- コラボレーター
- 加留部 有哉
botと触れ合えてますか? ユーザー体験の向上・業務の生産性をあげるbotたち
何ができるようになるのかワクワクする反面、未知の存在に気持ち悪さも残るbot。botはすでに私たちの周りで活動を始めています。
人間が仕方なくやってきた仕事、人間ではできなかったことがbotの力でできるようになることで、私たちは人間らしい仕事に集中することができます。つまり、生産性をより高めていくことができるのです。
とはいえ「botの実態がよくわからない」という方も多くいらっしゃると思います。そこで今回の記事では、SELECK編集部が独自調査し、海外・国内で活用されるbotをカテゴリ毎に徹底解説します。もちろん、今日から使えるbot情報も満載です。きっとあなたも、「ビジネスの成果に繋がるロボットとの向き合い方」のヒントが見つかるはずです。
目次
1.botを活用できていますか?
2.検索型botで新しい情報とのマッチングが行われていく
3.知らないと損をする!仕事を代替していく、業務効率型のbotたち
4.まるで人間!ネット上で生きているかのように存在するmebot
5.人間はロボットと話したがり?エンターテイメント型のbot
6.botで成果は上がるのか。1ヶ月で10万ユーザーを獲得したSwellyの取り組み
7.チャットボットを分析して、生産性を向上させる
botを活用できていますか?
SELECKの読者の一部にbotの活用についてアンケートを取ったところ、77%の人がbotを使っていないと回答いただきました。
使っていない人からは、「何に使えばいいのかよくわからない」「使うまでがめんどくさそう」という声も上がっています。しかし、そのうち71%の方々は、これからbotを活用する意思があるようです。
▼ニュース、ピザの注文、業務連絡がチャットでできる時代に変わっていく
botが未来の一端を担っていくと言われる背景には、人工知能の進化だけでなく、メールや電話などのコミュニケーション手段に変わり、チャットやメッセージでのやり取りが中心となったことも大きな原因です。
botはロボットの略称です。ロボットが人間の仕事を奪うという説が以前からささやかれていますが、botが盛り上がる今、その未来はどこまで迫っているのでしょうか。
SELECKでは最先端の取り組みで生産性を上げている企業、400社以上に取材させていただきました。その中にはbotを使い、メッセージベースでタスク管理をしたり、研修を実施したり、プロジェクターの電源を切り替えたりしている取り組みもありました。
▼メッセージベースでリマインダーを設定している様子
実際にアンケートでは、業務効率を削減するため、リソース不足を解消するためなど、人間の代替としてbotを活用している声が多く聞こえました。
botはこれから確実に、人間の仕事を代替します。すると、社内業務の生産性が上がり、顧客とのコミュニケーションが変わります。これは、大きなユーザー体験・売り上げ増加などの成果をもたらすことになるでしょう。
今回はロボットの中でも、メッセージ上で動く「チャットボット」に特に焦点を当て、botのこれからの活用の仕方や、優れた体験を生む方法について見ていきたいと思います。
検索型botで新しい情報とのマッチングが行われていく
チャットボットの数は今や膨大です。全世界で力を持つbotのプラットフォームは「Facebook Messenger」「Kik」「Telegram」の3つでしょう。Kikにはすでに6000を超えるチャットボットが存在していると言われています。
出展:http://botnerds.com/types-of-bots/
▼KikのBot Shopには様々なジャンルのbotが並ぶ
今回は、チャットボットを4つの種類に分けて見ていきます。
1つ目は「検索型bot」です。
検索の権威は長らく、Googleが持っていました。しかし、botの登場により、逆転劇が起こる可能性が出てきました。ECやメディア、情報収集にもbotが使われ始め、新しい形での情報のマッチングが生まれてきているのです。
▼左からH&M、Quartz、Swellyのbot
Quartzはアメリカで展開されるビジネスニュースサイトです。運営会社はアトランティック・メディアカンパニーであり、デジタル戦略にも力を入れています。ウェブサイトはシンプルな作りとなっていますが、そのアプリではbotが堂々と中心に存在しています。
この大胆な戦略はbotの生み出すパワーを見据えてのことでしょう。
▼シンプルなメディアとしてのUI
アプリでは、記事の冒頭をbotが読み上げ、興味があれば1クリックで、その続きをメッセージ内で読むことができます。他のページに遷移する必要もないため、ストレスなく記事を読む体験が可能になっています。
▼botがアプリ上で、記事を少しずつ紹介してくれる
