• 株式会社タイミー
  • 代表取締役
  • 小川 嶺

月次30%成長からコロナ禍で売上3分の1に。半年でV字回復したタイミーの新戦略とは

〜「もう以前の世の中には戻らない」売上7割を占める飲食からターゲット業界をシフトし、カンパニー制組織に移行。「選択と集中」で早期に業績を回復させた取り組みの全貌〜

コロナ渦のような急激な事業環境の悪化によって売上が激減した企業が、スピーディに業績を立て直すためにはどのような施策が有効なのだろうか。

代表取締役の小川 嶺さんが大学在学中に立ち上げた、株式会社タイミー。同社は2018年8月に、空き時間に面接不要ですぐに働けるスキマバイトアプリ「Timee」をローンチし、主に飲食業界×学生アルバイトのマッチングで月次30%の急成長を遂げていた。

しかし、繁忙期には売上の7割を占めていた飲食業界からの受注が、突然の新型コロナウイルス発生で売上の1割を切るまでに落ち込み、十分な収益が見込めなくなってしまったそうだ。

そこで、新たに物流と小売業界をターゲットに定め、各業界に特化したカンパニー制の組織体制に変更。有力企業へのパイプや影響力を持つ顧問・株主との連携、toB向けのテレビCMを特定のエリアで展開するドミナント戦略、サービス訴求軸の変更など、あらゆる施策を短期間で実施した。

その結果、売上が3分の1まで減った今年4月から半年ほどで、コロナ禍以前の売上までV字回復できたという。

今回は、同社の代表取締役を務める小川さんと、執行役員 兼 事業部長の石橋 孝宜さんに、カンパニー制への組織体制の変更と、業績回復までのお取り組みについて詳しくお伺いした。

コロナで売上が3分の1に激減。物流と小売業界の開拓を決意

小川 私は10代の頃から起業を数度経験し、5社目に立ち上げたのが「Timee」です。「もっと簡単に、今すぐ働けてお金がもらえるサービスがあったらいいな」という自分自身の思いから立ち上げました。

石橋 私は大手居酒屋チェーンの人事や独立を経て、2018年12月にタイミーに入社しました。その後はコーポレートを担当し、2020年4月に事業全体を統括する立場になりました。

小川 2018年8月にTimeeを正式リリースして以来、ニーズが顕著だった飲食業界と学生アルバイトをマッチングすることで、繁忙期には売上の7割を飲食業界が占めるという、一点集中型で事業を伸ばしてきました。

リリース翌年には大型の資金調達を実施し、橋本環奈さんを起用したテレビCMを全国的に放映して、認知強化も行いました。こうして立ち上げ期に明確なターゲットを決めて事業拡大できたことは、非常に良かったと思っています。

しかし、今年に入って新型コロナウイルスが発生したことで、その状況は一変しました。

飲食業界では営業規模が縮小され、労働力は正社員でまかなえるようになりました。その影響で、「アルバイトのシフトの穴埋め」としてTimeeを使う必要性がなくなってしまったんです。実際に2月頃から売上がどんどん下がり始め、4月の売上はコロナ禍以前の3分の1まで激減していました。

それまで僕らは「飲食の会社」というマインドがすごく強かったのですが、もはや業界構造が変わってしまった。メンバーには、飲食業界に頼りすぎてはいけないという意味で「もう以前の状態には戻らないよ」と伝えました。

そして、事業を立て直すための戦略を練っていたところ、「物流」と「小売」の業界についてはコロナ禍でも売上が落ちていないということがわかって。

そこで今後は、物流・小売・飲食の各業界に特化したカンパニー制の組織を作り、専門知識を蓄えて一気に営業をしていくことを決めました。

カンパニー制に移行し、従来の分業体制をゆるやかに緩和

石橋 実は、カンパニー制にする構想は以前から考えていました。というのも、それまでは業界を区分せずに、いわゆるThe Model型の分業体制にしていたのですが、そこにいくつかの課題を感じていたからです。

例えばカスタマーサクセス(以下、CS)では、1人ひとりが担当する領域が広いことで、提案が浅くなってしまったり、業界ごとの成功事例やノウハウを蓄積しにくかったりする部分がありました。

また、業界の特性に合わせたKPI設定ができていないといった課題も顕在化していました。

それらの課題を解決し、顧客にさらなるバリューを提供するために、一部のチームで実験をした上で、今年4月に全社でカンパニー制の組織形態に移行しました。

▼組織体制変更の概念図(同社提供)

移行後は、各業界に特化した一気通貫の体制を取りつつも、今まで馴染んでいるThe Model型の構造をゆるやかに残す形にしています。

具体的には、カンパニーごとにカンパニー長、フィールドセールス(以下、FS)、CSが所属し、別部隊としてマーケティング、インサイドセールスが横断的に活動しています。

また、顧客の企業規模に応じてCSが営業のクロージング段階から担当につくことで、受注後もスムーズにサポートできるようにしました。

KGIはカンパニー全体で「粗利」を追うことにし、各カンパニーの業界特性に応じて、受注数、アカウント発行数、アクティブ数、募集人数など売上を最大化できるKPIを定めました。

