• ヤフー株式会社
  • CTO室 Developer Relations
  • 武居 秀和

ヤフーの「DevRel」って何する人? 社内外クリエイターの熱量をつなぐ取り組みの全貌

ヤフー様_DevRel_seleck

Developer Relations、通称DevRel(デブレル)とは、自社製品やサービスと開発者の良好な関係性を築くためのマーケティング・技術ブランディング手法のひとつだ。例えば開発者向けのイベントの開催やコミュニティ運営、テックブログ等を通じた発信がその代表的な活動と言える。

ヤフー株式会社では、以前から現場で行われていたDevRel活動を統括する形で、2018年にCTO直下のDeveloper Relations組織を立ち上げ

年に一度開催されるテックカンファレンス「Yahoo! JAPAN Tech Conference」をはじめ、国内最大級のハッカソンイベント「Hack Day」、クリエイター向け勉強会コミュニティ「Bonfire」、技術ブログの「Tech Blog」など、その施策は多岐にわたる。

またその活動は、社外向けの発信に留まらない。社内のクリエイター(エンジニア、デザイナー)が「ヤフーで働いていて良かった」と感じられるような機会の提供や、誰でもDevRel活動に参加できるアソシエイト制度の運用も行っている。

Bonfireをはじめとするコミュニティ運営を担当する水田 千惠さんは、「クリエイターの心の中に脈々と流れる熱量を汲み取って、背中を押していく存在がDevRel。施策を1回やって続けるかどうかを判断するものではなく、会社として『いかに続けていくのか』を設計できるかどうかが大事」と話す。

今回は水田さんと、DevRel全体の統括を担う武居 秀和さんに、ヤフーのDevRel活動について詳しいお話を伺った。

社内外のクリエイターとの関係性を作る役割を担うDevRel組織

武居 私はいま、ヤフーのDeveloper Relations(以下、DevRel)で施策全体の統括をしています。組織自体ができたのは2018年なのですが、実は個々の施策自体はかなり昔から行っていて。

例えばHack Dayという開発イベントに関しては、2007年の立ち上げ時から兼務という形で私が責任者をしています。自分としてはヤフーでのライフワーク的な活動ですが、組織が立ち上がったことで、Hack Dayだけではなく他の施策にも関わるようになりました。

▼【左】武居さん【右】水田さん

ヤフー様_DevRel

水田 私は2003年に入社してサービス企画などに関わった後、エバンジェリストとしてサービスや技術を社外にアピールする役割を担っていました。その経験も踏まえてDevRelに移り、現在は社外のカンファレンスやイベント協賛の取りまとめや、Bonfireを中心としたコミュニティ・イベント等の企画・運営をしています。

武居 ヤフーのDevRelには現在、主務が16人、兼務もあわせると約30名が所属しているのですが、組織としては5チームに分かれています。自社メディアを担当するチーム、コミュニティや勉強会を担当するチーム、社内外における発信を担うチーム、加えて、全体推進とタスクフォースです。

いわゆる「DevRel活動」には様々な取り組みが含まれると思いますが、弊社としては「社内外のクリエイターとの関係性を作る」ことに主目的を置いています。

「社外」というのは弊社の技術的な取り組みや施策を、多くの方に知っていただくことです。ただ、必ずしも採用という文脈ではなく、実際、採用の組織とDevRelは全く分かれた状態にあります。もちろん連携はしますが、直接的に僕たちが「エンジニアを◯◯人採用する」といった目標を持つことはありません。

また「社内」の皆さんに向けても、「ヤフーで働いていて良かった」と思ってもらったり、自社の技術方針を知ってもらうことで組織全体を同じ方向に向かえるようにするための活動を担っています。

このように、社内外の双方に向いた組織として、クリエイターの皆さんと関係値をうまく作っていくことが僕たちの役割です。

有志の自然発生的な取り組みが、ひとつの組織へと成長

武居 ヤフーではDevRelという概念を持つ前から、有志が自然発生的に集まって、社内の開発コミュニティとしての活動を始めていました。

先ほど触れたHack Dayも、最初は2006年にアメリカのYahoo! Inc.(当時)が開催したHack Dayを見てきたエンジニアが、「日本でもぜひやってみたい」と提案してくれて、有志でスタートしたんですね。

