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BONSAI NFT CLUBの軌跡。NFTプロジェクトを継続させる3つの秘訣とは

2022年に隆盛を極め、今まさに転換期を迎えている日本国内のNFTプロジェクト。

従来は、SNS用のプロフィール画像に使用できるPFP(プロフィールアイコン)を中心としたNFTアートの販売や、それらを会員権としたオンラインコミュニティの運営が主流だった。

しかし、現在に至っては、NFTを保有することで得られるユーティリティ(付加価値)や、「RWA(Real World Assets:現実資産)」へのNFT活用に注目が集まっており、2024年のNFTトレンドは大きく変わっていくと予想される。

こうした中で、いち早くRWAとNFTを掛け合わせたプロジェクトを運営してきたのがBONSAI NFT CLUBだ。「盆栽を世界のアート好き・投資家が熱狂するコンテンツへ」というビジョンを掲げ、2022年4月よりNFTプロジェクトに取り組んでいる。

BONSAI NFT CLUBの参加権となるNFTの購入者には「実物の盆栽」が配布され、盆栽歴15年以上の講師から育成方法を学びながら盆栽のアート性を楽しむことができる。このようなユニークなユーティリティが人気を博し、これまで発表された3つのNFTコレクションは全て完売している。

そして、運営2年目となる現在は、「盆栽のグローバルエコシステムを作り上げる」をスローガンに掲げながら、米国を中心に海外での勢力を拡大し、すでにシアトルの盆栽園と連携しているそうだ。

そこで今回は、BONSAI NFT CLUBのファウンダーである、まじすけ(@majisukecorp)さんに、NFTプロジェクトを長期で継続させる秘訣やホルダーを飽きさせない工夫、そして今後の海外展開について詳しく伺った。

盆栽の魅力を世の中に届ける方法として、NFTに可能性を感じた

僕は、新卒で英語学習アプリを提供する企業に入社し、マーケティング業務に従事していました。そのアプリは、英語を勉強したい日本人と、日本語を勉強したい外国人をマッチングする仕組みだったため、国内外を開拓していくうちに海外マーケティングのノウハウを蓄積してきたという背景があります。

そこで、海外マーケティング事業会社として2019年に創業したのが、まじすけ株式会社です。様々な企業様をご支援させていただく中で、たまたま愛媛県の盆栽団体の方々とご縁があったことがきっかけで盆栽に目をつけ、「BONSAI NFT CLUB」を立ち上げました。

盆栽市場についてお伝えすると、直近20年以内で国内の盆栽愛好家の数は減少の一途を辿る中、グローバルへの盆栽の輸出は約20倍に増えています。さらに、海外では日本の取引に比べて5〜10倍も値段が高く、そのアート性が高く評価されています。

しかし、輸出の制限が複雑で日本から海外への発送が難しいことや、海外バイヤーとのコミュニケーション機会が不足しているといった理由から、まだまだ盆栽の可能性をグローバルに広げられる余地があるのが現状です。

そうした中で、「どうやったら盆栽というアート性の高い作品を世界に広げられるか」を考えていた時に出会ったのが、NFTでした。盆栽にNFTを活用することで生まれるユーザーの購買特性やコミュニティの将来性を掛け合わせることで、盆栽市場に新たなムーブメントを起こせるのではないかと思ったんです。

なので、今でこそNFT業界でRWAの重要性が問われるようになったものの、私自身は当初からRWAを意識していたわけではありませんでした。

あくまで、盆栽の魅力を広げるマーケティング手法としてNFTのムーブメントを活用できないかと考えたのが、BONSAI NFT CLUBをスタートさせた原点になっています。

熱量の維持が鍵。NFTプロジェクトを成功させる3つのプロセス

BONSAI NFT CLUBのこれまでの軌跡をまとめると、2022年5月にコミュニティの会員権となる「BONSAI NFT CLUB」を100体限定で販売し、その半年後となる10月には、8,031体のジェネラティブNFT「BONSAI NFT FARM」を販売しています。

NFTプロジェクトは、特にコミュニティを立ち上げた後の熱量を維持し、運営を継続するのが難しいとされています。そこで、BONSAI NFT CLUBでは、プロジェクトを持続させるべく、大きく3つのプロセスに分けて様々な施策を実行してきました。これから、各プロセスについて詳しくお伝えしていきます。

1つ目は、「共感者の獲得と企画指針の決定」です。共感者を獲得するためには、まずは小さく始めることが重要で、いきなり大きく風呂敷を広げてしまうと、ユーザーの期待に応えることが難しくなってしまいます。

そこで僕たちは、100体限定でメンバーシップNFTを用意し、毎週5体ずつ販売することにしました。応募条件として、X(旧Twitter)のポストをリポストした人の中から抽選式にすることで情報の拡散も期待できましたし、完売が続いたため、「欲しいのに買えないNFT」として話題を呼ぶこともできました。結果、熱量を保ちながら4カ月かけて完売させました。

