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「メンバーの自律性がない」原因は? クラウドワークスの、自律を促す評価制度を公開

〜伸ばしたいスキルを「自分で」選ぶ。評価制度を見直して、メンバーの自律性を育てる、デザイン組織のマネジメント手法をご紹介〜

デザイナーの評価や育成に、頭を悩ませている企業は多いのではないだろうか。

日本最大級のクラウドソーシングサービスを提供する、株式会社クラウドワークス。同社では、会社としてデザインやデザイナーを活かしきれていなかったことから、一時期、デザイナーのモチベーション低下や離職が発生する事態に陥っていたという。

そこで、2016年にデザイン組織を立ち上げ、デザイナーが自律的に育つ制度設計や環境整備を開始。

具体的には、全社統一のグレードに紐づく形で、デザイナーのグレードと役割を定義。直近では、デザインスキル一覧を作成し、その中から自ら選択したスキルを評価する制度を試験的に導入した。

同社のデザイン組織部長で、執行役員を務める新 岳志さんは「評価をメンバーに受け止めてもらうには、普段からの対話が大事」だと語る。

今回は新さんに、デザイン組織が直面した課題と、評価制度の見直しプロセスについて、詳しくお伺いした。

働き方が多様だからこそ、1人ひとりの「自律」が求められる

僕は、前職で8年ほどコピーライターを経験した後、2015年12月にクラウドワークスに入社しました。

弊社は2014年12月の上場後に採用を強化し、社員数を1年で30人から100人以上まで増やしたのですが、その時に採用された社員のひとりが僕です。

当初は、コピーライターとして、サービス内の文言やコンセプトメイクなど「あらゆる意味と言葉を整理する」仕事をしていましたが、1年ほど経った頃に、プロダクトデザイン組織の立ち上げを任されたんです。

それまでもデザイン組織自体は存在していたのですが、まだまだ会社としてデザインやデザイナーに対する理解や、活用するための知見が不足しており、デザインをうまく会社の力にできていませんでした。

そのような状況だったので、デザイナーの不安が高まったり、離職が発生したりしてしまい、早急に組織を立て直していく必要がありました。

僕はデザイナーでもないし、マネージャー経験があるわけでもありません。ただ、コピーライターがわりと「思考する」職種だったので、会社におけるデザイン組織の位置付けであったり、そのプロセス整備のイメージは元から持っていて。

それを1年ほどかけて、コアメンバーと一緒に、会社に浸透させていきました。

組織の体制としては、開発チームという縦軸に対し、職種別組織という横軸が交差するマトリクス型にして、人のマネジメントについては、横軸のデザイン組織で担うことにしました。

当初、職種別組織としてあったのはデザイン組織だけでしたが、現在ではエンジニアなど他の職種についても、職種別の組織が存在しています。

クラウドワークスは「働く」という領域の改革をビジョンに掲げている会社なので、自社でもリモートOKだったりコアタイム無しだったり、時間や場所に捉われない「働き方における多様性」を大事にしています。

こうした自由度の高い働き方が可能なので、ラクに働けるように思われるかもしれませんが、実際はその逆です。ルールさえ守っていれば組織や仕事が成立する状況とは違い、社員1人ひとりが自律的でないと、組織も仕事も成立しないんです。

そこで弊社では、マネジメントや組織づくりにおいても、メンバーの「自律」を大切にしています。

全社統一の基準に沿ったデザイナーのグレードと、役割を定義する

デザイン組織を立ち上げてから、評価制度の見直しや役割の定義など様々な施策に取り組んできましたが、その過程は「実験」の繰り返しでしたね。

例えば、デザイン組織では一時期、360度評価を取り入れていました。というのも、デザイナーの評価に関してはデザイン組織で行うものの、普段はそれぞれ開発チームで仕事をしているので、その働きぶりが見えづらかったんです。

そこで、開発チームからの視点を得るために360度評価を取り入れたのですが、「評価に直結する可能性があると思うとフィードバックしづらい」「チームメンバーからの評価コメントはありがたいが、一方通行なのが負担だ」などといった声が上がってきて。

そこで現在では、評価とは切り離して、各チームでフィードバックを自主的に行う運用に変えました。

こうした実験を繰り返すうちに、評価制度の土台を見直す必要があると感じました。そこで、職種別組織を束ねる部長陣と話し合って、今年の4月に、全社共通のグレードに紐づく形で、デザイナーを含む全職種の役割を整理し直しました。

全社共通のグレードは、S1/M1からJ2までの8段階あり、それぞれ役割で定義されています。

▼全社共通のグレード表(画像は編集部で作成)

例えば、J1では「自分ひとりで業務を遂行できる」、L1では「メンバーを巻き込んで業務を推進・実行できる」といった感じですね。

また、上位4つのグレード以上になると、スペシャリスト(S1〜S4)とマネジメント(M1〜M4)で枝分かれする形になっています。専門的なスキルをメインに組織をリードする人と、組織づくりや人の成長にコミットする人を分けることで、各自の志向性に合わせる形でグレードを上げていくことが可能です。

