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累計200億超の資金調達も達成!急成長中の「UPSIDER」プロダクト誕生&開発の裏側

累計200億超の資金調達も達成!急成長中の「UPSIDER」プロダクト誕生&開発の裏側

さまざまなスタートアップ企業が伝統産業の革新に挑戦する中、金融領域において急激にその存在感を増しているのが、法人向け決済サービスを提供する株式会社UPSIDERだ。

2022年には、シリーズCラウンドにて三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルという国内メガバンク系VC3社等からの資金調達を達成。創業からの累計調達額は200億円を突破した。

同社は、2020年9月に法人カード「UPSIDER」をリリース。これまでの法人カードにはなかった「独自のアルゴリズムによる高限度額」「充実の管理機能」「toCサービスのような使いやすいUX」等が評価され、サービスの継続率は99%超を誇っている。

また直近では、クレディセゾンと提携した企業間決済サービス「支払い.com」をリリースし、その事業領域を拡大中だ。

「UPSIDER」の事業開発をリードする同社執行役員の石神 直樹さんは、「リリース前に決済システムの内製化を決断したことが、ひとつの転機になった」と話す。

今回は石神さんと、エンジニアとしてソースコードがまだ1行もない状態から同社にジョインし、現在はVPoEを務める清水 顕さんに、UPSIDER社のプロダクト開発の裏側についてお話を伺った。

「プロダクト&ユーザーファースト」を軸に、直近1年で急成長中

石神 僕は2019年9月にUPSIDERに入社し、直近では、法人カード「UPSIDER」のPdM的な役割を務めつつ、マーケティングを中心とした領域を見ています。

その前はセールスやカスタマーサクセス、エクイティファイナンスも見ていたので、いわば何でも屋さんです(笑)。

入社前は公認会計士としてあずさ監査法人で働いていましたが、もともと起業やベンチャーにチャレンジしたいと思っていて。UPSIDERの共同創業者である水野と大学のゼミの同期だったことが、入社するひとつのきっかけになりました。

清水 僕は、UPSIDERにソースコードがまだ1行もない状態でジョインさせていただいて、サービスの技術選定から開発まで、幅広くずっと見させてもらっています。

現在はVPoEとして、開発組織の全体を見たり、採用をリードしたりしながら、まだまだ自分自身でも手を動かして開発もしています。その時々の状況によって動いているような形です。

▼【左】石神さん【右】清水さん

石神様_清水様_UPSIDER.001石神 現在、UPSIDERでは正社員ベースで40名弱と、業務委託で数十名が働いています。1年前には正社員は10名もいなかったのですが、この1年で人数も増え、組織化がどんどん進んでいっています。

組織としては、セールス、マーケティング、カスタマーサクセス・サポートに加えて、エンジニア中心のプロダクト開発チームがあります。さらに開発チームは、Webチームと、自社開発している決済システムを担当するプロセッサーチームに分かれています。

我々が組織として大切にしているのは、「“WE” PEOPLE」と「BE UPSIDER」という二つの価値観です。

▼UPSIDER社の採用サイトより

累計200億超の資金調達も達成!急成長中の「UPSIDER」プロダクト誕生&開発の裏側_SELECK.002石神 「”WE” PEOPLE」とは、主語が「僕」ではなくて、「僕たち」であるということ。つまり、自分のことだけではなく全体を考えて行動を起こす人であろうということです。

一方で「BE UPSIDER」は、自分たち自身の伸びしろをしっかりと伸ばして、成長していく気持ちを持っている人を大事にしようという考え方です。もともと我々の事業が、これから成長する人たちを支えていきたいというプロダクトだからこそ生まれた価値観ですね。

こうしたカルチャーをさらに現場レベルで見ると、「プロダクトファースト」「ユーザーファースト」の考え方がかなり定着していると思います。

というのも、僕たちのサービスの収益源はカードの決済手数料なので、SaaS等とは異なり導入してもらうだけではほとんど収益は発生しません。

つまり、営業力がとても強くて、それで導入してもらいました、という状態ではあまり意味がなく、実際に良いプロダクトだと思って使ってもらって、初めて価値が生まれるプロダクトなんです。

だからこそ、プロダクトを強くして、ユーザーさんに使い続けたいと思ってもらえるような体験を積み重ねていくことが重要です。その実現のためにも、ユーザーファーストで、顧客目線でプロダクトを開発していっています。

清水 その意味で、プロダクトのUXにはすごくこだわっています。我々が提供しているのはいわゆるtoBのサービスですが、toCのサービスと比べても遜色のないわかりやすさ、使いやすさを大切に開発を進めています。

