• NTTレゾナント株式会社
  • メディア事業部 ポータルサービス部門 UX戦略担当 グロース
  • 大谷 祥

効率的なSEO施策は意識改革から ポータルサイト「goo」の検索キーワード管理術

今回のソリューション:【Ginzametrics/ギンザメトリクス】

〜SEO管理プラットフォーム「Ginzametrics」を通して検索キーワード群の検索順位を部署を超えて共有し、サイト改善のコミュニケーションを効率化した事例〜

Webサイトのアクセス数増加のためにSEO(検索エンジン最適化)対策を行うことは、もはやどの企業にとっても当然のことだ。同一の検索ワードの表示順で上位を目指すサイトは数多くあり、そのような状況下では、いかに効率的かつ戦略的に施策を実行できるかが競合に勝つカギと言える。

ポータルサイト「goo」やQ&Aコミュニティーサイト「教えて!goo」などを提供するNTTレゾナント株式会社では、2014年4月にgooの全サービス全体のUX改善を担う「UX戦略チーム」を立ち上げた。その背景にあったのは、サイト改善につなげるための指標(KPI)の設定が各サービスごとに行われてたこと。特にSEO施策に関しては、重要性の認識や施策の打ち方に、各チームごとに大きな差が生まれていたという。

そこで同社では、サービスを横断して課題に取り組むための活動の一環として、SEO管理プラットフォーム「Ginzametrics(ギンザメトリクス)」を導入した。同ツールの導入により、検索キーワードに関して競合との比較を含めた深い分析が可能になった。現在すでに導入が完了している重点サービスのチームでは、効率的なグロース体制を築くことにも成功したという。同社のUX戦略チームでgooのグロースハックを担当する大谷 祥さんに、詳しいお話を伺った。

gooトップページのデザイナーから、全社のUX戦略チームへ

前職はWebデザイナーとしていくつかの企業の自社サイトの制作や運用に携わっていましたが、縁あって2007年にNTTレゾナントに転職しました。当時からgoo辞書やgoo路線、教えて!gooなどをよく利用していたことが、転職の決め手になりました。

入社後はgooのトップページの制作を行うチームに配属となり、7名程のデザインチームの中でクリエイティブに関わってきました。

このチームはサービス全体に共通のテンプレートや、制作に関するガイドラインも作成していました。それもあって、gooの各サービスにとっては困ったことがあると相談する「駆け込み寺」的な場所でもありましたね。

各サービスの担当者からサイト分析や数値改善に関する相談を受けることも多く、その中で検索流入のデータを触ったり、SEOにも関わってきました。

その後、全社的にUXを俯瞰して改善していくチームを立ち上げることになり、トップページ制作と兼務していたガイドラインの運用や各サービスの制作支援の業務を、2014年の4月に独立させることになりました。

メンバーが正式にUX戦略チームとしてアサインされ、現在は8名で活動しています。私はその中で、gooの約60に及ぶサービスに対してのアクセス解析、A/Bテストなどを使ったサイト改善、そしてSEO対策といったWebマーケティング施策を担当しています。

サービスごとに、個別にアクセス解析の数値を管理…

UX戦略チームが立ち上がる前にあった課題には、サービス毎で個別にサイトに関する数値を取って施策を打っていた、という点がありました。アクセス数なども各担当者が把握しており、相談を受ける際にもまずは必要な数字をヒアリングすることから始める必要がありました。

中には後から集計することができないデータもあったため、サイト改善もやり切ることができなかったんですね。また、サービス毎に重視する数値もそれぞれの抱える課題によって違い、認識が揃っていませんでした。

幸運なことに、UX戦略チームが立ち上がる直前に、Google Analytics Premiumが全社的に導入され、すべてのサービスでサイトのアクセスを同じ環境で分析することができるようになりました。そこでUX戦略チームでの最初の仕事は、まずは各サービス担当者にヒアリングを行い、追っている数値、認識している課題などを聞いて回ったことでした。

ヒアリングをしていく中で、自然検索のキーワードに関する考え方が担当者によって異なっていることに気づきました。多くのキーワード群を設定して日々検証している担当から、キーワードを設定しておらず検索数の上がり下がりだけを見ている担当まで、サービスによってスタンスは様々でした。

