- 株式会社サイバード
- ビジネステクノロジー戦略統括部 シニアエンジニア
- 中村 郷史
クラウド→オンプレミスでコストが半減!大量トラフィックを捌くインフラ環境とは?
今回のソリューション:【IDCフロンティアデータセンター】
〜安定したインフラのホスティング費用をオンプレミスで大幅削減。「IDCフロンティアデータセンター」の使い方〜
モバイルゲーム運用においては、トラフィックの予期しない急増にも対応できる環境構築が求められる。例えばスマートフォン向けのゲーム・メディアを展開する株式会社サイバードのインフラを支えているのは、株式会社IDCフロンティアが提供するデータセンターだ。実は同社は過去に一度、オンプレミスからクラウドでの構築へサーバー運用を移行した経緯も持つが、再度オンプレミスという選択肢に立ち戻ったのだという。
同社がクラウドサービスを利用した際に直面していた課題が、「使用容量によってコストが変わる」ことにより膨大化したホスティング費用だ。そこで「目新しいものよりも性能とコスト」を優先してオンプレミスを選択したことで、コストはなんと半額になり、かつ予測不可能なトラフィックの増減にも対応できる環境の構築が実現した。「安定したトラフィックのゲーム配信の場合にクラウドサーバーを使う理由がわからない」と語る同社インフラエンジニアの中村 郷史さんに、詳しいお話を聞いた。
モバイルゲームのトラフィックは「読み切れない」
中途入社でサイバードに入社し、現在4年目になります。ゲーム関連のインフラ全般を見る部署におりまして、具体的にはサーバー構築や検証、システムの比較検討やコストの算出などを行っています。
弊社のようなゲーム開発の会社ですと、特に新規のゲームの場合に課題になるのはトラフィックが予測しにくい点かと思います。一般的なコンテンツの場合はトラフィックの増減は割と緩やかで、お昼時や夕方の定時前後に上がるという動きになるかと思うのですが、ゲームの場合は24時間単位で変動しますし、月初だけ上昇したり、イベントの際にも急激にトラフィックが増加します。曜日イベントなどであればある程度は読むこともできるのですが。
他にも16時から24時まで開催するような時間限定イベントの場合、24時前に駆け込みでプレイされる方も多いので、そのようなタイミングのトラフィックには要注意ですね。「サーバーに障害が発生しました」という事態をいかに起こさないようにするかという事を常に考えています。
クラウドサーバーのコストが膨大に!オンプレミスへの移行を検討
もともと弊社では沖縄にあるデータセンターを使っていたのですが、回線が細くて基本的な容量の上限が1TBだったんです。それでは将来的に不足するだろうということで、一度、クラウドサービスに全て移行しました。しかしそうすると今度は、コストが膨大になってしまったんですね。コストダウンのための施策として、AWSのスポットインスタンスなどを含めて様々なものを検討したのですが、結局、想定していたような削減は見込めませんでした。
そもそも弊社のような企業だと、開発費やホスティング費を含めて予算をきっちり組む必要があります。想定以上のトラフィックが発生した場合は仕方ないのですが、事前の計画とずれてしまうとゲーム自体の継続に関わる収益性の部分で判断を見誤りかねないので。従って、使用する容量によってコストが変動するクラウドサービス自体があまり事業特性に合わないかもしれませんね。そこで、オンプレミスのデータ事業者さん数社で相見積をとって比較検討を始めました。
そこで最終的に選択したのが、IDCフロンティアさんのデータセンターです。基本プランが1TB、上限が10TBという容量で契約しています。IDCフロンティアさんの営業の方に非常に頑張っていただいたことと、対応が早かったことが選定の大きな理由です。最後の最後は結局、人の力だと思うんですよね。優秀なエンジニアの方がどれだけ多くいらっしゃって、いかに迅速に対応していただけるかが重要なポイントだと考えています。
IDCフロンティア・データセンター導入で、コストが半額に!