当時はノートパソコンも支給されていないような時代だったので、みんなでデスクトップを持ち寄って開催していましたね(笑)その後5、6年は、自主的に手を上げたメンバーで運営を続けていました。

▼過去に開催されたHack Dayの様子(※2017年以前)

ヤフー様_Hack Day

水田 Bonfireも、2017年に社内の有志活動からスタートしたものです。それがいまは、DevRelが会社としてサポートするやり方になっています。

▼技術・デザインコミュニティ「Bonfire」は様々な領域に展開

ヤフー様_bonfire

武居 こうした現場の活動が会社の組織になっていった背景としては、やはりクリエイターとの関係づくりを会社として大事にすることが必要な時代になっている、という文脈があると思います。

水田 現在のCTOである藤門が就任したときに、最初は採用部のほうに、クリエイター×人材を掲げたクリエイター人材戦略というチームができたんです。

そこに、各サービスでこれまでDevRel的な活動をしてきたメンバーが集められて、可能性を探り始めたのがスタートになります。その後、Developer Relationsという組織として、きちんと立ち上がったという流れでした。

武居 実際、メンバーは以前からDevRelに近い活動に関わってきた人が多いですね。それぞれの活動をより良いものにしようとしてきたメンバーが集まり、DevRelというひとつの組織として同じ方向性を向いて活動するようになって4年目を迎え、いっそう組織として動けるようになった感覚があります。

大規模カンファレンスは「興味をもってもらうきっかけ」のひとつ

武居 現状のDevRelの具体的な活動には、自社メディアを通じた情報発信、各種のイベントやコミュニティがあります。またそれに加えて、年に一度の大規模カンファレンスとしてYahoo! JAPAN Tech Conferenceも年に一度開催しています。

▼毎年開催しているYahoo! JAPAN Tech Conference

Yahoo! JAPAN Tech Conference

カンファレンスの位置付けは、あくまでもヤフーに興味を持ってもらうきっかけのひとつとして、弊社の技術的な取り組みや文化を紹介することです。

なので、開催にあたっては参加してくれる方が「自分なら何ができるか」をイメージできる場になるといいのかなと思っています。例えば前回は、会社として発信するメッセージ性の強いパートだけではなく、「カジュアルトーク」として現場から発信するような枠も設けていました。

▼メインセッションに加えて、現場から発信するカジュアルトークも展開

Yahoo! JAPAN Tech Conference

水田 入社されて2、3年目のような若手の方だったり、社内で黒帯と呼ばれるような開発のエキスパートの方だったり、カジュアルトークは本当に個性豊かでしたね。ヤフーのクリエイター文化の縮図のような、多様性が見られるトラックになったかなと思います。

このような舞台で登壇することで得られる経験はとても大きいと思いますので、そういった機会を提供すること自体がDevRelとしてのチャレンジでもありました。

Tech Conferenceに限らず、イベント等に登壇してくれた皆さんにはインタビューを行っています。その中で、「登壇がどういう機会になりましたか」と聞くと、「自分自身の仕事を振り返る良い機会になった」という声をいただくことが多いんですね。

普段は「どんな成果があった?」という聞き方をしても、「いや、自分というよりチームのみんなでやったことですので…」みたいな答えになりがちなんですよね(笑)

その中で、小さくても自分が出した成果に向き合って、それを誰かに伝える機会があることはとても良いのではないかと思います。

社内3,000名のクリエイターが持つ「思いや好奇心」の受け皿

武居 こうした登壇機会もそうですが、そもそもDevRelの活動全体が、いま約3,000名いるヤフーの社内クリエイターに向けたものでもあります。

Developers & Designers Dashboard(通称「DDD」)という、社内クリエイター向けの情報をまとめたサイトを運営していたり、社内イベントもよく開催していますね。

