- ユナイテッド株式会社
- タレントアンドストラテジー本部 人材開発部 マネージャー
- 林 由里恵
学生の「口コミ」で拡散!2ヶ月で1,700人の応募を獲得した、インターンシップ設計とは
〜ターゲット属性に合わせたハイレベルなコンテンツと、口コミ拡散を狙った報酬設計が鍵。認知度の向上に伴い、選考エントリー数が前年比4倍以上になった事例〜
労働人口の減少により年々厳しさを増す「新卒採用」。その一手段として「インターンシップ」を実施する企業も多いが、自社の認知度が低い場合、どのように学生を集めればよいのだろうか。
アドテクノロジー・コンテンツ・インベストメントの3つの領域を中心に事業を展開し、継続的に新卒採用を行っている、ユナイテッド株式会社。
同社では、新卒市場における認知度の低さや、学生との接点づくりに課題を感じていたという。
そこで2019年の夏、21卒の学生向けにサマーインターンを開催。口コミが見込めるターゲット層の選定と、その層に合わせたコンテンツ設計により、たった2ヶ月で1,700名を超える応募を獲得した。
また、通過率3%未満という難易度の高い選考により、参加学生の質を高め、満足度の高いインターンシップを実現したそうだ。
今回は、同社で新卒採用の責任者を務める林 由里恵さんに、サマーインターン開催の背景から、学生の口コミを自然と醸成する「ハイレベルなコンテンツ設計」の全容について、詳しくお伺いした。
学生との早期接点の強化と認知度向上のため、インターン実施を決意
私は、2017年にユナイテッドに新卒入社し、アドテク領域の営業や新規プロダクトの立ち上げを経験した後、2019年1月に人事に異動しました。現在は、3名から成る新卒採用チームの責任者として、戦略設計から実行までを担っています。
人事になった直後から、20卒の採用に向けて動き出したのですが、他のベンチャー企業に比べるとかなり遅れを取っている状況でした。
それに加えて、弊社は2018年に中期経営計画を発表し、これから新規事業や成長期待事業へ注力していくタイミングでした。
そこで、20卒ではこれまでの採用ターゲットを見直し、近い将来に事業の立ち上げ責任者として活躍が期待できる学生を採用する方針としました。
それに伴い、19卒の学生までは「素直さ」を重視してきましたが、20卒からは「リーダーシップ」や「地頭の良さ」を重視するようになりました。
そうして動き出した20卒の新卒採用では、選考を受けてくれる学生はとても魅力的な人も多かったです。しかし結果的に「サマーインターンから接触している企業への志望度が高いため」辞退されることが少なくありませんでした。
また、新卒の就活市場においては、ユナイテッドの認知度や人気がそれほど高くないな…というのが正直な実感で。
しかし、まだユナイテッドを知らないだけで、認知してくれれば好きになってくれる学生は一定数いる、と思っていました。
こうした背景から、「採用活動の早い段階で優秀な学生と接点を持ち、市場での認知度を一気に向上させる」ことを目的に、21卒採用ではユナイテッドとして初めて「サマーインターン選考」の実施を決意しました。
準備期間はたった2ヶ月。ターゲット学生の「口コミ」拡散を狙う
21卒向けのサマーインターンは、2019年7月から9月にかけて、合計3回実施しました。
実施を決めた時点で、開催までの残り時間は2ヶ月を切っていました。短期間で多くの学生を集めるため、新卒向け採用媒体のメディア露出に加えて、学生間の口コミでの集客も狙うことにしました。
まず、口コミ集客が見込めるターゲットとして、「トップ層の学生」に絞りました。というのも、採用方針に合致するのはもちろんですが、彼らが就活市場で「学生間のインフルエンサーとして影響力を持っている」という点に着目したんです。
その学生層はサマーインターン期でも早期に実施される、外資系戦略コンサルや投資銀行のインターンに応募する方が多いため、なるべく早い時期にインターンを実施することも意識しましたね。
