- 株式会社タクスタ
- 代表取締役社長
- 田久保 健太
「全部つっこむ」のが正しい! 敢えて上手く使わない、Evernote Businessの活用法
今回のソリューション:【Evernote Business/エバーノートビジネス】
〜チーム内の情報共有・蓄積の仕組みを効率的に運用するための、「Evernote Business」の使い方〜
IT業界であれば誰でも知っている、と言っても過言ではないWebサービス「Evernote(エバーノート)」。Evernoteは、文章や画像、音声メモ、位置情報や動画などのデータを保存できるツールで、日本では2010年からサービスを提供している。個人プランと法人プランがあり、個人の場合は無料で使うこともできる。
ただしこのEvernote、使い方は人によって様々だ。「果たして上手く使いこなせているのか?」という不安や「課金すると何が変わるの?」という疑問をお持ちの方も多いだろう。
ライブ動画中継アプリ「takusuta」を提供する株式会社タクスタは、法人プランである「Evernote Business(エバーノートビジネス)」を導入している。このプランでは、有料版で使えるすべての機能が利用可能で、さらに複数のメンバーでノートを共有することができるようになる。
タクスタでは、画像内の文字まで検索可能というその高い検索性を活かし、「何でもつっこんで後から検索する」という運用方法で、社内に情報共有の文化を作ることにも成功した。
その導入の音頭を取ったのは、学生時代からEvernoteの超ヘビーユーザーだという同社エンジニアの今井 啓介さん。
「Evernoteはうまく使いこなそうと思ったら負け」と語る今井さんと、同社代表の田久保 健太さんに、Evernote Businessの企業における活用術をお伺いした。
サイバーエージェントでプロデューサーとして経験を積み、動画の新事業を立ち上げ
田久保 新卒で2009年にサイバーエージェントに入社し、ソーシャルゲームやアメーバピグの提供する「ピグライフ」でプロデューサーを務めた後、2014年の秋までAmebaピグ全体の事業責任者を務めていました。
「takusuta(タクスタ)」の始まりは、2014年の10月に開催されたサイバーエージェントの役員対抗の事業立案コンテスト「あした会議」での決議です。そこで動画事業の子会社立ち上げという案が出て、責任者に指名していただきました。
最初はひとりで事業構想を練るところからスタートし、11月からチームを作って開発に着手し、翌年7月にサービスをリリースしました。
takusutaは一言で言うと、スマホで使えるライブ動画中継アプリです。スマホからすぐに動画の生配信ができて、リアルタイムに中継動画を視聴できる。大きな特徴としては2点あって、まず初めての人でも使いやすいように、インタラクションやUIを簡単にしていること、そして動画のフィルター機能があることです。好みのフィルターを使うことで、より綺麗な映像でライブ配信が可能です。
今井 僕はもともとサイバーエージェントの内定者だった時に、動画配信の新しい事業を立ち上げる、という話を田久保に聞く機会がありました。その時に「内定者バイトで参加してみない?」と誘ってもらったことがタクスタ入社のきっかけです。
動画配信サービスを作る、というスケールの大きなビジネスにゼロから関わることができるのはすごく面白そうだな、と感じて即決しました。そして内定者期間の3ヶ月間アルバイトをして、そのまま2015年に新卒としてタクスタに入社した、という流れになります。
新規サービスのリリース後、組織での情報共有が課題に
田久保 弊社は現状12名の組織で、プロデューサーが2名、デザイナーが1名、他は全員エンジニアです。
プロダクト開発の大きな方向性はエンジニアも含めたボードメンバーで決めているのですが、他のメンバーは機能ごとに縦割りで3つのチームに分け、3機能同時に開発するというスタイルをとっています。デザイナーとサーバーサイドエンジニアだけが、すべてに横軸で関わる形です。
最初はピラミッド型の組織だったのですが、サービスリリース後、ディレクションの課題から現在の形になりました。
リリース前は、全員開発を進めるだけだったので一つのチームでもメンバー間で濃いコミュニケーションができていたんですね。でもリリース後の運用フェーズになってくると、ピラミッド型ではうまくいかなくなってきて。
プロモーションやサービスのグロースを新機能の開発と同時に進めていく中で、一つのピラミッド型のチーム体制では、1人ひとりの意識や仕様の認識に差が出てきてしまうようになりました。そこでアウトプットのスピードを上げるためにもチーム体制を変え、同時に組織の情報共有の方法についても見直すことにしました。
今井 僕がインターンとして入ったタイミングは、プロダクト開発を始めて3、4ヶ月が経とうとしていた頃でした。ちょうど仕様やナレッジといった情報が貯まってくるフェーズだったのですが、ドキュメントとして残しておくツールを導入していませんでした。
エンジニア、デザイナー、プロデューサーが情報を共有する場所がなかったんですよね。そこで導入したのが、「Evernote Business(エバーノートビジネス)」です。
「たくさん書く人」に優しいツールが必要 選んだのはEvernote
今井 僕はもともと、学生時代からEvernoteの超ヘビーユーザーで、個人的に課金もしていて。そういった背景があったので、僕が音頭をとってEvernote Businessの導入を進めていくことになりました。
他のツールやサービスも検討したのですが、デザイナーやプロデューサーも簡単に使えるツールが良かったことと、僕が使い込んでいたので、いつでも社内メンバーのフォローができることが決め手になりました。
意外とエンジニアって、ドキュメントをとらないんです。技術に関してのナレッジなどは既にWebで公開されている場合も多いので、それを検索すれば事足ります。
