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【bot、暴走中!】「Slackは福利厚生」と言い切る、ドワンゴ流・Slackの超活用術とは

〜Slackをこよなく愛するドワンゴに聞く!botを一瞬で作れる「bot天国」などの超活用術から、「ルールを作らないこと」をポリシーに掲げた運用の裏側まで〜

今や、多くの企業においてコミュニケーションツールとして選択されている「Slack(スラック)」。その拡張性の高さから、いくらでも使い方を深掘りできることが魅力のひとつだ。

Slackを100%使いこなすと、どんな世界が待っているのだろうか? その答えを持つ企業が、実は日本にもある。

Slackは福利厚生」だと語る社員を持つ、株式会社ドワンゴだ。

同社は2014年にSlackを導入してから、botを一瞬で作れるツール「bot天国」や、Slack上でずっと残しておきたいやり取りを保存する、TogetterのSlack版「Togelack」などを開発。メンバーの自発的な動きによって、様々な活用術が生まれているという。

その背景には、「ルールを作らないこと」をポリシーに掲げた、性善説の運用があった。

今回は、社内でSlackを駆使する木下 やすひろさん・深井 優一さんに、同社におけるSlack超活用の事例と、その運用ポリシーについて詳しく伺った。

※「Slack」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

ビジネス向けチャット「Slack(スラック)」とは?特徴と始め方を日本語で解説!

今やbotが「人間に迫る勢い」で喋る状態!Slackの導入背景とは

木下 私はニコニコ文化に興味を持ったのがきっかけで、2014年よりドワンゴに入社しました。現在は、ニコニコ生放送のバックエンドチームにいます。

深井 私は2013年に新卒でドワンゴに入社しました。3D投稿サービス「ニコニ立体」やプレゼン共有サービス「ニコナレ」など、社内でも割と新しいサービス開発にメインで携わっています。

▼左:木下 やすひろさん、右:深井 優一さん

木下 弊社では2014年からSlackを導入していて、現在のアカウントはフルメンバーで1,200人、加えてゲストが300人ほどです。Slackは、僕らにとってはもはや福利厚生です。「壊れないおもちゃ」みたいな感覚で、自由に使っています。

1日に飛び交うメッセージ数も、人間が発言したものが37,000件,botの発言が26,000件と、人間に迫る勢いでbotが喋っています(笑)

▼1日に40,000件近くのメッセージが交わされている(Analyticsより)

社内Twitter感覚で、横串のコミュニケーションを行う

木下 ドワンゴ内の有効なチャンネル数は、パブリックだけでおよそ3,000になります。

チャンネルの内訳は、プロジェクト別のもの、ScalaやJavaScriptなど技術系、そして趣味・雑談系の3つに分かれます。近所のお店の個別チャンネルもあって、「今日のハムカツの具合はダメだった」という話もします。正直、社内Twitter感覚ですね

プロジェクト以外に、皆が横串でコミュニケーションを取ることを大事にしているんです。やっぱり、仲のいいチームの方がいい仕事ができるので

特に話が盛り上がりやすいチャンネルは、「#tabeho」や「#drunk」「#scala」「#ikuji」でしょうか。例えば「#ikuji」ですと、「今日はどうやって暴れる子どもの歯磨きをするか」みたいな話が上がってくるんです。

▼オムツを洗濯してしまった話で盛り上がる「#ikuji」チャンネル

ボタン1つで導入可能!TogetterのSlack版「Togelack」

深井 ただ、多くのチャンネルがあると、業務的に有益な情報や、面白い会話の展開など、ずっと残しておきたいやり取りがあちこちに散らばって流れてしまうんです。

そこで、「Togetter(※)」のSlack版である「Togelack」が誕生しました。

※Twitterのツイートを集め、公開できるWebサービスのこと。

▼Slack上のやり取りがまるごと保存できる「Togelack」

これは、弊社のエンジニアが作ったもので、Slackの発言をコピーして、まとめを作ることができます。新規でまとめが作られると、もちろんSlack上に通知が届きます。

Slackには「Pin」機能もありますが、これだと「一連のやりとりをまるごと保存したい」という時に限界があるんですよね。あと、Pinはひとつのチャンネルに100個までしか保存できないんです。

木下 Togelackはオープンソースなので、誰でも導入できるようになっています。READMEにHerokuボタンがついているので、ボタンをクリックして必要情報を入れるだけで、すぐに動かすことができます。

