- 株式会社リクルートライフスタイル
- ネットビジネス本部 ディベロップメントデザインユニット
- 梶原 成親
縦割りの組織も変えられる!チームを越えたコラボレーションを生む情報共有ツールとは
今回のソリューション:【Confluence/コンフルエンス】
〜2,000人規模の組織、リクルートライフスタイルが、情報・ナレッジ共有を実現し、会議時間を8分の1にすることに成功した「Confluence」の使い方〜
企業が成長し、組織が縦割りになっていくと、知識やノウハウが個々の部署内に閉じ込められ、特定の人しか知らない情報が増えていく。
その結果として、各部署が他のチームとの連携を持たずに孤立する「サイロ化」が進みがちだ。とは言え、社員数が数百人、数千人を超える「大企業」で、効率的で抜け漏れのないナレッジ共有の仕組みを構築することは可能なのだろうか。
「HOT PEPPER」「じゃらん」「ケイコとマナブ」等のサービスを開発・運営する株式会社リクルートライフスタイル。
同社では、情報共有ツール「Confluence(コンフルエンス)」を活用することで、2,000名規模で情報共有の文化を作りあげることに成功した。
「『関係者しか見れない』情報共有では、何も新しいコラボレーションが起こらない」と語る同社の梶原 成親さんに、Confluenceをどのように社内に浸透させ、活用しているのか、詳しいお話を伺った。
前職での経験を活かし、情報共有の文化を変える組織改革に着手!
2014年に、コンシューマー向けのサービス作りができることと、様々なバックグラウンドを持っている点に魅力を感じ、リクルートライフスタイルに中途入社しました。
現在は、ホットペッパービューティーの開発メンバー100名程のマネジメントと並行して、社内の生産性を向上させるための組織を立ち上げ、開発環境の整備も行っています。
入社した時に、この組織では「部署を越えた」オープンな情報共有があまり上手くいっていない、という印象を持ちました。
情報共有が組織レベルではなく現場レベルで行われていて、いわゆる全体最適というより個別最適の視点になっていた、と言いますか。
当時から情報共有ツールの「Confluence(コンフルエンス)」は一部の部署で導入されていたのですが、使い方が非常にアンチパターンでした。
情報共有ツールなのに権限が細かく設定してあって、そのプロジェクトの関係者しか関連情報にアクセスできない状態になっていたんです。プロジェクトを進めるためのマニュアルなどもメールで保存されていたので、必要であれば毎回わざわざ掘り起こして確認していました。
私は前職で大手Webサービス企業に勤めていた時に、開発チームの生産性向上のためにConfluenceを導入し、運用や社内ユーザーのサポートを担当した経験がありました。そこでその時と同じように、リクルートライフスタイルでもConfluenceの大規模展開をやってみようと考えました。
「この人しか知らない」情報をなくそう!と社内に呼び掛け
Confluenceには「スペース」という概念があります。チームやプロジェクト単位でスペースを設定し、その中に記事を投稿することで、スペース内のメンバーに情報を共有できます。
当時の弊社では、そのスペースにアクセスできるのは関係者だけ、という状態になっていたので、まずはそこから変えていきました。
「関係者しか見られない」スペースでは、何も新しいコラボレーションが起こらないんですよね。そこで私が作った新しいスペースにおいては、全ユーザーに閲覧権限があってコメントできるように設定を変えました。
そして社内に、もう「この人しか知らない」情報をなくしましょう、情報は共有してこそ価値がある、というメッセージをぶつけていきました。
その時に事例として使ったのが、TEDの過去の登壇で、軍隊における情報共有の話でした。
簡単に言うと、古い縦割りの組織のDNAに組み込まれた「秘密主義」を変えていったというストーリーです。この情報はコンフィデンシャルだから、と言って共有されないことで、ジャッジができないケースが多くあったと。
うちも組織としては一緒の状態にある、行き過ぎた情報統制はサイロ化を起こすので、まずはConfluenceのスペースの設定を見直すところから変えていきましょうと呼び掛けました。
今では2,000人がConfluenceを使う 幅広く全社で情報共有
私が入社した当初は、Confluenceのアカウント数は100ほどでした。それが今では2,000アカウントほどにまで増えて、様々な情報が格納されるようになっています。
