• 株式会社セプテーニ
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  • 加来 幸樹

クリエイティビティーを高めるインプットを、画像共有SNSで 企業のPinterest活用法

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今回のソリューション:【Pinterest/ピンタレスト】

Pinterest(ピンタレスト)」は、2010年にアメリカで誕生した「ピンボード」風の画像共有SNSだ。2013年11月には日本語サービスも開始し、世界中で順調に利用者を拡大している。そのPinterestを企業内の制作チームで活用しているのが、インターネット広告事業を展開する株式会社セプテーニでチーフディレクターを務める加来 幸樹さんだ。

Pinterestではユーザーが自分の好みの画像をテーマ別に「ピン」をつけてコレクションしたり、他人のピンボードを閲覧して好みの画像を「リピン」することができる。この特性が、クリエイティブのアウトプットの源泉となるインプットの手段として「本当に可能性を秘めている」と言う加来さんに、その活用術を聞いた。

時代の変化で、WEB広告も「コンセプト重視」に

2006年に新卒でセプテーニに入社して今年で10年目になります。入社した当時はまだ、ネット広告でクリエイティブはあまり重視されていないような時代でした。

でも今は求められるデザインの品質も上がり、そこに紐づくアウトプットの意味付けのようなものが小さなバナーひとつにも求められるようになったと思います。

コンセプトやブランディングを意識される企業が増えたんですね。でもそういったクオリティの高いものを提供しつつ、パフォーマンスも出さなければいけないということで、「クリエイティブの品質」を管理できる体制づくりが社内で求められていました。

社内の制作チームを横断するクリエイティブチェックの体制を構築

それで2014年に、僕とアートディレクターでクリエイティブの品質をチェックするチームを立ち上げました。制作チームは案件別になっているんですが、それらのチームのクリエイティブを僕達が横断でチェックして、一定以上のレベルに上げていくという体制を作ったんです。

例えばコンペに参加する時や、クライアントの求めるハードルが高い案件などに限定的にジョインすることもあります。今はまだ手探りで進めている部分もありますが、事実上セプテーニの制作物のクオリティを全般的に見ているという形です。

インプットのための良い画像素材を蓄積する場所を探していた

クオリティを上げるというミッションを背負ったことでいろいろ考えるようになったんですが、僕の中で「アウトプットの源泉はやっぱりインプットだよね」という考え方があります。

クオリティを語るのであれば、まずはインプットをし続けるようなことを何かやった方がいいだろうなと思っていて、それに何を使おうかなと考えていました。

その時社内ではFacebookのグループをかなり活用していて、かっこいいバナーなどをどんどんシェアしてみんなで「いいよね」と言い合ったりしていました。ただ、そのやり方ではコミュニケーションとしては良くても、どんどん流れていってしまうのでストックできない点が課題だったんです。

そこでもっとインプットのために「いいもの」を貯めていくことを楽しめるものはないかと考えていた時に、活用を思いついたのがPinterestでした。

「登録したまま」になっていたPinterestの活用を思いつく

Pinterestって、登録したけど使っていない、という人もいると思うんですよね。僕も最初はそうで、日本でリリースされた2013年の末くらいから登録はしていたけれど、使い方があまりわからないままだったんです。でもインプットの手段を考えていた時に、「ずっとブックマークバーにいるPinterestが使えるかもしれない」と考えて試してみたんです。

まずは僕のチームと、チーム外でも発信してくれそうな人をピックアップして、一緒にいいと思った画像を上げていく少人数のグループを作りました。オープンボードに上げているのでその画像は誰でも見ることができますが、他のメンバーにも見てもらうためにFacebookのグループにもシェアをしていきました。

すぐに効果があって、例えば何かのビジュアルを発想する会議をしている時に、今までは「こうした方がいい」というのを口頭だけで言い合っていたのが「Pinterestのあの場所に入っていたあれだ」というイメージの共通理解を持てるようになりました。それにPinterestのUIがカッコいいので、その画面上で見せるだけでいいもののように見えて説得力が上がるメリットも感じています(笑)。