エンジニアリングもSlackで効率化!リリースもSlack経由で

木下 また、ChatOpsの思想で、僕らはリリース作業もSlack上から実行できるようにしています。

▼Slackからリリース作業を行う様子

また、リリースのスケジュールについてもbotで管理しています

例えば生放送チームは「GitHub」でコード管理をしているので、リリースに関係ある人のアカウント名をSlack名に変換して、チェックが入っていない人に催促の通知を飛ばしています。

その他にも、LeapMotionという手の動きを検知するセンサーを使って、ガッツポーズをしたらサービスをリリースできるというジョークbotもあったりします。

botを一瞬で作れるツール「bot天国」とは…

深井 こうしたbotも、僕らには「bot天国」というツールがあるので、簡単なbotであれば30秒で作ることができます。

Webブラウザでbot天国にアクセスして作成ボタンを押すと、JavaScriptのコード入力欄が出てくるんです。そこに最初からテンプレートが入っているので、コードを2、3行書いてボタンを押すだけで、botが作れるようになっています。

▼コードを数行書くだけでbotが作れる「bot天国」

botにも色々なパターンがあると思っていて、仕事に有用な便利系botはしっかり作り込みたいと思う一方で、もっと気軽に作りたいものもありますよね。

例えば会話の中で「こういうbotがあったら面白いんじゃないか?」といったアイデアが出た時に、ぱっとbotが作成できるのでとても便利です。

botの暴走も大歓迎!テスト用チャンネル「#bot_devastation」

木下 完成したbotは、まず「#bot_devastation」というチャンネルに投げ込みます。

▼#bot_devastationで「ちくわbot」が暴走している様子

これは、botが何よりも優先される、botのテスト用チャンネルです。ちなみにトピックには、「bot隔離の地/botの方が人より偉い地」と書いてあります(笑)。

もともと、業務に差し支えのあるレベルのbotがそのままチャンネルに投稿されていたのを、ここに隔離したことがきっかけで生まれました。

新しく作られたbotは、このチャンネルで暴れまわった後、安定したら目的のチャンネルに出荷されていきます。時々、「出すな」って言われるやつもいますけどね(笑)。

技術系ニュースからユーザーの声まで!「通知基盤」としての側面

木下 また、Slackには通知基盤としての側面もあると思っています。便利な情報を見つけた時に、とりあえずSlackに流せば気が付くので、有益な情報はSlackに集約しているんです。

例えば、技術系のRSSを登録しているチャンネルは多いですね。RubyやScala関連のRSSが飛んだら、自動でチャンネルに流れます。

深井 そう言えばNintendo Switchが発売したときも、絶対欲しいと思ったので、オンライン上の在庫状況を常にウォッチして、入荷の瞬間にSlackに通知がくるようにしましたね(笑)。

また、新規機能をリリースしたタイミングなどでは、「IFTTT」を使って、Twitterからユーザーさんの意見を取れるようにしています。不具合などは、ユーザーさんのほうが先に気が付くこともありますので。

「Slack=なくなってほしくないもの」が共通認識

木下 弊社では、なるべく「ルールを作らない」ことがSlackの運用ポリシーになっています。

みんなにとって「Slack=なくなってほしくないもの」というのが共通認識としてあるので、「福利厚生を取り上げられたくなかったらちゃんとやろうね」ということだけ決まっています。

例えば、よく他社さんである「プライベートチャンネルを作るの禁止」「趣味のチャンネルを作るの禁止」みたいなルールはありません。

これだけのルールでも、今のところ、目に見えて大きなトラブルはありません。

ただ、コメントの編集は1分以内、削除は禁止になっています。これは、業務に関わる会話を記録として残すためです

気兼ねなく話せる場だからこそ、セキュリティは徹底する

木下 また、業務の情報を気兼ねなく話せるようにする代わり、外に出ていくのはやめましょうということで、Slack上の発言を外部に持っていくようなインテグレーションは控えています。例えば、「発言するとTrelloにカードが作られる」といったものですね。

素性の良くないサービスとうっかり連携して情報が流出してしまうことは、リスクとして大きすぎるので。そうなると結果的に、我々が謳歌している自由も取り上げられてしまうかもしれません。ですので、JIRAやGitHub等は、社内で自社サーバーを立てた上で連携しています。

また、外部の方がいるチャンネル名には、冒頭に「ext_」をつけるようにしています。このチャンネルでは発言を気をつけるということを意識するためです。

このようにセキュリティにも配慮しつつ、今後もSlackを通じて、業務のさらなる自動化と、社員同士の業務内外での活発なコミュニケーションに、もっと貢献していきたいと思います。(了)

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