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カギはTableauとRの使い分け!データの可視化で、数値からユーザー行動を読み解く!

今回のソリューション:【Tableau/タブロー】

〜ニュースアプリ「カメリオ」のユーザー行動をデータから見える化し、UI改善につなげた事例〜

Webサービスやアプリのグロースハックを行う上で欠かせない、ユーザー行動分析。昨今その領域において注目されているのが、「データサイエンティスト」と呼ばれるデータのプロフェッショナルだ。彼らはデータ領域に特化したそのスキルを活かし、数値分析によってサービスのグロースに貢献する。

ビッグデータ・テクノロジーのエキスパートで、ニュースアプリ「カメリオ」を運営する株式会社白ヤギコーポレーション。

カメリオは、独自のアルゴリズムを使って特定のキーワードに基づく情報を収集することで、ユーザーが「読みたい」という情報だけを届けるキュレーションサービスだ。そんな同社に2015年4月にデータサイエンティストとして参加したのが、堅田 洋資さんだ。

堅田さんはBIツール「Tableau(タブロー)」や統計解析言語の「Python(パイソン)」、「R(アール)」を駆使し、カメリオにおけるユーザー行動を分析し、サービスの改善に向けた施策提案を行っている。

そんな堅田さんに、今回はTableauとRを使ったデータ可視化の手法について、詳しくお話を伺った。

データサイエンスの修士号を獲得し、データサイエンティストに

データ分析との出会いは大学生の時で、当時から非常に好きな領域だったのですが、その頃はまだビッグデータという言葉もなかったような時代で。分析周りで仕事をしようとすると、市場調査のような仕事しかありませんでした。

そこで外資系のメーカーに就職してファイナンスに関わったり、コンサルティング会社で事業再生に携わったり、様々なことを経験してきました。

インキュベーションという形で新規事業に関わっていた時には、初年度の売上が3万円だったこともありました(笑)。その事業を2年目で軌道に乗せたタイミングで、ある種の達成感もあったので、もう一度勉強しようと。そこでサンフランシスコ大学に留学し、データサイエンスの修士を取得しました。

帰国後に監査法人に入社したのですが、ちょっと事業が固いこともあって、PythonやRを使うこともなく。学んできたことを全く活かすことができなかったので、環境を変えるために2015年の4月に、データサイエンティストとして白ヤギコーポレーションに入社しました。

独自のアルゴリズムを使ったニュースアプリ「カメリオ」を運営

白ヤギコーポレーションでは、独自のアルゴリズムを使ったニュースアプリ「カメリオ」を運営しています。特徴は、自分の興味領域をピンポイントでキュレーションできるところです。

数十万を超えるテーマが設定されていて、ユーザーは、その中で自分の好きなものをフォローできます。一般的なニュースアプリは、どちらかと言うと社会人として知る必要のある情報に出会うところ。一方でカメリオは、自分の興味を深めるための場所、というイメージですね。

どのようにテーマと実際の記事をひも付けているかというと、単純にキーワードで分けているわけではなく、関連度のようなデータを定義して抽出しています。

たとえば「iPhone」というテーマは、アルゴリズムの中で単語として独立しているわけではなく、Appleやスマートフォンといった関連用語の集合体になっています。そうすることで、個々のキーワードがどんぴしゃではまっていなくても、関連するニュースを集めることが可能になります。

ただのキーワード検索より賢い、でもちょっとまだノイズも多い、という仕組みです。

私は、役割としてはエンジニアとビジネスサイドの中間あたりにいて、ユーザー行動などのデータ分析を行って、プロダクトの改善につなげるための提案をしていく、という感じです。Pythonを使ってモデルを作るようなエンジニア的な仕事もしていますが、基本的にはデータを可視化して、議論を誘発する。そんな働き方が多いですね。

ユーザー行動をデータで分析!KPIを上げる施策につなげていく

データをどのようにプロダクトの改善に活かすのか、ということですが、例えば最近ですと、10月にUIを一新したんですね。その時にまず変わったのは、登録の際のFacebookとTwitterのログインをなくしたこと。これは、ここで離脱する人が一定の割合でいる、ということがデータを見てわかったからです。