▼【左】NFTホルダーに送られる盆栽(一例)【右】BONSAI NFT CLUB会員権となるNFT

また、Xアカウントを立ち上げた際に、「いいね」を押してくれた100人ほどの方々全員にお願いして、オンラインでのヒアリングを実施しました。この際、「なぜBONSAI NFTに興味を持ったのか」「どんなコミュニティだと参加しづらいか」「次の展開として、どのようなことができたら嬉しいか」などを質問していきましたね。

その反応としては、海外ユーザーが日本のNFTプロジェクトに興味を示していたタイミングだったこともあり、「より多くの海外ユーザーやプロジェクトと連携できそう」という軸で参加してくださった方や、「盆栽を育てるという特別な体験ができる」という点に魅力を感じて応援してくださっている方も多くいました。

現在もこのヒアリングは続けていて、NFTを購入いただいた100人のうち、60〜70人くらいのホルダーと直接お話しさせていただいたことがあります。その際、ホルダーさんから「盆栽園が欲しい」という意見が挙がったことが、後の「BONSAI NFT FARM」の展開にも繋がっています。

他にも、Giveaway(NFTの無料配布)を行った際には、三木道三(@DOZAN11)さんがコメントしてくださったことで、一気にプロジェクトの輪が広がっていきました。

このように、ホルダー全員と一緒に進められるスピード感で小さく始め、協力者との関係性を構築しながら、最初に掲げたロードマップを達成できると示すことが、立ち上げ時には最も重要だと思っています。

ホルダーを飽きさせない工夫を通じて、プロジェクトの継続性を確立

2つ目のプロセスは、「継続性の確立と将来価値の設定」です。BONSAI NFT CLUBには、幸いにも盆栽・植物好きなホルダーの方々が集まっていますが、NFTを長期で保有してもらうためには、やはり飽きさせない工夫が必要です。このプロセスに関しては、大きく3つに分けて施策をご紹介します。

まず、ホルダーを中心としたコミュニティの運営を開始しました。BONSAI NFT CLUBのホルダーさんには実物の盆栽が送られる仕組みがあります。しかし、発送後のサポートが何も無ければ、盆栽を育てるモチベーションが下がり、やがて興味も薄れてしまいますよね。また、盆栽は水やり以外にも枝切りなどの手入れが必要で、一人で調べながら育てていくのは大変です。

そこで、BONSAI NFT CLUBのオンラインコミュニティでは、盆栽歴15年以上の講師から育成方法について学べる環境を整えています。コミュニティはDiscord上で運営していて、現在2,000人以上の方が参加してくださっています。

▼BONSAI NFT CLUBのDiscordコミュニティの様子

また、ホルダー同士の交流はオンライン上に留まらず、リアルイベントも定期的に開催しています。直近では2023年5月に、BONSAI NFT CLUBの設立1周年を記念したイベントを都内で開催しました。当日は、約60人ほどの方が参加してくださり、今後の展開などを発表しました。

そして、2つ目の施策は、定期的な企画やキャンペーンの開催です。これは主に、コミュニティに所属しているメリットを感じてもらうことが目的です。

過去の事例としては、立ち上げ当初に実施した「スポンサーミント」という企画があります。これは、盆栽をホルダーさんにお届けする際の段ボールにチラシを封入することで、ターゲティング広告ができるという内容です。100体のNFT購入を条件にしたことで、フロアプライスよりも高い価格だったにも関わらず、計500体以上を追加でご購入いただきました。

▼【左】スポンサーミント権【右】NFTホルダーに盆栽が送られる際に利用される段ボール

他にも、2023年のクリスマスには「Bonsai Xmas Campaign」と称して、NFTや暗号資産を山分けしたり、今年の正月には「BONSAI福袋2024」を販売したりと、時流に合わせたキャンペーンも行っています。

3つ目の施策は、「盆栽園の設立」です。これは前述した通りホルダーさんの意見から生まれたアイデアで、オリジナルの盆栽を育成・販売したり、ホルダーの方々が家を空ける際に預けられる場所として活用したりと、いわば「みんなで創りあげる盆栽園」を目指すものです。

この盆栽園を作りたいと思っていたタイミングで出会ったのが、盆栽師の平尾成志さんです。ちょうど平尾さんが経営する盆栽園「成勝園」の移転が決まっていて、移転先の場所の一部を間借りしたいと打診したところ、快く引き受けてくれたんです。

そして、2022年10月に8,031体のジェネラティブNFT「BONSAI NFT FARM」をリリースし、そのNFTの販売収益で盆栽園をスタートさせました。現在は、埼玉県および米国シアトルの盆栽園と連携していて、ホルダーの盆栽を管理したり、販売する場を提供しています。

▼NFTホルダーで分割所有されている盆栽園の様子

ここまでの内容が、NFTプロジェクトを成功させる2つ目のプロセスである、「継続性の確立と将来価値の設定」​​の内容です。そして、このタイミングまでに「初期から提示してきた目標」を実現することが重要です。

設計が必要なのは、ビジネスモデルではなく「トークノミクス」

最後の3つ目のプロセスは、「エコシステムの持続性の追及」です。NFTを発行して座組みを組んでも、経済が回らなければプロジェクトは持続しません。つまり重要なのは、単なるビジネスモデルの構築ではなく、トークノミクスを作ることです。