この共通グレードに紐づく形で、職種別のグレードを定義しています。デザイナーについては、プロダクトデザイナー、コミュニケーションデザイナー、UXデザイナーの大きく3つにカテゴリを分けた上で、それぞれの役割を細かく定義していますね。

また、目標設定や評価のフィードバックにおいても、このグレードの定義が活用されています。

例えば、「今はJ1だけどL2の水準で目標を設定しよう」とか「ここの部分ができれば、1つ上のグレードに上がれるよね」といった形で、目線合わせがしやすくなりました。

スキル評価を導入し、伸ばしたいスキルを「自分で」選択

これに加えて、今年の4月から、デザイナーの「スキル評価」も取り入れました。

というのも今の時代、デザイナーに求められる役割やスキルが多岐にわたる上、SNSなどを通じて様々な情報が入ってくるので、どういうスキルを伸ばせばよいのか悩んでしまい、自律的に成長するのが難しくなってきていると感じていて。

なので、成長の指針となるような仕組みを作りたいと思い、例えばユーザーインタビューやグラフィックデザインといった、デザイナーのスキルを定義しました。

そして目標設定では、各メンバーに「自分が伸ばしたいスキル」を2つほど選択してもらいます。

例えばUXデザイナーであれば、UXに関連するスキルをすべて高めていく、といった選択をしてもいいですし、UXの得意領域に加えて、ワイヤーフレームなどのプロダクトデザイン系のスキルを高めてもいいと思っていて。

▼デザインスキルの一例

自らが好きなように、好きな順番で習得していくのがいいと考えています。

スキルを選択した後は、最初に「現在地」を確認しています。具体的には、スキルの「習熟度」と「クオリティー」の2軸で、それぞれ5段階評価をして、今どこにいるかの認識をすり合わせます。

半年後に振り返りを行い、マトリクス上で動きがあれば、それをポイントにして評価にも組み込んでいく予定です。まだ運用を開始したばかりですが、特定のスキルを意識的に伸ばすことができるので、メンバーからは今のところ良い反応をもらっていますね。

なお、スキルについては、半年ごとに、追加したり削ったり集約したり分解したり、都度アップデートさせていこうと考えています。

マネージャーの評価を受け止めてもらうには、信頼関係が大事

また、評価制度を運用していく中で、最初の目標設定をいかに精度高くできるか、がやはり大事だなと思っていて。そうでないと、評価っていくらでもコントロールできてしまうと思うんです。

なので、役割グレードやスキル表などをもとに本人と一緒に目標を設定し、それをしっかり握り合うことが大切だと考えています。

また、その目標がメンバーにとって本当に納得感のあるものかどうか、も重要です。そこで「あなたはどうしたいの」というメンバーへの問いかけから、各々の志向性と、事業の方向性に合わせて、やりがいのある目標を立ててもらっています。

その評価の際に、本人の自己評価とマネージャーからの評価にズレが生じる場合もあるのですが、結局、実際の評価をいかに受け止めてもらえるかって、普段からどのくらい対話しているかにかかっていると思っていて。

業務を把握していないマネージャーに言われても納得感がないけれど、自分のことを知っている人からの評価であれば、納得感をもって受け入れられやすいと思うんです。

なので、隔週で行っている1on1では、業務の話だけでなく、その人の価値観やキャリアの話なども含めてしっかり話すようにしています。特に最初は、その人がどういう人なのかを理解するため、仕事のモチベーショングラフを書いてもらって、共有してもらう時間を設けていますね。

また、普段のミーティングはオンラインも多いのですが、どうしても定性的な情報量が落ちてしまう部分があるので、1on1だけは必ず対面で実施して、信頼関係づくりを意識しています。

自律的な成長を促し、よりフレキシブルな働き方を実現したい

世の中には「メンバーの自律性がない」と悩むマネージャーも多いかと思います。半分はメンバーの資質かもしれませんが、もう半分はマネジメント側の責任だと僕は思っています。

というのも、「自律的に行動できる人かどうか」を重視して採用したとしても、それを引き出す仕組みや環境がなければ、自律的な行動も、自律的な成長も、フルに発揮してもらうのは難しいと思うんです。

今年の3月には、デザインプロセスやスキル評価に責任を負う「デザインプログラムマネージャー」という役職を新設するなど、適任の方にジョインしていただいたので、今後さらに仕組みづくりを強化していきたいと思っています。

また自律的に成長するためには、経験を積んでもらうことも必要なので、メンバーへの権限委譲は積極的に行っていきたいと思っています。最近だと、UXデザイナーについては、予算の策定から業務設計、採用計画まですべて任せていますね。

マネジメントとは、いかにメンバーの自律を促すか、と言ってもいいかもしれません。まだまだ全然やれていない部分もあるので、これからも日々、思考錯誤していきたいと思います。(了)

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当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。

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