実際にユーザーさんにUXを評価していただくことも多いですし、そういった声は励みになりますね。

▼実際のUPSIDERの管理画面スクリーンショット(同社提供)

累計200億超の資金調達も達成!急成長中の「UPSIDER」プロダクト誕生&開発の裏側_SELECK.003

利用企業1,000社、継続率99%超のサービスが生まれた背景とは

石神 法人カード「UPSIDER」の大きな特徴は三つあります。まず、利用限度額が高いこと。次に、ガバナンスを効かせてしっかり管理ができること。そして最後が、カードの発行手続きや、カスタマーサクセスの対応も含めたスピードの速さです。

この三つの部分が、既存のカード会社様にはなかった点としてご評価いただいています。

例えば利用限度額でいうと、これまでは過去三期分の決算書や代表者の個人保証で枠を算出することが一般的でした。しかし、急成長しているスタートアップの場合だと、その枠が成長に追いついていない、という課題はよくあるんですね。

そこでUPSIDERの場合は、銀行とのAPI連携によってお客様の口座残高や入出金の状態を把握した上で、独自のアルゴリズムによって利用限度額をお伝えしています。それによって、既存の仕組みでは枠が出なかった会社さんでも、高い限度額を出すことが可能です。

現在、アクティブな利用企業は数千社以上になり、また継続率も99%を超えています。

当初は、利用限度額の高さが一番の売りだったので、スタートアップのお客様が多かったのですが、最近では管理機能もかなり拡充されてきたので、上場会社様が機能面を評価してくださり導入につながることも増えてきました。

UPSIDERというプロダクトが生まれた背景としては、創業者のひとりである水野の原体験として、法人カードの限度額や管理性について大きな課題を感じていたということがありました。

そこで、数十社以上の企業さんにヒアリングをさせていただく中で、やはりその課題が非常に大きいということが見えてきたんですね。

また、もうひとりの創業者である宮城が当時ロンドンにいたのですが、現地ではいわゆるチャレンジャーバンク(※)が勃興してきたタイミングでした。加えて、技術的にも日本の銀行のAPI連携がだんだん開放されてきていました。

※自ら新規に銀行免許を取得した上で、テクノロジーを活用して金融サービスを提供する企業のこと

それまでは、僕たちと同じようなことをやりたくてもできなかったはずなので、技術的なタイミングも良かったんですよね。

「決済システム内製化」の決断が、独自の価値創出につながった

石神 実際にプロダクトを開発していくにあたり、ハードルとなったのは、「プロセッシング」と呼ばれるカードの決済システムをどう作っていくかということです。

最初は、決済システムの開発は外注する予定だったのですが、とある事情でそれが難しくなってしまって。その外注先を何とか動かしてできるようになるのを待つか、もうプロダクトのリリースを1年延期してでも内製するか、という意思決定が必要になりました。

結果的には、後者の選択をして内製を決断したのですが、これはひとつの大きな転機だったと思います。

清水 例えばUPSIDERには、カードごとに「この店舗でしか使えない」といった形で利用用途を制限できる機能があるのですが、それが実現できる背景として、自分たちでプロセッシングの機能を持っていることは非常に大きいんです。

外部のシステムをそのまま使う形では、「この決済は通せる・はじける」といった柔軟な機能を作っていくことはなかなか難しかったのかなと。

内製化の決断によってリリースが1年延期され、会社としても苦しい思いをしましたが、結果的にはそれによって今提供できている価値があると思っています。

ただ、内製化していると言っても、創業してから3年ほどはシニアメンバーが中心のスモールチームでやってきました。

バックグラウンドも多様で優秀なメンバーが揃っていて、例えばモルガン・スタンレーでトレーディング・システムの開発に携わってきた金融業界バックボーンのある開発者が現在もプロダクト開発をリードしています。

他にも、僕のようにユーザベースやビズリーチといったスタートアップ畑を歩いてきた人間もいれば、IBMのような大手企業のシステム開発のバックグラウンドを持っている人間もいます。

このように多様な経験を持つメンバーがそれぞれの良いところを引っ張ってきたことで、ここまでやってこられた部分があると感じています。

とはいえ、金融領域はやはり複雑性も非常に高いので、安心してご利用いただける状態を担保しつつ、いかに直感的でわかりやすいプロダクトを提供できるかという点は、特に苦心しながら開発を進めてきましたね。