H&Mはみなさんご存知のアパレルメーカーですが、同社はKikをはじめとしたプラットフォームでbotを提供しています。bot内では画像などを選択し、年齢や服の好みを絞り込んでいくようです。入力する手間も極端に少ないため、ユーザーは自分の好みの服に簡単にたどり着くことができます。
これらのbotでは、従来の検索とは違い、誘導していくことでユーザーが求める情報にマッチングさせています。H&Mであれば、botが店頭の接客のように振る舞うことで人間の代わりをしています。
知らないと損をする!仕事を代替していく、業務効率型のbotたち
もっとも革新的な活躍をして、botとしての威力を発揮しているのが、業務効率化のbotかもしれません。
▼Slackもbotのプラットフォームとなっている
SlackやChatWorkによって、ビジネスの場面で使われるコミュニケーションがメールからチャットへ移り始めてきました。チャットという性質に乗り、企業は様々な業務をbotにより効率化しています。それは研修であったり、企業の受付、勤怠管理など多岐に渡ります。
※Slackについての記事はこちらから
SELECKで取材したヴェルク株式会社では、Slack上でカスタマーサポートの研修をしています。「ok board」と打ち込むことで、FAQからランダムに質問が飛ぶようになっています。
▼botを使ってカスタマーサポートの練習をしている、実際のSlack画面
※ヴェルク株式会社のbotも活用したカスタマーサポートに関する記事はこちらから
Facebook messengerやKikと同じく、企業内ではSlackが一つのbotのプラットフォームとなっています。
例えば勤怠管理や受付は、botの登場により、人間が必ずしもしなくてはいけない仕事ではなくなってきました。
envoyはipadですぐに作れる受付システムですが、ipadで来訪者に受付をしてもらえば、Slack上で該当する人物が呼び出されます。今までのように、受付を受けた人が1度迎えにあがり、担当者を呼びに行くということをしなくて済むようになったのです。
▼担当者の呼び出しは、botがあなたの代わりにしてくれる
他にもいくつかのbotを紹介していきたいと思います。
個人の仕事を抜け漏れなく、期限までに終わらせるのに便利なのがタスク管理かと思います。ReMindは重要なタスクを忘れないようにチャット形式でリマインドしてくれるbotです。Facebook Messengerから話しかけるだけで始めることができます。
また、タスクをしっかり完了させていると、生産性ポイントが増え、私たちのことを褒めてくれます。
このポイントがどうやって決まっているかは…謎でした(笑)。でも、チャットで褒めてくれるということでやる気も出てきますよね。
▼メッセージ上でリマインドをしてくれるReMind
Howdy.aiはSlackと連携して、様々な質問をメンバーに送ることができるbotです。CRMや様々なツールとの連携もできますが、色々なことができすぎるので、ここではメイン機能のみお伝えします。これだけでもかなり便利…
Howdyではスクリプトという機能で、簡単に質問を作り、回答を集め、その結果をノートとしてまとめることができます。ここでは、飲み会を開催するために、空いている時間や何を食べたいかをメンバーに聞いてみることにします。
「Create a Script」からスクリプトの名前をつけます。今回は飲み会で集まるということで、「gather」としました。
▼スクリプトを作成して、botが起動する合言葉を決める
次に進むと、質問を入力することができます。1週間で空いている夜と、食べたいものを聞いてみます。
▼botにしてもらう質問を設定
Slackで@Howdyのいるチャネル、もしくはDMでスクリプトを叩くと、誰に送るのか聞かれます。送付先を指定したら、すぐに@Howdyが質問を送ってくれます。そして、集まった回答はリアルタイムでノートにまとめられます。
▼@Howdyに質問してもらうようお願い
▼回答は自動的にノートとしてまとめられる(焼肉…)
これまでは、1人ひとりに聞いて回っていた作業が、スクリプトを叩くことで、botに任せられるようになったんです。
また、スケジュール機能を使えば、決まったスクリプトを決まった時間に決まった人に送ることもできます。
SELECKでは、現在募集している取材テーマを集めた「取材ウィッシュリスト」というものを公開していますが、この募集テーマは、編集部のメンバーに時間をとってもらい、話し合いながら決めています。その内容をメモして、あとで1つひとつ確認しながらウィッシュリストに追加していました。
しかし、その作業もHowdyを使えば、全て自動化することが可能になります。スクリプトとして以下のように登録しておけば、自動で回答を集め、まとめてくれます。このスクリプトを走らせるスケジュールも決めれるので、月曜日の13時にbotで質問を送信することができるわけです。とても便利ですね…!