株主と連携したウェビナー、テレビCMのドミナント戦略を実施

小川 次に、物流と小売業界に戦略的にアプローチするため、その業界にパイプを持つ方を探し、顧問として入っていただきました。

また、これまでは50社以上ある株主や代理店との繋がりを生かせていなかったので、新たに始めたウェビナーの集客・開催にご協力いただくことにしました。

石橋 初期のウェビナーは、FS主導でサービス紹介をするような内容で、あまり反応が良くありませんでした。

そこで、各業界で影響力のある株主企業との共同開催に切り替え、視聴者が「今、一番話を聞きたい方々」に登壇いただき、その業界で売れている理由や、コロナ禍だからこそ打つべき策といった内容をお話しいただきました。

各社の戦略のお話の中で、自然な流れでTimeeについても触れてくださったので、その後の営業活動にも効果がありましたね。

小川 他にも展示会への出展や、テレビCMの放映を実行しました。それまでは全国47都道府県にtoC向けのコンテンツを打つ戦略でしたが、併行してtoBもしっかり攻める体制を作っていくため、1都道府県ごとに知名度を上げていくドミナント戦略に変えました。

例えば物流企業の多い広島では、15秒のテレビCMを2種類作って放映し、Web広告も併用しました。

▼実際に放映したtoB向けテレビCM(エリア限定)

これによって一定の認知を上げることはできましたが、toB向けのテレビCMでは30秒で伝える方がより効果的だと感じたので、現在もテストをしながら各エリアで展開を進めているところです。

「シフトの穴埋め」から「人件費の変動費化」に営業トークを変更

石橋 加えて、Timeeならではのバリューが訴求できるように、営業トークも見直しました。これまではアルバイトを雇っている前提で「シフトの穴埋め」として訴求していましたが、そのニーズが薄まったため、現在は「人件費の変動費化」を訴求しています。

具体的には、物流や小売は繁忙期・閑散期が日ごとに大きく動いたり、前日にならないと翌日の物流量が分からなかったりする業界なので、常に必要な分には正社員を当て、変動する労働枠の部分にTimeeを使っていただくという提案です。

他にも、カンパニー制にしたことでうまく回っていることとしては、地方営業があります。

まず、地方支店で行う営業活動に、カンパニー長が遠隔で同席することを標準化しました。カンパニー長がリレーションシップマネージャーとして全ての顧客と顔を合わせることで、もしCS担当者が退職してしまっても、引き継ぎによる顧客のストレスを軽減して継続利用していただける体制になったと思います。

また、本社と地方支社でのノウハウ共有も効率的に行えるようになりました。各カンパニーで業界特有の用語や法律といった専門知識が必要なので、勉強会を高頻度で実施したり、情報共有ツールのNotionにノウハウを蓄積したりして、いつでも誰でも学べるようにしています。

このように、メンバー全員が同じ業界に対して貢献しようとコミットすることで、飲食業界に特化していた時にはなかった取り組みがたくさん生まれましたね。

一方で気を付けたのは、縦割りの組織になったことで横のつながりが薄れて、情報の分断が起きるのを防ぐことです。そのために横軸でも勉強会や飲み会などを行って、意図的にコミュニケーションの場を設けています。

「選択と集中」で、どんな環境でも戦える体制を作っていきたい

小川 事業をV字回復するためには、売上高の向上とコストダウンの2つが必要です。

売上に関しては様々な施策を打ちましたが、中でも物流・小売業界に特化したチームを組成し、業界で影響力を持つ株主や顧問に有力企業をご紹介いただいたことで、オールチームで攻める体制を作ることができた。今振り返ると、これが大きかったのかなと思います。

コストに関しては、オフィスの移転が決まっていたので内装コストを抑えたり、月10人ほど採用していたところから、月1人採用するかどうかまで絞りました。

その両軸を短期で回すことで、結果的にコロナ禍以前は10%未満だった物流業界の売上が、現在では4割以上を占めるようになり、業績を一気にV字回復させることができました。

今後も本当に何が起きるか分からない時代なので、「選択と集中」で攻める業界に特化したチームをしっかり作り、専門知識を蓄えながら、どんな状況でも戦えるような体制を作っていきたいと思っています。

また、僕たちは「時間の概念を変える」というミッションを掲げているので、働くだけではなくて人との出会いに繋がるなど、その人の人生が豊かになるような時間の使い方を提案していきたいですね。

そして、「世の中にどういう価値を出し続けているか」ということを、常に問うような会社でありたいと思います。

石橋 私は、Timeeのような形態は、まだまだ新しい働き方だと思っていて。

時には、一般的に言われるギグワークのように、事故に遭っても労災が適用されなかったり、最低賃金が保証されなかったりといったマイナスな捉え方をされることがあります。しかし、Timeeは業務委託ではなく、雇用できちんと労働者が守られる形なので、より広い層の方に使っていただけたら嬉しいです。

フリーターや主婦の方などが色々な場所で働いて、幅広い知識や経験を得て、夢を叶えたりできるような、そんなお仕事を作っていかないといけないなと思います。小川はよく「大人版キッザニア」と表現しますが、これからもそんな世界を作っていきたいですね。(了)

SELECKからの特典

SELECKでは、これまで700社を超える先端企業の「ベストプラクティス」を取り上げてきました。

そこで得た知見を集め、今回、OKRの導入・実践に役立つ情報をまとめた「OKRパーフェクトガイドブック」を作成しました。

実際のOKR設定ですぐに使える「チェックリスト」も付録にありますので、ぜひダウンロードして活用してみてください。

「OKRパーフェクトガイドブック」の資料ダウンロードはこちら

新規CTA