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  • 組織開発部 人事企画グループ マネージャー
  • 高橋 研

バーチャル空間で働き、会話し、採用する。「Gatherで集合!」ミラティブの新しい働き方

リモートワークを取り入れる企業が増えたことを背景に、バーチャル空間上に擬似的にオフィスを構えられる「バーチャルオフィスツール」が話題になった。

とはいえ、PCスペックや費用への懸念、コミュニケーションツールを増やすことへの負担から、なかなか導入に至っていない企業も多いのではないだろうか。

そうした中、バーチャルオフィスツールの「Gather(ギャザー)」を導入し、オンラインでもシームレスなコミュニケーションを実現しているのが、株式会社ミラティブだ。

同社は、2021年9月からGatherを全社的に導入。軽い相談や雑談といった日常的なコミュニケーションから、チーム別のミーティングや交流会、さらには全社イベントにも活用している。

また最近では、採用活動においてもバーチャルオフィスを見学できる機会を設け、候補者のアトラクトに成功しているそうだ。実際に、その場で次の選考を希望した候補者もいたという。

同社の組織開発部人事企画グループにてマネージャーを勤める高橋 研さんは、擬似的に同一の空間に存在できるバーチャルオフィスツールでは、リアルと同じくらいコミュニケーションをシームレスに行うことができ、疲労感の軽減や、軽い相談や雑談への心理的障壁を下げることが期待できる」と語る。

今回は、高橋さんと、同じく組織開発部に所属する廣田 良歌さんに、バーチャルオフィスツールの導入背景から活用術までを、詳しくお伺いした。

フルリモートに移行し会話量が減少。Gather導入に至るまで

高橋 私は、前職のFinTech企業で営業や新規事業の立ち上げなどを経験した後、人事を担当していました。そして2020年にミラティブに入社し、現在は人事企画グループのマネージャーを務めています。

廣田 私は新卒から一貫してITベンチャー企業に就業し、マーケティングやゲームディレクター、広報などを経験した後、2018年にミラティブに入社し人事として勤務しています。

▼【左】高橋さん 【右】廣田さん

高橋 ミラティブでは、コロナ禍に差し掛かった2020年3月にフルリモート体制に移行しました。元々はSlackとZoomを用いてコミュニケーションをとっていましたが、リモート環境で何気ない雑談などの会話が減少してしまったことをきっかけに、各チームで新しいツールを試すなど、交流を促すための自主的な動きが生まれていました。

そうした中で、エンジニア、デザイナーのチームで試験的に導入されていたのがバーチャルオフィスツールの「Gather」です。

Gather以外のバーチャルオフィスツールも一部では利用されていましたが、全社で統一しようという話になった際にSlackでアンケートを実施したところ、GatherのゲームのようなUIが好評で、2021年の10月に本格的な導入を決定しました。

▼同社のGatherを利用したバーチャルオフィスの様子

ミラティブはミッションとして「わかりあう願いをつなごう」を掲げ、「わかりあおうとし続ける」を行動指針のひとつにしてきたこともあり、元々コミュニケーションを大切にする文化が根付いていました。

なので、コロナ禍以前から全員で朝会を実施したり、月に一度「プレミアムエモイデー」と呼ばれる、全員が「最近あったエモい話」を共有する時間を設けたりして、業務的な文脈では話しにくいことも積極的に共有し、「わかりあい」を向上する時間を大切にしてきました。

そのため、フルリモート環境下での、つながりが乏しくなりがちなコミュニケーションに、社内全体が課題感を持っていたんです。なかには、顔や声を知らない同僚に対して、仲間意識を持ちづらくなったメンバーもいたかもしれません。

そうした不安感や課題感に対して、メンバーが自主的に行動し、試行錯誤しながらたどり着いたのがGatherでした。

廣田 導入にあたって注意したことは、日々のコミュニケーションはSlackがメインなので、発言がばらつかないようにGatherではテキストコミュニケーションはしない、などの最低限のルールを設けたことです。

Gatherはカスタマイズ性が高いので、みんなでオフィスを作り上げながら愛着を感じてもらえるように必要以上のルールは設けない、ということがポイントですね。

▼Gatherの利用に関するルールブック

高橋 また、バーチャルオフィスツールのよくある懸念として「使用メモリが多くて困る」という話もありましたが、実際ほとんど困りませんでした。加えて、「毎日Gatherに出社するのはハードルが高い」という声もありましたが、IDやパスワードの入力がなくログインできますし、結局は「慣れ」かなと思います(笑)。

「Gatherで集合!」が合言葉。雑談から会議、全社交流会まで

高橋 バーチャルオフィスには、できるだけ出社してもらうようにしています。基本的には、ちょっとした相談や雑談、チームごとの朝会、各種ミーティングでの活用がメインです。

リモート環境では、「検索したら分かるかもしれないけれど、聞いた方が早いこと」を相談することはハードルが高いと感じる方も多いですよね。

ただ、そうした会話もできる気楽さがバーチャルオフィスにはあると感じています。Slackでも、会話の途中で「Gatherで少しいいですか?」といった言葉や「Gatherで集合!」というリマインドが飛び交っていますね。

高橋 日常的な会話以外では、チームごとの交流会やランチ会、全社イベントなどで利用しています。

例えば、アバター「エモモ」の制作に携わるメンバーで開催される「エモモ大交流会」は、総勢50名以上のメンバーが参加し、グループに分かれて会話したり、お絵描き伝言ゲームの「Gartic Phone」と連動させてグループ戦を行ったりしました。