ずばり言ってしまうと、目的だったコスト削減は毎月2,000万円かかっていたものが1,000万円になり、半額になったんです。サイジングに関してはあまり攻めすぎて買い直しにならないように、ある程度は余裕を持っています。それでもクラウドより圧倒的に安いんですよね。
全部で10タイトルのゲームをクラウドから移行したのですが、私自身も含めてデータセンターに1からサーバー導入をした経験のあるエンジニアが社内に数名おりましたので、1タイトルにつき1人月ほどの工数で移行を完了しました。その移行にかかった人的コストと、オンプレミスでは必須の運用コストを踏まえても総合的に安くなりましたね。
オンプレミスの運用経験がない場合、人的コストがクラウドよりもかかると考えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、正直どちらもあまり変わらないと思います。オンプレミスの運用にも技術が必要ですが、例えばAWSを使う場合でもコツを知っていなければうまく使えませんし、作業も発生します。コスト面での差は、あっても1人月程度ではないでしょうか。
オンプレミスの運用は「人の力」が必要
ただし、オンプレミスのデータセンターを運用するためにはどうしても人の力が必要なので、どの会社さんでもできるわけではないのかな、と思います。今はクラウドが流行っていますので、1からデータセンターでサーバーを構築してサービス提供できるエンジニア自体が少なくなってきていますよね。最近はサーバーを知っている人はサーバーだけ、ネットワークを知っている人はネットワークだけ、ということにもなりがちですし。
弊社のインフラエンジニアは、サーバーもネットワークも扱える強いメンバーが多いかと思います。そしてIDCフロンティアさんもそういった技術面でも安心感がありますね。セキュリティも強固ですし、障害が発生した時の対応が非常に早く、きっちり復旧するところまで持って行ってくれます。インフラは「動いている」のが当たり前なので、何かあった時に迅速に対応していただくことが一番重要かなと考えています。
以前、こちらの手違いでサーバーやネットワーク機器が入るタイミングが遅くなってしまって、5日でネットワーク構築をしていただく予定だったのが2日ほどしかなくなってしまったことがありました。その時にも、夜通し作業していただいたんです。追加コストもなく…。大変申し訳なかったのですが、本当にありがたかったですね。
オンプレミスとクラウド サーバーの棲み分けがコストダウンの鍵
現在はすべての運用をオンプレミスで行っているわけではなく、AWSと併用する形で棲み分けをしています。データ分析に関してはクラウドの方が圧倒的に使いやすいと思いますし、海外に配信する場合もスピード感があるのはクラウドです。また、新作ゲームの場合はユーザーが集まらないことも想定されるので、クラウドで始めることが多いです。ただ将来的にスケールした際にオンプレミスにスムーズに移行できるように、ベンダーの中でしか動かせないサーバー構成にはせず、最初から移行しやすいサーバーの作り方をするようにしています。
AWSは非常に便利ですし、S3のようなサービスは特に素晴らしいなと感じます。ただ個人的には、ゲーム配信の場合になぜAWSを使うんだろう、と思うんですね。運用できる人材の確保さえできれば、オンプレミスで構築した方がメリットがあります。クラウドサービスの場合、新しいサービスや機能がどんどん追加されてユーザーがそれについていく形になりがちです。素早くソリューションを提供する為に必要な時もありますが、やはりインフラなので、目新しさよりは「性能とコスト」を最も重視すべきだと思います。感覚値ではありますが、月間で500万円以上をホスティング費用にかけていて、インフラエンジニアさんが社内にいらっしゃる企業さんであれば、オンプレミスを検討する価値は十分にあるのではないでしょうか。
今後はサーバー余剰の有効活用を進めていく
今はオンプレミスのインフラ環境が整ったので、このまま継続的にサービスが伸びていっても対応できるようになりました。ただ仮にトラフィックが下がってきた場合に、手持ちの容量をしっかり有効活用していくことを考えていきたいなと思っています。例えば社内でテスト的なアプリを量産した場合に、その通信先としてサーバーの余剰部分を使っていくことなどを想定していますね。今後も性能とコストを実現するインフラ環境にこだわっていきたいと考えています。