顧客の声を起点に、「本源的価値」を持つ機能を一体となり届ける

石神 2019年の「UPSIDER」リリース後は、当初から比較的順調に事業を成長させていくことができました。ですので、リリース前のヒアリングを通じて僕たちが立てていた仮説は、一定、ユーザーさんの課題にフィットしていたのかなと思います。

現在も、機能開発においてユーザーさんの声は非常に重要なものと位置づけています。例えば、カスタマーサクセス・サポートに来るユーザーさんからの要望は、誰でもチケット化できますし、常に開発チームに連携されています。

加えて、ユーザーさんに直接インタビューさせていただく機会も多いです。僕自身、TwitterでUPSIDERについてつぶやいている人を見つけたら、「UPSIDERの中の者なんですが…」という形でリプライさせていただいて、ミーティングのお時間をいただくこともよくあります。

▼実際のTwitter(石上さんのTwitterアカウントはこちら

Twitter画像_UPSIDER石神 ユーザーであるCFOや経理の方にお話を聞くにあたっては、専門的な知識や肌感がある僕が一番適任かなと思っているので、なるべく自分で話を聞くようにしています。

こうしたヒアリングを通じて、開発ロードマップの優先順位を変えることもありますね。例えば最近では、カードごとの権限機能の優先順位を上げるなどしました。

もともとは、カードの保有者の方か企業の管理者の方しかカードの明細にメモやエビデンスを追加することができなかったんです。「もっと使いやすくして欲しい、例えば役員が会食に行った際の情報をアシスタントの方が追加できるようにして欲しい」という声があり、実際に出来るようにしたという感じです。

このように、ユーザーさんが「こういうことをやりたい」というニーズが強い場合は、それができる機能の優先順位を高めるようにしています。

ただ一方では、ヒアリングした内容をそのまま開発するのではなく、ユーザーさんが本当はどういう状態になりたいのか、何を達成したいのか、ということを改めてこちらで咀嚼した上で、どうプロダクトに落とし込むかを意思決定しています。

清水 ユーザーさんのお声を鵜呑みにしすぎても良くないんですよね。開発チームとしても、開発しようとしている機能が、ユーザーさんにとって本当に「本源的な価値」を持っているのかどうかはすごく意識しています。

要は何となく見栄えのするような機能ではなく、いかにユーザーさんにとって本当に価値のある機能を届けられるか。この「本源的価値」という言葉は僕の前職のユーザベースで学んだのですが、今でもよく使う言葉です。

石神 また、実際に機能開発を行うにあたっては、僕は全体的なロードマップの中で「達成したい状態」についてしか基本的には話しません。

というのも、僕はエンジニアではないので、Whatはわかるものの、Howがわからないんです(笑)。ざっくりした要素は伝えますが、それ以外はエンジニアに決めてもらっています。

清水 プロダクトとしてのゴールがある中で、そこに対してどういう手段でそれを実現していくのかということは、基本的にはエンジニア自身がどんどん意思決定をしていくチームですね。

僕含めエンジニアが、ユーザーさんへのヒアリングに同席をさせてもらうケースもありますし、今後はもっとエンジニアが前に出ていくようなチームを作りたいと思っていて。

トップダウンではなく、一人ひとりが事業をドライブをしていく意識を持って、意思決定をしていけるようなエンジニアチームになっていくことを目指しています。

0→10から100、1,000を目指して。決済領域の負を解消していく

清水 エンジニアチームの目線では、ここまで4年ほどUPSIDERを開発する中で、0→1の状態から、1→10くらいのフェーズまではようやく来たのかなと。

ただ、ここまではスモールなチームで突っ走ってくることができましたが、ここから10を100にしていく、あるいはそれを1,000にしていくというフェーズになってくると、開発組織の在り方自体を根本から見直していく必要もあると思っています。

きちんとスケールしていくことができるチーム体制にしていくためには、例えば僕自身がVPoEであるべきなのか? といったことも含めて、本当にゼロベースで考えていきたいなと。

今後、最速で事業を成長させていくために、組織構造も含めてチームを再構築していく。これが、僕自身の次のチャレンジになるかと考えています。

石神 僕たちは、これからもBtoBの決済領域に注力していきますが、今後は法人カード以外の新しいプロダクトにもチャレンジしていきたいと思っています。

先日、三菱UFJ様、みずほ様、三井住友様という国内3メガバンク系のVCから出資を受けることができたこともあり、こうした大きな金融機関の方たちの力を借りることで、決済領域における負の部分を解消できるような、新しいサービスを生み出すことができるのではないかと。

そうして生まれた新しいプロダクトやサービスを、さらに世の中に広げていければと思っていますね。(了)

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