▼「エモモ大交流会」の会場の様子

ランチ会では、20名ほどで集まってご飯を食べながら、Gather内に作っている「サーキット会場」でサーキットレースゲームを開催しました。ランチ会の会場なども、すべてメンバーの手作りなんです。

▼ランチ会の様子

廣田 また、コロナ禍以前から年に一度開催していた全社交流会も、昨年はGatherで実施しました。代表から年間の振り返りを発表してもらったり、脱出ゲームや本の交換会を実施したりしました。

▼全社交流会の様子

総勢100名以上集まるイベントをバーチャルで開催するのが初めてだったので、全員の会話が入り混じり、正直カオスになる瞬間もありましたが、それも含めて楽しい思い出になりました(笑)。

高橋 交流を目的にしたイベントでは、話すきっかけをつくるためにゲーム大会を開催することが多いです。リアルの場でも、普段あまり話さない人とテーマもなく「では、雑談してください」と言われてもなかなか話せないじゃないですか。

弊社のゲーム配信サービス「Mirrativ」でも同じで、ユーザーさん同士の雑談のきっかけはゲームを話題にしたものが多く、コラボ配信やコメントで語りながら仲良くなっているように思います。そうした会話の後に、ゲームを介さずに自然と雑談する関係性になるケースが多いんです。

なので、話すきっかけにもなりながら、より深い会話もできると思って企画したのが、「ito」というボードゲームをミラティブ仕様にアレンジしたゲームです。お互いの人柄を知ることができる仕掛けが多く、とても盛り上がったゲームのひとつですね。

バーチャルオフィスで、リアル同様「シームレス」な会話を実現

廣田 また、最近では採用でもGatherを活用し始めました。フルリモート体制になったことで、「会社の雰囲気」を伝えるのがなかなか難しいと感じていたのですが、バーチャルオフィスの装飾や会議の様子を通じて、カルチャーを体感していただけるのではないかと思っています。

実際、なかなか次の選考に進んでいただけなかった候補者さんにバーチャルオフィスの見学をしていただいたところ、その場で次の選考を希望いただけたという事例もありました。

Gatherは、候補者さんのメールアドレスを登録しておけば、入室用のURLから登録不要で1〜2分程度で入室できるので、準備に時間がかからないという点でも採用に活用しやすいと思います。

高橋 様々な活用方法をご紹介してきましたが、「わざわざバーチャルオフィスツールを導入しなくても、Zoomで事足りるのでは」という意見もあるかもしれません。

ただ、ZoomやGoogle Meetsなど複数のツールを使うと、さまざまな空間を行ったり来たりしなければならず、疲労感がありますし、ひとつの会議が終わるごとに「空間がブツっと切れる」感覚があると思っていて。

一方、バーチャルオフィスでは擬似的に同一の空間に存在できるので、近づけばすぐに会話をスタートできますし、リアルと同じくらい、シームレスなコミュニケーションができていると感じています。

廣田 疲労感の観点から付け加えると、顔を画面に写さなくても、アバターによって自分の存在を示すことができるメリットもあると思います。動かないアイコンだと、いるのかいないのか周りから見ても分からない場合が多いですし、やはり人感がなくて寂しいというか(笑)。

なので、「存在感を示す」という役割においては、アバターが3Dなのか2Dかは関係ないと思いますね。むしろ、2Dはドット絵の可愛さがありますし、制限があるからこそ、個性や会社のカルチャーが反映されるとも思います。

高橋さんにいたっては、忍者のアバターですからね(笑)。他にも、オフィスにミラティブのキャラクター「ミラビット」を飾っているひとがいたり、ミラビットに似せてウサギの耳を付けてるメンバーもいますし、それぞれの個性が出ていると思います。

▼高橋さんのアバターと「ミラビット」

バーチャルでも「盗み聞きOK!」な関係性を目指したい

高橋 さまざまな仕掛けを通じて、会話のきっかけづくりは出来てきました。とはいえ、偶発的な会話が生まれるような仕組みや、深い会話を行う場はさらに丁寧に設計していく必要があると感じています。

リアルでは、誰の会話が聞こえてきて「なんか盛り上がってるな」と気づき、そこから会話が伝播していくことがありますが、バーチャルオフィスではそれがないんですよね。アバターが近づいてくると、「誰かきた」と会話が止まることもあったりして。

なので目標は、バーチャルオフィスでも「盗み聞きOK!」くらいの関係性を築いてもらえるようにすることかなと。他のメンバーが近づいてきても「一緒に話そうよ」と言えるような距離感が理想的ですよね。

バーチャルオフィスツールも、いわばひとつのツールでしかないので、元々の信頼関係や心理的安全性の上に成り立つものだということを考慮すると、他のツールも活用しながらコミュニケーションの「点」を作りつつ、それらが相互に作用し合っていくような環境を整えていきたいです。

廣田 ミラティブでは地方の在住率が13%を超えているので、バーチャルオフィスを導入したことで、リモート環境で見えづらくなった「誰と誰が一緒に働いているのか」がアイコンで可視化されるようになったのは、人事としてありがたいですね。新入社員の方にとっても、会社理解につながるのではないかと思います。

私は、ミラティブは「わかりあい」に世界で一番力を入れている会社だと思っています。これまでお話した施策は、社員が自発的に企画・運営したものも多く、社員が日々「わかりあい」に向き合ってくれている証拠だと感じています。

今後も経営陣をはじめ、社員一人ひとりの「わかりあおうとする力」を引き出せるような組織を創っていきたいです。(了)

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