例えば、マネージャーの仕事の一部も、botを使えば自動化する事ができます。毎週金曜日に進捗の遅れを確認する、毎朝メンバーに活動状況を聞く、自分の業務のフィードバックをもらう、会社に対しての意見を定期的にもらうといったようなことが、botに任せられるんです。
▼金曜日に進捗を聞くというのは、効果的ですね
カスタマイズ次第でいろんな可能性を持つことができるのが、Howdyのとても便利なところです。Botkitにはスクリプトのサンプルがたくさんありますので、ぜひご覧ください。
なんでもできそうなHowdyと違い、リモートワークで働くチームの朝会に特化したbotがTatsu.ioです。漢字の「立」からきている、海外サービスとしては珍しい名前ですね。
▼チャンネルで自動的にファシリテートをしてくれる
botをslackに登録し、特定のチャネルに招待しましょう。すると、管理画面が与えられます。ここで、参加者、質問項目、朝会の時間などを設定することができます。
設定した朝会の時間になったり、「start」と入力することで、@tatsuがファシリテートしてくれます。朝会メンバーに、順番にメンション付きの質問が飛んでいくので、自分の番で答えていきましょう。欠勤やskipにも対応することができます。
参加者の全員が回答し終えると、@tatsuが議事録を自動で作成し、管理してくれます。
▼議事録はあとから全て参照できる
それから、一番求めていたものと言っても過言でないbotが、Zoom.aiです。
Zoom.aiは仕事のアシスタントをしてくれるbotです。Facebook Messengerだけでなく、Slack、Gmailなどにも対応しています。できることは下記になります。
- Gmailに入っているコンタクトに自動で空いている日を送付し、アポを獲得できる(アポの範囲も指定可能)
- カレンダーの予定の削除
- カレンダーの予定の確認
- 明日の予定の確認
- 空いている時間の表示
- コンタクト先の説明
- リマインド機能
- 飛行機の時間の調査
- Uberの呼び出し
- 天気予報
なんという有能なアシスタントでしょうか。ためしに、既存コンタクト先にアポを取ってみます。Facebook Messenger上でZoom.ioに頼むだけで完了です。先方にメールが届き、アポの候補日を選択してもらいます。自分のカレンダーの空いている時間が候補日になっているので、何も考えることはありません。日程が決まると、メッセージで連絡がいき、Google カレンダーに自動的に同期してくれます。
▼アポを入れるお願いと自動で送り、最適な日程も教えてくれる
まるで人間!ネット上で生きているかのように存在するmebot
mebotは、特定の人物と話しているような感覚になるようなbotで、人間のbot化とも言えます。例えば、イーロン・マスクのbot「Ask Elon Musk」では、まるで彼がチャットをしているかのように、SpaceXやTeslaの話をしてくれます。
▼有名人とチャットしている気持ちになりますね
これまでは、自分の考えを発信したり、インターネットで人と繋がろうと思ったら、TwitterなどのSNSを活用したり、自分のホームページやブログを開設するといった手段が主でした。
それがbot化したのがmebotと考えればいいでしょう。会話形式でインタラクティブに、その人のことを知ることができるんです。
日本でも、著名人はLINEのアカウントを使って、友達登録をしてくれた人に対して情報を発信したりしていますが、それに近いと言えるかもしれません。
まるで、ネット上に生きているかのようにその人が存在するわけですね。そういえば、以前ETER9 というサービスを見つけました。
▼SNS×AIで、ユーザーの死後も本人に代わってコメントできる「ETER9」
これは、あらかじめ自分のSNSを登録しておくと、人工知能が過去の投稿の解析をして、ユーザーが故人となった後も友人へのコメントや投稿を続けることができるというものです。これも人間のbot化と言えるのかもしれません。
人間はロボットと話したがり?エンターテイメント型のbot
人間は意外と、人間以外のものと会話することに期待しているのかもしれません。ペットと話したいと思う人は多いでしょうし、会話が成り立てばいいのにと願ってテクノロジーを発明したりしています。
Siriの登場は盛り上がりましたし、様々な会話の様子がSNSを中心に話題にあがっていた記憶があります。いずれは人間1人に対して、botの友達が必ず1人いるという状態まで来るのかもしれません。
Hi Ponchoは天気予報を伝えてくれるbotですが、全てが会話ベースで進み、雑談にも応じてくれます。
▼Ponchoとのやりとり
どうやら彼は猫ではないようですね。彼らは、ジョークやGIFも交えながら柔軟に会話をしてくれます。
botで成果は上がるのか。1ヶ月で10万ユーザーを獲得したSwellyの取り組み
以上、4つのパターンに分けて、今のbotの現状を解説してきました。Product huntやKik、Slackにはもっとたくさんのbotがあるので、興味のある方は確認してみてください。
しかし、これだけbotを開発している人が多いわけですが、本当に効果はあるのでしょうか?「一時期だけのブームで終わるのでは?」という懸念もあるかと思いますので、実際にbotを取り入れたことで大きなグロースに成功したSwellyの事例をみてみましょう。
