• AnyMind Group株式会社
  • Head of Creative
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アジア市場のトップを目指す。グローバルで高速アウトプットを実現する「デザイン戦略」

アジア市場のトップを目指す。グローバルで高速アウトプットを実現する「デザイン戦略」

グローバルに事業を展開している企業にとって、プロダクトの開発やデザインのスピードを向上させることは、事業成長に大きな影響を及ぼす。しかし、多言語対応や国を超えたコミュニケーションの複雑性などがある中で、どのようにすればそれを実現することができるだろうか。

現在、世界13ヵ国・地域・19拠点で事業を展開し、これまでに総額約109億円の資金調達を達成しているAnyMind Group株式会社。同社は2度の上場延期を経て、2023年3月に念願の東京証券取引所グロース市場への上場​​を果たし、今まさに注目度が増しているテクノロジーカンパニーである。

AnyMind概要主にEC・D2C、マーケティング、生産管理、物流などの領域で独自プラットフォームを提供する同社は、全世界で1,368人、国内で367人の組織を持ちながら、国内デザインチームに関しては8人の少数精鋭で、あらゆるデザイン案件を取り扱っているという。(2023年3月31日時点)

このデザインチームが主導する形で、2022年に多言語展開に耐えうるUI/UXを構築するための「AnyMindコンポーネント」を策定したことで、誰もが迷いなくデザイン・開発を進められるようになり、グループ全体でのアウトプットスピードを一気に向上させることができたそうだ。

そこで今回は、同社のHead of Creativeとしてデザインチームを牽引する栗田 直也さんに、AnyMind Groupが高速でデザインをリリースできる仕組みについて、詳しくお話を伺った。

デザインチームは少数精鋭。Web〜リアルまで幅広いデザインを網羅

僕は、新卒で入社したヤフーにてデザイナーとして7年ほど勤めた後に、独立して複数のベンチャーを支援させていただき、CEOの十河(そごう)からの誘いを受けて2019年10月にAnyMindに入社しました。現在は、Head of Creativeとしてデザイン統括を担っています。

▼Head of Creative 栗田 直也さん

AnyMind_栗田 直也さん現在、AnyMind Group全体の従業員数は1,368人を超える規模で、大きく2つの事業を世界13ヵ国・地域・19拠点にて展開しています。

具体的には、ECやD2C領域のブランド企画から生産、ECサイトの構築・運用、マーケティング、物流までを一貫して支援する「ブランドコマース事業」。そして、Webメディアやアプリを運営するパブリッシャーさんや、YouTuber、TikTokerなどのクリエイターさんの成長を支援する「パートナーグロース事業」です。

僕たち国内拠点のデザインチームは、正社員7人+業務委託1人という少人数の体制ですが、9つの自社プロダクト開発に加えて、会社全体のブランディングデザイン、D2C事業のグラフィックデザイン、SNSアカウント運用など幅広い領域のデザインを担当します。

そのため、平均27歳という若いチームながらマルチスキルなメンバーが揃っていて、厳密な役割分担をせずにチーム全体で協力しながら動くようにしています。もちろん個々のメンバーによって得意分野は異なるので、ざっくりとしたカテゴリの中で、適性に合わせて担当する優先順位を決めている形です。

▼デザイナーチームが担当する業務範囲は多岐に渡る

・グループ全体のブランディングデザイン
・各種プロダクトのUI/UXデザイン
・D2C事業のグラフィックデザイン
・各ブランドのECサイト、SNS、広告等の作成
・各種サービスサイトのデザイン
・顧客企業におけるSNSアカウント運用のデザイン など

アジアで乗り遅れたら終わり。デザインスピードを優先したチーム運営

僕たちが新たなプロダクトのデザイン・開発に着手する際には、デザインチームとプロダクトマネジメントチーム(以下、PMチーム)が一体となって、0→1のフェーズでクリエイティブを生み出しています。

その中でデザインチームが重視しているのは、アウトプットからフィードバックを元に改善するまでのPDCAサイクルを高速化することです。その実現のために、固定概念にとらわれず各国の市場変化に合わせて、アウトプットをどんどん変えていくというスタンスを大切にしています。

というのも、僕たちのようなグローバルに事業を展開する企業にとって、「デザインのスピード感」は事業成長に直結する非常に重要な要素となるからです。

特に今はアジア市場の成長スピードがものすごく速く、「アジアで乗り遅れたら終わり」とばかりに先手を打ったビジネス展開をしているので、僕らデザインチームもそれについていかなければいけません。

例えばCEOが「このビジネスを新しく始めよう」と言ったら、数ヶ月後にはもうローンチしてプレスリリースを出すくらいのスピード感です。良い意味で異常な速さを実現している組織だと感じますね。

AnyMind_栗田 直也さん加えて、裁量権が大きいことも特徴だと思います。僕たちとCEOや事業責任者、プロダクトマネージャーとの距離がとても近く、お互いの信頼関係も厚いので、デザインの決定において、承認フローはそれほど複雑ではありません。

実際はアジャイルに近い形で、彼らと密に意見交換しながらデザインしているので、常に意思疎通できているからこそ今の組織運営が成り立っているのだと思います。

僕自身が業務をする中でエキサイティングだなと感じているのは、AnyMindのサービス特性上、未経験の分野のプロダクトデザインに携わる機会がとても多いということです。