次に、「認知度が低い中でいかに応募を獲得するか」を考えた結果、インターンの日数を、拘束時間が短く参加のハードルが低い2日間に設定。
さらに、報酬を5万円という高水準に設定し、選考だけでも受けてみようと思ってもらえるようにしました。
もちろん高額な報酬にしたことで、前年よりも採用予算が上がることになります。しかし、他社の採用単価を綿密にヒアリングし、他社比較での根拠を持って社内説明したことで、承認を得ることができました。
また、インターン告知の出稿媒体については、過去の採用実績や登録学生の属性を鑑みて、人材エージェント2社に絞りました。
当初の応募数の目標は500名ほどでしたが、募集スタート後にTwitterや就活系の記事に取り上げていただくことができ、口コミも生まれ、最終的に1,700人を超える応募を集めることができました。
選考倍率3%未満!「難関さ」がハイレイヤー層の認知獲得につながる
応募後の選考フローは、エントリーシートによる書類選考→説明選考会とグループディスカッション(以下、GD)→個別面接(1回)、となっています。
この運営には、新卒採用チームの3名に加えて、執行役員や部長、マネジャー、計20名ほどに選考官として協力してもらいました。
最初の書類選考については、あまり数を絞りませんでした。というのも、インターン開催の目的のひとつは「認知度の向上」であったため、できるだけ多くの学生に会社説明を行う機会でもあるGD選考に来ていただきたいと考えていました。
実際、エントリーシートを提出した約1,200名のうち、約1,000名ほどが書類選考を通過しました。
GD選考では、思考のプロセスが異なる2つのテーマを用意して、複数グループに分かれてディスカッションを実施しました。検討プロセスやチーム編成を変えて2回のGDを実施することで、精度高く見極めを行うことに成功しました。
次に個別面接では、共通のジャッジ基準として、インターンを受ける学生に必要なスキルの水準を設けました。
具体的には、確認するスキル項目を「リーダーシップ・論理的思考力・コミュニケーション能力」に絞りました。面接の内容としては、人物像の確認を行う質問に加えて洞察力や論理的思考力を図るようなケース出題を行い、見極めを図りました。
こうして最終的に48名まで絞り、2019年の7・8・9月の3回に分けて、サマーインターンを実施しました。この選考過程が、ハイレベルな学生間で「今後の選考対策になるのでユナイテッドの選考を受けた方がいい」という認知形成につながったと思います。
自社の強み×先進領域のテーマを設定し、役員自らフィードバック
インターンの内容は、「グループワーク」と「キャリア講演」の大きく2つです。
まず、メインとなるグループワークでは、学生を3〜4名のグループに分けて、1日目の朝にテーマを発表し、その日の夕方に中間発表、2日目の夕方に最終発表という形で進めました。
テーマは難易度の高いものを設定しました。具体的には「3年後までに国内で売上10億円を達成し、将来的に売上100億円を狙えるSaaSのビジネスモデルと、その実行戦略を提案せよ」というものです。
というのも、弊社の事業領域であるネットビジネスの戦略提案にすることで、質の高いフィードバックができることや、SaaSという最先端のビジネス領域に触れてほしいと考えたからです。
また、参加者の満足度を高めるため、最初に「戦略策定」についての講義を行い、中間発表と最終発表では、すべて代表取締役と執行役員が直接フィードバックをしました。
ワーク中も戦略コンサル出身の執行役員がメンターにつくのですが、チームとしての議論の進め方や、戦略を動かす際において本当に成立するのか、といった点を重点的にフィードバックしていましたね。
ある優勝チームは「10年分の事業計画書」を作るなど、とても意欲的なチームが多かったです。
また発表時には、学生同士での質疑応答の時間を設けるようにしました。実際に鋭い質問が出たりして、議論が白熱した場面も多くありました。
参加した学生からは「やり切れなかった、悔しい」といった声もありましたが、悔しさが溢れるほど真摯に取り組んでくれたのは、すごく嬉しいことでした。