そこで最初はシンプルにスタートして、まずは「フォローするテーマを選ぶ」ことにフォーカスするUIに変更しました。

このケースは登録の話ですが、カメリオの大指標には、ユーザーのアクティブ率、特に入会からの翌日起動率を最大化を決め打ちで置いています。その数字を高めるためのマイルストーンKPIを設定し、各指標を見ながらアプリの改善につなげていきます。

例えば既に分かっているのは、登録初日の「記事の読了率」が、翌日継続率とかなり相関が強いことです。読了数が多い人は、自分でカメリオ内で検索をかけて、テーマをフォローしているケースが多い。

読みたいものがはっきりしていて、カメリオの使い方がわかっている。読みたいものを選んでフォローしているので、翌日もまた読みたくなって来てくれる。

このようなユーザー行動のキーとなるマイルストーンKPIは、検索率や、読了率ということになります。10月のUI変更の時にもこれらの数字を上げることを狙っていて、例えば検索からフォローをし、記事を読んだ、というユーザー数を20%上昇させることに成功しました。

このように、ユーザー行動を分析するためのデータの可視化に私が使っているのが、BIツールの「Tableau(タブロー)」と、統計言語の「R(アール)」です。

「Tableau」の活用で重要指標をダッシュボードに可視化

まずはTableauですが、 Tableauを考えた人は、天才だと思います(笑)。エクセルのピボットテーブルのような感覚で、とにかく手軽にデータをグラフにすることができます。

弊社の場合はログをAmazon Redshiftに入れていて、それをPythonで書いたプログラムによって加工し、Tableauと連携させています。

毎日、自動更新でさまざまな指標が可視化されるようになっています。具体的には、

  • 登録初日のチュートリアル突破率や記事読了率(ファネル分析
  • ユーザー登録日からの日数別のアクティブ率(コホート分析
  • プッシュ通知に対する反応率

といったものですね。

▼実際に使用しているTableauのダッシュボード 様々な数値を可視化

一度仕組みを作ってしまえば、毎日その数値に変化が起こっていないかをチェックするだけで済みます。これを毎回手作りでレポートしていると嫌になってしまいますよね。かと言ってこの仕組みを自前で実装しようとなると、すごい開発工数なので。

Tableauは以前のBIツールと比較しても安価で、月額制ではなくライセンス当たりの買い切りです。編集はできずデータを見るだけのTableau Readerは無料で使えるので、GoogleDocsのフォルダの中にTableau Reader用のダッシュボードを作って、社内の他のメンバーに共有しています。

複雑な分析には統計分析プログラミング言語「R」を活用

Tableauは毎日同じデータをチェックする場合には便利なのですが、複雑なデータ分析をしたい場合には難しいこともあります。その場合に使っているのは、統計分析プログラミング言語の「R」を使っています。

回帰分析した結果を可視化したり、可視化したデータをさらに解析したい時、複数の分析結果を統合したいケース、などにはRの方が都合がいいんですよね。

Rを使う時には、「RStudio」という統合型の解析環境を使っています。コード記述の支援や、レポート作成を行うことができるものです。例えば、「サンキーチャート」と呼ばれるフロー図を使って、ログインしたファーストセッションでどのページまで遷移していったか、といったことを可視化しています。

▼Rで作成したサンキーチャート。ファーストセッションでのページ遷移を可視化

このようにアドホックな分析であればRを使い、ダッシュボード化したい時にはTableauをうまく使い分けで活用しています。

データを叩き台にUIの改善を進め、プロダクトの拡大を目指す

カメリオでは、実際にユーザー行動を分析し、改善策を打っていく、ということを今はどんどん進めていっています。

以前のUIの時は、ファーストセッションの時のユーザーの動きがとにかくバラバラだったんですよ。あっちこっちいってドロップして、なかなか記事を読まない。

そのデータを叩き台に、デザイナー、フロントエンジニア、私でデザイン会議を編成して、UIの変更案を話し合いました。さらにユーザーテストも組み合わせることで、ひとつずつ問題をつぶして綺麗にしていっています。

まだまだ改善するべき箇所は多くあるのですが、今後もデータ分析を通じて、そこに貢献していきたいと思っています。(了)

▶当記事で紹介しているグロースハックの手法「コホート分析」「ファネル分析」の解説と、成功事例のまとめ記事はこちらです

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