例えば、海外配送自動化サービスの「AnyLogi」を作った際には、チームの誰も物流案件に携わった経験がありませんでした。そういった時でも、まずはデザインチームで国内外のトッププレーヤーを徹底的に調査した上で、本当に必要な要素を取捨選択してデザインに落とし込む形で進めています。

もちろん、プロダクトの差別化や優位性を高める観点では、ECのビジネスモデルや顧客のニーズを理解した上で魅力的なデザインを提供することが求められます。また、展開先の国々の文化や消費者の嗜好に合わせたデザインを考え、多言語や多通貨に対応することも重要だと考えています。

AnyMindコンポーネントの策定が、デザイン・開発速度の向上に寄与した

今でこそスピード感のあるデザインチームを構築できていますが、僕が入社した2019年当時はチームがなく、1人からのスタートでした。

初期の頃は、プロダクトごとに全く異なるデザインを作っていたため、社内でのチューニング工数が増えたり、開発スピードが落ちてしまったりすることが課題でした。その解決のために、2021年から「AnyMindコンポーネント」として、自社プロダクトのデザインルールを統一する取り組みを始めました。

まずデザインチームが大枠のデザインシステムやガイドライン、ルールを作成した上で、各事業部長やプロダクトマネージャーとコミュニケーションを取りながらブラッシュアップしていき、最終版が完成したのが2022年です。

具体的には、誰がデザイン・開発しても同じアウトプットになるように、色やフォント、バランス、サイズなどのUIパーツのルールを細かく定めました。

特に弊社は日本語・英語・中国語・インドネシア語などの多言語にも耐えうるUI/UXを実現する必要があるため、どの国のユーザーが見ても違和感を感じないように、AnyMindらしさを残しつつも特徴的な表現を抑えたデザインにしています。

例えば文字サイズに関しては、言語に左右されずに視認しやすいサイズを定めることで、仮にすごく長い英文になったとしてもデザインが崩れないようにするイメージです。

こういったコンポーネントを明示することは、デザインだけでなく、プロダクト開発においても大きなメリットがあります。実際にコンポーネントを軸にして、世界各国のメンバーとのコミュニケーションが非常に円滑になったので、プロダクトの立ち上げスピードの向上にもかなり寄与したと感じています。

自社プロダクトをブランド統合し、コンポーネントを軸にUI/UXを統一

僕たちはAnyMindコンポーネントを作成することで、デザインルール、ユーザーの体験を統一化し、プロダクトをクロスセルした際にも導入をスムーズにすることも狙っています。そこで、「AnyMindコンポーネント」を活用してどのようにプロダクト全体の統一感を出しているのか、具体例をお伝えできればと思います。

前提として、自社プロダクトは現時点で9つあり、その一部は元々異なるプロダクト名で個別展開していたものでした。しかし、異なる領域のプロダクトでも将来的にはクロスセルで一緒に活用していただきたいという思いから、2020年に全プロダクトを「Any」ブランドに統合するという意思決定をしました。

▼同社が展開している9つの自社プロダクト(2023年6月現在)

先ほどお伝えした、ブランド企画〜物流までをワンストップで支援するブランドコマース事業では、これらの複数プロダクトを多角的に利用していただく形となります。ですので、すべてのプロダクトのブランド名を統一することで、顧客にとってのイメージを統一し、ブランド力をより向上させたいという意図もありました。

そういった背景から、ブランド名の統一を機に各プロダクトのダッシュボードを原則同じ構成・デザインに変更し、個々のプロダクト特有の機能に限っては専用のUIを作成するという運用にしています。

▼各プラットフォームのダッシュボード(イメージ)

また、自社プロダクトの一つに、ECマネジメントプラットフォーム「AnyX」があります。このプロダクトはAmazonや楽天、Yahoo!ショッピングなどのECモールと自社ECサイトなど、複数のチャネルを一元管理して最適化できるというものです。

これを日々アップデートをしていますが、AnyMindコンポーネントをベースに進めることで、開発やデザインに関するミーティングの回数もかなり抑えられています。PMチームの設計を元に簡単なミーティングをするだけで、そこからはガシガシと開発を進めることができるといった具合です。

一方、デザインチームとしては、「AnyX」の画面上に表示すべきデータが膨大なので、その点を僕らがうまく整理してデータを出し分けることでサポートしています。加えて、高頻度で顧客に使用感のフィードバックをいただき、かなり細やかなチューニングを繰り返してブラッシュアップしているところです。

東証グロース市場へ上場した今、ブランド力をより強固にしていきたい

アウトプットのスピード感を重視したこれらの取り組みによって、これまでたくさんのプロダクトを世の中にリリースすることができていますし、弊社が2023年3月に東京証券取引所グロース市場へ上場したことも相まって、多くの方に注目いただける企業になってきたと感じています。

▼AnyMind Group全体で続々とプロダクトを打ち出し、大きな成長を遂げている

AnyMind_成長曲線もちろん、まだAnyMindを知らない方も大勢いらっしゃるので、僕自身はこれまで以上にブランディングに注力して、アジアを代表する企業を目指してブランド力をより強固にしていきたいです。

また、ぜひ新しい仲間にも加わっていただいて、今後はよりユーザーが使いやすく感じられるようなUXを深掘りしたり、スピードを優先する中でないがしろにしてきた負の部分を解消したりしながら、各国に合わせた形でさらに細かい改良をしていきたいなと思っています。(了)

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