• 株式会社ホワイトプラス
  • 執行役員CFO 経営企画部長 兼 マーケティング部長
  • 原田 隼

バリューは浸透「させる」ものじゃない。社員に愛され、体現されるバリューの作り方

〜バリュー浸透は「設計」が9割。5つの基準からバリューを決定し、制度運用で仕組み化する。ホワイトプラスのバリュー策定プロセスとは〜

組織内に共通の価値基準として「バリュー」を定めたけれど、なかなか社員に浸透していかない…といった課題はないだろうか。

2009年に創業し、ネット宅配クリーニングサービス「Lenet(リネット)」やハウスクリーニングのマッチングプラットフォーム「kirehapi(キレハピ)」を展開する、株式会社ホワイトプラス。

同社では、社員数が50名を超えた頃から共通の価値基準を定める必要性を感じ、2017年11月よりバリュー策定プロジェクトを開始した。

全社で課題と理想を洗い出す「バリューワークショップ」を行った上で、5つの決定基準に基づいて議論を重ね、3つのバリューを制定。そして、それらを浸透・体現するため、評価や採用、称賛の仕組みに落とし込んでいったという。

同社の執行役員、原田 隼さんは「バリューは浸透『させる』ものではなく、浸透『する』ようなプロセスで作れているかが重要」だと語る。

今回は原田さんと、バリュー策定プロジェクトを共に推進した人事の高見 唯樹さんに、そのプロセスの全貌について詳しくお伺いした。

「50人の壁」を乗り越えるため、バリュー策定プロジェクトを開始

原田 私は広告代理店の経理から始まり、数社で管理部門やCFO経験を積んで、2016年3月にホワイトプラスに入社しました。現在はCFO、人事全般、マーケティング領域も管掌しています。

高見 私は新卒でリクルートに入社し、人事中心のキャリアを経て、2017年7月にホワイトプラスに入社しました。現在は、主に採用や組織開発などを担当しています。

現在、弊社には業務委託や派遣の方々を含めると80名ほどが在籍していますが、従業員の数が50名を過ぎてきたあたりから、いわゆる「50人の壁」にぶつかりまして…。

弊社はネット宅配クリーニングサービスを展開しているのですが、少人数ながら部署や職種が多岐にわたるんですね。メンバーのバックグラウンドや価値観もさまざまなため、当時はコミュニケーションがうまくいかない部分も出てきていました。

▼左:原田さん、右:高見さん

原田 おそらく、どの会社も通る道だと思うのですが、創業初期は個としてパフォーマンスの高い人が思い思いに頑張るようなフェーズがあって、その時はそれでも上手くいきます。

ですが、未来を見据えて今後どのような組織を作っていくべきかを考えてみると、個人プレーのまま100人、200人になるのって一般的に難しいと思っています。100人それぞれが個々人の価値観や考え方で動いてしまっては、チームとしての動き方がバラバラになってしまうからです。

そこで拠り所となるのが共通の価値基準だと思うのですが、2013年に制定していた「人材理念」では、在るべき「状態」はわかっても、今日明日どう動けばいいのかという「行動」の指針にはならなくて。項目も8つあったので、社員にあまり浸透していませんでした。

そこで、2017年11月から2018年6月にかけて、バリュー策定プロジェクトを実行しました。

バリューが浸透するかどうかの9割は「設計」の段階で決まる

原田 私は、バリューは浸透「させる」ものではなく、浸透「する」ように作れているかどうかが肝だと思っていて。社内に浸透していくかどうかは、プロセス設計の段階で、9割が決まると思っています。

