました。直近の数字を確認した上で、「見込みが高すぎるのではないか」という話ができるように変わっています。
それだけでなく、計画の段階でリカバリ案も考えられるようになったんです。この段階でビハインドなら、この施策を実施しましょうという案を、企画の段階で洗い出しています。
特にネイティブアプリだと、アプリの審査も必要なので柔軟に変更ができないですよね。なので、事前にどこまでプランニングできているのかが重要になってきます。
ナレッジの横展開を進めていく
今後は「企画時設定シート」から得られたナレッジを、横展開していきたいと考えています。そのためにも、シートはゲームをやり込んでいない人でも理解できるように書いています。
ゲームを知らない第三者が客観的に見ても、何のために実施するのかを理解できる資料なら、他のゲームでも似たような課題があったときにナレッジとして使い回せますよね。
他のタイトルへの活用については今後の課題ですが、先日ゲームのオペレーションに特化したグループを立ち上げました。これから横展開を進めていきたいと思っています。 蓄積したナレッジを活かして、ドリコム流のソーシャルゲームの運用方法を作っていきたいですね。(了)