また自分で解決したことをドキュメントに残すこともあまりなく、「書く」機会が多いのはプロデューサーの方だと思いました。サービスの細かい仕様や打った施策、サービスのラベリングの文言などですね。
そう考えると、書くことが多い人に優しいツールの方がいいのではないかと。そこで今回は「Qiita:Team」のようなマークダウン記法のツールではなく、Evernote Businessを使ってみようということになりました。
田久保 実際に当時、情報共有について一番困っていたのは僕でした。Googleスライドと手書きのイメージや図のハイブリッドで仕様書を作成していたのですが、どうも開発メンバーにちゃんとアクセスしてもらえていないのでは、と感じていて。
結局は印刷してミーティングに持っていくことになってしまっていたので、みんなが便利にアクセスできる何かしらのドキュメント置き場が欲しいと思っていました。
整理しようと思ったら負け!「何でもつっこむ」とうまくいく
今井 Evernote Businessを使うと、チームでノートを共有することができ、かつプレミアム版に備わっている機能をすべて使うことができます。便利なのはオフラインで使える機能と、検索機能ですね。
あくまでも主観なのですが、Evernoteって、Evernoteに入れた情報をきちんと整理しようと思ったら負けだと思っています。整理しなくても、非常に強力な検索機能を持っているので整理する必要がありません。それに1ヶ月のアップロード上限以外は容量無制限なので、ひたすら貯めていくことができます。
▼さまざまな情報をEvernote Businessに集約
学生時代からとにかく何でもかんでも気になった情報をつっこんでいて、ノートも書きますし、いいなと思ったWebサイトはクリップして、画像も保存する。当時から一切、整理はしていません。
全部ただEvernote入れておくだけ。すごいのは、全文検索機能で何でも引っかかることです。ワードやPDFももちろんのこと、保存した写真に文字が写っていればそれも検索にヒットします。例えば、ミーティングの時にホワイトボードに書いた議事録を写真に撮って保存すれば、あとからその内容で検索してアクセスすることができます。
田久保 使い方は「便利なワード」のような感じでとても簡単なので、導入障壁は低いですね。弊社の場合はもともと仕様のドキュメンテーション文化がなかったので、まずは全仕様をEvernote Businessに残していこう、という方針を最初に決めてしまいました。
そしてEvernote Businessに仕様をまとめなければ実装しない、というところまで徹底したことで、いつの間にかみんながちゃんと書くようになっていきました。
プロデューサーとエンジニアのコミュニケーションの場所ができた
田久保 現在、使い方として一番大きいのはアプリの仕様の共有になります。新しい機能を開発する時は、まずプロデューサーがEvernote Businessで簡単に概要を起票します。そして各自のToDoを入れて、その新機能の目的やユーザーの使い方、実装した際に影響する範囲などを書き足していきます。
それに対してエンジニアが赤字で仕様を補足、追記をしていき、ドキュメントを完成させていく、というイメージです。Evernote BusinessのネイティブアプリのUIが綺麗で使いやすいので、スマホからもどんどん書けるのも便利ですね。
▼プロデューサーが作った仕様書に、エンジニアが赤字で書き足す
今井 サービスの仕様だけではなくて議事録やリリース情報、個人的なメモを含め、とにかく何でもEvernote Businessに残しています。僕が参加しているノート数で、今700弱あります。
「全部つっこんで検索する」という使い方なのですが、全文検索以外にもタグを付けてそれで検索をすることもできます。「検索されるであろう」言葉でタグはとにかく多く付けて、後で参照しやすくなるようにしています。
田久保 新機能の案出し会を全員でした時にも、アウトプット先としてEvernote Businessを使いました。「新規案件」というタグのついたノートが案の数だけ作られていくイメージです。
期日を設定して新機能の案を出してもらい、審査員である僕が、審査前日までに簡単にノートに目を通して事前にアドバイスをした時にも活用しました。
みんなが「発案して良かった」と思う会にしたかったので、全員がアウトプットを残すことができ、そういったチームビルドの観点からもEvernoteがあって良かったと思います。
使うと決めて徹底するのが重要 「ただのノート」でチームが変化
今井 Evernoteは、「ただのノート」だと思って使っています(笑)。「上手く使おう」としすぎて失敗する場合もあるのではないかと個人的には思っています。
変に使い方を工夫したり、より便利に使おうと思いすぎるより、Evernoteの書きやすさと検索機能を活かした形で、続けられる形で運用していくのが良いと思っています。
田久保 以前は開発者とビジネスサイドで、使っているツールが分かれていました。エンジニアは「Qiita」や「GitHub」や「wiki」、プロデューサーは「Googleスライド」やメール、というようにバラバラでした。
今はそれがEvernoteに統一されたので、仕様を書く人と、それを作る人が同じ土俵でコミュニケーションをとっている状態にできたのが良かったです。開発を進める上でお互いを巻き込みやすくもなりました。
例えば、エンジニアが「takusuta」を使っていて感じた改善ポイントをばーっとEvernoteに書いて、それを僕が引き継いでディテールを詰めて仕様化する、というような流れができました。
人数が増えてくれば、チーム体制や開発の進め方もまた変わってくるとは思うのですが、弊社の今の人数では、この形でうまく進めることができているので、引き続きEvernote Businessを活用していこうと思っています。(了)