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数値では見えない価値ある仮説を導く!アプリ上のユーザー行動を全て可視化するツール

今回のソリューション:【Repro/リプロ】

スマートフォンアプリの開発においてユーザー体験の重要性が叫ばれるようになって久しいが、その「ユーザー体験」はどのように可視化できるのだろうか。まず考えられるのはアクセス解析によりユーザー行動を数値で計測することだが、数値だけでは具体的なユーザー心理までは読めないため、正しい改善策を導くことができないケースも多いだろう。

株式会社ファンコミュニケーションズの廣瀬 空さんも、以前は数値分析によって仮説を立ててユーザー体験を改善する、という方法を取っていたが、それではあくまでも想像レベルの仮説しか立てられないことに課題を感じていた。しかし、モバイルアナリティクスツール「Repro(リプロ)」を使いユーザーが実際にアプリを使っている様子を動画で見ることで、価値ある仮説を立ててユーザー体験を向上させることができるようになったという。どのようにReproを使っているのか、廣瀬さんに詳しいお話を伺った。

▼ユーザーのアプリ上での行動を動画で見ることができる「Repro」

スモールチームで取り組む新規事業の開発

WEB製作会社でAndroidの開発エンジニア、ディレクターを経験し、2014年にファンコミュニケーションズに入社して新規事業を手がけています。新規事業においてはスモールなチームで開発を進めているため、一人で企画からマーケティング調査、開発の設計・製作の進行管理までを行っています。更にリリース後には、プロモーションから数値の改善、広告の運用までを幅広く担当しています。

その流れの中で、「ゲーマグ」というゲームの情報を扱うネイティブアプリを開発しリリースしました。ゲーマグは、スマホの人気ソーシャルゲームの攻略情報をひとつに集約し、アプリ内で検索をする事ができるポータルアプリです。個人的にモンストにどっぷりハマっていたこともあって(笑)、その時の経験からこのサービスが生まれました。

数値だけでは仮説が想像の域を出ない…

KPIとして追っているのは、デイリーアクティブユーザー数や継続率、1ユーザーあたりの記事の閲覧数です。ゲーマグはニュースサイトなので、どれだけユーザーが継続的に情報を見に来ているか、ということが最も重要になります。また、検索数も重視していますね。検索が大切な理由は、この機能が他のアプリにはないゲーマグの強みだからです。アプリ内で検索をすることで有名な攻略サイトに簡単にアクセスできる仕組みなので、この体験をユーザーがメリットと感じ、実際に検索機能を使っているかどうかがサービス成長の重要なポイントです。

KPIの分析には、最初はGoogle Analyticsを使っていました。新規ユーザー・リピーターがそれぞれどの機能を何回使い、特定の期間内でのその合計数はどうなっているか、といった様々な数値をグラフ化し、改善の効果測定を行っていました。

ただ、この方法だと数値分析に時間がかかりますし、ユーザーがこちらにとって望ましい動きをしていない時に、その理由が明確にならないんです。もちろん想像はできるのですが、数値しか見えないのであくまでも想像レベルでしかなくて。結果的に、なかなか仮説の検証と改善のスピードが上がりませんでした。そんな時にたまたまReproというスマホアプリの分析ツールを知り、使ってみることにしたんです。

Reproで定量データと定性データを紐付け、改善をスピードアップ

Reproは、ユーザーがアプリを実際に利用している様子を撮影した動画を見ることで、コンバージョン率や定着率を改善するモバイルアナリティクスツールです。導入した瞬間に、このユーザーは何を思ってこのアプリを使い、どこで迷っている、といったことまで手に取るように分かって驚愕しましたね。このサービスすごいって。そこから僕もReproの大ファンになったんです。

Reproを使った改善フローは、まずはリテンション分析(ユーザーがどれくらいアプリを継続して利用し続けているかを可視化する分析方法)から始めます。アプリ内のイベントをRepro上で設定しておく事で、イベント毎やイベントを行った回数による継続率を分析する事ができます。

▼ユーザー毎のアプリ継続率を可視化

継続率の高いユーザーがどのイベントに何回参加しているのかという数値の分析から、最もユーザーの継続率に影響が高いと考えられる指標を導き出します。「戻ってくるユーザーはイベントに◯◯回参加している」といった形で理想的なユーザー像を導き出すことができるんですね。

ユーザーの行動条件が導き出せたら、そこからファネル分析(入口ページから目的達成までの各プロセスの離脱率を分析すること)をします。例えば、新規のユーザーが入ってくる、アプリ初回起動時のアナウンスを通る、新着記事が表示されて読む、というところにファネルを置きます。

ここから、Reproのユーザーの利用動画を見る機能が活きてきます。例えばアナウンスは100%通ってきているけれど、記事を読まずに新着記事のリストで離脱しているユーザーがいるとします。そのユーザーの利用動画を見ることで「この人が何を考えていたのか」「どんな風にアプリを使っているのか」ということが想像しやすくなるんです。

▼離脱したユーザーの行動が動画で確認できる

例えば、「記事を見てくれるユーザー」と「記事を見てくれないユーザー」の使い方の動画を比較すると、記事のリストに画像が表示されていると沢山記事を読んでくれるのに対して、「No Image」が多く出ていると記事すら読まずに離脱してしまう事がわかりました。この事からリストに表示される画像の与える影響の大きさに気づき、即座に改善を行いました。Reproを使うことで、定量的なデータを定性的な動画に結びつけることができるので、改善のサイクルが早まるんです。

機能や品質の具体的な改善に大きな力を発揮!

ゲーマグにとって重要な、検索機能を改善する上でもReproに非常に助けられました。例えば検索した後に新着記事に戻りたいユーザーが、戻り方が全然わからず迷っていることがわかったんです。こちらとしてはわかりやすく新着記事への動線をつくっていたつもりだったのですが、ユーザーには全然認識されていなくて、あちこちキャンセルしたりフリックしたりしていたんです。

そこからもう、改善案を考えて。次のアップデートでは、戻るというページの切り替えを明確に、わかりやすくしています。Reproを使うと、本当にユーザーがどういう使い方をしているかということが全部見えてきます。

アプリがクラッシュした時のユーザーの動きも動画で見ることもできます。「クラッシュログから当たりをつける」という作業を省くことができ、再現する事も容易になるのは非常に良いですね。動画はチームで共有することができるので、スカイプで動画のURLをエンジニアチームに送ってすぐに直してもらっています。

想像レベルの仮説から脱却したことで、KPIは40%上昇!

Repro導入前は、仮説を立てて検証するまでに非常に時間がかかっていました。いくら検証したとしても、そもそも仮説自体が間違っている事も当たり前のようにあって…。それが、ユーザーの利用動画を活用することによって大きく変わりましたね。ユーザーの迷っている部分が明確になったので、検証の精度も飛躍的に向上し、仮説検証のスピードが上がりました。その結果、KPIである「1ユーザーあたりの記事閲覧数」と「1ユーザーあたりのアプリ起動回数」が共に40%上昇という大きな改善効果を出す事ができました。

仮説と検証のスピードが速まり、更に精度が上がれば、より早く、良いサービスをユーザーに届ける事ができます。サービスを作る人間として、ユーザーの不便を解消したり、もっと便利な体験をしてもらうという命題があると思っていて。ゲーマグで言えば、それは「よりゲームを楽しんでもらう」ということになります。そのためにも、できるだけ早く良いサービスを届けられるように、今後もユーザーの事を第一に考えながら更にゲーマグを成長させていきたいと考えています。

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