• トゥギャッター株式会社
  • 代表取締役
  • 吉田 俊明

「敢えてシュールに」ネットカルチャーと共に成長するTogetter、組織の裏側を公開!

Twitterのツイートまとめを作成するサービス「Togetter」。2016年7月にはネイティブアプリ版の大型アップデートも行った同サービスは、Twitter関連のサービスでは国内最大級で、月間のUUは1,200万人にも及ぶ。

同社代表の吉田 俊明さんの個人プロジェクトとしてスタートしたTogetterは、PRやマーケティングをほとんど行わず、Twitterの「拡散力」を利用してユーザー数を伸ばしてきた。その裏には、Twitterに漂うネットカルチャーを、うまく反映させたサービス設計があった。

今回は、吉田さんに、Togetterの誕生から現在までの成長過程、そして会社を設立してからの開発組織作りまで、お話を伺った。

▼ リニューアルされたTogetterのアプリ

個人のサービスから生まれた「Togetter」

Togetterというサービスは、もともとは私が個人で開発していたサービスです。公開した2009年頃は、まだWeb系のスタートアップやベンチャーも少なくて。Webサービスと言えば、個人が自宅で作ったものがほとんどの時代でした。

実は最初は、プレゼンテーション用のツールとしてTogetterを作ったんですよ。そのきっかけになったのはあるイベントだったのですが、そこで初めて、イベント用の「公式ハッシュタグ」というものを見たんですね。

イベント中にそのハッシュタグを付けてTwitterでつぶやくと、そのツイートがプロジェクターに映しだされて、発表者とコミュニケーションを取るために使われていました。

その後、当時の会社で「そのイベントのレポートをして下さい」と言われて。その時に、あの場所で実況していた人のツイートを集めるだけで、事足りるんじゃないかと思いついたんです。そこでツイートを組み合わせてブラウザ上でプレゼンテーションができるツール作ったところ、社内で話題になり、サービス化したのが始まりです。

PRやマーケティングはゼロ。「拡散される仕組み」を追求

個人で運営していたときから、PRやマーケティングといったことは、ほとんど何もしていません。ちょうどTwitterが日本で流行り始め、芸能人も使い始めた頃だったので、たまたまタイミングが良かったとも思いますね。Twitterと共に成長してきたようなものです。

Togetterで一般の人たちが1日に数百ものまとめを作ってくれて、それがTwitterで拡散される。そうすると、それがまた10万人に広がり、その中の何人かが別のまとめを作ってくれる。そういった性質のサービスなので、拡散するための仕掛けのようなものを大量に作ってきました。

例えば、まとめの「お気に入りボタン」というものがあります。このボタンを押すと同時に、「お気に入りしました」というツイートが、まとめ作者へのメンション付きで流れるんですね。そうすると、タイムラインに流れてくるので、他の人からも見えるようになります。

またTogetterでは、お気に入りした人のアイコンが、まとめのコンテンツより上に並べているんです。

まとめを読む人にとって、アイコンはたしかに邪魔です。しかし一方で、敢えてアイコンを並べることで、「お気に入りした」という意思表明になるんです。このように、「コミュニケーションを促進する」デザインを考えた結果、今の配置になっています。

1人からチームへ。新しい技術を取り入れ、効率化へ

Togetterの開発組織を作り始めたのは、1年半ほど前のことです。まだまだ手探りでやっている部分も多いですね。

2014年くらいまでは人手が足りなかったので、ほとんど機能も変わらず、裏側の実装も、昔作ったもののままでした。リファクタリングは少しずつ進めながらも、フレームワークを入れ替えるといった、大きな修正はできていなかったんです。

技術は日々進化しているのに、言語のバージョンアップすらできていない。このままだとレガシーなシステムになってしまうと思いまして、エンジニアを採用して、いまは新機能の開発と、改善を半々で進めています。

PHPのバージョンを5.6から7に上げて、JavaScriptもES6で書いていたり、ネイティブアプリをReactNativeで書き始め、Circle CIで自動テストを取り入れたりと、いろいろと新しい取り組みができてきていますね。

PHPのバージョンを上げるだけで、サーバーの処理速度は倍くらいになり安定もしました。するとインフラ周りの作業も少なくなりますし、サーバーの台数も減らせてコストも下がります。人数が少ない分、そうやって新しい技術を追いかけて、その恩恵を受けられるようにしていきたいですね。

リモートワークは「週1回、同じ日」で

エンジニアの中で、いま実施している面白い取り組みとして、「週1回のリモートワーク」があります。毎週、同じ日にエンジニア全員がリモートワークをする制度です。

リモートワークを取り入れたいという話は以前から出ていたのですが、管理する側からすると不安もありまして。そこでまずは週1から、ということで始めたのですが、この「週1回、全員が同じ日に取る」というのは、結果的に良かったなと思っています。

リモートワークの日を自由に選べてしまうと、一気にコミュニケーションのコストが上がってしまいます。1人だけいない、というだけで、急に面倒くさくなりますよね。全員いないと分かっていると、その意識でコミュニケーションが取れるので、情報共有の漏れが少なくなります。

また、リモートワークに限らず、朝会の様子をGoogle ハングアウトでつないで、YouTubeに非公開でアーカイブを残しています。Google Appsを使っていれば、会社の人だけに閲覧権限を与えられるんですよ。半年分くらい、すべての会議のログが動画で残っているので、休んだ人も何の話をしていたのかが分かるようになっています。

▼ YouTubeにアップロードされた会議のログ

サービスに浸透するネットカルチャーは、採用にも活かせる

ネットカルチャーっぽい雰囲気が残っているのも、Togetterの面白いところだと思います。

先日、まとめの数が100万本を超えたので、記念イベントを開催したんです。応募すると、抽選でステーキ肉が当たるという(笑)。なぜステーキ肉なのかと言うと、単純に面白いからです。担当者の思いつきですね。

でも、そういった緩さが大事なんです。iPadが当たるよりも、冷凍のステーキ肉が届いたほうが、Twitterに写真をアップしたくなるじゃないですか。そういった、ユーザーたちが好みそうな、王道を行かないようなシュールな感覚を大事にしています。

他にも、学生バイトを募集する「キャリアバイト」という媒体に、たこ焼きばかりを焼いていることを全面に出した募集文を出したんです(笑)。すると、「私もたこ焼き焼きたいです」「たこ焼き焼くの得意です」と、応募がすごく増えましたね。同じような文をWantedlyにも出したのですが、ユーザー層の違いなのか、反応は薄かったですが…。

カルチャーを維持して、スリムな「完成形」に近づけていきたい

そのようなネットカルチャーを維持しつつ、サービスをどうブランディングしていくか、どうやって会社っぽくしていくかということが、今後の課題だと思っています。

長く運営していると、機能が追加され、重厚長大になってしまうのがサービスの宿命だと思います。ですが、そうすると、どんどん複雑になっていくだけだと思っていて。

Togetterも、機能を追加しようと思えば、いくらでも追加できるのですが、これからはあまり使われていない機能を削ったり、複雑になっていたところを整備してスリムな「完成形」にしていきたいですね。シンプルな方が開発も楽だし、使う側も分かりやすいと思うので。

ゆくゆくは、深層学習などを取り入れるのも面白いかなと思います。ユーザーがわざわざ自分でやっていた操作が、ひとつでも要らなくなるように賢くできると良いのかなと思います。サービスはスマートなままにして、ユーザーのクリック数がひとつでも減るように、頑張っていきたいですね。

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