そこで大切なのは、今あるカルチャーと未来に向けた理想との差分を把握して、全社員が段階的に、それを理解できるようなプロセスにすることです。

高見 具体的にはトップダウンで決めるのではなく、全社員を対象にバリュー策定のワークショップを行いました。

ここでは、部署混合のチーム分けをし、まずは個々人でホワイトプラスの良いところ・課題だと思うところを書き出すワークをしました。

▼実際のワーク内容

次に、各自で考えたバリュー案をチームに共有した上で、3つの案まで意見をまとめてもらい、全社ミーティングで発表してもらいました。

原田 この意図としては、バリューのアイデア出しも目的としてありますが、もう一方では「100人いると100通りの価値観があるんだな」ということをワークを通じて感じてほしかったんです。

つまり、これだけ多様な価値観があるのだから、全員の価値観を統一するのは難しい。だから共通の価値基準となるバリューをつくるべき、という意義を認識してもらう。このプロセスを一旦踏むことによって、「なぜバリューが必要なのか」という理解を深めてもらう狙いがありました。

高見 またワークショップを行う前にも、バリューを作る目的や進め方の説明を丁寧に行いました。

特に「個人の価値観は違っていて当然で、誰が正しい・間違っているではない。個々の価値観を尊重、受容することが、多様性や仕事の質の向上につながる」ということを、毎回必ず説明するようにしていました。

このコミュニケーションをしたことで、「自分の価値観が否定された」「自分の考えた案が認められなかった」と感じる人はいなかったと思います。

この全社ワークショップの結果をふまえて、経営陣と人事でのディスカッションを重ねました。その中で、将来的にどのような組織を作りたいか、という上流を話し合ったり、他社のバリューを分析してみたりして、バリューに含むべき要素を考えていきました。

先の制度運用を見据えて、バリューの決定基準を明確にする

原田 バリューの要素を決める過程では、最初にその決定基準を明確にしました。というのも、バリューの「策定」は、その「浸透・体現」というゴールの一過程でしかないので、社員が愛着を持てるか、他の制度運用にのせられるか、を意識しました。

ひとつは、短文で覚えやすい3つのコアバリューになっているか。また、この3つの内、経営陣と社員の意見を、1:2の割合にしようと考えました。

なぜなら、経営陣が3つバシッと決めてしまうと、社員が自分ごとに感じづらくなってしまいますし、一方で、社員だけの意見で決めると会社が行きたい未来にはたどり着けません。なので、会社としてこれは絶対に譲れないという1つと、社員の案をベースにした2つのコアバリューを作りました。

また、バリューに即した行動を称賛・評価するという先の制度運用を見据えて、「バリューの体現度を尺度で測れるか」「社員全員が使えるか」「抽象度の高い言葉になっていないか」といった点を基準として入れました。

特に、バリューは具体的な行動がイメージできないと意味がないと思っていて。誰もが「この人はこういう行動をしていたから、評価や表彰に値する」とわかるように、バリュー文言の解像度を高めていきました。

もうひとつ、社員に愛着を持ってもらうために、ありきたりではなく「ホワイトプラスらしさがあるか」という基準も加えました。

高見 この5つの基準に従って、バリューの要素が固まってきた一方で、なかなかワーディングが決まらなくて…。200〜300くらいの文言案があったので、デザイナーや広報も交えながら、1ヶ月半ほどかけてブラッシュアップしていきました。

原田 たとえば、ホワイトプラスらしい「White」という言葉を使った「White Space」というバリューを作ったのですが、最初は「余白を見つける」という文言案があったんです。でも、余白というのは外枠があって、その余りの部分を意味するから、その人の枠を決めてしまうようで良くないよねと。

じゃあ余白を超えた部分ってなんだろうと議論する中で「のびしろ」という言葉が出てきたのですが、のびしろの「しろ」はホワイトじゃないけどいいのかという話もあって(笑)。

これに関しては他の決定基準を加味して、たとえば期初にできなかったことが期末にできるようになっていれば「のびしろ」が評価の尺度になり得ると。そこで「のびしろで戦う」がバリューのひとつとして決まりました。