例えば企画設計書、体制図、申請手順、検証の手順、BIツールで出したレポートなどですね。私のチームでは、共有したい価値観や自分達のゴール、チームのロードマップも共有しています。後から入ってきた新人も、それを見ればすぐキャッチアップできるようになっています。
▼さまざまな情報がConfluence上で共有されるように
プロジェクトの振り返りもConfluence上で行っていて、日報を提出したり、KPT(Keep・Problem・Try)の報告も行なっていたりします。
情報が大量に流れることになりますが、検索機能が優れていてスピーディーに読みたいものを見つけることができます。パワーポイントなどのファイルの中に記されている文字列まで検索できますし、自分が最近見たページの一覧もパっと表示できます。
また、同じAtlassian社のサービスと連携させて使うことで業務全体を効率化しています。例えばConfluence上で企画を書いてタスクを記入しておくと、プロジェクト管理ツールのJIRA上に自動的にタスクが積まれるようになっています。
JIRA上でタスクのステータスを更新するとConfluenceにも反映されるので、企画者と開発者のコミュニケーションが効率化されます。
また、新しい投稿がConfluenceに上がるとチャットツールのHipChatに通知が飛びます。HipChatの該当ルームを1日の終わりにばーっと眺めてもらえば、サラッとその日の投稿一覧が分かるように作っています。
コラボレーションで新しい価値を創出 会議時間も8分の1に
Confluenceの活用により、以前は特定の人しか知らなかった情報が共有されて、チームを越えたコラボレーションが起きるようになりました。
まず、面識がない社員に対してもConfluence上でフランクに質問ができるようになりましたね。
新人が仕事で詰まって「こういう風にやったんですけど、できませんでした」のような書き込みがされた時に、「こうすれば出来るんだよ」というように誰かが解決法を教えてあげる流れが自然に生まれました。それまでのように1人で悶々と悩まなくて済むようになり、仕事の効率が上がったと思います。
そして、会議時間を大幅に減らすことにも成功しました。まずはConfluence上でやりとりをし、ある程度固まってから会議を行うことで、会議時間が8分の1ほどになったんです。
ちなみに、Confluence Questionsというプラグインの機能を使用していて、誰かの質問に答えたらポイントがConfluence上で貯まり、ランキングも出るようになっています。過去の類似質問も検索できるので、何か困ったときにはすぐに過去事例を検索することもできます。
▼会議前にConfluence上で議論の内容を共有
最も組織が変わったな、と思うのは、「こういう情報はConfluenceで共有するべきですよね」という発想がメンバーから自然に出てきた瞬間ですね。理念や考え方がちゃんと伝わっているんだなあ、と感じます。
また、「こんなに便利になって鼻血出そうです」なんて言ってもらえた時はとても嬉しかったですね。新しい仕組みを導入して良かったと思いました。
以前は皆、決められたやり方やルールの中で、不便でも同じように作業をしていました。今では、誰でもアイデア次第で業務を改善していける、と思ってもらえるようになりました。
今後は営業・バックオフィスにも 全体の要望をオープンに!
Confluenceを導入すると、毎回「人に聞いて」状況を把握する必要がなくなります。
例えば開発チームのプロジェクト進行がうまく可視化できていないような組織にはオススメですね。また、縦割りの組織で、各グループがそれぞれどう動いているか見えていない場合も有効活用できると思います。
弊社でもまだ組織全体に導入ができているわけではないので、今後は各部門の営業組織にも導入を拡大していきたいと考えています。
営業チームからの要望をダイレクトに吸い上げて、開発スピードを上げることができるようにしたいですね。営業側からしても、「どうせ要望言っても開発側は叶えてくれないしな..。」という感情はあると思うので、すべての要望をConfluence上でオープンにすると考え方が変わってくるのではないでしょうか。
自分だけではなく他の人の要望も見ることができれば、全員がビジネス全体のプライオリティを考えるように視点が変わってくると思うんですね。
また、総務・人事といったバックオフィスにも導入すれば、業務を効率化できると思います。今後もConfluenceを活用して、さらに経営の効率化を進めていきたいです。(了)