- 株式会社ライボ
- 取締役COO
- 小谷 匠
Webサービスにもプッシュ通知を!ユーザーアクションを促す新しいWebアプリの形
今回のソリューション:【Roost/ルースト】
2015年4月、Google Chromeがブラウザプッシュ通知のサポートを開始し、今までネイティブアプリの特権であったプッシュ通知によるリテンションがWebアプリでも利用できるようになった。
そのプッシュ通知機能を、開発者の手間をかけずに自社サービスに組み込むことが出来るのが「Roost(ルースト)」だ。
株式会社ライボが運営するキャリア特化型Q&Aサービス「JobQ」では、Roostを使ったプッシュ通知機能を活用してユーザーアクションを促進している。
メールがユーザーにアプローチするほぼ唯一の方法であったWebサービスに、プッシュ通知を取り入れることで何が起こるのか?同社でCOOを務める小谷 匠さんに詳しい話を伺った。
営業、バックパッカーを経てエンジニアとして起業
弊社は私と代表の小川の2人で立ち上げた会社で、キャリア特化型Q&Aサービス「JobQ」とキャリアに関するメディア「JobQuest」を運営しています。私はそこで主に開発を担当しているのですが、実は新卒で入社した新卒採用支援の会社では、主に法人営業をやっていました。
ですが、将来は自分で世の中の当たり前になるサービスを作りたいと考えていて、そのためには開発スキルは欠かせないと思いエンジニアへの転向を決めました。
前職を退職した後は、バックパッカーをしながらフリーランスとして開発の仕事を始めました。帰国後しばらくフリーランスを続けた後に、学生時代からの知り合いである小川とリクルーティング領域の問題を解決するために会社を立ち上げることにしました。
次世代のリクルーティングサービスはCtoC?
弊社では転職サービスを2つの軸で切って考えています。1つはメインターゲットが企業サイドかユーザーサイドかという軸、もうひとつがプレイヤー間の「インタラクティブ性」です。
最近ではメルカリやAirbnbのようにCtoCのサービスが伸びてきていますが、転職やキャリアの領域ではユーザー主導のサービスというと口コミサービスくらいしかありません。
また、近年のスマートフォンの普及のおかげで、コミュニケーションコストが格段にさがりました。それをきっかけに、LINEをはじめオンラインでのコミュニケーションに重きをおいたサービスが多数伸びてきています。
ユーザーが主体となっており、かつそのユーザー間でインタラクティブなコミュニケーションがとれるサービスを目指しています。
そのためにも質問や回答といったユーザー行動を促進する必要があり、それを実現するための方法としてブラウザプッシュに目をつけました。
ユーザー行動の促進のため、ブラウザプッシュを活用!
ブラウザプッシュは、Google Chromeが今年の4月に正式対応した機能です。ServiceWorkerという仕組みを活用していて、スマートフォンのプッシュ通知のようにページを閉じていてもユーザーに通知が出来ます。Roostはそのブラウザプッシュを、ほとんど実装不要で実現してくれるサービスです。
JobQはWebアプリなので、ブラウザプッシュは絶対に実装すべきだと思っていました。一方で、何をやらないかが重要であるスタートアップにおいて、効果のまだ見えていないものに対して大規模に独自開発するのはいかがなものかとも思っていました。
そこでRoostを活用することに決めました。どうやってRoostを見つけたのかというと、ちょうどその頃に国内のあるWebサービスがブラウザプッシュに対応していて、そのServiceWorkerがRoostのドメインで動いているのを見つけたんです(笑)。
Roostなら、簡単な実装でフレキシブルな通知が実現可能
Roostの組み込み自体は数時間ほどで終わりました。実装のテンプレートのようなものを用意してくれているので、そのテンプレートのIDなどを環境に応じて書き換える程度の作業で組み込めます。
自分で組むとなるとServiceWorkerの実装から、プッシュする側のサーバーサイドプログラムまで必要になるので大変な作業です。Roostなら通知を送るのもAPIで「誰に・どうやって・どんなメッセージを送る」ということを指定するだけなので簡単です。
独自実装していると、プッシュ通知によってメッセージを変えるのが難しかったりするので、「どんなメッセージを送る」という点が指定できるのは良いですね。
▼このようなブラウザプッシュを簡単に実装できる「Roost」
ブラウザプッシュに対応しているブラウザはPC版のChromeとSafari、Android版のChromeだけで、すべての環境をカバー出来ているわけではありません。
ただ、サービスの初期フェーズだとユーザーもほとんどがアーリーアダプターなので、モダンブラウザの利用率も高くプッシュ通知に対する抵抗感も少ないようで、新規登録ユーザーの内50%程度がプッシュ通知の許可をしてくれています。
メールが届けられないユーザーも、プッシュ通知で戻ってくる
実際にプッシュを行うユースケースとしては、端的に言うとサービスに戻ってきてほしいときです。JobQはQ&Aサービスなので、自分の質問に回答がついた時、メンションが付いた時、そして回答に対してライクが付いたときなどです。
実際の効果を計るのは少し難しくて、通知を踏んでくれた割合は管理画面から分かるのですが、通知を見ただけで一旦消してしまうユーザーも多いんですよ(笑)。それでも後から直アクセスで戻るユーザーもいるので、「通知が来たこと」を認識させるだけでも役割は果たしているのかなと思います。
MAUベースで言うと導入3週間で15%ほど伸びています。サービス自体の成長もあるので正確な効果測定は難しいのですが、確実に効果はあると思っています。
と言うのも、弊社ではユーザーにヒアリングを積極的に行っているのですが、ユーザーの中にはどんなサービスでもメール通知を全てOFFにしてしまうユーザーもいるんです。
そのユーザーもプッシュ通知はONにしているケースがあって、通知が来ると戻ってきているという反応を頂いています。
セグメント化した通知や、ページ内通知まで。豊富な機能を提供
今はまだ活用していないのですが、ユーザーのグループ化がRoostの管理画面から出来ます。自社サービスのユーザーIDとプッシュ用のIDの紐付けも簡単にできるので、例えば最近アクティブではないユーザーをセグメント化して通知を送る、ということも出来るような仕組みになっています。
▼管理画面でプッシュ通知の配信状況も確認できる
また、新しい機能のリリースも頻繁にあって面白いですね。最近だとページ内通知機能が追加されています。一般的なWebサービスはそのサービス内に通知機能が実装されていると思うのですが、Roostの新機能を使うとその機能の実装をRoostが代替してくれるようです。
このような新しい機能のリリースも頻繁にありますし、ブログやドキュメントがしっかりしているので、英語に抵抗が無い人には非常に良いサービスだと思います。
リソースの少ない初期フェーズのサービスに最適
1つ物足りない点を挙げるとしたら、現状で解析系のAPIが無い点ですね。Roostの管理画面ならプッシュ通知を許可した割合や、通知から飛んできた数を見ることが出来るのですが、情報は自社サービスの管理画面に一元化したいので解析系の情報取得APIを提供して欲しいですね。
JobQは将来的にはネイティブアプリに移行したいと考えています。コミュニケーションのインタラクティブ性を追求するなら、ちょっとしたスムーズさを考えてもアプリの方が良いですからね。
ブラウザプッシュに関して言っても、今はRoostを使用していますが本気になれば独自実装になるとは思うんですよ。ただ、試しに一度使ってみたいというケースは多いと思いますし、それほどのリソースも割けないフェーズでは簡単に実現できるサービスがあることは非常に嬉しいですね。(了)