- 株式会社Speee
- 開発部 エンジニアマネジメント責任者 兼 エンジニア採用責任者
- 是澤 太志
エンジニア文化をどう作る? 「勝手にやっちゃう」自走カルチャーから生まれたもの
今回のソリューション:【Qiita:Team/キータチーム】
〜エンジニアカルチャーを組織に定着させるための「Qiita:Team」の使い方〜
組織力や営業力に強みを持つ企業が「エンジニアカルチャー」を作ろうと思うと、誰かしらそこに深くコミットする人が必要になる。SEOやアドテクなどWebマーケティング支援とメディア運営を行う株式会社Speeeも、元々はビジネスサイドに強みを持つ会社だった。
しかし今ではRubyの生みの親であるまつもとゆきひろさんや、元クックパッド技術部長の井原 正博さんをメンバーに加え、本気で「Rubyで日本一の事業会社になる」ことを掲げている。そしてその目標を実現するための、エンジニアカルチャーの醸成を推し進めている最中だ。
そのような組織改革を中心になって進めているのは、同社のエンジニアマネジメント・採用の責任者を務める是澤 太志さんだ。
「エンジニアらしく『勝手にやっちゃう』自走カルチャーを作りたい」と語る是澤さんは、この新しい組織文化を浸透させるために情報共通ツール「Qiita:Team(キータチーム)」を活用している。
導入によって、部署を越えた情報共有やコミュニケーションが活性化され、エンジニアのマインドも変わったと言う是澤さんに、Qiita:Teamの導入方法と使い方についてお伺いした。
CAモバイル、スタートアップCTOなどを経てSpeeeへ
渋谷がビットバレーと呼ばれていた2000年頃に、愛媛でエンジニアを始めました。その後、東京に出てきて、CAモバイルでメディアや広告配信系のサービス開発、検索エンジンの開発を手がけ、最終的には研究開発のような部署を作ってマネージャーをしていました。
その後、独立をしたりスタートアップでCTOを務めた後、Speeeに入社しました。
Speeeでは、つい最近までWebマーケティングの事業開発の開発責任者をしていました。今はエンジニア全体のマネジメントやエンジニア採用の責任者という立場で、人事、採用、技術広報などを幅広く手がけています。
同時に、アドテク業界での経験を活かして開発をアドバイスしたり、ノウハウがない領域の新規事業を立ち上げる時の開発サポートもしています。
世界に通じる技術力の獲得には、エンジニアカルチャーが必要
もともと Speee は営業力、組織力、分析力が強みの会社だったのですが、これからはエンジニアリングのレベルもどんどん引き上げていきたいと思っています。具体的な目標としては、「Ruby で日本一の事業会社になる」ということを掲げています。
その達成のためには、まずは目指す世界のレベルを知る必要がありました。そこでRubyの生みの親である、まつもとゆきひろさんを技術顧問に迎え、さらに元クックパッド技術部長の井原 正博さんを開発部顧問として迎えました。
そして、技術力が市場から賞賛を受けるような会社になるためには、まずはエンジニアカルチャーを作って社内に浸透させることが重要だと考えています。
そうすると、そこに共感するエンジニアやデザイナー、ディレクターと一丸となってものづくり文化を強めていくことができる。そして結果的に、世界に通じるものづくりが実現できると思っています。
また、エンジニアカルチャーを組織に根付かせるためには、エンジニア以外の職種からの理解も非常に重要です。そこで、「テクノロジーカンパニーとしてSpeeeがどうなっていくべきなのか?」ということを、エンジニア以外のディレクター、デザイナー、経営陣ともディスカッションを重ねています。
そもそも弊社は組織文化を大切にしていて、「Speeeカルチャー」という15個の「Speeeが定義する、人と組織の理想の在り方」があるんです。そうした背景もあり、うまく周りを巻き込んだカルチャーづくりができていると思います。
エンジニアが「勝手にやっちゃう」カルチャーを作りたい
僕たちが作っていきたいのは、「エンジニアっぽく勝手にやっちゃおう」というカルチャーです。エンジニアが自由な環境で、意志を持って成長できるようなカルチャー。それには各メンバーが自発的に、自分たちにとって楽しい環境を作っていくことが大切だと考えています。
例えば 「SpeeeTechParty」という外部の方を招いて公演してもらうクローズドイベントを開催しているのですが、そういったイベントで自発的に知見を共有したり、外部の方とコミュニケーションを取ることを推奨しています。
新卒採用におけるインターンシップの企画なども、若手の自発性に任せていますね。最近バズった「Splathon」も、若手エンジニアの発案からイベント化しています(笑)。
それ以外にも、土曜日の朝にエンジニアが自主的に集まって「Rebuild.fm」という技術系のラジオを聞きながら、勝手にプログラミングをする「てくにずむ」と呼んでいる取り組みもあります。