高見 最終的に決定した3つのバリューは、落選した案の理由や、決定に至るまでのプロセスの裏側とともに、社員に伝えました。

その発表においては、年次・部署関係なく集まった7名のバリュー策定プロジェクトメンバーとコミュニケーションをとりながら、人事からの一方通行の伝達にならないように、発表の演出も工夫しましたね。

バリューを分解し、評価制度、採用基準、称賛の仕組みに入れる

高見 次に、バリューを浸透・体現するフェーズでは、評価や採用、称賛などの人事制度に落とし込んでいきました。

たとえば評価では、「のびしろで戦うためには何が必要なのか」「どういう行動をしたら仲間を笑顔にできるのか」といった議論をしながら、バリューの要素を3〜4つのコンピテンシー項目に分解し、それぞれのレベル感をすり合わせていきました。

原田 また、バリューは評価指標のひとつではありますが、目標としては設定していません。弊社では、業務目標と組織貢献目標の2つを設定しているので、これ以上増やすと社員の負荷を高めてしまいますし、バリュー体現はあくまで目標達成にむけた行動の「結果」です。

なので、半期ごとの評価面談で、バリューに基づいて行動を振り返るという運用にしていますね。

高見 今いるメンバーをどう評価するかと同時に、バリューに沿った人をいかに採用するかも重要なので、採用基準にバリューの項目を加え、面接の構造化を進めてきました。

具体的には、各バリューの質問例と回答例を作って面接官に共有したり、面接官向けの社内研修などを行っています。また、それぞれの面接官が3つのバリューすべてを確認することは難しいので、選考ステップごとにバリューの担当を分けて、フィットしているかどうかを確認しています。

さらに、称賛の仕組みとしては、ピアボーナスツールの「Unipos」を活用して、日頃からバリューを体現した行動を投稿できるようにしています。そこで蓄積された投稿数や推薦のコメントなどをもとに、半期に1度、バリューアワードを実施しています。

▼実際の推薦エピソードの一部(※編集部にて加工)

原田 アワードで渡す表彰状には、管掌役員が受賞理由のコメントを書いています。かなり文章が長いので読み上げるのも時間がかかるのですが(笑)、どういう行動でどう称賛されているかを、全員の前でしっかり伝えるようにしています。

▼実際の表彰状とトロフィー

人事制度には「賞味期限」がある。フェーズに応じて見直していく

原田 おそらく、ここまでの一連のプロセスのどこか一箇所でも割愛すると、誰かしらの頭の中に「はてなマーク」が浮かんでくるんです。

なぜこの人が評価されているのか、このバリューをどう使ったらいいのか、といった「?」が少しでも浮かんでしまうと、バリューそのものが他人事のように感じて、うまくいかなくなると思っていて。

メンバーの目線で、どうすれば毎日バリューを使ってもらえるようになるか、全員の顔を思い浮かべながら設計した結果として、違和感なく浸透していったのかなと思います。

また今後は、会社のフェーズに応じてバリューを見直していきたいとも考えています。50人の組織が100人、1,000人になった時に、組織として必要な行動が変わったり、新しいメンバー向けのバリューを入れ替えたりする必要が出てくるだろうと思っているからです。

高見 今はまずバリューを作った段階であって、組織の理想を目指していく過程としては、まだまだ道半ばです。

採用を担当する中で、候補者の方からよく「ホワイトプラスは人が良かった」と言っていただけるのですが、その「ホワイトプラスらしさ」をきちんと言語化したいと思っています。それに合わせて、人事制度もアップデートしていきたいですね。

原田 私は、どんな制度でも必ず「賞味期限」があると思っているんですね。なので、メンバーに飽きが生じないように、制度も定期的に見直していきたいと考えています。

また、バリューを体現した先に、何があるかをきちんと社員に提示することも重要だと考えているため、バリューの次は、組織ビジョンとなる人材理念をアップデートしたいと思っています。(了)

※本プロジェクトの詳細は、同社作成のこちらのスライドもぜひご覧ください。

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