目的別のボードをPinterestに作り「良い画像」を収集

目的別にいろいろなボードを作っていて、例えば「Bang! Bang! Banner」というボードでは単純にかっこいいと感じるバナークリエイティブをどんどん上げています。最近はスマホゲーム系の仕事も多いので、別のボードでは電脳系のビジュアルやコラボの表現のバリエーションだけを集めることもしています。

Pinterestはネタ収集にも便利で、例えば「バナー WEB」とで検索するとたくさんヒットするので、それをお互いにリピンしあって情報を共有をするのにも活用しています。社内メンバーだけでなく一般ユーザーもピンをつけているので、ピンの数で客観的な反応を知ることができるのもいいですね。

また、特にテーマは設けずに「感覚的にいいな、参考になりそうだな」と思うものを集めていくボードもあります。ここには明確なルールは逆にない方がいいのかなと思っていて、感覚・センスが信用できる数人の人間が画像を上げています。こうしていいものがビジュアルとして可視化されてくると、いいと思うものにある共通点やパターンが言葉で表現できるようになっていきました。

集めたネタを解釈し、言葉に変えると初めてアウトプットできる

インプットはするだけではダメで、良いと思ったものを解釈して、言葉に変えて、ロジカルに整理していかなければアウトプットに繋がらないんですね。自分の好きなものがどうして好きなのか、論理的に説明できるようになって初めてクライアントが抱える課題の中まで言葉で理解して、それを解決できるようなアウトプットが出せるんです

そしてクライアントに「これをやりましょう」と提案するのも、具体的に説得力を持ってできるようになるんです。

Pinterestを通じてその「ロジカル」の部分までやっていくように意識しています。Pinterestって今はどちらかというと、いわゆるアーティストのような人に向けられたツールだと思われている気がしますが、もっとロジックありきで発想するような立場の人にこそ、実は使い道があるんじゃないのかなと

そういう意味では企業のマーケティング担当者や、広告代理店の方もPinterestをかなり活用できるのではないでしょうか。

クリエイターの好みやテイストを可視化し、案件や教育に繋げる

インプットをアウトプットに繋げるための方法として今試しているのが、Pinterestを使って感覚的に扱いがちなクリエイターの好みや、好きなデザインテイストをあぶり出すことです。例えば僕ともう1人のメンバーで「WEB」と検索して、お互いにカッコいいと思った画像を10枚ずつ選びます。

そうすると被っている部分も、そうでない部分もある。これをもし全員でやったら、なんとなくメンバーの好みがわかるのではないかと思っています。そうすると、あるタイプの仕事がきたときに、あの時選んでいた画像から「この人に向いていそうだな」ということが判断できるのではないかと考えています。

この方法を使うと、教育的な側面でも効果があると考えています。集めた画像からその人の好みがわかるので、それに合わせて「こういう本を読んだらいいよ」とか「こういうデザイナーのことを勉強すればスキルアップできるよ」などとアドバイスできます。

画一的になりがちなクリエイティブ教育に、Pinterestを使ってイノベーションを持ち込むことができるかもしれない、と思っているんです。

Pinterestは、世界単位でデザイン意識を変える可能性を持つ

Pinterestは本当に可能性を秘めていると感じているので、僕は素直にもっと流行って欲しいと思っています。今は画像を上げている人数が少ない分、密度が濃いというメリットもあるかもしれませんが。

もっと多くの人が僕達のようなPinterestの活用をするようになると、社内の資料ひとつとってもデザインの根本的なところが底上げされていくのではないでしょうか。

大げさな話、企業の枠も越えて、それこそ国単位、世界単位で建築物や街の景観も良くなるかもしれないし、世界中のみんなのデザイン意識が上がるようなことが起こり得るんじゃないかな、と思っています。

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