このように「エンジニアっぽく勝手にやっちゃおう」という動きを推奨していて、僕たちマネジメントの役割はそれをフォローすることだけなんですね。そうやって自発的に生まれる新しい発想を、受け入れていくことが大事だと思っています。
そして、本気でエンジニアカルチャーを作っていることを全社に伝えるために、社内制度も変えました。そのひとつとして、エンジニアにゼネラリスト職とスペシャリスト職を作りました。ゼネラリスト職は組織をマネジメントする人です。スペシャリスト職は、サーバーサイドのスペシャリストのような、技術に特化していく人。
それぞれ得意分野は違うので、それをしっかりと定義してあげた上で、その責任領域で成果を上げ、会社もそこを評価していく形にしました。このように、エンジニアの制度を作ることで、本気でカルチャーづくりをしていることが全社に伝わっていきます。
カルチャーを浸透させるための情報共有に、Qiita:Teamを活用
このように様々な取り組みをしていますが、SpeeeはBtoB、BtoCそれぞれの領域でサービスを複数運営しているので、エンジニアが各事業にばらばらと配属されるケースが多いんです。そこで、カルチャーを根付かせるための「事業をまたいだ横のコミュニケーションや情報共有」が課題でした。
そこで、最初にWebマーケティング事業部で「Qiita:Team」を導入し、エンジニアの情報共有をはじめました。Qiita:Teamは、共有したい情報をMarkdown記法で記入して投稿するだけで、チームでのナレッジ共有・蓄積ができるツールです。
▼誰でも記事を投稿することで情報を共有できる「Qiita:Team」
まずは朝会で行っていた技術情報の共有をQiita:Teamに投稿したところ、「アーカイブになるしわかりやすい」という声が出て、全エンジニアやディレクターが入ることになりました。
ただ、最初はなかなか投稿数も増えなかったので、ポエムのようなライトな発信を行っていき、投稿しやすい雰囲気を少しずつ作っていきました。
技術情報の共有以外にも、日報や議事録もQiita:Teamに投稿しています。困っていることがある時にはそこで発信すれば、サーバーサイドやインフラといった各領域のスペシャリストに助けてもらうこともできます。
あとは、絵文字を使ったり、各自の仕事の進み具合を可視化しています。ニコニコマークだったら順調、という感じです。健康状態も絵文字で上げてもらうことで、風邪をひいたのでは? といった異変にも気が付くことができます。
情報を共有することの楽しさに気が付き、外部への発信も増加
Qiita:Teamはチームで使うツールですが、技術情報共有サービスの「Qiita」を使うと、外部にも情報発信をすることができます。SpeeeではまずQiita:Teamが浸透していったことで、そこで投稿した技術情報をそのままQiitaに発信するエンジニアが出てきました。
Qiita上で外部の人にストック(ブックマーク)された数を勝負して、その数を自慢したり悔しがったり、といったやりとりがよくSlack上でされていますね。
情報共有を根付かせる上で重要なのは、まず投稿しやすい雰囲気を作ること。そして記事を書く人を増やすこと。そうすると、情報を共有する楽しさがわかって、情報発信が自分たちのためになることに気が付きます。
そうすると「もっと多く人に投稿を見て欲しい。社内だけではなく社外の人にも見て欲しい」ということになり、外部に向けた発信も起こるようになります。
そして、最後には「エンジニアとして市場価値のある人間になりたい」という気持ちが出てくると思うので、会社としてはそういった行動をしっかりと評価をする。こういった流れをQiita:Teamで作ることができたことが、非常に良かったですね。
自走している人・情報発信をしているエンジニアが成長する
「エンジニアっぽく勝手にやっちゃおう」というカルチャーを根付かせていくためには、失敗はある程度許容しながら、エンジニア1人ひとりがやりたいことをなるべくやらせてあげたいと思っています。僕たちのようなマネジメントする人は大失敗だけしないように、最低限のフォローをする。
このように自由に行動してほしい理由は、IT業界をずっと見てきた中で、自走している人・自分から情報発信をしている人がやっぱり成長していると感じているからです。GitHubが良い例ですが、自分のソースコードを出して色々なレビューをもらうと、どんどんレベルアップしていきます。
オープンな場所でアウトプットをし、フィードバックをもらうことで課題に気付いて成長する。これが基本であり大原則だと思っています。良質なフィードバックをもらうためには、アウトプットをしまくらないといけない。そういった意味では、Qiita:Teamを使った情報発信は今以上に増やしていきたいですね。
私個人として、その先で目指しているのは、日本に「取締役CTO」を増やしていくことです。エンジニアの気持ちが分かる経営者が増えることで、エンジニアが働きやすい環境を日本にもっと増やしていけると思っています。(了)
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