Ginzametricsの導入で、競合サイト含めたキーワード分析が可能に

そこで、サービス毎にきちんとターゲットワードを決め、全社的に数値の変化を追っていこうということになりました。そのタイミングでSEO専任のスタッフ1名にグロースチームにジョインしてもらい、各サービスとやり取りをしながら何百万ワード規模で調査を始めることからスタートしました。

しかし、Google Analyticsはアクセス後のデータは見れるのですが、アクセス前の検索エンジンでの順位の変化などは分からないんですね。そこで導入をしたのが、SEO管理プラットフォームの「Ginzametrics(ギンザメトリクス)」です。2015年の1月からgooの幾つかのサービスで試験的に導入をしたあと、4月から正式に運用しています。

主な使い方は、各キーワードの検索エンジンの順位の把握と競合サイトの調査です。ひとつのサービスにつき何百万というキーワードを一度洗い出し、それぞれの検索需要をたしかめて重要なワードだけに絞り込み、それに対する順位変動を日次で把握しています。

具体的には、サービスサイト毎の管理画面で、狙っていきたいキーワードを種別ごとにグルーピングして登録しています。そうすると例えば、あるキーワードに対して今のgooの検索順位がどうなっているか、ということが色分けされて割合でぱっとわかるようになっています。

検索順位の1ページ目だけでなく、2ページ目以降に表示されている場合もカバーされています。例えばあるページが◯◯という検索ワードの何ページ目に表示されているか、といったこともすぐに分かって便利です。

▼登録キーワード群が検索順位で色分けされて表示される

競合サイトに関しても同様の分析が可能で、時系列に沿った検索順位の変動までが分かります。どのサイトが何番目の検索順位にどの位の期間いたか、といったことも知ることができます。

▼競合サイトの検索順位が時系列で確認できる

自社コンテンツとユーザーニーズ、双方へのより深い理解を実現

Ginzametricsを導入したことの効果として、まずは、自分たちのコンテンツの強みと弱みについて、サービス担当者がより詳細に把握できるようになったことがあります。例えば、ニュースの担当者がキーワード毎の検索順位を見ながら「うちは天気系のキーワードには強いね」といった感じで、具体的に分かるようになりました。

また、各サービスチームとグロースチームがキーワードに関して同じ情報を持つことで、お互いに目線を共有できるようになりました。サービス側の担当者と私が一緒に話し合い、検索キーワードを選定してGinzametricsに投入して分析結果を見る、という過程を一緒に経験できることが、双方にとって良い効果をもたらしました。

私は以前は気が付かなかった各サービスの注力ポイントが分かり、理解が深まりました。そしてサービスチームの各担当者は、検索キーワードへの意識が向上し定期的に情報をチェックするようになりました。結果的に、キーワードを意識をしながらSEO戦略を一緒に作っていく体制を構築できました。

以前はありがちだったサービスチームからの「問題が起きた後の事後的な相談」も減らすことができ、問題の解決がぐっとスムーズになりましたね。

現在は、サービスの垣根を越えてお互いの数値を確認できるようになっています。サービス担当者同士でお互いのキーワードをチェックして、「お互いにどのワードを強みにしていくか?」という議論などができるようになりましたね。

複数のWebサービスを同時に走らせる企業にオススメ!

Ginzametricsを導入して半年ほどが経ちますが、サイト改善に向けた現状把握とコミュニケーションは、大きく改善されたと思います。導入済みのサービスでは定例などでのレポートにも活用できるようになり日々の運用でもSEOに対して意識が向くようになってきました。

私個人としてGinzametricsをオススメしたいのは、複数のWebサービスを走らせたり、同じサービスでもカテゴリー毎に部門が違っているような企業さんですね。あとは、SEO施策を打ちたいけれど、何をしたらいいのか分からない、という企業でも導入効果が見込めると思います。

今の目標は、現在キーワード調査を行っているサービスの分析を完了させ、合計で1万ワードを定期的に管理、分析できる状態を作ることです。

サービス単体ではなくgooのサイト全体での傾向を見ながらサービスを横断する形でGinzametricsを活用して、全体のアクセス数アップにつなげていきたいと思います。(了)

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