水田 やはり弊社のような大きな組織ですと、どうしても担当サービスごとに縦割りになって、組織を横断したつながりが作りづらいんですね。なので、技術や興味領域が近い仲間同士が集まってコミュニケーションする場所を作っていくことを、DevRelがサポートしていくこともあります。

併せて、「機会」で言うと、DevRelではアソシエイト制度を運営しています。手を上げた人が誰でもDevRelの活動に参加できるというもので、年に2回公募を行っています。コミュニティ活動だけでも、多いときには30人ほどが参加していますね。

武居 もともとDevRelの活動自体が有志の集まりで始めたものですから、その流れを汲んでいる形です。いまではそこが、新しく会社に入った方同士が部門を越えてコミュニティを作るきっかけにもなってるかなと思います。

水田 DevRelとして、現場の活動へのサポートも行っています。例えば「社外で登壇する機会があるんだけど、どうやって資料作っていいかわからない」といった相談を受けて、登壇の資料作りやプレゼンの練習を一緒にやることもあります。

まだ社内で形になっていないような思いや好奇心の受け皿として、私たちがいつでもスタンバイできている状態になりたいですね。そういう意味ではここ1年ほどは、社内にDevRelの活動自体を知ってもらうことをとても大事にしています。

クリエイターの熱量をつなぐために、「続けていく」設計を

武居 DevRelのような活動って、成果を測るのが難しいですよね。以前は市場調査の結果をKGIに置いていたこともありましたが、ちょっと見合わないというか、相関性が難しい。例えば、1回勉強会をやって、それでどのくらいブランディング指標が伸びたかって、はっきりわからないじゃないですか。

その中で個人的には、まずは施策を実施する上で「これはやる意義がある」と自分を納得させられているかどうか、という基準があると思います。自分が納得してないことでは、やはり他人を説得できませんから。

水田  「熱量」って、急にぽっと出てふっと消えるものではなく、ずっと誰かの心の中に脈々と流れているものなのかなと思っています。そういう意味では、DevRelはそうした気持ちを汲み取って、背中を押していく存在なのかなと。

例えばTech Conferenceも、「毎年開催する」ことが熱源をつなぐサイクルになっていて。他のイベントも同様ですが、やはり継続していくことで、クリエイターにとっても「待ち合わせの場所」のような位置づけになっていくのではないでしょうか。

ですので、1回やって続ける・止めるを判断するものではなくて。会社として、「いかに続けていくのか」を設計できるかどうかが、とても大事なのかなと私は思っています。

ヤフー様_DevRel

武居 これからのチャレンジとしては、個人的にはどんどんクリエイターがアウトプットして、フィードバックを得るというサイクルを作っていきたいです。やはりシャイな方も多いですから、気軽な雰囲気づくりも含めて取り組んでいきたいですね。

そして最終的には、もうみんながアウトプットしたいと言っていて、僕たちが困っちゃうみたいな嬉しい悲鳴を上げたいなと思っています(笑)

水田 私は中長期で言うと、DevRelが組織として必要なくなる世界を目指したいです。いまは私自身が色々な方の背中を押す役割ですが、それって必ずしもDevRelだけが持つものではないのかなと。

みんながお互いの興味や関心を「面白がる力」を備えて、背中を押しあえるような世界になればミッション・コンプリートかなと思っています。そこに向かうためにも、まずは私が一番面白がっている姿であり続けたいですね。(了)

SELECKからの特典

SELECKでは、これまで750社を超える先端企業の「ベストプラクティス」を取り上げてきました。

そこで今回、2021年に「職場のDX」を推進できるような海外ITツールをまとめた、2021年版「最新海外ITツール 厳選ガイド」を作成しました。

ぜひダウンロードして、業務に活用してみてはいかがでしょうか。

2021年版「最新海外ITツール厳選ガイド」のダウンロードはこちら

SELECK_職場のDXツール

;