このように、次年度以降の応募者増加にも繋げるため、インターン自体の内容も満足度が高くなるよう工夫しました。
「特別枠」のキャリアコースを新設し、インターン後の導線を作る
インターン2日目の「キャリア講演」は、参加学生の志向に合わせて、持ち帰っていただく「お土産」を意識して設計しました。
たとえば7・8月は、戦略コンサル志望層が多い回でした。そこで戦略コンサル出身で執行役員の米田から、「ベンチャーと大手コンサルで得られるものの違い」や「キャリア選択におけるヒント」についてお話ししました。
一方、9月の回では、一定数の外資コンサル志望層が就活を終え、ベンチャー志望層が増えました。それに合わせて、社内ベンチャーで起業したグループ会社社長と執行役員が登壇し、「事業創出」をテーマにしてパネルディスカッションを行いました。
こうしたコンテンツ設計の結果、9割以上の学生から高い満足度を得ることができました。
さらに、難易度の高いインターンに参加した学生を本採用の選考(以下、本選考)へとつなげるため、入社後のキャリアパスとして「次世代リーダーコース」を新設しました。
これは、サマーインターン経由で採用された方しか進めないコースで、将来の役員候補になるため、他のコースとは明確に差別化されています。
こうしたインターン選考や、新コースの設置などを通じて、当初の課題であった新卒市場での認知度は大きく変わりましたね。
20卒の採用では、就活イベントで弊社を知っている学生は、就活の佳境を迎える3月でも3割ほどでした。21卒では、就活が本格化する前の10月時点で認知度が7〜8割に向上しました。
ユナイテッドを「ただ知っている人」だけではなく、「次世代リーダーを育てる企業」というイメージを持ってくれる学生が非常に多くなったと感じています。
本選考のエントリー数も、20卒採用の700名から、21卒では2020年3月時点で1,800名以上に増えました。サマーインターンを含めると、3,000名以上の方にエントリーをいただいています。
また、エントリーしてくれた学生層も前年度から大きく変化しています。実際にサマーインターンの募集をきっかけに優秀な学生がユナイテッドに興味を持ち、本選考を受けてくれるケースも増えました。
学生との出会いを大切に、長期的な関係性を築いていきたい
現在は、22卒のサマーインターンの募集を開始していますが、新型コロナウイルスの状況を鑑みて、基本的にオンラインで完結する選考フローに変更しています。
そうした中でも、蓄積されたデータをもとに、初期段階でSPI選考とエントリーシートでのスクリーニングを行う形に変更するなど、選考フローの改良を進めているところです。
今後は、「難関企業を目指すならユナイテッドのサマーインターンは絶対受けたほうがいい」と学生内で噂されるようなインターンを実施していきたいと考えていて、コンテンツ設計のさらなるブラッシュアップを行っています。
たとえば、2020年の夏に実施される、22卒向けのサマーインターンでは、グループワークでの優勝賞金として1人あたり10万円を授与します。これは、昨年インターンに参加した学生が真摯に取り組み、想定以上に質の高いアウトプットを出してくれた姿を見て、それに見合うインセンティブを設けたいと考えたからです。
その一方で、参加人数を昨年よりも絞り込み、ワークの難易度もよりハイレベルな内容にします。
また、メンターは執行役員に加えて、戦略コンサル出身者を増やし、一人ひとりへより濃密なフィードバックができるようにすることで、さらに価値のある場にできたらと思っています。
引き続き、ゼロベースから何かを生み出すことができるような思考力を持った、レベルの高い学生に来ていただきたいですね。
また、ファーストキャリアとして他の企業への就職を選択した学生でも、入社までの期間にユナイテッドで長期アルバイトを経験してもらうなど、長期的な関係を持つことができればと思っています。
いつの日かユナイテッドに仲間入りしてくれるような、そうした縁を大事にしていきたいです。(了)