▼若者の意思決定を作るSwelly
Swellyはbotを開発したことで、1ヶ月で10万ユーザーの獲得に成功しています。Swellyは優柔不断で何も決められない若者が意思決定をするためのプロダクトです。デートに着ていく服や、次に引っ越しする家はどっちにすべきか迷った時、ユーザーに投票してもらうことで意思決定を促しています。
Swellyが最初に選んだマーケティング方法が、botを作り公開することでした。Product hunt、Facebook Messenger、Kik、Telegram上で公開し、それぞれのプラットフォームの特性を活かしながら、コミュニケーションのフィードバックを重ねてbotの活用を増やし、アプリへの送客に成功しています。
※数値情報はこちらのリンクを参考にしております(http://venturebeat.com/2016/08/28/how-multi-platform-thinking-helped-swell-reach-100000-users-in-one-month/)
▼くじらにはかしこいというキャラ付けをして、ポップなコミュニケーションを行う
botを盛り上げ、きちんと活用していくために大切なのは、充実したコミュニケーション体験かもしれません。つまり、より簡単に現実世界のような会話体験をしてもらうことが肝になってきます。
botの特性上、本来はプライベートな空間であるはずのFacebook MessengerやLINEでのコミュニケーションをすることになります。もし、企業色、マーケティング色が強いbotであれば、そのbotはユーザーに飽きられたり、もしくは邪魔だと思われてしまい、ユーザーから見放されてしまいます。
今回の記事で紹介したbotは、フランクなコミュニケーションをとっているものが多く、Gifや絵文字を使った親しみやすい会話をしています。
▼温かみと親しみやすさのある「友達」のようなコミュニケーション
また、ユーザーのコミュニケーションによる負担がないよう、気を使っていることがわかります。ユーザーが入力する場面はかなり少なくなっていて、ボタンや画像選択、絵文字やテキストなどで選択肢を与えるコミュニケーション方法も見られます。
▼ボタンや画像を用意し、入力するストレスを最小限に
ユーザーにできるだけ少ない労力で、しっかりとした価値をスピーディに提供していくことが、botを使ってビジネスを成功させる肝になっているようです。社内業務を効率化するためにbotを開発する際も、「社員の使いやすさ」という点を意識して運用すべきでしょう。
チャットボットの成果をどう測るべきか
このように、カスタマーに向けてbotを活用する場合や、社内メンバーの働きやすさを向上させるために活用する場合でも、心地よいコミュニケーション体験が重要です。それは、繰り返し使ってもらい、より多くの会話をbotとしてもらうことで成果を残すためです。
そのことは、botを専門に分析する解析ツールからも浮かび上がってきます。Botanalyticsはbot分析ツールの代表格となるツールでしょう。このツールで特に重要視されている指標にフォーカスしていきます。
▼Botanalyticsのシンプルなダッシュボード
ダッシュボードで閲覧できる数値は
・総メッセージ数
・会話の数
・一人当たり平均のコンバージョン数
・一人当たりの平均コンバージョンステップ回数
・総ユーザー数
・メッセージの送信数
・メッセージを受け取った数
・平均滞在時間
になっています。
また、別画面ではリテンションも分析されています。
▼リテンション分析画面
メッセージの数やそこでのコンバージョン、ユーザーとのエンゲージメント、リテンションが重要になるそうです。エンゲージメントとリテンションを目指すのは、アプリでも変わりありません。しかし、botの大きな違いは、「メッセージ数を追うこと」が、成果を生むことに直接つながっていくことです。複雑な分析、複雑な数値目標を立てずとも、戦略を立案できるのはマーケターにとっては嬉しいことでしょう。(ネガティブに捉えれば、戦略性が低くなりますが。)
Botanalyticsでは、Facebook Messenger、Slack、WeChat、Kik、LINEなど、様々なプラットフォームで展開されるbotについて分析できます。
現在botを活用されている方はぜひ、1度分析してみることで、botをより改善し、ビジネスの生産性をあげてみてはいかがでしょうか。
▼幅広いbotに対応
まとめ
技術の進化とともに、これまで人間がやっていてはもったいなかった業務をbotにお願いし、人間がこれまでできなかった、膨大な顧客との1対1のコミュニケーションが実現できています。
それらを可能にするbotは、これからのインターネットの新しい形の一つと言えます。テクノロジーが発達し、チャットというスタイルが浸透することで、様々な生産性向上の取り組みをすることができます。その可能性はまだまだ天井知らず。
これからチャットボットがライフスタイル・ワークスタイルの中心になっていくかもしれません。みなさんもぜひ、可能性にあふれるbotを、仕事や私生活に活かしてみてはいかがでしょうか?