そこで、BONSAI NFT CLUBでは、2023年7月から「BONSAI COIN」の仕組みを設けました。これは、保有するNFTの種類と数に応じて毎日付与されるポイントで、トークンではなく、あくまでプロジェクト内の通貨として機能しているものです。発行上限枚数は8,031,000枚と定めています。

BONSAI COINは、専用のWebサイト上でオリジナルグッズやリアル盆栽などと交換できたり、盆栽関連のグッズが当たる「ガチャ」などで利用できます。

さらに、NFTプロジェクトでは二次流通を促し、運営費用を継続的に稼ぐ必要があります。そこで実施しているのが、「NFTを市場から回収して再販する」という試みです。

具体的には、50〜100体ほどのBONSAI NFT FARMと実物の盆栽を交換できるようにしていて、運営の手元に戻ってきたNFTのイラストを変えることで、新たに「BONSAI NFT FARMⅡ」として追加販売しているんです。もちろん、二次流通でNFTを購入いただいた方にも実物の盆栽をお届けしています。

これは主に、「まだBONSAI NFTを持っていない方向けにリリースされるNFT」であり、直近、フロアプライスが高騰していたことやユーティリティが煩雑化していたことに伴い、新しく興味を持っていただける方を増やしたいという思いで企画しました。

▼BONSAI NFT FARM Ⅱ

また、ホルダーさんにお届けする盆栽を用意するには、当然ながら費用がかかります。立ち上げ当初はNFTマーケッチプレイス「OpenSea」のロイヤリティ手数料がもらえていたため、その利益を盆栽の資金に充てることで、ホルダーさんに無償で送り続けることができていました。

ところが現在は、OpenSeaの仕様変更に伴い手数料がもらえなくなったことで、「BONSAI COIN」と盆栽を交換できる仕組みにしています。こういった形で、うまく環境変化にも対応しながらエコシステムを回し続ける工夫が、プロジェクトの持続可能性を担保するために必要だと感じていますね。

盆栽の価値流動性を最大化させるべく、アート市場へ進出

これまでは、主にコミュニティの形成に注力してきましたが、今後は、より一層アート性を掛け合わせることで、国内外における盆栽の価値流動性を最大化させたいと思っています。

そこで新たに立ち上げたプロジェクトが、「BONSAI NFT GALLERY」です。これは、現代アーティストと盆栽師が作り上げる「現代盆栽(コンテンポラリー盆栽)」を販売するという、BONSAI NFT CLUBのビジョンに基づいた真骨頂となるNFTプロジェクトです。

具体的には、盆栽の配送中や配送後に傷む・枯れる可能性を排除することを目的とし、アーティストが制作した現代盆栽がBONSAI NFT CLUBの提携盆栽園にて管理され、所有権のみがNFTとして流通する形です。

また、アート性の最大化によって、投資の文脈で盆栽が評価されるようになれば、NFTのマーケットサイズが圧倒的に大きい海外での展開を加速できると思っています。

これまでも海外への展開を目指して、何度か現地に出向いて盆栽の魅力を伝えるようにしたり、海外のNFTプロジェクトとコラボレーションしたりしてきました。

具体的には、2023年は少なくとも7、8回くらいアメリカのイベントに足を運びましたし、コラボにあたっても、先方のNFTホルダーの属性を調べ、お互いにシナジーが生まれるコミュニティを慎重に選定してきました。

しかし、BONSAI NFT CLUBにおける日本と海外の保有比率は9:1と、やはり海外の方が少ないのが現状です。

その背景として、日本と海外でタイムゾーンが異なることや、文化的な違いなどにより、海外のホルダーとのリレーションをいまひとつ築けていないという課題があると思っています。そのため、海外の方はNFTを買った後に盆栽をもらったら長期保有せず、すぐに売りに出す方が多い印象です。

よって、現在は、今後の方向性をちょうど見直しているタイミングなんですよね。「盆栽を世界のアート好き・投資家が熱狂するコンテンツへ」というビジョンはずっと変わっておらず、海外展開を見据えているものの、やはり肌感として、日本人の方が盆栽に対する意気込みが少し違うなと感じていて。

そこで、まずは日本のコミュニティをより一層盛り上げた上で、もう一度攻め方を変えて海外展開を進めていきたいと思っています。そうして、ホルダーを1,000人、2,000人、3,000人…と増やしていくことで、BONSAI NFT CLUBのコミュニティをさらに拡大し、盆栽はもちろん、NFT自体の価値も向上させていきたいです。

直近では、2024年4月にBONSAI COINの発行上限枚数に達するので、それ以降は新たなエコノミクスへと変えていき、大きな転換を図っていく予定です。

また現状では、NFTの平均保有数が1人あたり10体になっているのですが、1体だけでも盆栽の魅力や価値を享受できる新しいユーティリティを準備しているので、引き続き、盆栽の世界に興味を持っていただける人を増やしていきたいですね。(了)

取材・ライター:古田島 大介
企画・編集:吉井 萌里(SELECK編集部)

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